めちゃくちゃ堂々とあの方とか言ってるが第三勢力なんて存在しない 作:幽
呪骸の話は早く書きたい。
「・・・・成果は、あまり出ておられないようですね。」
柔らかな声、がした。
それに男は、じとりと目の前の存在を睨んだ。そこにいたのは、特徴と言える特徴のない男だった。体を覆う真っ黒いコートに、目深に帽子を被っている。そうして、顔を覆う布面。
静かな男の声が、部屋に響く。
そう言って、男、黒と名乗っているそれは部屋の中を歩き回り、つらつらとしゃべり続ける。
「ええ、あなたに協力を依頼し、黒鷲から情報を引き出すようにと望んでから、いくほど経ったのか。」
「・・・・わかっている。」
苦々しく男はそう吐き捨てた。男は、総監部のメンバーの一人だ。
「そうですか。我らもあなたの努力について理解している、と思っております。」
ですが、とそれは付け足し、男にゆっくりと近づいた。
「そろそろ、お時間が近づいていることも理解されておりますでしょうか?」
男はそれに苦々しい顔をした。
男は総監部の男であり、呪術界でも長く続いている家系の出だった。
そんな男の元に、ふらりと現れた存在がいた。それが黒だった。
「ええ、我らは幽霊と申します。くもに仕うる手足の一つ。ええ、ええ、一つ、取引を求めに来ました。もちろん、対価はございます。」
黒が、現在話題に上がっているくもの手先であることはすぐに理解した。そうして、現在、自分たちが喉から手が出るほどまでに求めている、呪石まで。
「・・・取引とは?」
「・・・・五条悟と関係を持っている、黒鷲という存在からの情報を。」
「黒鷲?」
「今後、必ず表に出てこられると思いますので。もしも、情報をいただけるのであれば、呪石の生成方法を差し上げても構いません。」
「なに!?」
男は高揚した。あまりにも、それは何を差し出してもあまりあるものだった。術式はピンからキリだ。が、どれだけ弱い術式であっても呪力というエネルギーさえあれば結果をひっくり返せる。
それは、生まれ持ったもので決まる術式の性質を凌駕するほどの力だ。
が、男は慎重に立ち回る。何と言っても、それもまた長く、呪術界で生きていた人間だから。
「・・・・縛りを結ぶか?」
「それは当たり前のことですね。ええ、どのようなものでも。」
それに男は事細かに条件を付けた。それは、例えば、呪石の生成方法が確実であること、裏切ったとき確実に情報が伝わること、自分たちに危害を加えれば持つ全ての情報を引き渡すことなど。
黒はそれに是と答え、そうして、自分もと条件を差し出した。
「そうですね、私たち側を裏切らない。これから私も定期的にあなたを訪ねてきますが、そんな私を捕らえて、尋問などされては溜まったものではないので。」
それに男は当たり前かと頷いた。何よりも、黒側の要求はそれだけで、破格と言えた。
「ああ。そうだ。お試しに、これもどうぞお使いくだされば。」
そう言って差し出された呪石、男はそれに魅了された。
他の幹部達が黒鷲の情報を知ってなお、牽制を続けられたことを忌々しくは思っていた。
何と言っても、早々に黒鷲からくもたちについてどれほどの情報を持っているのか、それを聞き出さねばならなかったからだ。
だが、他の人間達もまた血眼になっているのも理解できた。呪石、この存在を知ったとき、皆が熱狂した。
当たり前だ、ここまで簡単に呪術師の力量を底上げする方法など存在しないのだから。それを精製する方法を知っている存在への手がかり、誰もが欲しがって当然だ。
それ故に、皆が表立っては様子見をする。
呪石のことも表向きは反対した。何故って?
