めちゃくちゃ堂々とあの方とか言ってるが第三勢力なんて存在しない   作:幽 

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

お久しぶりです、薄めです。

次回で禪院家とかマコラ辺りの話を書きたい


譲渡者が騙る

「あーあ!なんだよ、横取りか!」

「の、膿爛兄、そんなこと言っちゃダメだよ・・・・」

 

八十八橋にて、呪霊を前にした虎杖たちの前に二人の子どもが現れた。

 

「・・・・えっと。君ら。」

「・・・・こいつら。」

 

釘崎野薔薇のそれに伏黒恵も無意識のように頷いた。

 

その顔は、例えば、伏黒だとか、そうして、禪院真希によく似ていた。

 

 

 

 

 

「びびんな、散相!そんなんだからお遣いだってろくろく任せて貰えないんだぞ!」

「でも、僕達、全然、その、強くないのは本当だし・・・・」

 

二人は愛らしいセーラー服を着ていた。それは、まるでどこぞへのよそ行きの装いだった。けれど、二人とも、異質なことに大仰な薙刀と、剣を携えていた。

 

「呪詛師?」

「でも、子ども・・・」

「あーもう、めんどくさい!」

 

何やら言い合っていた双子の内、もう片方、膿爛と呼ばれたそれが武器を手に虎杖に斬りかかる。

 

「倒しちゃえば早いだろ!」

 

それは、子どものものにしてはあまりにも、重い一太刀だった。

 

 

 

「お前ら、マジでなんなんだよ!」

「それ、知ってどうするわけ!?」

「ご、ごめんなさい、言えないんですううううう。」

 

子どもたちは虎杖よりは弱いのだろう。ただ、小柄な体を生かし、素早い動きで二方向からやってくる斬撃は馬鹿に出来ない。

 

(つーか!)

「ちょこまかすんなよ!」

 

虎杖の体の横を赤い何かが通り過ぎていく。それは周りの岩に当たる。それと同時に、弾丸が撃ち込まれたかのようなクレーターが出来ている。

 

(こいつらの周りにある、玉!)

 

彼らの周りにはふよふよと朱い玉が浮んでおり、それは時折虎杖へまるで水鉄砲のように繰り出される。

といっても、命中率は高くなく、避けること自体は難しくはない、ないのだが。

 

(手数が多いんだよ!)

「膿爛兄、だめだよ!まだ、僕達そんなに術式の練度高くないんだから・・・」

「でも、これぐらいやってたら人間はバテるからな!楽勝、楽勝!」

「でもさあ・・・・」

 

 

「・・・・ねえ、私らもいく?」

「いや、あれは、あんまりにもイレギュラーすぎる。それより、あの術式。」

「見たことあんの?」

「京都校の、加茂先輩の・・・」

 

そうであるとして、顔立ちは。

 

伏黒がそこまで考えたとき、子どもを観察するためにゆっくりと動き回っていた釘崎の悲鳴が聞こえる。

それに伏黒が視線を向ける。すると、そこには、ずるりと結界の外に連れて行かれる釘崎の姿があった。

 

 

妙な気分だと、壊相は考えていた。

 

「何よ、私の、せっかく作ってあげた器が気に入らないって言うの?」

「いえ、悪くありませんよ?」

 

真依が九相図たちのために用意した肉体は基本的な素材に黒と、そうしてどこからか手に入れた加茂家の人間と、そうして真依からなっている。

ただ、自分と黒だけを素材に組み込もうとしていたらしい真依は加茂家の血が入ることが相当気にくわなかったらしい。

ただ、彼らの術式から考えて加茂の血を入れるのは避けがたいことだった。

そうして、真依が取った行動というのが。

 

「・・・ただ、なんというか、見事に、禪院面というか。」

「なによ、私に似てるのよ?美人でしょ?」

「ええ、あなたは美しいですよ。幼い頃から、大人になるにつれて素敵な女性になりましたね。」

 

壊相はそう言って真依の頭を撫でた。それに真依はくすくすといたずらっ子の猫のように目を細める。

基本的に互いの兄弟にしか興味がなく、人間も呪霊にも興味がない。

ただ、灰原と、そうして目の前の少女だけは違った。

 

