やばい。やばい。やばいやばいやばいやばい! あまりの事で思わずしゃがみこんで泣きじゃくる。
「おい、泣くなよ」
「ほっとけ」
お姉ちゃんが頭を撫でてくれるけど、叔父様はどうでもいいといった感じで漫画を読みだした。
「何をしているの?」
理子お姉さんが叔父様を膝の上に乗せてモフモフされていく。叔父様は抵抗しようとするけれど、理子お姉さんに手を出させないよう命令してあるし問題ない。まあ、叔父様がその気なら抵抗なんて容易いけど。
「理子姉さん……真依が私と模擬戦をしたら泣き出してな」
「ん?」
「姉に瞬殺されて泣いてるだけだ。気にする必要もねえ。ひたすら拡張ばっかしてる奴と俺と死にかけるまで訓練してる奴とじゃ力の差が開いて当然だ」
そう、お姉ちゃんに何もさせてもらえずにボコられた。いや、デリンジャーは撃ったよ? 普通に避けられたし、模造刀でデリンジャーを斬り落とされて首に模造刀を突き付けられた。お姉ちゃんの動きが見えないとかまずくない? 援護もくそもできないんだけど。
「お茶をどうぞ」
「ありがとう、美里さん」
我が家の家事はメイドの美里さんがやってくれることになった。なので基本的に私は拡張と開発、量産に力を入れられる。それはそれとして、呪力を増やすためと素材確保のために呪霊狩りをしようとしたんだけど、お姉ちゃんからストップがかかった。
弱い私が現地に赴くなんてとんでもない! との事で、売り言葉に買い言葉で模擬戦闘になった。そこでボコボコにされたのですよ。
「覚えていろよ~!」
「お茶は……」
「もらう!」
お茶を一気飲みしてから工房に逃げる。
お姉ちゃんの動きに反応できなくて、ちょっと本当に身体能力を上げないと普通にやばい。これ、呪霊や呪詛師が相手だと普通に殺されていた。特級とか呪詛師に限らず、術式って初見殺しや即死するような物が多いしね。
「優先順位を変更しよう」
これまでは鍛冶と呪具を作る技術を習い、人形にされた人を助けるために呪骸の研究をしていた。今までは最強の護衛が居たから安全に呪霊狩りで呪力集めができたけれど、悟パパは時間が取れなくなったので私自身の戦力強化が必要になってきた。
叔父様も居るとはいえ、戦う力はかなり減っている。呪具も特級から二級ぐらいしかない。とっておきのも一級なので特級相手はしんどい。
なので、他の犠牲者の人には可哀想だけど一応は人として活動できるのでこれぐらいで許してもらおう。メンテナンスぐらいはちゃんとする。
目標は天与呪縛を持つフィジカルギフテッドと近接戦で勝てないまでも戦えるようにすること。その為に使うべき素材はアレだ。
「古来より鬼は力の象徴とされてきた」
鬼は悪魔を祓うと言われ、すべての災禍を祓う力があるとも伝えられている。そう、日本の鬼は悪や善、神まで多様な現れ方をしている。特定のイメージで語ることは困難であり、単純に悪者とはできない。ただ、「怖ろし気」「力強く」「超人的」のイメージは多くの鬼に共通している。
「構築」
大江山で私の体を喰らい、かの呪霊が持つ呪力をろ過して私の手足へと再構築した。その時に分解した鬼の角を掌の上に構築した。もっとも、私の呪力で作られただけで偽物であり、その力は格段に弱い。そもそもが神便鬼毒の酒によって弱まっている。
「術式反転」
鬼の角から神便鬼毒の成分を撤去する。すると感じられる呪力が増加した。あの呪霊である酒呑童子は神便鬼毒を摂取することで耐性を得ようとしていたけれど、そんな物は私には必要はない。そもそも人々の酒呑童子への思いが呪力となって与えており、復活した可能性が高い。そうなると神便鬼毒を克服など不可能だ。マイナスとプラスを掛け合わせるなど……できるかもしれない。悟パパがメドローアよろしくやっちゃってるしね。
「まあ、どうでもいいか」
神便鬼毒を抽出した鬼の角を撤去し、再構築する。一度撤去することで今度は神便鬼毒が無い状況を……待てよ。このまま行けばやばいんじゃない?
