鏡の奥の向こう側   作:おおきなかぎは すぐわかりそう

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タイトルの無理矢理感・・・・


予定説および公正世界仮説

 

 

 

 部屋でベルの音が鳴った。すぐに布団から飛び起きて、目覚まし時計に飛びつく。目覚まし時計を止めたボクは、今度はカーテンをシャッと開け放った。気持ちのいい朝だ。太陽がまぶしくって目を細くする。ジャージに着替えて、鏡の前で身だしなみを整えて。外に飛び出して、エイタの家へ。廊下をソロソロ進んで、階段をゆっくり上がって。エイタをビックリさせないように、エイタの部屋のドアをそっと開ける。無防備なエイタの顔に、思わず顔がユルユルになっちゃうけど。早くエイタを起こさなきゃと。布団の上から、エイタの体を優しくゆすった。

 

「エイター? 起きてー? 朝だよぉー?」

 

 ウーンとうなるエイタ。仕方がない。またエイタをビックリさせよう。エイタの耳に顔を近づけて、ボクはささやこうとした。

 

「じゃないと、エイタのほっぺに──────」

 

「起きてるよ」

 

「あ、エイタ。おはよー」

 

「あぁ、おはよう。なぁウチハ、頼むからその起こし方はやめてくれ。心臓に悪いんだって」

 

「え〜? でもこれやると、エイタすぐ起きるんだもん」

 

「あんなのされたら、起きるしかないだろ」

 

「ボクは別に、エイタをキスで起こしても良いんだよ?」

 

「……」

 

 照れて静かになったエイタをかわいいなと思いながら。ボクはエイタと一緒に居たい気持ちをギュッと我慢して、エイタの部屋を出ていった。階段を降りると、洗面台にはおばさんがいた。

 

「おはようございます、おばさん」

 

「おはようウチハちゃん。今日も朝から元気ね」

 

「はい。今日も一日がんばります」

 

「ところで、ウチハちゃん?」

 

「? はい。なんでしょう?」

 

「ウチのエイタとはいつ付き合ってくれるのかしら」

 

「ちょ、ちょっとおばさん!? いきなりなに言ってるんですか!?」

 

「いきなりなんてことはないでしょう? ウチハちゃんとエイタはずっと一緒にいたんだから」

 

 そう言って、おばさんは楽しそうに笑う。ボクとエイタが付き合えたら。そんなの、ボクがずっとずっと考えてきたことだった。だけど、ボクはエイタに本当のことを聞くのがコワイ。ボクは積極的に、エイタのことが好きだって伝えてきたつもりだけど。エイタは全然、ボクに好きって言ってくれない。エイタはボクのことがキライってわけじゃないんだと思う。だけど、心のどこかで考えちゃうんだ。もしかしてエイタは、ボクと付き合いたくないんじゃ? ってことを。

 

「それとも。もしかしてウチハちゃんは、エイタの事がキライ?」

 

「いえ、そんなことは。むしろ、エイタのことは大好きで──────」

 

「顔洗えないんだけど」

 

「ッ──────!!」

 

 背中からの声に、心臓が止まりそうになった。後ろに向いたらそこには、エイタが居た。エイタは〝いや、だから。通れないって〟と呆れていう。ボクの〝大好き〟って言ったの、聞かれちゃった? 聞かれちゃったよね? 恥ずかしくって、エイタのことをチラッと見る。エイタと一瞬目が合って。だけどもすぐに、エイタはイヤそうに目をそらした。それはなんだか、エイタがボクと付き合うのをイヤがってるみたいで。ボクの胸の奥が、キュッと痛くなった。

 

「あらおはようエイタ。それで? あんたはどうなの?」

 

「……何が?」

 

「何ってそりゃ、ウチハちゃんと付き合うって話よ」

 

「なんだよそれ」

 

「ちょっとエイタ! なんなのその態度! ウチハちゃんに失礼でしょ!?」

 

「お、おばさん落ち着いて下さい! ボクは全然気にしてませんから!」

 