ずっと育ててきたと言っても過言では無い少女はそれこそ、壊相にとって妹に等しい。

目に入れても痛くない、そう言ってもいいほどに。

 

器については不満はない。出来れば加茂の人間に似たくはなかったし、兄弟たちで見た目に統一感があればよかった。

そういった意味で黒に似た容姿がよかったのだが。黒はずっと顔を隠しているのでそれも難しい。そのため、壊相は可愛い妹分に似た見た目を気に入っていた。

鍛え上げられた肉体に、真依によく似たつり目と、黒い髪。壊相はそれをさっぱりと刈り込んでいる。

特級呪物である彼に順応した器のせいか、彼のコンプレックスだった背中も術式を使うときだけ発現するのがありがたい。

血塗も血塗で、小回りが利く体格で、ということで少年染みた器が用意されている。

 

・・・・真依に、似てるな。

うん!見た目はねえ、やっぱり自分に似てる方が作りやすくって!

そうかあ。

そうそう、私に似てて、お兄ちゃんの血も入ってるの。

そ、そうか・・・・

素敵よね?

え、あ、うん・・・

ねえ?

 

そう弟が詰められているのを見たが。

壊相はそこまで女心に詳しい自負はない。ない、が。

本能が言っていた。その二人の間に入らない方が絶対にいいと。

 

遠い目をしながら壊相は目の前の可愛らしい妹を見る。

あの時、何故か妙に目の前の真依が恐ろしく見えたが。

 

「呪具を使って変身してたときは女だったけどさあ。男になるのも不思議な気分だなあ。」

そういって短い黒い髪をつまんで言った。

 

自分だけの、適応した肉体というのが不思議なのだが。

 

「ただ、兄さんだけ、見た目が似ていないことが気になってしまって。」

「あー、そうねえ。脹相はあんたたちの中でも特に強いから。元々使ってた器の見た目が焼き付いちゃったみたいでさあ。まあ、元々顔の系統は似てるから。一緒にいたらわかるわと。」

 

そういって真依が慰めるように自分の頭を撫でられて、壊相はそうですねと微笑んだ。

 

 

 

「いえ、お遣いを頼まれておりまして。」

「お遣いぃ?」

 

壊相はふむと目の前の存在を見る。

彼は八十八橋にやってきたのは、黒からのお遣いを頼まれてのことだった。

 

(・・・不愉快だ。)

 

壊相は腹の内で吐き捨てる。

黒がくも、という存在にいいように使われているのは知っている。

そのおかげで自分たちのことも救い出され、そうして、この数年、兄弟たちと、そうして新しい身内に囲まれて壊相は幸福に過ごした。

それにおいては感謝すべきなのかもしれない。だが、黒が彼らによって苦しめられているのも知っている。

 

けれど、壊相たちにはくも、という存在を討ち滅ぼす力はない。何せ、自分たちを忌庫から連れだしこんな器まで用意できるのだ。

故に、兄弟で話し合い、力をつけていくと言うことで話は一致している。

 

(膿爛たちも、いることですし。今のところはやり過ごすしかできませんね。)

「何のことだ!?」

「・・・そうですねえ。」

 

壊相は突然現れた、大きな気配にお遣いとして頼まれている指が結界の外に出たことを理解する。

 

 

宿儺の指?

ああ、それを取ってくること。それが、呪霊側の要求だが。それはあくまで表向きだ。本命は別。

べつぅ?何だよ、黒?

本命は、そこにやってくるだろう三人の呪術師に経験を積ませてくれ。

経験?

ああ、まあ、それと同時に膿爛と散相たちのならしもある。あいつらと、三人を戦わせてまあ怪我しない程度で壊相が一人いる少女を引き離してくれ。血塗は膿爛たちの見守り。

そりゃあ、いいけどさ。なんでわざわざ呪術師を鍛えるんだ?

