めちゃくちゃ堂々とあの方とか言ってるが第三勢力なんて存在しない   作:幽 

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お久しぶりの投稿です。切りのいいとこで切りたかったので、すごく短いです。

高専襲撃のその後と、祐礼の必殺技の話?


弱者が騙る

 

 

「・・・・誰も死んでないというのは意外だね。」

 

それは呪術高専の一室だ。そこには、五条悟、夜蛾正道、そうして、夏油傑がいた。

夏油は今回の交流会での顛末を聞いて目を細めていた。

それに五条が肩をすくめる。

 

「まあね。お前と黒鷲からの釘刺しでまばらに、じゃなくてある程度戦力を一つにまとめておいたことが功を奏したようだよ。というか、黒鷲、あんたまだ仲間がいたのかよ?」

 

畳敷きの部屋の中で、座布団に座った互いを見ながら五条が吐き捨てた。それに壁際に座り込んだ黒鷲が肩をすくめた。

 

「そりゃあな。」

 

今回、呪術高専に待機していた術師たちを助けたのは一人の青年だったという。変わらず仮面を付けたそれは、呪具を使っていたそうだ。

 

「でも、そいつら殺す前にこっちに引き渡してもらいたかったがな。」

「手加減が出来ない奴でな。ただ、情報は幾つか引き渡しただろう?」

 

それに五条はふむと腕を組んだ。

 

「・・・・だが、宿儺の指と、そうして呪胎九相図の4~9番が奪われたのは痛いね。」

「そうは言っても、忌庫番の安全を取ってのことだろう?仕方が無いよ。」

「・・・・まあ、今回襲ってきた、あの植物の呪霊を祓えたのは僥倖だったけどさ。」

「というか、だ。」

 

そんな話をしていた夏油と五条に、夜蛾が叫んだ。

 

「なーんで今回のことをこっちに回さなかったんだ!?」

 

びりびりとしたそれに五条がげえっと吐くような仕草をする。

 

「絶対めんどくさくなるじゃん!!」

「教師に!なったのなら!報!連!相!を心がけろ!!!」

 

ぎゃーすかと騒ぐ中で、黒鷲は気だるそうにため息を吐いた。それを見ていた夏油はゆっくりと口を開いた。

 

「・・・・植物の呪霊を祓った存在については、本当にわからないのかい?」

 

夏油はじっと黒鷲を見つめる。黒鷲は、騒いでいる二人に視線を向けつつ、静かに首を振る。

 

「だから言っただろう。俺の身内が祓ったのは確かだが。それが誰かはわからんのだ。」

 

夏油はそれにそうなのかいと頷いた。

 

 

 

植物の呪霊に逃げられ、生徒たちの安全確認を任せた五条は、ともかくと黒鷲の回収に向かった。

その時だ、空に閃光、いいや、それが巨大な呪力の固まりであることをその目は捉えた。急いで飛んだ先にいたのは、疲れ果てた黒鷲だった。

 

「・・・・今の何?」

「あー・・・特級呪霊がいたんだが。なんとか祓った。」

 

黒鷲はあっさりとそう言った。

 

 

黒鷲曰く、ではあるが。

 

「俺だって一人でやってるわけじゃねえよ。身内だっている。今回やらかしたのは、身内の一人だ。」

 

それに対して、五条はもちろん、夏油でさえも疑問に思う。あんなに強力な呪力の出力が可能な存在がいるのならもっと早く知らせればよかったのではないかと。

それに黒鷲は肩をすくめる。

 

「うちは、互いの連絡は最低限だ。一人がばれて、そこから芋づる式にばれる可能性があるからだ。だからこそ、だ。俺たちは互いの術式も知らねえんだよ。」

「そんなこと、あんの?」

「誰一人、かい?」

「ああ、一応、情報を管理してる家系があるから、そいつらは知ってるだろうが。なあ、俺たちがどうしてお前達の窓口役になったのかわかるか?」

「なぜだい?」

 

その問いに、黒鷲はけらけらと笑った。あっけらかんと言ってのけた。

 

「俺は術式が、相手側にも、そして、味方にも知られてんだよ。」

渡る情報は少ない方がいいだろう?

