その力に見合う自分になりたくて、俺はその力で自分に書き込んだんだ。
『君は、生涯岸辺露伴らしくならなくてはいけない。』
これは、そんな“僕”の日常と非日常の物語。
窓から外の陽光が入ってきて、部屋の中を照らす。
そんな中で僕は作業机の前に立っていた。
両手を肩の高さまで上げる。
「手首の角度は直角90度を保つ。」
手の角度を揃えると、再度口を開いた。
「各指は曲げずにまっすぐを保つ」
指に意識を集中し、曲げてしまわないように心がける。
そして僕は次の段階へと移行する。
「手のひらを前へ...ひじもまっすぐ手首の角度は直角を保ったまま....」
そして掌を前に突き出した。
次が最後の段階。
ゆっくりと指を一本ずつ順番に曲げていく。
「一本ずつ折る...1、2、3、4、5。」
一本一本の指に意識を尖らせ、今から自分は漫画を書くのだとスイッチを切り替える。
...よし、これでいい。
「以上。漫画を描く前の準備体操、終わり。」
首を回しながら手をぶらぶらと柔軟すると机に座って、Gペンにインクを付ける。
そして深呼吸すると、机の上の原稿に線を引き始めた。
これが僕の毎朝の光景。
僕の毎朝のルーティン。
僕の名前は岸邉露伴、漫画家だ。
◇
僕の暮らしている街、五車町。
今世紀に渡って新たに建設されたニュータウン。
北関東の山間にある小さな町だが、ショッピングなど困ることは何もない良い街だ。
自然も豊かだしな。
この外の清涼な空気、これは大都会の喧騒の中では決して味わえない物である。
漫画はリアリティが大事だ。
ずっと部屋に籠っていれば、実際の外の空気....それをリアルに描くことは叶わなくなる。
だからこそ、こうして間の時間に外にでて気分転換を行っているのだ。
目に見えるのはカフェ。
どうやら最近出来た場所らしい。
まぁ、場所に拘る必要は今はないわけだし、ここにしよう。
それに初めて入る店にはそれだけ新鮮な空気が流れている。
漫画のことを考えてみてもプラス....少なくともマイナスにはならないはずだ。
店内に入ると、店員に席へと案内される。
対応は....良いな。
礼儀正しく客に対するリスペクトが窺える。
教育が行き届いているのだろう。
座ったのはテラス席。
...まぁここら辺は席の混み具合などを見る限り、しょうがない。
それに外の空気を感じながらコーヒーを飲むのも悪くないじゃあないか。
「ケーキセット、コーヒーで頼む。」
そう言うとこれまた礼儀正しく一礼して彼は店の方へと消えていく。
今の所、不満はない。
店の内装やテラス、そこから見える風景。
そして店員の接客態度にメニューの雑多に見えず、かといって選択権はあるような充実具合。
全てが完璧な調和を保っている。
気に入った....この店、気に入ったぞ.....。
店の雰囲気を堪能していると、店員がケーキセットとコーヒーを運んできた。
ふむ...少し、フルーツが多すぎる気がするが、悪くない。
少なくともまた来たいと思う程の店だ。
さて、コーヒーでも飲みながら次はどのような展開にするか考えるか....。
そう思い、空を見上げると....。
「あぁ~!露伴君!こんな所で会えるなんて奇遇だねっ!あっ、すいません店員さん。私も同じ奴で!」
「かしこまりました。」
「....おい、僕は座っていいなんて一言も言ってないぞ。」
陽気な声が店内に響く。
前を見ると、橙色の髪の女性が勝手に僕の席で相席している。
見た目は.....まぁ美人だ。
そこは私情抜きに評価する。
僕は漫画家だ....見た物は出来れば偏見抜きでそのまま捉えるのが筋という物だ。
たとえそれが気に喰わない相手だとしてもな。
俺がそう言うとその少女はにへらぁと笑う。
相変わらず癇に障る間抜け面だ.....。
「えぇ~?普通知らないお店で知り合いが居たら、その人の所行くでしょ!ほらっ!私と露伴君の仲なんだからさぁ~」
悪びれもせずにヘラヘラとそう言ってのける女。
コイツ....まったく勘に障る奴だ....。
目の前の馬鹿に苛立ちを覚えながらも、口を開く。
「僕と君はそんなに深い仲でもない。ただの顔見知りだ.....それに、今は次の漫画の展開についてコーヒーを飲みながら考えていたんだよ。次の漫画では何をネタにしようか考えていたんだ。君みたいな雰囲気からして騒がしい奴が居たら、思いつく物も思いつかなくなる。僕の目の前から、今すぐにっ、消えてくれ。」
強い語気で目の前から消えるように目の前の女に言う。
しかし、彼女はニヤニヤと笑う。
