バカとウチと本当の気持ち   作:mos

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この話しは一話限りの閑話です。
主観は秀吉で会話メインとなります。



【閑話】
ワシと皆と雨の昼下がり


 ────それはある雨の昼休みのこと────

 

「ここにおったか島田よ」

「木下? なにか用?」

「んむ。姫路のことなのじゃがな」

「? 瑞希がどうかしたの?」

「先程、明久に告白すると言っておったぞ?」

「なっ!? 瑞希ったら抜け駆────コホン。べ、別にいいんじゃない? 瑞希が誰に告白しようがウチには関係無いわよ!」

「関係無くはあるまい。お主とて明久を好いておるのじゃろう?」

「そっ! そんなわけないでしょ! ウチがあんなバカ好きになるわけ無いじゃない!」

「島田よ、素直になるのじゃ」

「いいかげんにしなさいよ木下。これ以上言うならただじゃおかないわよ!」

「お主こそいいかげんにするのじゃ!! いつまで意地を張っておるのじゃ!!」

「なっ……何よ急に大声出したりして……」

 

「よいか島田よ! ワシはお主らを一年半見てきたのじゃ! お主は隠しておるつもりじゃろうが、ワシには分かるのじゃ!」

「アンタにウチのなにが分かるって言うのよ! ウチがどれだけ苦労してるのか知らないくせに!」

「……お主の苦労は分かるぞい。あやつめ、周りの女子の好意には気付かず、男のワシばかり気に掛けよる。お主もワシを苦々(にがにが)しく思うておったのじゃろう?」

「!……木下……アンタ……」

「すまぬな。正直ワシも困っておったのじゃ」

「……そう……。アンタには分かってたのね……」

 

「んむ。ワシはもちろん、雄二とムッツリーニも知っておる。長い付き合いじゃからの。気付かぬはあのバカだけじゃ」

「えっ……? なによ……アイツ以外みんな知ってたっていうの? みんな人が悪いわ……」

「そうではない。このようなことは本人同士で解決することじゃろう? ワシらが口を出すようなことではないのじゃ」

「それは……そうかもしれないけど……」

 

「んむ。じゃがあやつのバカは思っておった以上の筋金入りじゃ。もはや見ておれぬ。島田よ、お主はどうしたいのじゃ?」

「ウチは……。アキが……瑞希がいいって言うのなら……」

 

「島田よ!! お主は諦められるのか!? 一年半のあやつへの想いはその程度のものじゃったのか!!」

「そんなこと言ったって……」

「明久はあの通りバカじゃ。お主がはっきり言わぬ限りあのバカは気付かんじゃろう。もう一度言うぞい! 素直になるのじゃ!」

「……」

 

「むう……。お主が明久を諦めると言うのであればもはやこれ以上は言わぬ。じゃが……もう自分の気持ちに嘘をつくのはやめるのじゃ……」

「自分の……気持ち……」

「そうじゃ。自分に嘘をついて望まぬ結果になれば傷付くのは自分自身なのじゃ」

「……ウチは……ウチは! っ────アキ!」

 

 ダッ……!!

 

「……それで良いのじゃ。明久ならばお主の想い、受け止めてくれるじゃろう……」

 

 

 

「嘘をつかせてすまんな秀吉」

「なに。ワシもあやつらの態度はもどかしくもあったでの。じゃが雄二よ。お主が島田を焚き付けるとは思わなんだぞい?」

「俺もあいつらを去年から見てきてるからな。あいつには明久が必要だ。お前もそう思ったから協力したんじゃないのか?」

「んむ。そうじゃな」

 

 ワシは別の理由もあったのじゃがの……。

 

「しかしまぁなんだ。あのバカがはっきり島田に態度を示さなかったのも悪いんだがな。互いに想い合ってるのは俺達にはバレバレだってのにな」

「そうじゃの。じゃが雄二よ。そう言うお主も霧島と両想いであろう? そろそろ素直になったらどうじゃ?」

「なっ!? バッ、バカやろう!! お、俺は翔子のことなんかなんとも思ってねえ! あいつが勝手に勘違いしてるだけだ!」

「お主とて分かっておろう? 霧島にはお主しかおらぬのじゃ。もう受け入れてやってはどうかの?」

「やっ、やかましい!! 余計なこと言うんじゃねえ! 俺はお前の指図なんか受けねえからな!」

「やれやれ。普段冷静なお主も霧島のこととなると途端に思考が明久レベルに落ちるのう」

「俺があのバカと同じレベルだと!? 冗談じゃねえ! お、俺は至って冷静だ!」

 

「……雄二よ。パンは袋から出して食すものじゃぞ」

「…………お、覚えてろよ!!」

 

 ダッ……!!

 

 ……まるで小悪党の捨て台詞じゃな。

 

 忘れたくともパンを袋ごと食すような滑稽(こっけい)な奴なぞ忘れられぬわい。

 

 

 

「…………商機」

「なんじゃ。ムッツリーニおったのか。ちょうどいい。お主にも聞いておきたいことがあったのじゃ」

「…………答える義務は無い」

「まぁそう申すな。これまでに話し、聞いておったのじゃろう? お主はどうなのじゃ? 興味のある女子くらいおるのではないか?」

「…………女子になど興味は無い」

「相変わらず説得力の無い嘘じゃのう……」

「…………!!(ブンブン)」

 

「じゃがワシはお主に興味を持っておる女子を知っておるぞ? お主も気になっておるのではないかの?」

「…………工藤になど興味は無いッ!」

「ワシは『工藤』とは言っておらぬが?」

「…………!(サッ)」

 

「逃げよったか。やれやれ。世話の焼ける連中じゃのう」

 

 

 

「秀吉、アンタなにやってるの?」

「あ、姉上!?」

「またバカな連中とバカなことやってるんじゃないでしょうね」

「失敬な! ワシは皆の恋愛相談に乗っておったのじゃ!」

「あら。アンタにそんなことができるの?」

「ワシとて恋愛感情くらい持ち合わせておる!」

「へぇ~。じゃあアンタの恋愛感情の対象は誰なのか聞かせてもらおうかしら?」

「うっ……そ、それは秘密じゃ!」

「き・か・せ・て・もらえるかしら~?」

「ひ、秘密なのじゃー!!」

 

 ダッ……!!

 

「あっ! 待ちなさい! 秀吉!」

「待てぬのじゃー!」

 

 

 ワシは男なのじゃ……。

 あやつらはワシと違って手を伸ばせば届くはずなのじゃ……。

 (ゆえ)にあやつらの態度がもどかしくて(たま)らぬのじゃ……。

 

 

 翌日、島田は学校を病欠した。どうやら風邪を引いたようじゃの。

 無理もあるまい。

 聞けばあやつ、あの雨の中を校舎の外まで走り回って明久を探しておったそうじゃ。

 あのバカが補習室に監禁されておったとも知らずにの。

 島田よ。一途にも程があるぞい……。

 

 じゃがワシにはこれ以上のことはしてやれぬ。

 後はお主らで解決するのじゃ。

 あやつらにワシの思いが届いておればよいのじゃがの……。

 




ここから物語は『風邪と看病と本当の気持ち』に続くことになります。

次話は『バカとデートと繋がる気持ち』です。本作の最終章になります。
一番長い章になりますが、お付き合いいただければ幸いです。
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