自分だけが得をしたいからだ。男は内心で、落ち着けと己に言い聞かせる。
今のところ、少なくともは自分が有利なのだ。
「取引相手ですか?今のところは、あなただけですよ。ええ、不特定多数に声をかけても構いませんが、誰が五条等と繋がっているかはわかりませんし。そこまで言われるのならば、他の人間にも声をかけた方がよろしいでしょうか?」
「・・・いいや、けっこうだ。」
「おや、ですが、今は互いに牽制で面倒でしょう?なら、同じ条件が増えれば、こちらとしても。」
「・・・・貴様らとて、あの情報が多く出るのは困るだろう。」
「ならば、どうぞ、結果を早々としてくださればと。」
男は苛立つように指先で肘掛けを叩く。
黒は穏やかに、けれど、隙を見せることなく男に交渉を求める。それを信頼できると思った。
それは淡々と、私情を挟まずに、仕事をする。
(これほどの男ならば、うちでも子飼いとして雇いたいものだ。)
そんなことを思うほどに。
男は指先で呪石を撫でる。
あまりにも、呪石というものは魅力的だった。事実、それを手にすることで男の派閥の人間は確実に力を付けた。
「・・・・是非とも、欲しい物だ。」
どんな対価が必要でも、どんな技術が求められても。
男はそれを求めていた。
大丈夫だ、周りの有象無象と自分は違う。自分は選ばれたのだ。
このままくもたちに有利な立場を取ることが出来れば、呪術界を牛耳ることも出来るはずだ。
男はそう思い、時期を待っていた。
が、そうも言ってられなくなったのは、特級呪霊たちの高専襲撃事件だ。それにおいて、黒鷲が大立ち回りをしたことが発端だった。
「・・・ずいぶんと、彼が入り込んでおられるようで。」
黒の言葉に男は苦々しい顔をした。
今まで、牽制し合い、黒鷲の存在に傍観を決め込んでいたツケが回ってきたのだ。
黒からしても、下の人間達であっても彼、もしくは彼らが発言権を持つのは阻止したかったのだろう。
男は苦々しく顔をしかめた。
黒鷲への詰問を行うことが決まったのも、ぱらぱらと声が上がったためだ。
さすがに忌庫に向かったことについて問題になった。それに男は覚悟を決め、その場において、なんとか黒鷲へ個人的な接触を図るタイミングを待つことにした。
「おうおう、老いぼれが集まってご苦労なこったな・・・」
そう言って部屋に入ってきた男に、周りの人間は不機嫌そうな顔をした。洒落た着流しに、鬼の面を被ったそれは変わること無く、総監部を前にしてなお、飄々としていた。
「・・・・そのような口を利いてもよいと思っているのか?」
「さあ、少なくとも、この場に何の価値も感じてねえもんでな。」
肩をすくめた老人、黒鷲は困り果てたような顔をした。
「本当に有意義な時間を使うなら、わざわざ俺みてえな老いぼれに構わねえんだけどな?」
皮肉気なその口調に男の眉間に皺が寄る。けれど、落ち着けと己に言い聞かせる。
そうだ、今、声を荒げても意味が無い。何よりも、それよりもどの場で黒鷲と接触を測るかだ。
「貴様は以前から、くもという組織について警鐘を鳴らしているそうだが。実際、それらについての存在は真か?」
「は!そんなもの、あんたら自身、ひしひしと感じてるだろう?今まで、呪霊と、権力争いがもっぱら話の種だったはずだってえのに、それ以上の何かが、確実にうごめいている。」
段々と、言葉が終るにつれて、何か、有無を言わせない声音があった。
かつんと、不思議と足音が響いた。
部屋の中央にて、それはくるりと回りながら、己を囲む老人達を見た。
「はてさて!ご覧じていただきたくは、目の前に立つ老いぼれ!今、呪術界にて蔓延びたる亡霊に立ち向かわんがと足掻くチンケな存在にございます!そうして、お聞かせいただきたくは、ただ一つ!」
老人は口上を述べて、仮面を脱ぎ捨てた。
そこにあるのは精悍な顔つきの翁が一人。
「皆様方が刃を向ける先は、如何様で?」
朗々としたそれはまるで舞台役者のように目を引いた。ただ、その口上に口を挟むこともなく、その様を見つめていた。
黒鷲はにやりと笑って障子越しに、総監部の人間を一人一人見つめていく。まるで、その向こうにあるものを理解するように、目が合ったと、思うように。
「・・・・てめえらがくもと繋がってるのはわかってるんだ。大方、呪石の斡旋をしてもらってるんだろう?」
「何を根拠にそのようなことを・・・・!」