 

それに黒は一瞬だけ沈黙して、口を開く。

 

必要だから、だな。

 

 

「・・・・先に回収がいいか。」

「なんだと?」

「いえ、お気になら去らず。」

 

そう言って壊相は来ていた白いシャツを脱ぐ。真依と買い物に行ったおりに買った物で気に入りなのだ。術式を使ってだめにすることは避けたい。

 

腰につけた鞄にできるだけ小さくして押し込む。

 

「な、なんで脱ぐんだよ!?」

「ああ、お気になさらず。」

「気にするわ!」

 

壊相は野薔薇を無視してそのまま駆け出す。それを野薔薇は追いかける。それに壊相はやはり応戦するかと考えたとき。

 

ぽぉんと、弟三人と、そうして虎杖悠仁が結界から飛び出してきた。

 

 

「はい、頑張りましたね。お疲れ様です。」

 

それに血塗は自分の中から傷みが失せていくことに気づいた。そうして、はっと我に返ると、自分をのぞき込むような形で黒がいることに気づく。

呪石によって自分の体を巡る呪力が傷を癒やしていく。

 

「新手か!?」

「新手ですねえ。」

 

黒はそう言い返しつつ、壊相に手を添える。それに野薔薇が簪を発動しようとして、何かに気づいたように動きを止める。

 

「呪い返し・・・・・」

「ふふふふ、今、術式を使うと、相当痛いですよ。」

「黒、ごめん。死にかけた・・・」

「かまいませんよ。少々、相性が悪すぎた。」

「ほんと、だっさ!!」

 

野薔薇と虎杖は黒、というそれに反応する。そうして、壊相の方から聞こえるそれに視線を向け、虎杖は目を見開く。

 

「ちょっとはしゃきっとして欲しいんですけど。」

「・・・・すみません。」

「謝って欲しいわけでもないんだけどお。」

「てめえ・・・・・」

 

そこには壊相の腕をくっつける、ゴスロリ姿の少女があった。その姿に虎杖の殺気と呼べるそれが爆発する。

 

飛びかかろうとする虎杖に黒が明るく話しかける。

 

「虎杖君、戦うのはいいけど。伏黒君のこと、いいのかな?」

「は?」

 

野薔薇のそれに黒は穏やかに言った。

 

「今、疲弊して倒れてるみたいだけど。いいのかな?放っておいて?」

「脅してんのか、てめえ?」

「いいえ、脅すなど。取引ですよ。さすがにボロボロですからね。ここでお暇しようかと。」

「逃がすと思うのか?」

「だから、取引なんですよね。いいんですか?」

今度こそ、お友達が死にますよ?

 

その言葉に虎杖と野薔薇の目が見開かれ、そうして互いに構えを取ろうとしたときだ。

 

一台の軽トラが、現れる。

 

「兄ちゃーん!」

「乗って!」

 

突然のライトに照らされ、虎杖たちの思考が止まる。それに黒は血塗と共に二人の少年の乗った軽トラに飛び乗る。そうして、赤と壊相もまた同じように準じた。

虎杖がそれに反応し、軽トラに飛び乗ろうとした。けれど、それと同時にずしりと、何かが自分を押しつぶすような感覚と共に道路が割れる。

それに虎杖は敵を追うよりも、野薔薇の事を優先し、彼女を抱き上げて走る。

押しつぶされるような感覚はなくなり、後ろを振り向けば今まで戦っていた道路が粉々に砕け、遠くに軽トラが走り去っていくのが見えた。

 

 

 

「大丈夫かああああああああ!!!壊相、血塗!!!」

「黒が直してくれたので平気です!」

「でも、疲れたああああああ。」

 

軽トラを運転していた脹相の叫びに壊相が答える。そうして、ぐったりとした血塗が肩を落とす。

 

「脹相兄ちゃん、俺、負けなかったんだぜ!」

「ぼ、僕も、頑張ったよ!」

「そうかああああああああ!頑張ったんだなああああああああ!!」

「・・・・運転、大丈夫か?」

 

荷台から今日のことを報告する末の弟たちのそれに脹相が脱水症状を怖れるほどに泣いているのを見ながら黒が呟く。すでに赤は別れてしまっており、身内だけの場で壊相が申し訳なさそうに言った。

 

「宿儺の指の回収は。」

「いや、いいんだよ。裏の目的は果たせた。膿爛と散相にはいい経験になった。ただ。」

 

黒は壊相のことを見ることもなく、言葉少なに言った。

 

「痛むか?」

「ああ、治りましたから大丈夫ですよ?」

 

壊相はそう言いつつ、じっと己の手を見た。

 

(まだ、未熟でしたね。)