「アッレェェェ~?君って言ったぁ?ふふ....相変わらず照れ屋なんだね露伴君っ!さくらって名前が私にはあるんだけどなぁ~?」
「....僕は、話が出来ない相手と長時間話すほど暇じゃあない。君が消えないなら、僕の方からこの店を出てやろう。...君、この店は行きつけなのかね?それならばいい感じの店ではあったが、ここには二度と来ない。本当に断腸の思いだけどな...。」
こんな奴に出くわすかもしれない店でネタなんかをゆっくり考えられるわけがない。
本当に忌々しいぞ....井河さくら。
まさかこんな所で出会うなんて....。
するとさくらはさっきニヤニヤしていたのとは違って、こちらに手を伸ばした。
「まっ、待って!露伴君が漫画のネタを考えていたのを邪魔しちゃったのは謝るよ!でも、ネタを考えるなら私は結構役に立つんじゃない?ほらっ!私ってネタの宝庫だしさぁ?ねっ、露伴センセッ!!初めて会った時からずっとそうだったじゃん!」
そう言ってこちらの腕を掴むとニコニコと媚びるように笑顔を見せるさくら。
...確かに間違いじゃなかった。
本当に認めたくないが....。
「....確かにそうだ。君の経験を長い間読ませてもらった。ネタとして見るなら、君の傍にいれば困らない。」
「でしょ~~?」
したり顔でそう言ってくる。
この女は....なぜこうも僕を苛立たせるのか.....。
相性が悪いのだろう。
初めて会った時だってそうだった。
長らく10年も腐れ縁が続いているのだ。
そう考えるとよくやってきた物だと思う。
....まぁいつも近くに居たわけでもないからこそ、やってこれたのだろう。
井河さくら。
五車学園に勤務している25歳教師。
...そして僕がこの世界の裏を知ることになったきっかけでもある。
人の領域を犯す魔族勢力。
それに対抗するための超人的な集団、対魔忍。
その対魔忍を養成する立場の女性だ。
彼女に初めて会ったのは10年前。
あの時の彼女はまだバリバリ現役の対魔忍だった。
懐かしいなぁ.....こんな腐れ縁の始まりだなんて、思い出すだけで身の毛もよだつ。
これは僕が、好奇心のあまり踏み外してしまった話だ。
◇
とある夜。
部屋の中、薄明りの下で僕は漫画を描いていた。
デビュー作である漫画。
その次の展開について考えていた。
そんな時にだ。
不意に、部屋の下でギィと背後で扉が開いた。
僕は一人暮らしをしている。
漫画を描くためには一人になれる環境が必要だ。
だからこそ、死んだ祖母の家を管理する代わりに僕が漫画の作業場兼家として利用してるのだ。
よってこの家には、僕以外の人間が居るはずがない。
それを考えていると、不意に背後で声が聞こえた。
「お、おい....!そ、そこのガキィ!お、俺を匿え!!この家によォ~~~!」
後ろを向くと、驚愕した。
それはファンタジーなどで見るような緑色の体色をした頭の丸っこい人型の生き物。
さながらゴブリン、小鬼のような生き物。
なにかコスチュームのような物かと思ったが、ダラダラと流れている汗や小汚さから見て本当にそのような存在だと分かった。
あんな存在は初めて見たのだ。
その生き物は手にナイフを持って、こちらにゆっくりと歩み寄っていた。
「い、一般人のガキが居りゃ...アイツらも手出しは出来ないはずだ....。こ、こっちに来やがれ!ケツの青いガキがよぉ...!来ねぇならガチで殺すぞォ!!!」
そう言ってナイフを振り回す小鬼。
凶器を振り回して俺を威圧する生き物。
しかし、僕の心中ではその恐怖よりもこのような生き物がどのような存在で、何に追われているのかに興味が惹かれたのだ。
こんな漫画にとって良いネタ、みすみす逃すわけにはいかない。
だからこそ、僕は小鬼の方を向いて問いかけた。
「...君は、どう見ても人じゃあないが一体何者なんだ?それにアイツらとは一体なんだ...?」
すると俺の問いかけを聞いて、苛立たし気に言葉を吐き散らかす。
「うるっせぇんだよ!てめぇが質問できる立場かよ凶器を持つ俺によォ~~~~~!!!黙って、俺に従えってんだよォ!!!!」
そう吼えながらこちらにずかずかと歩みを進める彼。
このままでは彼が近くにまで来て、ナイフを突きつけられるかもしれない。
だが....まだだ。
極限まで近づけろ。
近づけば......。
机の上に手を置く。
紙の感覚を感じる。
....これが執筆中でよかったよ。
そして残り二歩。
彼が踏み出せばナイフが当たる至近距離。
来た.....ッ!!