 

それに対して黙るしか出来なかった。

五条からすれば、残穢の痕跡も黒鷲のものしかないことが気になっていた。けれど、黒鷲はそれに肩をすくめる。

 

「俺みてえに一人でやってんのは珍しいんだよ。大抵は、足役と、あと戦闘役とかに分かれてるんだ。」

「何だよ、集団行動苦手なの?」

「死んだからな。」

 

あっさりと言われたそれの後に、少しだけ伏せられた顔はよく見えない。

だから、一人だと。

そう言われると、どこか、踏み込みにくいものがあった。五条も、欠けること無く、片割れがいるのだから。

そこに触れるのははばかられた。

 

そうして、呪霊を祓った功績も、五条のものとなった。

 

虎の子は出来りゃあ隠しときたい。そう連発出来るもんでもないそうだからな。

 

そのため京都校との現状把握のための報告会でもそういったことにした。その時、宿儺の指について守ることが出来なかった黒鷲に対して批難はありはしたものの、術師や忌庫番たちの保護をしたことや、老いた男の言葉で少しだけ黙り込む。

 

「若造が死ぬのは、老体にゃあキツいんだよ。」

 

老いた男の言葉短いそれに、少しだけ黙り込む。

何よりも、今回、人死にが出ていないだけ、いいや、呪霊を祓ったことも功績であるとしてとんとんであろう。

 

夏油は、騒動を聞きつけて慌てて高専にまでやってきたのだが。改めて話を聞いて頭を抱えたくなった。

何と言っても、宿儺の指と、そうして、呪胎九相図が奪われたのだ。

 

「上の連中が五月蠅いぞ・・・」

 

ぼやくような言葉を夏油が吐いたとき、がらりと扉が開く音がした。

それに、皆が扉の方を見た。そこにいたのは、疲れた顔をした伏黒甚爾だった。

 

「・・・あの子は?」

 

掠れた声で黒鷲が甚爾に問うた。それに、甚爾は疲れたように肩をすくめた。

 

「感覚は掴んだみてえだ。行くんだろう?」

「行く?どこにだい?」

 

夏油は不思議そうに言った。それに、夜蛾に関節技を決められていた五条が、腕から逃れて姿勢を正した。

 

「やっぱり、意思は変わんないの?」

「ありゃあ聞かねえよ。止められはするが、四六時中あいつを押さえつけとけなんて非現実的なことを言うなよ?」

「だよねえ。黒鷲、あんたは止めないの?」

 

五条のそれに黒鷲は首を振る。

 

「俺は最初に、たきつけた側だ。何よりも、だ。失せ物を見つけたとき、誰だって慈しむのと同じように。自分の指からすり抜けることを許せんのは人の性だろう。」

「・・・なら、一応、やり過ぎないようについてこうか。あ、傑も来る?」

「来るって、どこにだい?」

「うーん?禪院家への殴り込み?」

 

五条のそれに夏油と、そうして夜蛾の口元がぱっかんと開いた。

 

「「は?」」

 

間抜けな声音が二人の口から飛び出した。

 

 

 

 

花御にとって、それは、特別な人間であった。

 

「ご挨拶を、花御様。」

 

初めて会ったとき、花御にとってそれはひどく不思議な気分になった。

憎いだとか、蔑みだとか、呆れだとか、そんなことなんて欠片だって思わず。ただ、ただ、しんと静まりかえった穏やかな気持ちだけになった。

 

呪詛師黒は、まるで植物のような存在だった。

静まりかえって、穏やかで、呪霊を前にしてなお、ひどく落ち着いている。

ただ、そこにいる。そこにいて、けれど、そこにいないような曖昧な存在。

 

花御にとって、それは人であるのだと理解はしていたけれど、心のどこかで違うのだと思っていた。

真人のように積極的に関わることはなかったけれど、気にはしていた。

それが何を考えているのか、問いかけたいとずっと思っていた。

 

 