今回、最初は余裕があったのだ。少女と、もう一人の少年について術式を発動させ、様子を見ることにしていた。といっても、どうしても無理なようなら適当な理由で術式を解くつもりだった。

壊相たちの敗因は少女の術式を見誤ったことだ。そうして、少年についての観察不足。

 

「・・・もう少し、状況を見ればよかった。実戦経験は、呪霊とのやり合いだけでは足りませんね。」

「だなあ、壊相の兄者・・・・」

「そんなことはない!」

 

壊相と血塗がそうぼやくと同時に、黒が珍しく激高したように叫んだ。

それに脹相と話していた膿爛と散相が振り返った。

 

「黒?」

「・・・・・なんでもない。いや、そんなことがないって。それだけを、言いたかっただけだ。」

 

そう黒は物憂げな顔で言って軽トラの荷台に揺られてどこともいえない場所を見つめた。

 

 

「どうした!?黒、お兄ちゃんに言ってみるんだ!?」

「兄さんは運転を優先してください!揺れてます!!!」

 

 

 

 

 

「・・・・取引をしないか?」

 

そのことばに日下部篤哉は顔を思いっきりしかめた。

そうして、ちらりと回りに集まった面子に視線を向ける。

 

「帰っていいか?」

「だめ♡」

「やだ♡」

「頼む、夜蛾、なんとかしてくれ。」

「俺が、こいつらを制御できたことがあるか?」

 

その言葉に日下部はがっくりと方を落とした。

日下部は目の前の老人を見る。それは現在、呪術師の中で相当に有名になっている老人だった。

 

(うさんくせえ。どう考えても、上層部やったのこいつだろ。)

 

そんなことを日下部の勘は伝えていたが。それはそれとしてそれをやる旨みだとか、証拠がなさ過ぎるのも事実だ。

それはそれとして、あまりにも胡散臭い。

 

くも、という組織の話はその老人から出てきたのだ。

 

呪術師たちにも、政府だとか表にも出てくることのなかった組織なんて眉唾物だ。ありえない、陰謀論の方がずっと信用ができると思う。

だが、呪詛師たちが集っているのもそうであるし、それと同時に呪石なんてものが出回りだした。

けれど、日下部としては疑問が残る。

 

何故、今なのだ?

 

そんなネタが多くあるなら、もっと早くても、それこそ五条のようなものが死んだ後に動き出した方がいいはずだ。

が、両面宿儺のそれに何か、そういった時期が来たと言われれば納得も出来る。

 

確信だ。

目の前の老人の話を信じるには、確信が出来ないことが多すぎる。

故に、日下部はその老人とあまり関わりたくなかったのだ。

 

けれど、こうやって五条と、おまけに夏油までいる中、逃げられることもできない。

 

「いやあ、すまん。なに、取って食おうというわけじゃねえんだ。」

「・・・それならさっさと解放してくれませんかね?何のようで?」

「いや、何。五条たちに、シン・陰流の人間で一番に信用の出来る男が誰か聞けば、お前さんの名前が出たんだよ。」

 

いつも通り、というべきか、黒鷲は着流しを纏い、鬼の面を被って日下部に微笑みかけた。

老人に懐いているらしい伏黒父がいないだけ、現状ましなのかもしれない。

 

「へえ、それで何のようだ。」

「・・・そうだな、利点がある話をしようと思うんだが。そうだな、縛りを一つ入れて欲しいんだよ。これから話すことは他言無用だってな。」

「はあ?それは。」

「他言無用の代わりに、そうだなあんたがこっちの話を拒否するならもう関わらねえってことにしておいてやるからよ。」

 

それに日下部は考える。確かに、それは悪くないことのように思えた。何せ、日下部としてはひたすら距離を置きたいのだ。近づいてはいけない、自分のような凡人にはそれこそ一番だろう。

頷いた日下部に、黒鷲はすぐに縛りを交わし、そうして口を開く。

 

「で、だ。今日、あんたを呼んだのは頼みがあるんだよ。」

「頼み?」

「ああ、シン・陰流の当主になってほしいんだよ。」

 

一瞬の沈黙、それに日下部は目の前の存在の言葉の意味が分からなかった。

 

「・・・・あれも、あんたたちの派生だったの?」

「シン・陰流まで!?」

「おい、そんなこと、聞いてないぞ!?」

 

五条たちの言葉に黒鷲はのんびりと笑う。

 

「いいや、あれは俺たちは関係ねえさ。ただ、どこで、何をして、何が望かは知っていた。そうして、放置していた。」

「何故?」

「手を加えれば、相手に嗅ぎつけられる。当主になったとして、結局は表に影響力が出るだけだ。なら、放っておくことが一番だった。だが、俺たちもこうやってお前らと繋がりを持っている。」

恩赦の一つは、アピールしねえとだめだろ?

