真依廻戦   作:ヴィヴィオ

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考えてた妖怪(呪霊)が京都から遠すぎるので有名な方に。


第6話

 

 

 山を下りて久しぶりに着物に着替えた。相変わらずの黄緑色の物で、問題ない。お姉ちゃんも赤い着物になっている。そんな私達は一緒に集合場所にやって来て居る。

 集合場所には禪院家に所属する呪術師が複数人居て、その中にはお父さんも居る。当主の姿は確認できない。

 お父さんは高専でいう補助監督の人達と同じ役割をしている雑用係の人達と話した後、私達の方を一瞥してからこちらにやってきた。

 

「なんだよ?」

 

 お父さんは私達を睨みつけるように見詰めてくる。すぐにお姉ちゃんが持つ八角棒と私が持つケースに目を付けた。

 

「それはなんだ?」

「呪具だよ。真依が用意してくれたん」

「お前が作ったのか? 真依の呪力ではできないはずだ」

「パーツの一つ一つを作って組み合わせました」

「……見せてみろ」

「返せよ」

「物次第だ」

 

 お父さんがお姉ちゃんの持つ八角棒を手に取って確認していく。振り回してから、お姉ちゃんに投げ渡した。

 

「それは問題ない。お前達が持つのに丁度いいだろう。そのケースの中はなんだ?」

「クロスボウです。非力なので単発式の遠距離攻撃手段です」

「そうか」

 

 お父さんがケースを開けて全て確認していく。

 

「これは真依が使え。呪力の無い真希では無理だ」

「矢にも呪力を込めていますけど……」

「駄目だ。この程度の呪力では役に立たん。真希には過ぎた物だ」

「あ?」

「お前は大人しく真依の横に居ろ。これは命令だ。お前と真依とでは真依の方が価値がある」

「ちっ」

 

 お姉ちゃんは憤っているけれど、これって見方を変えたらお父さんはお姉ちゃんと私にアドバイスしているんだよね。お姉ちゃんは大人しく八角棒を持って私を守る事に集中し、攻撃は私に任せろってことだろうね。

 

「時間です!」

 

 お父さんが立ち上がり、私達の側から離れていく。私とお姉ちゃんは雑用係の人達に言われて車に乗り込んで現場へと向かう。

 

 大きな車なので他の呪術師の人も乗っているけれど、私達の事をニヤニヤ見てきて私達の事をこそこそ何か言っている。

 

「気にするな」

「うん。大丈夫」

「ならいい。真依は私が守る」

「私もお姉ちゃんを守る」

「なら問題ないな」

「うん、何も問題ない」

 

 隣に座って窓の外を見るお姉ちゃんの服の裾を握りながら、口に黒苺の飴を入れて瞑想を行う。表層の呪力は一定にして体内の奥深くに呪力をため込んで漏れないようにしていく。これからやるのは殺し合いなのだから一切油断はできない。

 

「真依、着いたぞ」

 

 気が付けばお姉ちゃんが私の手を握ってくれていた。どうやら、思っていたよりも緊張していたみたいだ。

 

「ここは……」

「大江山らしい。ここから歩きのようだ」

「大江山……酒呑童子か……わかった」

 

 ケースを持ちながら大江山を登っていく。しばらく進んで山の中腹に着くと、雑用係の人が止まった。

 

「到着しました。それではご説明いたします。ここから帳の中へと突入して沸いている呪霊を祓ってください」

「ほんなら、まずは初心者である真依ちゃんと真希ちゃんに行ってもらおうか。何、叔父さんの娘やったらいけるやろ」

「は?」

 

 お姉ちゃんが従兄弟の直哉に突っかかりそうになったので、止める。

 

「大丈夫。行こう、お姉ちゃん」

「でもよ……」

「平気。お姉ちゃんが守ってくれるんだよね?」

「ちっ、わかった」

 

 ケースからボウガンを取り出して、左右の腰に二つ、片手に一つ。背中に一つ持つ。お姉ちゃんにも二つ、腰につけてもらう。その状態でお姉ちゃんの手を握ってそのまま帳の中に入っていく。帳の中に入ると、強烈な気配は感じない。精々、三級や二級の呪霊が屯しているぐらいに感じる。でも、何か違和感を感じる。

 

「どうした?」

「なんだか呪力が……変」

「……警戒しながら進むぞ」

「うん」

 

 後ろから他の人達も入ってきたので、さっさと進んでいく。四級や三級の呪霊がわらわらと寄ってくるけれど、お姉ちゃんが八角棒で薙ぎ払って吹き飛ばし、体勢が崩れた所を叩き潰していく。

 

「真依は遠くの奴を頼む」

「了解」

 

 ボウガンを両手で構えて狙いを呪力の多いように感じる呪霊へ向けて放つ。事前に呪力を込めて作った矢は狙いの三級呪霊を殺し、そのまま他の呪霊も殺していく。

 

「弱いね」

「これならなんとかなるか?」

「でも、油断は禁物」

 

 わらわらとやってくる低級呪霊相手にお姉ちゃんが無双していくので、私は矢を節約しながら奥へと進んでいく。

 

「ふ~ん、多少はやるようやね。まあ、真依ちゃんが居るからわかっとたけど」

 

 おそらく、甚爾さんの事を思い出しているのかもしれない。でも、こちらはしっかりと準備しているので、甚爾さんと違ってお姉ちゃんは呪霊を祓うことができる。甚爾さんの場合は祓う手段が無い状態で呪霊の群れに投げ込まれたらしいし。それでも生きている甚爾さん、マジやばい。

 そんな事を考えながらもやっぱり、違和感を感じるので地面に呪力を流して色々と確かめてみる。そうするとわかったのは帳の中全体に満遍なく呪力が満ちていることだ。

 

