真依廻戦   作:ヴィヴィオ

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第3話

 家に帰ったら、いきなり呼び出しを受けたのでご当主である叔父さんの部屋まで戻ってきた。すると、そこには叔父さん以外にこの世界での父親と母親、当主候補である従妹など他にも多数の人が居る。

 もっとも、育児放棄されているのでそこまで大事とも思えない。私の家族と言えるのは半身である真希お姉ちゃんだけだ。見舞いにもこないしね。どうでもいい。

 

「戻ったか」

「はい」

 

 父親達を無視して、ご当主様、禪院直毘人の前に座り、返事をする。ご当主様は普通にお酒を飲んでいる。

 

「それで何の御用でしょうか?」

「治療費や清掃代が馬鹿にならんから、やめろという話だ。儂としてはどうでもいいがな」

「なるほど。しばらくは止めておきます」

「ならばいい」

「ご当主様。退院祝いとしてお願いがあります」

「なんだ? 聞くだけ聞いてやろう」

 

 他の人達が睨みつけてくるけれど知ったことじゃない。

 

「お金が欲しいです」

「金か。なら、呪霊を祓え。仕事の斡旋ぐらいはしてやる」

「じゃあ、武器をください。ドラグノフかヘカートⅡがいいです」

「またとんでもない物を頼んできたな。確か、スナイパーライフルとアンチマテリアルライフルだったか」

「です。政府に伝手があれば手に入れられると思います。無理でも設計図さえ頂ければ作ります」

「伝手は禪院家の物で用意してやるが、稼いで自分で買え。武器は……家にあるのを貸してやる。依頼は何かあったか?」

「ある。来月に呪霊の定期的な掃除依頼があった。他の術師と共に連れていけば死ぬことはないだろう」

「だ、そうだ。少し早いが、行ってこい。せいぜい死なないように準備を整えておけ」

 

 恵パパの時と違い、少し優しい。私達が女だからかもしれない。後遺症が出て子供を産めなくなるのは困るのだろう。

 別の術師が同行するのは理解できる。私と真依なんて二級の呪霊でも出たら殺されるだろうし。やはり武器とかは自前で用意して準備を整えるしかないか。

 

「使う呪具は自分で作って使ったりするのは問題ないですか?」

「ああ、できるのなら構わん。材料は家の森にある奴なら好きに使え」

「わかりました。それと最後に……敷地内にあるのなら何を使っても構いませんか?」

「使われていない物ならな」

「では、森や山の中に小屋を立ててもいいですか?」

「却下だ。まずそれなりの成果をあげろ」

「わかりました」

「かかった治療費とかは後ほど稼いで返せ」

「はい」

 

 話は終わりらしいので、そのまま部屋を出ていく。しかし、借金が出来てしまった。まあ、呪具を売っていけばなんとかなるだろう。最悪……というか、普通にダイヤモンドでも生成して売ってみるか。呪具のダイヤモンドとか、呪われたダイヤ待ったなしだろうけどね。

 

 

 


 

 

 

 部屋に戻ると、お姉ちゃんがお布団を敷いて待ってくれていた。

 

「お帰り」

「ただいま」

「食事の前に風呂へ行って、それから夜まで適当に過ごして寝るぞ」

「うん。後、お姉ちゃん」

「なんだ?」

「明日から山と森の探検してみない?」

「どうしたんだ? 呪霊が出るから嫌がってただろ」

「いいの。呪霊の群れを払いに行くのに私も連れていかれることになったから」

「そうか。それなら色々と準備しないといけないな。それで山と森で訓練か」

「うん。食事は山と森で採る。もしくは普通に食べに戻る」

「まあ、やるだけやったらいいんじゃないか?」

「うん。付き合ってくれる?」

「当たり前だろ。私は真依のお姉ちゃんだぞ」

「ありがとう♪」

 

 一緒にお風呂に入り、洗ってもらう。ほとんど眼を瞑ったままなので、お姉ちゃんにされるがままだ。

 風呂が終われば真希お姉ちゃんと一緒に部屋で借りてきた読書だ。お姉ちゃんは禪院家の書物を読んで、私は鍛冶に関しての読書ではなく、鉄に関しての物を読む。

 製鉄に関してだ。玉鋼を構築するために製鉄方法についても調べる。こうすることで少しでも呪力消費を抑え、質を向上させる。

 もちろん、呪力操作をしながらだ。呪具は首につけたら怒られるので、腕につけている。お姉ちゃんの方は私が大きくした呪具のボールに乗ってバランス感覚を鍛えながら読書をしている。化物かな? 