 

「だからって、だからって!シン・陰流なんて!」

「当主の座を譲渡、するのか!?」

 

夏油と夜蛾が動揺してそう言っているとき、五条が口を開く。

 

「・・・・当主になれば?」

「簡易領域などの縛りを解き、呪術師の生存率を上げられる。」

「それは!」

「い、いやいやいやいやいや!!!!待て待て!!!」

 

五条たちが盛り上がっている中、日下部が慌てて首を振る。

 

「何を当たり前のように話を進めてるんだ!?俺はやらねえぞ!?」

「なんでさ、シン・陰流の当主よ?普通ならいくらでもやりたい奴なんているのにさ。」

「だからだろうが!そんなトラブルの元、俺は絶対ならねえからな!」

 

日下部の叫びに、黒鷲はゆったりと首を傾げて微笑む。

 

「そうだな、おまえさんにも旨みがあるぞ?」

「どこがだ?」

「・・・・妹さん、元気にしているか?」

 

それに日下部と、そうして、夜蛾の動きが止まる。五条たちは何の話だと首を傾げる。

 

「・・・五条、虎杖の坊主たちがこの前、九相図と対峙したんだよな?」

「ああ、そうだよ。祓えはしなかったけど、宿儺の指も持って帰ってる。いやあ、今年は豊作だね。」

「でも、それがどうかしたのかい?」

 

それにとんとんと黒鷲は腕を組んで指先で叩く。

 

「・・・・呪物を人に受入れさせて器にすることはできないわけじゃねえ。だがな、呪物は毒だ。肉体を器にしてそのままの形を保つことはそうそうない。坊主たちがあった奴らは完全に人間にしかみえなかったんだろう?」

「・・・・そうだね。」

「そこから考えて、だ。九相図たちは相性のいい器に入った、ということだろう。例えば、宿儺のそれのようにな。だが、偶然、九相図たちと相性のいい肉体が運良く存在するとは限らない。」

「それは・・・・」

 

夜蛾のそれに黒鷲は息をつく。

 

「・・・・今回、真希が完全な呪力から脱却し、そうして、天与の肉体を得た。だが、それは同時に彼女を縛っていた双子の呪いから脱却した、ということだ。そうして、真希の双子の妹は、たしか、構築術式、呪力を持って物体を生み出す術式だ。」

「まさか・・・」

「ああ、そうだ。」

 

形ある物ならば何しても生み出せる、そんな願望器といえる特級が誕生した可能性がある。

 

 

沈黙が辺りを包む。

彼らも真希の実力を知っている。伏黒甚爾には勝てずとも、明らかに際立った実力を持った少女は仮とはいえ禪院家の当主に座っているのだ。

その実力にあった、形あるものを生み出せる存在。

 

それは想像が出来ないと同時に、故に、その恐ろしさを理解する。

 

「・・・・それで、何故、俺にその話が関係するんだ?」

「・・・・死の定義とはいったい、なんだと思う?」

「急に哲学的なことを言うじゃん?」

 

五条の混ぜっ返しに黒鷲は肩をすくめる。

 

「・・・存在をこの世に止めるのは、魂と、それを入れるための器だ。器とは肉体であり、そうして、例えばの話だ。たった一度だけならば。」

呪骸の原理を用い、最適な肉体を作り上げ、そうしてそこに核を埋め込むことが出来れば。

 

「成長する、生きた呪骸を生成、黄泉がえりを実現させることができるんじゃねえかってな。」

 

日下部は目を見開く。目を見開き、そうして、仮面の下で自分をじっと見つめる老人に囚われるような気分になる。

 