それに黒鷲へ非難の声が上がる。男も又、どきどきと心臓が鳴ったが、それを押し殺して、非難の声に混ざる。
いいや、理解は出来る。自分たちのことをある程度理解しているのなら、予想は付くはずだ。
そこで黒鷲は笑みを深くした。
「何が可笑しい!?」
「そりゃあ、おかしいさ。なんてたって。」
そう言って、男は手を組んだ。反応が遅れてしまったのは、何故だろうか。
頭がどこか、ぼんやりとする。その男を見ていると、何かが、重なって。
ずしりと、己の体に負荷がかかる。石のように重く、かはりと、肺から空気が漏れ出た。
それと同時に、暗い部屋を照らしていた照明などその衝撃のせいか、がちゃんと壊れる音がした。
その衝撃から解放されて、男は笑った。
ああ、やはり、自分はツイている!それを捕らえる口実が、手の中に・・・・
「約束しましたよね?」
声が、した。逃亡等の阻止のために地下に作られた、その部屋の中に、声が、した。
それと同時に、男の胸には鋭い痛みが走る。
「“くも、ひいてはその手足である幽霊への敵対行為を取ってはならない”と。」
それは、黒と名乗った青年の声で。それと同時に男の意識は薄れていった。
「どういうことだ!?」
その場に集まった人間たちはぎりぎりと五条、そうして、それらに並び立った夏油傑、黒鷲を睨んだ。
五条はやっかいなことになったと眉間に皺を寄せる。
五条は総監部の人間たち、またはその近親者が死んだという話を聞いて黒鷲の保護に向かった。
幸いであったのが、あまりにも上層部が死にすぎたせいで指示系統があまりにも交錯していた。その混乱に乗じて、五条たちは黒鷲の確保に成功した。
「何があった!?」
その言葉に、黒鷲は忌々しそうな声を上げた。
「・・・・幽霊の襲撃に遭った。奴さん、総監部の人間皆殺しにして、去りやがった!」
叩きつけるような声に五条が話を聞くと、どうも尋問の途中で幽霊らしき存在が現れ、総監部を皆殺しにしたのだという。
「俺は対抗して逃げ出した。」
その言葉の通り、その場には黒鷲と、他の残穢が残っていた。五条はそれに到頭ここまで侵入を許したのかと忌々しく舌打ちをする。
そうして、ろくな話し合いも出来ずに、今度は総監部の後釜である存在たちに呼び出された。
総監部の使っていた部屋は血の海で使えないために、急遽、高専内の一室でそれは行われた。
「どういうことだ!?総監部の人間の殆どが死んだなどと!」
「おまけに、それはお前達が追っているくも、の手先のせいだというじゃないか!?」
「何よりも、そのほかに、総監部と繋がりのあった人間が幾人か亡くなっている!」
どういうことだ!?
その言葉に五条はため息を吐いた。
「だから、説明しただろう?黒鷲の詰問中に敵が侵入してきてそのまま殺されたって。」
「何を無責任な!くものことは貴様らの管轄だろう?」
それに夏油は顔をしかめて吐き捨てる。
「ほう、無責任とはどの口が言う?」
「どういう意味だ!?」
「くもに関しては、個人的な話から逸脱しているのはわかっているはずだ。呪石という存在のせいで呪詛師たちはそのくも、という存在に集っている。何よりも、呪石に魅力をあなたたちが感じていないとは言わせないが?」
暗に、くもという存在に関係を持とうとしているお前達がどの口で、と言うとそれに幾人かは顔をしかめた。
が、それさえもはねのけてがなり立てる存在はいた。
「だからなんだ!大体、今回、その黒鷲という存在だけ生き残ったのはどういうことだ!?あやしいに決まっている!!」
「いい加減に・・・・!」
「少し、よろしいか?」
激高した五条のそれを黒鷲は手を上げて制止した。それに五条は思わず止まり、視線は黒鷲に向かった。
黒鷲はそれに淡々と口を開いた。
「・・・・今回のことは、一人逃げたこと、まことに申し訳ない。ただ、様子がおかしかったために、逃げ出した。一つ、お聞きしたい。今回、あの場にいた総監部の方々は、呪術師としてそれ相応の実力があった、そうだな、五条?」
「まあ、前線になんて出なくなって結構経つだろうけど。無能で上に立てるほど甘くないからね。」
「ああ、そうだ。だが、あの場で幽霊が現れたとき、総監部の人間はまったくと言っていいほど抵抗していなかった。残穢も俺と、そうして幽霊以外に残っていなかったはずだ。」
それにその場にいた人間は、一つの結論にたどり着く。それを理解してか、黒鷲は淡々と言葉を続けた。
「優秀な術師が?前線を退いて久しいとして?