「真依、どうした?」

「何が?」

「笑ってるぞ」

「うん。お姉ちゃん、ちょっと無茶をするから守ってね」

「無茶をするなよ」

「必要な事だから」

「……わかった。だが、できればするな」

「やだ♪」

「後でお仕置きだ」

「えー」

 

 言いながら、構築術式を使う。作るのは黒苺ではなく、それと同じ性質を持つ植物だ。呪力を吸い取って地中深くで結晶化するようにしておく。

 

「理念と用途を設定。構造を設定。構築開始」

 

 口から血が出てくる。吐血したけれど問題はない。痛みは何時ものフェンタニルという薬をキメて防ぐ。

 

「大丈夫か?」

「平気。次の場所に行くよ」

「わかった」

 

 帳の中を中心部に行かないように外周部分を周りながら何箇所かの地中に設置していく。すると、帳の中に満ちる呪力に……変化はない。だと言うのに地中に存在している植物はどんどん成長していっている。

 

「よし、お姉ちゃん……帰るよ」

「余裕だが……」

「駄目。すぐに逃げる。このままじゃ死ぬ。お願いだから、言う通りにして」

「……真依がそこまで言うのならわかった」

 

 私達はすぐに帳の出口を目指す。周りからは怯えて逃げるかのように見えるだろう。そう見せている。だからこそ、周りの呪術師からは嘲笑を受けるけど、それがどうした。命あっての物種だ。

 呪力を吸って成長する植物がどんどん成長しているのに帳の中の呪力は常に一定だ。それがどういうことを示しているかなんてわかり切っている。

 

「逃げるんや?」

「怖いし、矢も心ともないから帰る」

「だ、そうだ」

「そうなんや……やっぱ論外やな」

 

 直哉にそう言われるけれど無視。すぐに走って逃げる。わき目も降らずに逃げる。逃げ続ける。

 

「おい、真依……」

「なに?」

「変だ」

「え?」

「もうとっくに出口についていいはずだ」

「まさかっ!?」

 

 慌てて周りを確認すると、森が続いている。それと近くに大きな岩がある。それだけだ。定期的に呪霊が襲い掛かってくるだけなので、そちらも問題はない。だけど、周りの景色が先程から大して変わっていない気もする。

 

「ね、念の為に木に傷をつけて逃げるよ」

「ああ」

 

 恐怖に襲われながらも走る。すると傷がついた木の場所まで戻ってきていた。それに気付いて、恐怖に体が震えてくる。

 

「もう逃げないのか?」

 

 声と共に強烈な酒の匂いがして振り返る。すると大きな岩の上に上半身裸の男が居た。そいつは巨大な杯に瓢箪から酒を入れて飲んでいる。

 

「ま、真依……」

「お姉ちゃん……」

 

 そいつの頭には二本の角が存在していた。それは人々から鬼と呼ばれる存在。その中でも強大な存在として語り継がれている鬼。

 

「だ、大丈夫だ。こいつから感じる呪力は弱い」

「ち、違う! 帳全体に、広範囲に自分の呪力を浸透させて誤魔化しているだけ!」

「正解だ。この程度に気づかない雑魚に興味はねぇし、復活のための呪力を集めるのにも都合がいいからなぁ……」

 

 おそらく、今まで気付いた人は殺されてきた。低級呪霊に貪られて死んだと思われていたんだろう。普通はもっと警戒されるはずだけど、等級の低い人が何人もかえってきたら運が悪かったとか、それぐらいに思われたのかもしれない。もしくは……それなりの呪霊を出して討伐させることにしているか。どちらにしろ、私達には絶対に勝てない。

 

 相手は最低でも一級。最悪だと特級の呪霊に間違いない。本当に泣きたい。それでも……お姉ちゃんが居るから生還を諦める訳にはいかない。お姉ちゃんだけでも助けないと。だったら、取る方法は一つ。

 

「取引をしよう!」

「真依!?」

「取引だと?」

「見ての通り、私達はすごく弱い! 鬼さんが戦っても面白くもなんともない! 違う?」

「そうだな。だが、喰えば力になる」

「わかってる。だから、呪力を持ってる私が貴方にお酒を作って提供する。気に入らなかったら食べたらいい」

「真依っ!? 何を言っているんだ!」

「だから、代わりにお姉ちゃんを逃がして。お姉ちゃんは呪力がないから、鬼さんの餌にはならない」

「……確かにそうだな。だが、酒は本当に作れるのか?」

「見本があればできる!」

「いいだろう。嘘じゃないようだし、その取引に乗ってやる。だが、お前が俺が気に入らない酒を作ったら、二人とも喰う。逃がした方も追いかけて喰ってやる」

「それでいい。お姉ちゃん、お願い。誰かを呼んできて」

「……私じゃ無理な方法だな」

「お姉ちゃんじゃ逃がしてもらえない」

「わかった。待ってろ」

 

 すぐにお姉ちゃんが走って行った。私は鬼さんの下へと向かい、杯に近づく。狂いそうになるほど濃い酒の匂い。それを我慢しながら、鬼へと問いかける。

 

「お酒の好みを教えてください」

「いいだろう」

 

 さあ、命を賭けた構築の始まりだ。私達二人が生き残るのが最優先。無理でもお姉ちゃんはなんとしても逃がす。お姉ちゃんが死んだら縛りで私は自害する。故にお姉ちゃんだけはなんとしても生き残らせる。そのためならこの命、くれてやる! 

 

 

 

 

 




酒呑童子(男)さんVS呪術少女真依。負けたら食べられます。さあ、鬼滅を始めましょう(ぇ
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