 

「森の中からは呪霊が居るけど、武器はどうすんだよ?」

「武器を作るから、それで倒して」

「私、見えないんだけど……」

「眼鏡から作るか」

「作れんの?」

「もう調べてあるから大丈夫」

 

 禪院家の書物から補助監督とかに与えられる呪具の作り方は知っている。ならばあとは私の構築術式で作ればいい。

 

「どうせなら拘ってみようかな?」

「嫌な予感がするんだが……」

「気のせいよ」

 

 本を持ちながら外に出て風呂場に移動して服を脱ぐ。すっ裸になった後、呪力を生み出す。それと隠し持っていた最初に使った残りの鎮痛剤をキメてからやる。

 

「構成材質をガラスとポリカーボネートとポリビニルブチラール、ポリウレタン、ナノカーボンに定義。構成構造をラミネート構造に設定。構成材質を呪力による補強。完成理念を定義、鍛造技法を設置──全行程完了。構築術式発動」

 

 呪霊が見えるようにする。目を守る。ついでに視力も強化して暗視機能もつける。さあ、どうなる? 

 

「かはっ!?」

「やっぱりじゃねえか馬鹿真依!」

 

 吐血したけれど大丈夫。命を賭けた縛りと鍛えた呪力操作でちゃんと出来た。ナノカーボンフレームの強化ガラス眼鏡(子供用)が! 

 

「はい、お姉ちゃん……プレゼント」

「ありがとう……と、言いたいがな……血塗れの眼鏡を渡されても困るんだが……」

「てへ♪」

 

 シャワーを浴びて体と眼鏡を綺麗にしてから外に出る。周りの視線がヤバイ。なんだ、ロリコン共か? これはさっさと部屋で寝よう。身の危険を感じる。というか、視界がぼやけてるし、やばい。反転術式を使って治療をしておこう。

 

「寝てろ」

「……ん……わかった……」

 

 


 

 

 気が付けば朝。お姉ちゃんに抱き枕にされていた。そんな状態で呪力を体に流して澱みなどを排除し、スムーズに呪力はいきわたるようにする。

 セルフチェックをして問題ないのを確認。問題ないようなので今日は普通に武器を作る。槍は流石にまだ危ないので普通に棒にしておく。

 今日は朝から子供用の八角棒を作っておく。材質はナノカーボン……なんてしたら多分、死ぬので普通に木を使う。それも家にある後生大事に育てられている木の枝を使う。そいつを素材にして構築術式を使ってみようと思う。

 まあ、バレたら怒られるし、折った部分の枝は反転術式で回復させておく。それから森へと移動して地面に枝を刺してから大地から栄養を吸い取る感じで構築術式を使う。

 イメージとしては圧縮されて水分が抜かれた感じで行う。呪力がゴッソリと減って腕にバッサリと傷が出来た。今回も薬をキメているので痛みはない。針と糸を構築術式で生み出して縫い合わせてから、反転術式を使っておく。その上からガーゼを付けて包帯を巻けばこれでよし。

 

「できた」

 

 綺麗な成形された血塗れ八角棒四尺(121㎝)が出来ました。パチパチ。それなりに呪力を持っているのがわかるので呪霊をぶっ殺すのにも使えるでしょう。やったね! 