何の抵抗もせずに殺されるのは、あまりにもおかしくないか?」
水を打ったように、その場は静まりかえった。それに黒鷲は大きくため息を吐いた。
「・・・・・今回の死因は?」
「不明だ。強いて言うのなら、出血多量だ。」
「今回の事件で、殺した候補に俺が入っているのは事実だ。だがな、俺の術式じゃあ、その殺し方は難しい。何よりも、遠方で死んだ人間達を殺すのは無理だ。そうして、あの場に現れた幽霊の残穢は確認済みのはずだ。」
夏油と五条は黒鷲がかすかに震えていることを理解した。
「大丈夫か?」
「おい、じじい、どうしたんだ?」
「大丈夫、だ。」
掠れた声で黒鷲は答える。そこで、相手側の人間が口を開く。
「だが、それならば、何故、わざわざ彼らを殺したのだ?」
その言葉に、黒鷲は小さくため息を吐いた。
「今回、総監部に俺がのこのこ出たのは、くもとの関係を探るためだ。そのほかに死んだと聞いた奴らもまた、俺たちが監視を付けようと回りを探ってる最中だったんだよ。」
苦々しい声で黒鷲は吐き捨てる。
「・・・・蜥蜴の尻尾切りか。」
「・・・・二人とも、わりいな、俺自身、つい最近わかったことがあるんだよ。報告しようとしたとき、総監部からの話が来た。それを、ここで言うぞ。」
黒鷲は意を決したように口を開く。
「相手側、くも側に人を操る術式を持った存在がいるかもしれねえ。」
その言葉に、夏油の脳内に浮んだのは、星漿体の事件だった。
あの人のことは、信用できると。
なんでか、信じてみようって。
あの人が来てからおかしくなって!
「身内の古い文献を漁ってるときに見つけた。人に暗示をかけ、政府側を操ろうとした存在がいたと。ただ、その時の術式が格下相手にしか通じなかったため、早々と阻止できたそうだ。」
黒鷲は顔を上げて回りを見つめた。
「・・・相伝、というものがある。ならばわかるだろう。呪術師にとって血縁とはどのようなものか。いいや、今回も格下相手にしか通じない条件の多いものならばいい。だがな、術式自体が変化し、今代で発現したと、するのならば!」
黒鷲は目の前の上層部のことをにらみ付けるように見つめた。
「すでに、総監部を含めた全ての家系は、くもたちの手の内にある可能性がある。」
老人の伝えたそれに皆が黙り込んだ。
「・・・・どういうこと?」
「・・・・申し訳ありません。」
目の前のそれは、深々と頭を下げた女、青をにらみ付けた。そこは、羂索、と名乗った存在が拠点にしている一室だ。
今回は青との話し合いのためにわざわざやってきた。それに対して青はため息を吐いた。
「呪術界を牛耳っていたはずの勢力が完全に変化した。これは、君達も知るところだろう?」
「はい、存じております。」
羂索はため息を吐いた。
現在、呪術界の方針を決めているのは、五条と夏油、そうしてそれを手伝う形で禪院家が関わっている。
理由は簡単で、少し前にあった総監部の死亡事件のためだ。
その事件の折、黒鷲というくもたちの敵対者達が警告をした。
人の精神を操る術式を持っていた存在がいるかもしれない。誰が操られて行動しているのかわからない。
ここで総監部に連なっていた上層部達の信用は一気に下がった。いいや、最低限あった、呪霊を祓うという建前さえもなく、呪詛師側のスパイが確実にいるかも知れない、おまけに、上層部に、だ。
その中で残った人間達はまるで共食いをするように互いを疑い始めた。
貴様、もしや。
いいや、お前の方こそ!
それならば!
そんな状態で指揮系統などお察しの通りだ。
そこでまずかったのは、加茂家の中でも、おまけにそこそこの立場にいた人間にも死亡者が出たことだ。
そこで加茂家もまた監視対象と保守派としての立場を無くしている状態なのだ。
混乱を極めた中で、方向決定をすることになったのが、五条と、そうして夏油である。
何を言っても、その術式にかからないという確信を持っていえるのがそれぐらいだったのだ。
そうして、さすがに二人だけではと、禪院家、といっても禪院直哉や禪院直毘人ぐらいが関わっている状態だ。
そのほかにも、五条たちが選んだ人間で最低限のことを行っている。
「・・・・今回のことは、君達がしたと思われているようだが?」
その言葉に青は深々と頭を下げて謝罪をした。
「今回については相手側に完全にやられました。」
「・・・私や、そうして君達と総監部の関係を知られたと?」
羂索はくもたちが呪術界の上層部と関わりを持っているのは知っていた。曰く、呪石について実験をしたいこと、また、黒鷲の辺りを探るためだ。
が、今回はそれが完全に裏目に出た。
彼らを殺すことで、上層部の信用が失われ、特権意識を守るために互いを守っていた者たちは疑心暗鬼に襲われている。
おかげで、五条たちがそれらを牛耳ることになったのだ。
「いいえ、おそらく、我らとの繋がりはあると確信はあったでしょうが、証拠はないと思われます。」
「ならば、誰が殺した?」
「おそらく、黒鷲らが殺したのでしょう。」
それに羂索は目を見開いた。そうして、あははははははははは、と愉快そうに笑った。
「なるほど、今回は全て茶番!」
羂索はゆるゆると笑った。
黒鷲たちからすれば、くもたちを追い詰めるために戦力が必要だ。だが、彼らが信用できる五条たちは勢力としては手駒が少なすぎる。
ならばどうするか?