机の上から紙を引っ手繰り、彼に見えるように突き出した。
彼は馬鹿にしていたケツの青いガキがおかしなことをしだして、身構える。
「な、なんだッ.....?...これは、漫画?て、テメェ!馬鹿にしてん....のかひゃ.....?」
逆上して威嚇するようにがなり立てようとした瞬間、彼は動きを止める。
計画通りに事が運んで、思わず笑ってしまいそうだ....。
だが、能力を使った以上はちゃんと形式に沿わなければ。
少なくともそれが僕の『本物』に対してのリスペクトの現れだった。
「《
その言葉に合わせて、小鬼の顔がまるでバカッと開く。
顔は本と化しており、そこには文字が雑多に書かれていた。
脱力して座り込む彼の記述を見る為に、しゃがみ込む。
文字の構成を見るに....。
「お前....相当おつむが弱いみたいだな。それに.....何々、『同僚の一人がパチンコをしている間に、財布から1万円を抜いた。仕事で失敗したが後輩の一番使えない奴に擦り付けてやった。そして俺がボロクソに叱ることになった。とてもいい気分だ』....。どうやら、君は金に汚く、クズで薄情な奴だってことが分かるよ。...少なくとも性格は使えないな。こんなカスみたいな性格が読者に受けるわけがない。」
まぁこんな所でナイフを振りかざして自分を大きく見せようとする奴の性格面なんかには期待していない。
期待するのは彼と言う存在について、そして彼を追う存在についてだ。
「お、おれは....ど、どうなって......ェ.....」
天井を見上がる姿勢で固定されたことで涎をダラダラと垂らしながら困惑していた。
「君に教えてやる義務はない。だが....もし君の記述の中で、僕の関心を惹くような物があれば僕が何したか教えてやるよ。」
ここは違う....
これも....見る限り哀れで笑っちまうような失敗談だが、別段興味はない。
僕が興味があるのは.....これは......!?
『俺たちを下級の小鬼だと思ってるあの対魔忍の連中、舐めやがってぇ....あの女共に俺のマラをぶち込んで餓鬼孕ませてやる....絶対にだ!!』
とても下賤な記述であるが、どうやら彼が小鬼という種族の生き物であるという事は間違いないようだ。
それも下級であり、その種族に階位のような物があるということが分かる。
それにしても....
「対魔忍ってのはなんだ?」
ページを前に遡る。
すると、対魔忍という記述はよく見られる。
だがそれはどれだけ忌まわしいか、仕事の邪魔かという事。
そして容姿が綺麗な事と、恐ろしいかが書かれている。
「影から這い出して来る?これは本気で言っているのか....?ヤクでもやってるんじゃあないかコイツは。」
現実では人が影から這い出てくるようなことはあり得ない。
それこそフィクションの世界の話である。
コイツがヤクでもやってておかしくなっている可能性も考えた。
しかし、一貫して影から出てきた以外にも自分の背丈以上の斧を振り回したや、重たい乗用車を投げたなどと対魔忍がどれだけ超人であるかという記述がされていた。
...まぁ、僕のこの力がある以上、この世界にも何か特殊な力があるのかもしれない。
そしてもし、そうだとしたら....。
「是非とも拝みたい物だ....対魔忍。これが薬中の戯言じゃなければ...リアリティを持った異能だなんて、漫画にもってこいじゃないか!!!」
対魔忍についての情報は手に入った。
関心を惹かれた。
すると最新の記述に目を付ける。
そこには.....。
『ちくしょう....アジトがバレちまった....。俺みたいな下っ端も見逃さないつもりかよぉ!!こうなったらこのボロッちい家を根城にしてやり過ごすしかねぇ...どうせ夜だ。寝てるだろうし、対魔忍じゃない人間なんて目じゃねぇよ!アイツら対魔忍は正義の味方だから人質を出されたら何も出来ねぇだろ、そうなったらお楽しみタイムだぜ!!あのでけぇ胸踏んづけて〇〇〇に子種流し込んでやる!!!!チッ、中に居るのは陰気そうなガキだけかよ!!女だったらこのムラつきを発散出来たのによぉ!!!!』
この記述は.....この家に入る前の記述か。
彼は対魔忍に追われて、この家に入ってきたようだ。
ということは.....。
「待っておけばその対魔忍が探しに行かなくても来てくれるってことじゃないか....!!よくやったよ君。まさか新たなネタを持ってきてくれるなんて....!!」
前の記述からして二人。
