バカとウチと本当の気持ち   作:mos

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part B

 ゲートを入ると色々な建物が目に入ってきた。

 ジェットコースター、垂直落下型絶叫マシン、観覧車などの乗り物。

 メリーゴーランド、お化け屋敷などのアトラクション。

 お土産の店や、クッキー、クレープを売っている食べ物の店も多数ある。

 

 目移りするなぁ。まずはどこに行こうかな。

 

 って、あれ? 美波がいない?

 

 気付くと、後ろにいたはずの美波はいつの間にか姿を消していた。

 どこへ行ったんだ?

 

「アキっ! あれ乗ろ!」

 

 後ろを探していた僕の後ろ、つまり前から声がした。

 なんだ。もう園内に入っていたのか。

 相当楽しみだったのだろう。美波は嬉しそうにジェットコースターを指差している。

 

 美波の顔に先程の赤さはもう無い。

 回復早いんだな。僕はまだちょっと顔が火照っているというのに。

 

 ────って、いきなり絶叫系なの?

 

「アキ! 早く早く!」

「ちょ、ちょっと待ってよ……」

 

 美波が満面の笑みを浮かべながら僕の手を引っ張る。

 一方、僕はちょっと尻込みしている。

 

 実は僕は絶叫系がちょっと苦手だったりする。

 幼い頃に姉さんに無理やり乗せられて恐い思いをしたのが原因だ。

 このことは姉さん以外、誰も知らない。

 

 でもこのままだとあれに乗ることになってしまう。

 そうなれば僕がこういうのが苦手なことが美波にバレてしまうだろう。

 なんとかして別のアトラクションに行くよう仕向けなくては……。

 

「ね、ねぇ美波、最初はもうちょっとおとなしいのに────」

「ダメ! あれに乗るの楽しみにしてたんだからね!」

 

 最後まで言う前に僕の願いは却下された。

 

 この勢いじゃ何を言っても聞きそうにないな……。

 付き合うしかないのか……。

 

 あぁ、でももしかしたらもう平気になってるかもしれないな。

 ジェットコースターなんてもう何年も乗ってないし、僕だって成長しているはずだ。

 そうさ。きっと平気さ。

 それに美波がこんなに楽しみにしているんだ。断るわけにもいかないさ。

 

 なんてことを考えていたら僕はいつの間にか美波に引きずられていて、そのままジェットコースターの列に並ばされてしまった。

 うん。きっと大丈夫さ……。

 

 

 順番を待っている間、美波はとても嬉しそうな笑顔を見せている。

 それに対して僕は青ざめた顔を見せていた。

 

 うぅ……ダメだ。やっぱり恐い……。

 

 並んでいると、幼い頃に乗った時の恐怖感が甦る。

 僕の顔からは血の気が引き、冷や汗が垂れてきた。

 暑いのか寒いのか、よく分からない状態だ。

 

 できれば乗りたくない。

 そんな僕の気持ちとは裏腹に列は順調に進み、あっという間に順番が来てしまった。

 僕の気持ちが後ろ向きだったから早く感じたのかもしれない。

 

 美波が先に乗り、その隣に僕が座った。

 そして肩に安全装置が下ろされ……。

 

「さぁ行くわよっ!」

 

 美波の顔が一層嬉しそうになる。

 僕の顔は一層青ざめていった。

 

「発車します。ご注意ください」

 

 アナウンスが流れ、ジェットコースターはゆっくりと動き出した。

 

 

 

 ────── しばらくおまちください ──────

 

 

 

 ジェットコースターは乗車駅へ戻ってきた。

 

 ぐお……ぉ……目が……回る……。

 

「面白かったねアキ! って……あれ?」

 

 美波はとても喜んでいた。本当にこういうのが好きなのだろう。

 走っている最中は全然気付いてくれなかったけど、やっと隣で目を回している僕に気付いてくれたみたいだ。

 うん。美波が楽しめたのなら僕は満足だよ……。

 

 ジェットコースターを降りた僕たちは近くのベンチに座った。

 僕はまだ目が回っていてフラついている。

 

「もう。苦手ならそう言ってくれればいいのに」

「問答無用で連れて行ったのは美波じゃないかぁ……」

「そ、そうだったかしら? えへへ……でもアキの苦手なものが分かったからいい収穫だったわ」

「僕の脅迫に使うつもり!?」

「さぁどうかしら? アンタの態度次第よ」

 

 くっ……思わぬ所で弱みを握られてしまった……。

 まぁ治ってるかもなんて思った僕も悪かったんだけどさ。

 でも僕だって美波の弱点を知っている。お化けが恐いという弱点をね。

 もし脅迫されても反撃は可能なはずだ。

 

「じゃ、態度で示してもらうわよ?」

「え? どうすれば……?」

「次はあれに乗るわよ」

 

 美波の指差す先には────垂直落下型絶叫マシン?

 

「鬼っ! 鬼がここにいるっ!」

「そんな態度取っちゃっていいの? 皆に言い触らしちゃってもいいのよ?」

「ぐっ……そ、それならあれの次は僕のリクエストに応えてよ!」

「嫌よ」

 

 あっさり拒否された。

 

「どうせお化け屋敷に入ろうって言うつもりでしょ? その手には乗らないわよ」

「何故分かったんだ!」

「アキの考えてることなんて想像付くわ。さ、行くわよ」

「えっ!? ちょ、ちょっと待っ────お、鬼ーっ! 悪魔ーっ! いだだだだ! 待って待って! 関節はそっちに曲がらないからあぁぁ!」

 

 僕は美波に肘関節を極められて強引に歩かされた。

 

 

「い゛ぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」

 

 

 

 ────── しばらくおまちください ──────

 

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