五条たちに実権を握らせればいい。そのために、全ての罪をくも側になすりつけて、疑心暗鬼を煽り、勢力を削って見せたのだ。
「彼らは秩序側だと思ってたんだけどなあ。」
「彼らは子どもを殺すのに戸惑いは持つでしょうが、化石を壊すのには躊躇を持ちません。」
「それはまた、エゴイスティックだなあ。」
けらけらと笑った羂索に青は変わること無く言葉をかけた。
「今回の落とし前については、早急に・・・」
「いいや、大丈夫。」
「よろしいので?」
「まあ、遅かれ早かれ、あの辺りは殺しておくはずだったからいいかな。ただ、色々と早めなくちゃいけないことが増えたかな?」
「わかりました、ならばすぐに手配をいたします。」
「ああ、頼んだよ。」
そのまま青は部屋を立ち去ろうとした。そこで、羂索は口を開いた。
「私の子どもたちは元気かい?この頃、顔を見せてくれなくて寂しいよ。」
「・・・・変わりなく過ごしておりますよ。出来れば温存をしておきたいので、又の機会に。」
淡々と帰したそれに、羂索は笑みを深くした。
楽しみだなあと、それは笑った。
揺蕩う、術師同士の殺し合いで彼らはどんなふうに踊ってくれるのだろうか?
楽しみで仕方が無いと。
(・・・・幸いなことだ。)
青はほっと息を吐いた。
何故って、今回、なんとか全てがスムーズに進んだ。
元々、呪石を上層部に配り、そうして、結果を聞きにと関わりを持ったのは彼らの信用を潰し、五条たちに権限を渡すためだ。
縛りによって自分を裏切る行為、つまりは黒鷲であり、黒でもある祐礼への詰問を行った瞬間、縛りを結んだ彼らにはペナルティーである死が訪れる。抵抗は出来ない。何故って、彼らは縛りを破った自覚など、寸前までないのだから。
電話がなった。それに、青は、いいや、姿を変えた板取祐礼は電話に出た。
「もしもし?」
『あ、お兄ちゃん!?』
「真依か。どうした?」
『もう、どうしたじゃないわよ!全然帰ってこないから心配してたのに!この時間なら出られるって言われて健気に電話した私に言うこと?』
「それは、悪かったよ。」
祐礼はどこぞのサラリーマンのようにぺこぺこと頭を下げた。
それを電話向こうの妹分は察したのか、仕方が無いと口を開く。
『それでね、言われた呪骸のことなんだけどね?』
「ああ、どうだった?」
『うーん、一応、動いてるわ。脹相達が、ものすごくはしゃいでる。』
「成功したのか・・・・!」
『まあね、でも、能力的にやっぱり無機物の体じゃ不便だろうから人間の体を作って、それで核を三つずつ埋め込んでみたの。まあ、人造人間に近いのかしら?でも、正直、お兄ちゃんの持って帰った情報だけじゃ不安だから、どのくらい持つかはちょっと・・・・』
「そうか、いや、近々、呪骸についての知識も持ってる奴を連れて帰ろう。」
『えー。また、この家、人が増えるの?そろそろ引っ越さない?』
「それも考えないとな・・・・」
そのまま祐礼は真依の愚痴、というか、何故帰ってこないのかという文句に晒される。
「わかった、埋め合わせはするから、な?」
『じゃあ、今度デートして!』
「で、デートか。ええっと、エスコートはしたことないが、頑張ろうな。」
子守扱いをしなかったことがお気に召したのか、真依は約束よと意気揚々と機嫌を治した。
そのまま、家での脹相達の様子などを聞かされた。
「・・・・なあ、真依?」
「うん?なあに?」
間延びした、愛らしい、弾むように元気な声だ。それは、どこまでも、祐礼の知る真依からはかけ離れていて。
「お前、大丈夫、か?」
それに真依は不思議そうな声を出した。
「何言ってるの?私は、お兄ちゃんがいれば、それでいいもの。他に何もいらないわ。」
弾んだ声だ、楽しそうな声だ、そうして、踊るように元気な、健やかな声だ。
祐礼は、話を終え、電話を切る。
お兄ちゃんがいればそれでいい。
脳裏に、妹を求める、一人の姉が思い浮かんだ。
「お゛え゛」
祐礼が考えているくもなんかの設定について知りたいでしょうか?小説の中ではたぶん部分的にしか出てこないので、関係ないと言えば関係ないんですが。
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知りたい
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別にいい