 このままだと、エイタとおばさんの仲が悪くなっちゃう! エイタに怒ったおばさんが詰め寄ってくるのを、ボクはエイタとおばさんの間に入ることで止めた。おばさんには、エイタがしたことを気にしていないことをちゃんと伝えて。おばさんの怒りがこれ以上エイタに向かわないように、おばさんをキッチンまで押して行った。去り際、エイタの方をもう一度見る。エイタはなんだか、その場に立ったままだった。その顔は、おばさんにからかわれて照れてるとか。そういうかわいいものじゃない。あぁ、そっか。エイタは悲しんでるんだ。エイタはボクと付き合うっていう話に、悲しい気持ちになっちゃってるんだ。そうだよね。ボクとエイタは、小学生の時からずっと一緒にいるけど。ずっと一緒に居るからって、エイタがボクのこと好きだとは限らないもんね。ボクの心が、ズキリと痛む。胸の奥が、より一層痛くなった。

 

 

 

 エイタと公園で朝練して。登校して。授業を受けて、お昼食べて。ボーと午後の授業を聞き流していたら、もう放課後。帰りの会が終わると、みんな一斉に動き出す。その中にはエイタの姿もあった。部活の前に、エイタに一声かけたいなと。ボクは急いで荷物をまとめて、エイタの後を追いかける。だけど、みんなに声をかけられて。なかなかエイタに追いつかない。〝追いついた! 〟と思ったその時には、エイタの姿はどこにもなかった。〝あれ? さっきまですぐそこにいたのにな? 〟なんて。下駄跋扈前の広場でキョロキョロさせると、広場の隅にいるエイタを見つける。エイタはスマホの画面を見つめて、何かを熱心に打ち込んでいた。ボクは気になって、エイタに近づいていく。

 

「エーイタ? 何してるの?」

 

「あぁ、ウチハか。前に料理のできない人の話をしたろ? その人から連絡が来てたんだ」

 

「へー。エイタ、その人と連絡先交換してたんだ」

 

「また野菜を譲ってくれるらしくてな。今から行ってくる」

 

「そっか。いってらっしゃい」

 

 手を振って、エイタの背中を見送った。そっか、エイタ帰っちゃうんだ。今日、部活終わった後。エイタと一緒に帰りたかったのにな。……あ、そうだった。早く別館の更衣室の鍵開けなきゃだ! 誰か待ってる子がいるかも! 〝パンパン〟とボクは自分のほっぺを両手でたたいて、気持ちを切り替える。そのまま小走りで、ボクは別館に向かった。外の渡り廊下を通って、体育館を通り過ぎて。別館に入って、階段を駆け上がる。そこにはポツンと一人、コツツミさんがいた。

 

「コツツミさんごめん。待たせちゃった?」

 

「鍵貸して。開けるから」

 

「へ? う、うん」

 

 ボクはバッグから更衣室のカギを出すと、コツツミさんに渡した。コツツミさんはカギを開けると、荷物を持って更衣室に入る。ボクも荷物を持ち直して、コツツミさんの後につづいた。更衣室の中は、モノが少なくてスッキリしてる。壁際のロッカー。女子用の剣道具一式。いつものロッカーの前に荷物をおいて、チャチャッと着替え始める。チラリと、着替えているコツツミさんの方を見た。コツツミさんの頭に太陽の光が当たって。コツツミさんのキレイな黒髪が、なんだか少し青っぽく見える。いつものお団子にしたポニーテールはツヤツヤしていて。まつ毛なんかすごく長くて、目がパッチリ大きくて。鼻は高いのに細くって、唇なんてゼリーみたいにプルプルしていて。なによりも、ボクよりおっぱいが大きかった。ボクはスカスカと自分の胸を確認して。ガクッと一人で落ち込む。エイタもやっぱり、おっぱい大きい子の方が好きなのかな? ボクがチラチラ見てることに気づいたのか、コツツミさんがボクの方に顔を向ける。ボクは〝なんでもないよ? 〟とヘタな笑顔を浮かべて。コツツミさんを見ていたことを誤魔化す。ボクはこれ以上怪しまれないように、サッサと着替えて部屋を出た。更衣室を出ると、安心してホッと息をつく。そこに、同じ剣道部の女子達がやって来て。ボクは彼女達に向かって、笑顔で手を振るのだった。

 

 

 




 
話を書いて不法投棄、過去七話分の収集ゴミはいずこ
https://www.ookinakagi.com/a-cursed-trash-can-that-makes-your-heart-chill8/
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