真依廻戦   作:ヴィヴィオ

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マキマキ

 妹が入院して一ヶ月が経ち、退院することになった。そのため、私は病室で準備を整えている。

 

「必要ないよ」

「は? 何を言って──」

 

 真依が必要ないと言ってきた事に言い返すため、振り返る。するとそこには腕が腫れたと思ったら、次は身体中の穴という穴から血液を吹き出し、ベッドの上で起こしていた体を倒す双子の真依の姿があった。

 

「真依ィィィィィィィッ!?」

 

 慌ててベッドに駆け寄って血が噴き出るのを止めながら、悲鳴のような叫び声を上げて人を呼ぶ。両親は来ていないから自分で助けを呼ぶ。

 ドクターやナースの人達が急いでやってきて、真依の治療を開始する。その後、なんとか真依の治療は成功した。

 だけど、真依はそれからも回復する度に何度も何度も、何度も何度も何度も何度も体中の穴から血液を噴出させて、ボロボロになっていく。

 この事から、私はお父さんやお母さんに相談した。二人は当主である叔父さんにお願いして許可をもらってきた。

 叔父さん達は一応、禪院家自体が狙われているのかもしれないと考え、呪術師を派遣してくれた。そこで妹の真依を診てもらった。その場では結果を教えてもらえず、家に戻って両親や叔父さんが居るところで報告された。

 

「残穢が残っていました。間違いなく、呪術によるものです」

「ほう……つまり、これは何処かの呪詛師が俺達に喧嘩を売ってきたってことか?」

 

 上座で酒を飲みながら叔父さんが聞いてくる。

 

「そうならば許し難いな」

「早急に対策をしないといけませんが……」

「いえ、違います」

「どういうことだ?」

「残穢は禪院真依の物でした」

「「「は?」」」

「なんだ……ただ、呪術を使って失敗してあんなことになってるだけか? 攻撃でもなんでもなく?」

「はい。それ以外に残穢も呪霊も確認できませんでした」

「真依の術式は……アレだったな。そこに何かがあったか?」

「いえ、何もありませんでした。ですので、失敗したのだと結論づけました」

「そうか。ならどうでもいい。死なれたら困るから治療だけは続けるよう言っておけ」

「かしこまりました」

 

 えっと、どういうことだ? 真依は自分から傷ついているってことで……アレ? え? え? 

 

 

 混乱してから数日。真依は起きては血塗れになって治療され、輸血を繰り返しているらしい。何度も何度も……次第に真依が入院している部屋は血の臭いが漂うになり、天井には夥しい数の飛び散った血が見える。そんなところに来る人はだんだんと減っていく上に噂が噂を呼び、呪霊が集まってくる。

 真依は私の言う事なんて聞かずに止めることはない。だから、私は泊まり込むことにして、無理矢理止める。それでも押さえつけたとしても呪術を行使されて止められない。

 数ヶ月も経てば病院も次第にこれ以上受け入れ続けることができないと言われ、家で療養することになるのだが……そう簡単には移せない。

 だから、お父様と当主様であり、叔父に泣きついた。流石にどちらも病院からの通達には放っておけとは言えなくなってきたようで、呪力を封じる呪具を貸してくれた。それを持って真依の所に行くと、真依は嫌そうな顔をしながらもようやく止めてくれた。

 

「これ以上するなら、これを付けて呪力を封印するぞ!」

「両腕くらいは変えられたし……まあ、いいか。その呪具はどんなの?」

「聞いた話では呪力の操作を阻害する奴ってことだ」

 

 今度こそ、退院の準備を進めながら、真依と話していく。真依はそれをつける。すると、呪具は真依の腕をきつく締め付けていく。

 

「だ、大丈夫か!?」

「ああ、これはアレか。うん、大丈夫」

 

 輪の呪具はすぐに広くなって真依が引き抜き……何を思ったのか首に取り付けやがった! 

 

「うふふ、これで呪力操作に失敗すれば首が締まる。成功しなければ死ぬ」

「ナニヤッテンダコノヤロウ!」

「野郎じゃない」

 

 ぎちぎちと首が閉まったり、馬鹿みたいに大きくなったりしていく呪具を使っていく。もう押し倒して無理矢理取り押さえ、奪い取る。

 

「酷い、お姉ちゃん……返して。私のだよ?」

「違うからな。というか、せめて腕とかにしろ」

「死ぬか生きるかのところじゃないと、もっと高い呪力コントロールが身に着けられないのに……」

 

 残念そうに言う真依は……瞳が虚ろだ。何処か狂ってやがる。やっぱりコイツも禪院家の娘だ。間違いない。

 

「あ、お姉ちゃん」

「なんだ?」

「パフェ食べたい。病院の料理って味気なくて……」

「当たり前だ馬鹿野郎! 私も何度か見かけてる間に食べてみたいし、行くぞ!」

「お姉ちゃん大好き♡」

「ふん。ほら、行くぞ」

 

 真依に手を差し出して、荷物を持ちながら一緒に向かう。退院手続きは終わってるし、後は帰るだけ。だから、真依の言う通りにパフェを食べに行けばいい。お金は貰っていないが、退院祝いの為に貰った電車賃を走ることで節約して貯めておいたから大丈夫だ。

 

「ここでいいか?」

「ファミレス?」

「ああ、そうだ。ほら、入るぞ」

「うん」

 

 二人でファミレスに入り、席に座ってメニューを見てみる。どれも高い。だが、見たこともない美味しそうな物が多い。

 