「・・・・くもの元にいる真依をこちらに引き込めるのは、真希だけだ。もしも、あんたがこちらに協力してくれるのなら。真依を説得し、こちらに引き込むことが出来れば。」

ただ、一度だけ、奇跡が起るだろう。

 

どうする?と、甘い声がした。

それに日下部は、脳裏には、ただ、今も必死に。けれど、どこか危うさの残る妹のことを思い出す。

ずっと、幼いまま、成長も出来ず、ぬいぐるみの中に閉じ込められたあの子のことを思い出す。

 

目の前の老人を見た。視界の端で、夜蛾が、ぎちぎちと拳を握りしめているのが見えた。

触れてはならないものなのだ。

分かる、分かってしまうのに。

 

ただ、一度だけ。

一度きりだとしても、奇跡があいなるとしたら。

 

日下部は老人に手を伸ばした。

 

 

 

八十八橋にわざわざ九相図を行かせたのは何故か?

 

黒は指の先で、夜食の、ブタメンを見つめる。

 

「今って、ブタメンこんなに味があるのね。」

「脹相兄ちゃんにはな、特別にカレー味上げる!」

「膿爛、いいのか!?そんな貴重なもの。」

「駄菓子というのに、カップ麺もあるんですね。」

「俺は時々食ってるなあ。」

「散相は何味?」

「シーフード。」

「僕はペペロンチーノが好きだなあ。黒は?」

「スタンダード。」

 

応えは単純で、九相図が受肉し、器を得ていることをアピールしたかったというのが真の目的なのだ。

黒閃を虎杖と釘崎に体験させたかったのは事実だが。それ以上に、黒は九相図に適合した器の存在、それによって真依が特級に至ったということをアピールしたかったのが本命だ。

 

シン・陰流の当主から、権利を譲渡させ、ハロウィンまでに簡易領域を使えるようにしておくことは必須だった。そうして、それは信用の出来る人間でなくてはいけない。

 

(日下部と、夜蛾は惹かれるだろうな。事実、日下部は確保できた。)

 

たった一度だけ、それでも、もしかしたらに人は弱い。

故に、彼らは惹かれるだろう。

ぬいぐるみという偽りのそれではなく、本当の意味で社会を生きていける、肉の器を持ち、成長の出来る器はどれほど魅力的で。

 

 

(・・・・それで、壊相と血塗を危険な目に合わせたんだよな、俺。)

 

釘崎と虎杖の情報を渡すことは出来た。そうして、そうすれば、彼らの実力からしてあっさりと殺すことは出来ただろう。けれど、祐礼はそれをしなかった。

 

二人を鍛えるために。

 

助けにいつでも入ることは出来た。間に会った。

けれど、黒の脳裏には、間に会わない可能性があることだって分かっていた。けれど、祐礼は、虎杖悠仁が強くなることを優先した。

 

(俺は・・・・・)

 

「なあ、黒!」

「あ、うん?どうした?」

 

ぼんやりと考え込んでいた黒に膿爛が話しかけてくる。

愛らしい、真依によく似た少年は楽しそうに笑う。

 

「時間だぞ、食べ頃!」

「ああ、そうだな。」

 

黒が頷いて、ブタメンを手に取る。それに皆でがやがやといただきますと言いながら食べ始める。

 

「それでさ、初めて買い物したんだ!」

「うん、お金もちゃんと渡せたよ!」

「そうかあ、そうかあ!すごいなああああああああ!!」

「脹相汚い、あっち行って。」

「真依、今、俺は感動してるんだ!末が、こんなに立派になって!感動してるんだ、仕方がないだろ!?」

「真依、本当のことですがそんな真っ正面から言わずに。」

「壊相!?」

「脹相の兄者が五月蠅いのも、こういうとき汚いのもいつものことだ~。」

「血塗!?」

 

脹相が叫びながらそう言っているとき、散相がこそりと祐礼に近づく。

 

「ねえ、黒。」

「ああ、なんだ?」

「あの駄菓子屋さん、もういけないけど。また、一緒に出かけようね。」

 

その愛らしい少年の笑みに、黒は顔を強ばらせて、それでも、ああと頷いた。

 

祐礼が考えているくもなんかの設定について知りたいでしょうか?小説の中ではたぶん部分的にしか出てこないので、関係ないと言えば関係ないんですが。

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