呪術高専の襲撃のためにかけられた帳が上がったとき、時間だと理解して離脱のために呪霊や呪詛師の人間の回収に向かった。

そうして、最後に黒の元に向かった。

 

指定していた場所にやってくれば、彼は穏やかに微笑んでいつも通り花御を見た。

 

『さあ、ここから離れましょう?』

「ええ、申し訳ありません。」

 

黒はそう言って花御の作った抜け穴に向かう。すでに、抜け穴一杯になった根っこの部分には脹相などが待ち受けていた。

 

「黒、大丈夫か!?」

「ええ、特別には。」

 

そんな会話がある中、花御もまた地面にもぐろうとした、その時だ。

 

ふわりと、自分の体が浮かび上がる感覚がした。それに、花御は感覚として理解できた。

 

空に、自分が、落ちていることに。

 

ぐんぐんと遠ざかる地面が見えた。

 

花御は、己の作った地面を掘り進める根の部分を切り離した。そうして、ありったけの呪力を込める。

そのまま掘り進める根のことにほっとして、花御は自分に向けられる視線に気づいた。

 

「疑問だったんだよ。」

 

ぴたりと、花御に起こる落下は止まる。半端に空中に縫い止められ、花御は己の目の前に存在するそれを認識する。

それは、渋い色合いの着物を纏った、鬼面を被った老人だ。

花御は虫の息の中で、種子を発射する。けれど、それは、老人に到達する前にぴたりと止まり、そうして、地面に落ちていく。

 

「五条悟の、虚式・茈は、正と負のエネルギーをぶつけることで仮想の質量を生み出す。だが、それは普通の人間では出来ない。そこまでの呪力の調整は元より、あれは、違う性質の無限をぶつけることでできることだ。」

だがな、考えていたんだよ。

 

「力の性質さえなんとか、できればってな。」

『貴様は、何を言っている!?』

 

空中では身動きは取れず、それへの攻撃は確実にそれに届く前に止まる。叫んだ花御に、老人は微笑んだ。

 

老人は、紫色の石を花御に向ける。

 

「順転と反転、俺はその性質だけだ。だからこそ、それを混ぜたときの結果は、停滞だ。進む力と、戻る力は拮抗し続ける。だからこそ、だ。反発しあいながら、蓄積され続けた力が解き放たれたら。どうなると思う?」

 

その言葉に、花御は察する。自分にやってくる、それのこと。

 

『何を!』

「ええ、ですから。実験台になってくださいますか?花御様?」

 

その声。その声は、ああ、花御はずっと惹かれていた、黒のもので。

花御の視界は、光で埋め尽くされた。

 

 

 

(・・・・・ははは、んだよ、成功、か。)

 

術式を保ち続けられず、板取祐礼はそのまま落下する。それに祐礼は気力を振り絞り、呪石を飲み込み、そうして、またふわりと浮き上がる。

 

疑問だった。

正反対の力をぶつけることで、五条が虚式・茈を発動するなら自分でも似たようなことが出来るのではないかと。

けれど、祐礼がそれをしても何も起こらない。当たり前だ、祐礼の術式は、あくまで正当な循環と、反する循環、力の流れであって力そのものではない。故に、起こる結果は力の拮抗、停滞、静止だった。

ならばと思った。術式を指定する力があれば。

例えば、重力なら空中で止まることが出来た。例えば、好感度ならばリセットが出来た。

けれど、あくまで拮抗における静止にしかならなかった。

 

それで終るはずだった。まあ、劣化版の無下限が出来ると思えばそれでよかった。

 

けれど、それでも思いついたのだ。

純粋なエネルギーの結晶であり、そうして、それを保つ器になるもの。

 

一度、呪石に反転させた呪力を注ぎ込んだことがあった。そうすると、呪石は軽い爆竹のように爆ぜた。

結晶化された呪力とただの呪力ではうまく打ち消し合うと言うことは無かった。

呪石に、順転させた呪力を注ぎ込む。爆発する瞬間、静止する。

そうすれば、爆発するはずの力は行き場を失い、けれど、打ち消し合う力はそのままに保たれる。そうして、そこに更に呪力を蓄え続ければどうなるか。

 