「どれがいい?」

「お姉ちゃんが決めていい」

「いや、これは真依の退院祝いだからな」

「いやいや、お姉ちゃんが決めて……」

「だから真依が……」

「マキマキが……」

「誰がマキマキだ。そもそも食べた事がないから味がわからん」

「それもそうか」

 

 生まれてこの方、食べた事もない。そもそも真依が入院しないと外に出ることもなかっただろう。

 

「なら、この一番大きくて高いのを二人でわける?」

「それでいいか。これならいっぱい入ってるしな。値段は……ギリギリいけるか」

「じゃあ、それで」

「ああ。ところで、どうやって注文するんだ?」

「このボタンを連打して店員を呼んでやるのよ」

「わかった。これだな……」

「ちなみに連打は嘘よ。一回でいいから」

「おい」

「お姉ちゃんの力で押したら壊れるかも?」

「お前な……まあ、いいや」

「普通に優しく押したら大丈夫だと思うけど」

「壊れるかもしれないから、お前が押せ」

「わかった」

 

 真依は押すと鐘の音が聞こえ、少しすると店員がやってくる。それを慣れたように真依が注文していくのを見詰めていく。

 

「来た事があるのか?」

「生まれてからほぼ一緒に居るのにあるわけない」

「確かにそうだよな……」

 

 考える限り、入院している時ぐらいしか離れていない。それ以外は互いに修業している時ぐらいか。だが、それでも家から出ているはずはないし、気のせいか。

 

「ところで注文しておいてなんだけど、お金は大丈夫? ちゃんと金額とかわかってる?」

「馬鹿にすんな! それぐらい楽勝だ! でも、ちょっと怖いから確認してくれ」

 

 食い逃げとかになるのは怖いから、真依にも財布を渡して確認してもらう。

 

「ふ~ん、これがお金ね」

「そうだが……見たことないよな?」

「ないわね。ただ、これぐらいなら……お姉ちゃん、手品を見せてあげる」

「は?」

 

 真依は五百円を掌の上に乗せて見せてくる。それから握り、手を開くと何故か五百円玉が二枚になっていた。

 

「え?」

「まだまだこれから。えい♪」

 

 今度は二枚を両手に握り、また開く。すると四枚になっていた。命を賭けた縛りと高レベルの呪力操作のお陰で使いやすくはなっている。

 

「お前、それ……」

「手品よ。種も仕掛けもある、ね」

「よし、これでもう一個頼めるな」

「いや、犯罪だからね?」

「知ってる。さっきのお返しだ」

「ちっ」

 

 本物の五百円玉を財布に残し、残りはポケットに直した。消せないみたいだ。まあ、どうでもいいな。

 

「そもそもそれ、呪力が籠ってるだろ。使ったら駄目な奴じゃん」

「……あ、本当だ。これ呪具じゃん。こほん……お姉ちゃんは何を使ってるの?」

「ん?」

「武器だよ、武器」

「今は身体を鍛えてるだけだな。なんかお勧めとかある?」

「槍かな。槍だな。槍がいいな」

「なんで槍?」

「斬れるし、殴れるし、距離を持って攻撃できるから。それに外れるようにして鎖で繋げれば双節棍にも使えるから、便利」

「なるほどな……なら、それを試してみるか」

「後は合気道でも覚えたらいいんじゃない?」

「真依はどうするつもりだ?」

「私は呪力と術式の強化かな」

「もう怪我するような事はすんなよ」

「とりあえずは今使えるようになった呪力のコントロールを練習するよ。色々としたい事もあるし」

 

 コイツ……またやるつもりだな。全然反省してやがらねぇな。まあ、私がさせなければいいか。

 

「お待たせしました」

「ありがとう♪」

 

 滅茶苦茶でかいパフェが来たので、二人で食べていく。生クリームとかいう未知なる物の甘さが口の中に広がり、幸せが感じられる。

 

「ほら、真依も食えよ」

「うん。美味し♪」

 

 真依の奴は遠慮しているのか、自分からあんまり食べないからスプーンで掬って無理矢理食べさせる。真依は対抗したのか、こちらに食べさせてきた。こんな風に食べていくと、すぐになくなった。

 

「また今度食べたいな」

「そう。なら、今度作ってあげる。生クリームとバナナ、苺、メロン……」

 

 つらつらと材料の名前を上げていく真依になんだか嫌な感じがしたが、気にしないことにした。

 

「料理をするつもりか?」

「それも楽しそうだから。何せ錬金術って台所から始まったらしいし」

「錬金術?」

「なんでもないわ。それよりも帰りに図書館へ行きたいの。いい?」

「あ? 図書館か……」

「出来れば私立で貸し出しできるところがいいかな」

「それなら……聞いてくるか」

「お願い♪」

 

 真依にお願いされた図書館へと連れて行き、そこで貸し出しカードを作って何冊かの本を借りて家に帰った。私と真依、二人の分なので十冊になる。

 

「こんな鍛冶について書かれてるのなんて何に使うんだよ?」

「必要な物かはわからないけれど、使えそうだからね。まあ、期待せずに待っていて」

「そうか。わかった。期待せずに待っててやるよ」

 

 荷物を持ちながら長い長い階段を登って鳥居を潜る。ようやく実家についた。すると雑用係の人が呼びに来ていた。

 

「ご当主様がお待ちです。真依、きなさい」

「わかりました。お姉ちゃん、荷物をお願い」

「わかった。じゃあ、またな」

「うん」

 

 荷物を私と真依の部屋に仕舞っておく。本は適当に積み上げておけばいいだろう。掃除は綺麗にしてあるし、後は疲れているだろうから、寝床の準備くらいしておいてやるか。

 

 

 

 

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