酒呑童子の力をただの人が扱えるとか、無理。主人公の虎杖君みたいな特殊な生まれもしていない私だ。禪院家の血を引いているとはいえ……うん、無理。酒呑童子に体が乗っ取られるのがオチだ。行きつく先は秘匿死刑か封印。または呪霊に乗っ取られる。
「そう考えると……いいな」
思わずニヤリと笑ってしまう。黒苺の飴を噛み砕き、なんとも言えない糞不味い味を食べながら、神便鬼毒を撤去した純粋な鬼の角と神便鬼毒を作成する。
二つを混ぜ合わせるから駄目なんだ。なら、二つは別々に作って運用する。そのために先に蒸留器を作ろう。あれの作り方って確か……ネットで調べるか。
「お~い、真依~」
お姉さんが呼んできたので、
「どうしたの?」
「ここ、携帯の電波が不安定なんだって。どうにか出来ないかって美里さんと理子お姉さん達が……」
どうせゲームとかネットに繋げたいんだろう。いや、電話も引いてない。ここは山の中で地下でもあるわけだし……ん? トンネル作ったから別にインターネットや電話ぐらいならどうにか出来るかも。
「わかった。ちょっと待ってて」
「うん」
とりあえず、悟パパにメールして山から出来るだけ近い麓の村に家を買ってもらう。買う人は悟パパではなく、悟パパを経由してお金を渡す被害者家族の人だ。
人形にされた子を助けた人の数家族に近場の家を二つ、三つ買ってもらってその地下から私達が出入りできるようにする。そこから電話回線とインターネット回線をケーブルで直通させればどうにかなる。延長コード使いまくりだけどね。
もちろん、かかる費用は全部こっちで持つし、メンテナンスもしやすいので喜んでくれるだろう。そういう風に頼んでみた。
五条家ではなく、夜蛾先生の方から政府に働きかけてやってくれるようにするって、すぐにメールで返信がきた。ついでだから、色々と発注しておこう。パソコンとか欲しいし。
三ヶ月。隠し通路を通して電話線とインターネット回線を直通した。これにより、理子お姉さんや美里さん達は普通に外出するのも楽になった。もちろん、私もだ。三つある家から出入りできるし、荷物もそこに住んでる人達が受け取ってくれる。お姉ちゃんが山へ行くよりも怪しまれないのもいい。
それと
「~♪」
発注して届いた物を分解して構造を理解し、呪力を込めに込めて作った鉄でパーツを一つずつ作った組み立てた蒸留器。
そこに大量の神便鬼毒酒を蒸留し、濃度を上げにあげた。続いて蒸留酒を液体金属である水銀と大釜で混ぜ合わせる。ミシャグジさまの杖でグルグルかき混ぜていく。
水銀は古来より占星術や錬金術の分野で最初用いられた。これは、天球上をせわしなく移動する水星を流動する水銀に結びつけたものとされている。また、液体で金属であるという流動性が、神々の使者として天地を自由に駆け巡ったヘルメスの性格と関連づけられたためともいわれる。
「投入~」
続いて粉々に砕いた金属の粉末を入れてかき混ぜ、呪力を注ぎながら新たな形をしたアマルガム合金へと構築していく。形は手枷と足枷。手枷には鎖もつけておく。鬼の力を弱め、封印する拘束具が完成した。
「続きまして……」
掃除した後は沢山構築しておいた鬼の角を熱して、金床に乗せて槌で叩いて平に変える。そいつは冷水で冷やしておいて、次の鬼の角も同じようにする。それを繰り返し、繰り返してある程度を作ったら、今度は熱してから重ね合わせて打ち付けていく。
「よし、呪力が増えた」
鬼の力が籠った呪力を神便鬼毒を使った拘束具に触れさせると、呪力がかなり弱まった。
「えっと、確か……人体の60%、炭素原子が50%。 酸素原子が20%、水素原子が10%、窒素原子が8.5%、カルシウム原子が4%、リン原子が2.5%、カリウム原子が1%だったかな? 鋼の錬金術師だったら、水35リットル、炭素20kg、アンモニア4リットル、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他少量の15の元素、細胞66%、細胞外液24%、細胞外固形物10%。そして人体の情報である血液だったね。どーん」
診察台の上に寝ている一糸まとわぬ女の子。もちろん、動かない。魂がそもそも存在していない。人体構造は人形にされた人達を分解した時と、私自身の体を撤去したり構築したりしているので問題ない。そう、診察台の上に寝ているのは呪力によって構築された私のクローンだ。
「細部まではわからないし、内視鏡で見るか」
服を脱いで自分の体内をしっかりと撮影して、それを基にして構築するものはしていく。女の子の大事なところとかも見て、しっかりと作り上げた。
八日使って八体の私を作り上げた。それとFateのジャック・ザ・リッパーが持つナイフをイメージして鍛錬して構築した物も用意した。
それらを使って私を解剖してより詳しく私という私を理解する。呪力で無理矢理作り上げた部分をこれにより、更に呪力が少なく構築できるようになる。出てくる血液は私の物なので出来る限り保存して輸血パックにしておく。