(十数年物の、おまけに複数から作った 呪石を消費するのはキツいが、まだ余裕はある。)

 

祐礼はため息を吐いて、ちらりと、呪石を発射した手を見た。そこには、ぐずぐずに肌の溶けた腕があった。

 

「・・・弾丸が一流でも、打ち出すのが三流だからなあ。まあ、偽・茈ぐらいは言っていいのか。」

 

ぼやくようにそう言って、祐礼はそのまま己の腕を治した。

そうして、結果的に五条と合流した。

高専に身内をいれたと怒られはしたが、元より、忌庫番に自分が向かったこと自体、非常に禁忌なのだ。

 

(まあ、上の連中は俺を排除できないだろうが。)

 

上の人間、つまりは術師として古く、力の強い家系の人間は自分をそう排除できない。何故って、表向き、黒鷲という役割は唯一くもと関わりがある人間なのだ。

 

呪石という存在はそれほどまでの金脈なのだ。

術式がどれほどお粗末でも、燃料が豊富であれば如何様にも出来る。それは、真依が一番に顕著だろう。

だからこそ、だ。

くもへの一番の手がかりである黒鷲とは仲良くしたいのだろう。少しでも情報を引き出し、どうにか関わりが持てないか、と。

 

(くだらねえ。)

 

祐礼は仮面の下で嘲笑を浮かべる。

目先の利益に目が眩み、信用も出来ない存在から受け取った物を体に取り込むなど愚の骨頂だ。

けれど、彼らはそれをする。自分たちが強者であるという傲慢さを持っているが故に。

黒鷲は、基本的に五条や夏油の目の前にしか現れない。そのために、余計に情報が引き出しにくい。

表立って捕らえてしまえばいい?

いいや、あくまで、秘密裏に行わなければいけない。何故って、表立って捕らえてしまえば、情報が他に渡ってしまう可能性がある。

自分だけが得をしたいのだ。どうやって、他人を蹴落とし、そうして、自分だけ得をするか。

それだけのために、黒鷲という存在は薄氷の上を歩いている。

そうであるが故に、生意気な五条の小僧の元に現れる身元もわからない術師の存在が許されているのだ。

 

(なんて、筋書きで俺は表向きで優遇されているわけだが。)

 

おそらく、五条たちはそう思っているだろう。身元もあやふやな黒鷲が許されている理由なんて。

実際の所は違う。

祐礼はすでに、くもとして、上層部の人間達と関わりを持ち、そうして、呪石の配給を少量だけ行っている。

あくまで少量、そうして、そこまでの結果を出せないぎりぎりの量。

くもは、彼らに呪石を渡すとき、囁くのだ。

 

五条の協力者である、黒鷲から情報を引き出してください。そうすれば、それと引き換えに、呪石の生成方法をお教えしましょう。

 

それだけで、彼らは互いを牽制し、逆に黒鷲の身元は安定する。

彼らは黒鷲の身元を求めるが故に、互いに牽制し、ある意味で守ることしか出来ない。

 

(まあ、いい。そろそろ、爆弾のスイッチを押してもいいだろう。呪術界の手綱は、五条たちに握らせたい。禪院家の掌握が出来るのなら、それで。)

 

そんなことを、祐礼は考える。そうして、禪院家に着いた。当主である禪院直毘人は真希の謁見を許した。

祐礼はそれに、ああと。

 

何人かが死ぬのだろうと思う。おそらく、真希と真依の父親は死ぬのだろうと考えて、それでもどうでもいいかと考える。

その程度で、傷つくことも、結局なくて。

 

なんてことを考えていたとき、明るい声が聞こえてくる。

 

「なんや、来とったん!?」

 

騒がしいその声に、祐礼はびくりと体を震わせた。

そこにいたのは、満面の笑みを浮かべた禪院直哉だった。

 

祐礼が考えているくもなんかの設定について知りたいでしょうか?小説の中ではたぶん部分的にしか出てこないので、関係ないと言えば関係ないんですが。

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