【常闇の魔神】   作:黒闇 紫苑

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本編前のあらすじ及び設定等
始まりの罪


これは、未だ人と人ならざる者の世界が分かたれてはいなかった古の物語

 

絶大なる【魔力】を有する【魔神族】はその対に当たる、同じく古の時代に存在した種族【女神族】と数百年にも渡る聖戦を繰り広げていた。

【女神族】は打倒【魔神族】のために他の種族である【巨人族】【妖精族】【人間族】と結託し、討ち果たそうとした。

しかし、後一歩で【魔神族】を根絶やしに出来るところまで追い詰めた時、そこへ一人の【魔神族】が戦場に降り立った。

【魔神】はその場に集った他の種族を圧倒的な力で叩き潰し、瞬く間に戦況をひっくり返していった。【魔神】が暴れた場所はまるで天災にでも見舞われたかのような惨状であり、【女神族】達は追い詰めていた筈が、逆にその者によって絶滅寸前にまで追い詰められ、撤退を余儀なくされた。

以後、その者は五種族が争う【聖戦】の舞台には現れなかったが、その時代に生きた者には、その光景は脳裏に、魂に、深く苦い記憶として刻まれていった。

 

そして、彼らはその悪夢を決して忘れぬよう、後世にもその者の事を伝えるように語り言い聞かせた。

 

曰く、始まりの【魔神】の片割れ

曰く、聖戦を引き起こした張本人

曰く、世界が産んだ【異常(バグ)

曰く、世界最古にして史上最低最悪のテロリスト

曰く、どんな攻撃も受け付けぬ絶対防御

曰く、【女神族】の救済の光すら拒む闇

曰く、この世で誰も並び立てぬ最強の男など……。

 

彼の【魔神】を象徴する言葉や伝説は数知れず存在している。しかし、そのどれもがろくでもないものや信憑性の薄いものばかりで、今ではその言い伝えを信じる者は数える程しかいない。そのため、世の大人達は村や町に住まう小さな子ども達に、御伽噺や本などを通してその事を語り聞かせている。

しかし、世界の何処かには、自然現象では有り得ない壊れ方をした地形や、一部天候が変わってしまった場所などが存在していて、それは決して【人間】や他の種族が引き起こせるような現象ではないものだった。そのため、世の中には本当に【魔神族】や【女神族】。果てには、彼の【魔神】も存在したのでは?と疑う者もいる。もっとも、古に存在したとされる【女神族】や【魔神族】は兎も角、彼の【魔神】を信じる者は本当にごく一部しか存在しないが……。

 

そして、彼の【魔神】を信じる者達には決まって共通する噂があった。けれどこれもまた信憑性が薄く、一部では大人達が御伽噺をより面白くするために創り出した創作上の人物で、実在した訳では無いとさえ言われている。

だが、それも仕方ないだろう。何故なら、その噂は言い伝えに聞く人物像とは、似ても似つかぬものなのだ。

 

 

曰く、敵対勢力である【女神族】に恋人がいた

曰く、その恋人のために世界を敵に回した

曰く、世界のために己を捧げた者など……。

 

 

まともな者ならば、即効で嘘だと疑われてしまうような、そんな子どもの嘘のような話しだった。

特に、犬猿の仲である【女神族】に恋人がいたなど。彼らの関係を知る者なら到底信じられるものではない。

 

 

しかし、火のない所に煙は立たぬように、噂の出処にはそれの元となったものが存在しているのもまた事実。それが真実かどうかはさておき、世界には【彼の魔神】のモデルとなった人物が存在していたという事だろう……。

 

 

 

そんな噂や話題性に事欠かない彼は、【女神族】ひいては、他の種族や同族である【魔神族】からもある異名で呼ばれていた。

 

 

敵対者である【女神族】からは、自身らの(救い)を拒む忌々しい闇を持つ者という、侮辱と恐怖の象徴として……。

【魔神族】からは、闇に生きる自身らさえも恐れる闇を持つ者という、畏怖と憧れの存在として……。

 

 

──その者、闇を引き連れ、世界を暗黒に染める者

 

──永劫の闇を纏う【常闇の魔神】と……

 

 

 

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