解剖というか、解体することによってどんどん呪力がナイフに宿るけれど、女性特攻を持つ解体聖母ができるかもしれないのでよしとする。無駄なく余すところなく使えるし、いい。
ちなみに解体したのは肉はミキサーで粉々にしてから大鍋に骨とかと一緒に入れて砕いた鬼の角と混ぜ合わせて煮込んだ。それを使って肉体を再構築することで呪力コスト削減と廃棄物が出ないようにする。
「流石にこんなの他人にはできないよねー気持ちわる」
吐きそうにはなるけれど、死ぬよりマシだ。そもそも私が私を作って殺しているだけだ。問題ない。お姉ちゃん達にバレなきゃ平気平気。周りに停滞している残穢や呪力の濃度がやばいけど、ミシャグジさまや黒苺の飴にして利用しているから
「さてさてさーて」
血塗れ診察台の上に寝ている私に拘束具を取り付ける。神便鬼毒の奴で、しっかりと地面に取り付け、ついでに爆弾も仕掛けておく。もちろん、高濃度に蒸留した神便鬼毒を注入した注射器も複数用意してある。針が通らなかったらやばいので、体に直接カテーテルを突っ込んである。
「行くぞー!」
許可した鬼の角を頭部に突き刺します。構築して一体化させます。結果は……肉体が拒絶反応を起こして爆発した。鬼の力に耐えられなかったようなので、集めて何時もの工程を繰り返して体を強化する。
「骨から強化するか」
鬼の角と同成分の骨を作り、骨格にしていく。今度は爆発しなかった。でも、暴れたので神便鬼毒を注入して大人しくさせる。鬼の呪力が強すぎる。丁度いい割合を探そう。
一年かかった。私は私を数百単位で殺し、ついに作り上げた。おそらく特級呪具であろう酒呑童子のカチューシャと鬼の力を封印するための神便鬼毒の拘束具。
カチューシャは鬼の呪力を身に纏い、外見を一部以外は変化させずに内面を呪力によって変質させる。
瞳が真紅へと変化し、頭の左右から身長と不釣り合いに長くねじれた角が二本生える。運動能力や耐久力、再生能力など身体能力がかなり強化される。この再生能力は装着した状態に構築術式を自動で発動して元に戻すからだ。
拘束具がないと戻れなくなるのでセットで運用しないと鬼化待ったなし。後、多分に素材として私が使われているし、私の体も改造してあるので私以外は使えない。双子であるお姉ちゃんは多分、天与呪縛で肉体が強化されているから使える。もっとデータを取って安全性を高めた物をお姉ちゃんに何れ送ろう。
ちなみにこれらの副作用というか、なんというか……鬼の呪力が強くなるために残穢も私の物から変質するのでネームレスとして活動するにはこちらの恰好をメインに使おう。世界樹の迷宮のカースメイカーみたいな装備にすれば身バレも防げるだろう。
「よし、お姉ちゃんにリベンジだー!」
裏
「ど、どうしたのかな……?」
「御用改めだ」
「こ、ここには何もないよ……?」
「なんかやばい呪力が流れてきてたんだよね」
「それはこの特級呪具クラスのを作ってたからで……」
「そうだね。確かに特級クラスかも。おめでとう」
「ありがとう」
「そいつはどうでもいいんだ、真依」
「え?」
「それよりも私が気になるのは漂ってくる濃密な真依の血の臭いだ」
やばいやばいやばいやばい!
「悟さん、どうだ?」
「うん。僕でもちょっと引くレベルの事をやってたわ」
いつの間にか悟パパが私の背後、裏
「見てよ、この複数のナイフ。何十人じゃきかないぐらいの血を吸ってるよ。他にも血塗れの実験室みたいな作業場や肉片も落ちてる。パソコンにあった録画データもやばいね」
「バカなロックが……」
「総当たりで解除したよ」
「プライバシーの侵害だ!」
「ちなみに嘘だよ」
「ま~い~?」
「ひぃっ!?」
墓穴を掘って全部白状させられた。正座させられて説教を数日されてしまった。自分の身体を使った人体実験も禁止された。これクリーンで安全な方法だというのに……治験や人形にされた人を治すのに必要な事なのに……
「却下だ馬鹿野郎」
「とりあえず、もうお前は一人で
「そんなっ!?」
お姉ちゃんに無茶苦茶叱られて心配され、泣かれたので致し方なく人体実験は封印する。監視は理子お姉さん達だから、まあ大丈夫だと思う。
それと一番心にぐさりと来たのはお姉ちゃんに双子である真依を殺すことは私を殺すことでもあると言われた言葉だ。うん、もう自分ではしません。封印は封印でも永久封印だ。ただ呪術回路とかは作りたいから、そっちは呪骸でやろう。
本当にクレイジー。呪術師の中でも極まってる方。どちらかというと片月の根源を目指す魔術師っぽい。
真依のステータス
肉体:E
呪力:B
技術:B(戦闘C制作A)
術式:C~A
鬼のカ:肉体をAからEXへ。封印されないと戻れなくなる。
神便鬼毒の拘束具:鬼の力を封印して元に戻す。
五条先生は制作以外EX。適当な感じですが、五条先生には絶対に勝てません。