バカとウチと本当の気持ち   作:mos

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part C

「お姉ちゃんずるいです……葉月に分からない話しばっかりです……」

「あ、ごめんね葉月。つい楽しくて」

「む~……」

 

 僕と美波はいつの間にか学校の話題に夢中になっていた。

 美波と話してると楽しいんだよね。

 葉月ちゃんには分からない話しでちょっと悪いけど……。

 

 ん? もう料理がほとんど無いや。

 いつの間にこんなに食べたんだろう? 楽しいと食欲も増すのかな。

 

「そろそろデザート持ってくるわね」

 

 そう言うと美波は台所へ向かった。

 美波も料理が無くなったことに気付いたみたいだ。

 

「あぅ……。パーティーもう終わりですか……?」

 

 葉月ちゃんが寂しそうな顔をして言う。

 きっと葉月ちゃんも賑やかな方が好きなのだろう。

 

「そうだね。でも葉月ちゃんのお料理とってもおいしかったよ。ありがとうね」

「ほんとですか! とっても嬉しいです! バカなお兄ちゃん大好きですっ!」

 

 お礼を言うと葉月ちゃんは飛び上がって喜び、僕に抱きついてきた。

 こう言う時、鳩尾辺りに突っ込んでくるのが葉月ちゃんのいつものパターンだ。

 ただ、今回はちょっと違った。

 葉月ちゃんは僕の首に両腕を回し、頬をすり寄せてきた。

 

「く、くく、くすぐったいよ葉月ちゃん」

 

 頬を寄せる葉月ちゃんのツインテールが僕の首筋をくすぐる。

 僕はむず痒さに堪らなくなって、いつものように引き剥がそうとした。

 でも今回は両腕でがっちりと掴まれていて、簡単には放してくれそうになかった。

 

「んふふ~。葉月はずーっとこうしていたいですっ」

「あ、あは……あはは……」

 

 僕は経験の無い愛情表現に戸惑っていた。

 

 こ、困った……。どうしよう……。

 こんな所を美波に見つかったら────

 

「お待たせ。って……葉月! 何やってるの!」

 

 って! み、見つかった!? ま、まずい……! 葉月ちゃんを剥がさないと!

 

 焦って剥がそうとしたが、首にぶら下がるように抱きついた葉月ちゃんはやっぱり放してくれない。

 でも無理に剥がそうとすれば葉月ちゃんに怪我をさせてしまうかもしれない。

 

 万事休すか……。

 

「えへへ~。バカなお兄ちゃんは葉月のお婿さんだからいいんですっ」

 

 や、やめて葉月ちゃんっ! 美波を煽らないで!

 この状態じゃ受け身も取れないんだから!

 

「もう。それじゃデザート食べられないわよ?」

 

 ……

 

 あ、あれ? それだけ?

 ドロップキックでも飛んでくるかと思ったのに……。

 

 葉月ちゃんがいるから我慢したのかな。ちょっと拍子抜けだな……。

 あぁいや、助かったからこの方がいいんだけどさ。

 

「そうでしたっ」

 

 美波の持っているお皿を見ると、葉月ちゃんはあっさり放してくれた。

 そして席に戻ると、ババロアをおいしそうに食べはじめた。

 

   デザート > 僕

 

 うん。いいんだけどね……。

 

 僕もデザートを貰おうかな……。

 

 ……お? これは美味い。

 

 こういうのって滅多に食べないからな。

 たまにスーパーで売ってるのを見たりするけど、節約してるから買ったりしないし。

 これってこんな味がするんだね。

 ひんやりとよく冷えているし、とっても濃厚だ。

 

 久しぶりの味覚に感動に近い感覚を覚えた僕は、一気に完食してしまった。

 

 ごちそうさま。

 

 それにしても……。

 

 葉月ちゃんがサラダとオムレツを作ったということは、他は全部美波が作ったのかな。

 このババロアもこんなに美味いし、他の料理も美味かった。

 前にお弁当を貰って腕が確かなのは知ってたけど、本当に料理上手だなぁ。

 

「美波ってさ」

「ん? なぁにアキ? あっ……もしかして味変だった!?」

「あぁいや、そうじゃなくって……その……料理上手だなって思ってさ」

「えっ? そ、そう? アキの料理の方がおいしいかなって、ちょっと自信無かったんだけど……」

「ううん。とってもおいしかったよ」

「あ、ありがと……」

 

 僕は素直な感想を言っただけなんだけど、美波は照れているみたいだ。

 ほのかに頬を赤らめて嬉しそうな表情の美波がなんか……可愛い……。

 

「そ、それじゃパーティーはおしまいにしましょ」

「そうだね。でも片付けくらい手伝わせてよ」

「もう、気を遣い過ぎよ。……じゃあ、空いているお皿をキッチンに運んでくれる?」

「お安い御用さ」

 

 僕はようやく手伝わせてもらえた。

 やっぱり全部任せっきりというのはどうも落ち着かないからね。

 

 僕はテーブルから空いている皿を台所へ運んだ。

 

 あぁ……なんかこうして片付けをしていると落ち着く。

 こういうのが体に染みついてるんだろうな。

 

 ……ひと通り運んだけど、洗い物は結構あるな。

 

「下洗いだけ済ませちゃうからアキはリビングで待っててくれる? すぐ終わるわ」

 

 そう言いながら手早く食器を洗う美波。

 

 この様子だと、洗うのを手伝うと言ってもきっと手伝わせてもらえないだろうな。

 よし、じゃあリビングの葉月ちゃんの方を手伝うとしよう。

 

「じゃあ僕は葉月ちゃんを手伝ってくるね」

「え? ア、アキ、いいってば……」

 

 有無は言わせない。よし。手伝うぞ!

 

 リビングに戻ってきた僕は葉月ちゃんに声を掛けた。

 

「葉月ちゃん、僕も手伝うよ」

「ほぇ? バカなお兄ちゃんはお客さまだから手伝っちゃだめです。そこでゆっくりしててくださいですっ」

 

 ここでも手伝わせてもらえなかった。

 姉妹でそっくりだ。

 

 仕方ないので僕は葉月ちゃんの片付けを見守ることにした。

 葉月ちゃんは小さな体を大きく使って、パーティー会場としたリビングを元に戻している。

 

 ……小学生なのにしっかりしてるなぁ。

 

 そんな葉月ちゃんの行動を見守っているうちに、僕はふと時計に目が行った。

 その時計の針はもう九時過ぎを指していた。

 

 美波のお母さん遅いな……。

 一言挨拶しておきたかったけど、あんまり遅くまで居たら悪いか。

 仕方ない。今日のところは美波にお礼を言って帰るとするかな。

 

 僕は台所に向かった。

 

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