僕に甘い三船栞子   作:ぽぽろ

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やっとリバースの方出せた


私達は貴方を中心として回っているの

僕は暖かな陽の光に照らされて欠伸をした。

生徒会の書かなければいけない書類から目を離して、僕は目の辺りを軽く手で揉んだ。

 

「疲れてるの?」

 

隣で作曲をしていたミアちゃんが僕の目を覗き込むように問いかける。

その目は単純に心配の色が浮かんでいた。

 

「まあ、最近は色々書類が溜まってしまっててね」

 

僕は机に置かれていた高いコーヒーマシンから作られた珈琲を飲んだ。

僕の仕事場は栞子ちゃんと二人の静かな生徒会室ではなく、すっかりスクールアイドル部の部室になっていた。

これは夏の灼熱地獄の外から家のクーラーの効いた部屋に移動したくらい環境が変わったのだけれど、僕は別に悪くは無いと思っている。

栞子ちゃんと二人でやる静かな雰囲気も良かったけれど、ランジュちゃんやミアちゃん、栞子ちゃんと楽しく話しながらやるのもいい。

 

そして、なんせこの部室は設備がとても良い。

このコーヒーマシンや豆を初め、疲れたら高級ホテルのようなふかふかのベッドで眠る事が出来る。

僕が今座っている椅子も座り心地がとてもいいし、疲れない。

今、スクールアイドル部の部室にはそのままずっと暮らせる様な設備が揃っている。

これら全てはランジュちゃんが僕の為と買ったものだ。

それに更に……

 

「ダメだよ、ちゃんと身体を休める事も大切だ。ただ切り詰めていく事だけでは一流とは言えないよ」

「はい……ごもっともです」

 

ミアちゃんは『はぁ』と大きくため息をついた。彼女は『ちょっと待ってて』と言うとパソコンでキーボードを叩き、何かを作っていた。

こうして僕が書類仕事に追われてると飛んできて色々してくれる。

 

10分ほど経っただろうか、そのくらいにミアちゃんは『出来たよ』と僕にイヤホンの刺さった音楽プレイヤーを差し出した。

 

「これは?」

「安眠のできる音楽。早く作ったから微妙かもしれないけれど」

「成程、この書類達が終わったら聞かせてもらうよ。ありがとう」

「何を言ってるんだい?今に決まってる」

 

半ば押し付けられるように渡された音楽プレーヤーの電源を入れ、イヤホンを耳に装着した。

その音楽は原っぱで寝転びながら、太陽の柔らかい日差しを全身で受けているみたいに暖かく包み込んでくれるような優しさを持った音だった。

 

「とてもいい曲だね、直ぐに寝てしまいそうだよ」

「そう思うなら早く寝てくれよ。ベイビーちゃんの為だけに作ったんだから」

「ミアちゃん、ありがとうね」

「キミの為ならこのくらいするさ」

 

得意げな顔でミアちゃんは言った。

ちなみに起きたら書類は既に無くなっていた。

たまに起こるスクールアイドル部室の七不思議の一つである。

 

###

 

部室には窓側に二つ椅子が置いてあって、そこに座ってコーヒーを飲んだり、仕事をしたり、窓から外を眺める事が好きだった。

大体僕が座っていると片側に栞子ちゃんかミアちゃん、ランジュちゃんが座るので譲ろうとすると大体片側に座っている人に止められる。

 

「今日は私の番なんだから」

 

僕はその席から立とうとすると後ろから絡み付くように僕を抱きしめてから隣にランジュちゃんが座った。

ランジュちゃんの番とはなんだろうか。

 

「そんなにここがいいなら全然譲るよ、僕は何となくここに座っているだけなんだ。」

「それじゃ意味ないの。貴方がいないと。肉の入っていない料理みたいじゃない」

「もういっそあと二個椅子を買えばいいんじゃないかな」

「いいアイデアね!でも貴方の両端に一人ずつ座るとしても一人貴方の座れなくなってしまうわ」

 

うーん。と腕を組みながら暫く悩む動作をしていた。顔を顰めながら考えているのでとても大事な事の様に思えるがただ僕の隣の事を考えているだけである。何をそんなに考える事があるのだろうか。

 

「分かったわ!」

 

伏せていた顔を勢いよく上げて、声を張り上げながら言った。

 

「だれか一人の膝の上に貴方が座れば良いんだわ!」

「正気なの?僕は子供じゃないよ」

「でもそうすれば皆幸せよ?」

「僕の感情抜きでね」

「無問題ラ!」

「一番重要な所なんだけれど」

 

何が悲しくて同世代の女の子の膝に座る事になるのだろうか。とても惹かれるものではあるけれど、それよりも先に恥ずかしい感情の方が勝つ。

 

「そう言えば貴方最近疲れてるって言ってたわよね?」

 

思い出した様にランジュちゃんは言った。

 

「その時は生徒会の処理する書類が多くてね、だから前にミアちゃんからヒーリングミュージックを貰ったんだ」

「マッサージチェアもあったら更に最高じゃないかしら?」

「まさか……」

「貴方の為に最高級のマッサージチェアを買ったわ、明日届くそうよ、他に欲しい物があればなんでも言ってちょうだい。すぐ準備するわ」

「なんでランジュちゃん達は僕にこんなに優しくしてくれるの?」

 

前から疑問だった。

僕にはランジュちゃんみたいなスター性は無いし、ミアちゃんみたいにみんなを感動させる音楽は作れない。栞子ちゃんみたいな美しさや全校生徒を纏めるリーダーシップもない。

言ってしまえば僕のこの中ではかなり異質、足手まといなはず。

 

「なぜ?そんなの当たり前だわ、私達は貴方がいない生活が考えられないだけよ。私達は貴方が中心として回っているの。ランジュを応援してくれるだけで十分貴方は役に立ってるわ。無限のパワーが湧いてくるもの!」

 

そう言って握りこぶしをつくった。

僕も役に立てているのなら良かった。

しかし貰うものが大きすぎて返しきれていないけれど。

 

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