 

「ま~~い~~」

「あ、お姉ちゃん! いいタイミングだね。はい、これ武器ね」

「ああ、ありがとう……じゃない! またやったな!」

「必要だから。今日はもうしないし、後はお姉ちゃんにお任せだから。頑張ってね、お姉ちゃん!」

「くっ……いいか、絶対に大人しくしていろよ。というか、家に居ろ! 私が慣れたら、連れていってやるから!」

「あ、じゃあ、地図を用意して候補の探索をお願い。近場に水辺があって、木がある場所。それなりに本家から離れていて、周りに色々と作っても大丈夫なようなところがいいな」

「……めんどくせぇが、まあいいだろう。飯食ったら行ってくる」

「よろしくねお姉ちゃん!」

「任せろ」

 

 食事をしてから、お弁当におにぎりを握ってお姉ちゃんに渡す。その後は普通に勉強だ。鍛冶に必要な道具の作り方から調べ、それをノートに書き写していく。

 ああ、アウトドアグッズの作り方も覚えないと……煉瓦もか。覚える事がいっぱいある。それでもやるしかない。死なないため、犯されないため、最後まで生き残るために。

 

 

 

 

 勉強していると、部屋の扉が開いた。どうやら、お姉ちゃんが戻ってきたみたい。お姉ちゃんは肩に八角棒をかけながら部屋に入ってくる。私はすぐに起き上がってお姉ちゃんの周りを周回して確認していく。

 

 

「お帰り」

「ただいま」

 

 お姉ちゃんは着物に小枝や葉っぱをつけていて、所々に小さな傷があるけれど無事みたいで良かった。

 

「どうだった?」

「暗くなってきたから切り上げてきた。良さそうな場所はまだ見つけられてねぇ」

「そう。そっちはゆっくりでいいよ。それよりも呪霊はどうだった?」

「問題なく見えるし、倒せたぜ」

「それなら良かった。怪我は少ないみたいだし、大丈夫だね」

「ああ、問題なかった。思ったよりも呪霊って弱いな」

「ピンキリだしね」

 

 森や山に居るのは四級から三級が精々だ。四級は通常兵器が呪霊に有効と仮定した場合、木製バットで余裕なので呪力の籠った呪具で撲殺推奨。三級通常兵器が呪霊に有効と仮定した場合、拳銃があればまあ安心レベルなので、こちらも呪具で撲殺推奨。それと三級、四級程度の低級呪霊は呪力が薄いため、壁などの物体をすり抜ける能力を持つ。これも呪力が籠っていない装備で攻撃できない理由の一つかも。

 

「つーか、着物じゃ動きづらくてしょうがねえ……」

「私は好きだけど、確かに着物じゃない方がいいね。買えないし、作るか」

「血を吐くような物はやめろよ」

「わかってる。訓練がてら、作るよ。用意しないといけない物もあるし」

「何を作るんだ?」

「キャンプ道具」

 

 そう、作るのはアウトドアで使うキャンプ道具。つまり、ゆるキャン△をするのである。一々、ここに戻るのも大変だし効率的じゃないから、あちらで実験しつつ呪霊の群れを祓う準備をする。

 

「あ?」

「向こうで泊まるから必要でしょ?」

「あ~なるほどな。まあ、そっちの方が効率的か。私にはわかんないし任せるが、怪我はしないようにしろよ。それよりも風呂行くぞ」

「そう言うと思って用意はしてある」

「んじゃ、さっぱりして飯を食いにいくか」

「は~い」

 

 眼鏡をかけたままのお姉ちゃんと一緒にお風呂に入る。今日はもう作らないので、普通に入って眠る。

 

 次の日はお姉ちゃんのトレッキングブーツと長袖のシャツとジャケット、長ズボンを作って渡しておく。これらは構築術式で作ったけれど、素材はそこまで拘っていない。精々が内側に肌触りがいい絹と外側に厚手の革にした程度。これで木々や枝は問題ないだろう。呪霊の攻撃も呪力が籠っているからある程度は防いでくれるだろう。

 

「んじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 

 お姉ちゃんが見えなくなった後、こっそりと桶に血を吐いた。それでも外面だけは良くしておいたのでバレはしない。呪力が回復したら反転術式で回復しよう。

 

 

 

 

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