二人も漫画のネタが来てくれる。
さっきから気になって仕方がない対魔忍に自分から行かなくても接触出来るのだ。
この汚らわしい小鬼が神が僕に与えた恵のように思えた。
「あ....あぁ.....あっ......」
ガタガタ震えている小鬼。
僕の言葉はどうやら聞こえていないようだ。
「あぁ...しかし残念だな。どうやら僕の、ケツの青いガキの声が聞こえていないらしい。それなら....僕の能力を言ったって意味がないだろう?なぁ?」
そう言って頬っぺたをぺちぺちと叩く。
正直、あそこまで軽んじられていると、腹も立ってくる。
だからこそ、軽んじてきた相手によって気絶寸前まで追い込まれている目の前の異形に対して笑みが止まらないのだ。
しかし、その瞬間。
「なに....しているの?」
背後から声がする。
振り返ると、そこには橙色の髪でパッツンパッツンのラバースーツのような服を着た少女がこちらを見ていた。
もちろん知らない人間だ。
だが、ここに居るということは.....。
「やぁ...それが対魔忍のファッションって奴なのかい?だとすれば....思いのほか頭のおかしい集団のように感じられるよ。そんなラバースーツ着てるなんてねぇ。」
俺が一歩踏み出すと手に握る小太刀を構えた。
どうやら警戒されているらしい。
そりゃ追っていた小鬼の顔が本になっていて、僕がそれをじっくりと読んでいる光景は異様に映るだろう。
だが、そんなことはどうでもいい。
重要なのは漫画の素材がほいほい僕の、作業部屋に入って来てくれたという事だ。
「...なにをしたの、そこのゴブリンは....。顔が本に.....。」
「さぁね?何をしたのか、僕にも分からないなぁ?ただ...少なくとも君の過失でこの家にこんな危険な犯罪者が紛れ込んできたんだから謝ってほしい物だねぇ。対魔忍は....市民の平和を守るのが仕事なんだろう?」
そう言うと、彼女は不信感をあらわに出しながらも渋々と言った様子で頭を下げる。
「そ、それは確かにごめんなさい....。」
頭を下げた....。
頭を下げた場合、必ず頭を上げる動作が伴う。
つまりは真ん前を向く可能性が高いということだ。
であれば、僕はただ....。
「でもっ!...ぁえっ....?」
「《
原稿を構えておくだけで良い。
すると彼女の顔も本のように変化する。
さて、ここでさくらを見に行くのはいいが....そこの小鬼を放置するのはまずいな。
だからこそ、僕は横の小鬼のページを手繰る。
「そういえば....これを見るに、君は強姦や殺人を繰り返している悪人らしいなぁ。」
「あ...あうっ....ああっ.....。」
涎垂らしながら呻く小鬼。
...汚いなぁ。
人の家なんだから唾液を落とさないでくれよ。
ひそかに苛立ちを覚えながらも、僕は彼の見開かれた目を見てこう尋ねた。
「君のような悪人相手なら....どんな風な命令を書いても、僕はまったく心が痛まないなぁ?どうやら、君はそこの対魔忍とやらに殺されるんだろう?」
そう言ってペンを手に取る。
そして彼の余白部分にこう書き込んだのだ。
『一週間、四肢に力を入れることが出来ず身動きを取ることが出来ない。』
「あっ....あうっ....あああああっ....」
命令を書き込むと、彼はへたり込む力すら失って、気の抜けた声を上げながら仰向きに倒れ伏してしまう。
これで一週間は安心だ。
「さて....待たせて悪かったね。君は....まずは君の名前から見てみようか。えぇと...名前はぁ....井河さくらというのか。へぇ姉が居るんだな。年齢は15歳。やはり年下のようだな。」
「な、なんで....私の事が.....あ、あなた,,,私を読んでいるの?」
彼女はそう聞いてくる。
...まぁ彼女が確定的に僕の欲しい情報を持っているのは明らかだろう。
であればギブアンドテイクだ。
教えてやってもいいだろう。
「あぁ。僕の能力、《
「ちょっ、何見てんの!!見ないでよぉぉ!」
慌てた様子でそう言ってくる井河さくら。
少しテンションが上がってか、悪いことをしてしまった。
まぁでも別段コイツの色恋については興味はない。
興味があるのは魔族と言う存在について....そして対魔忍という存在についてだ。
「やはり君も対魔忍のようだな。それで....ほう、影遁。中々便利な能力じゃあないか。なんだこれは....優先すべき事項があるのに、目移りが止まらないぞ!君は素晴らしい!ネタの宝庫だ!!!」
これほどまで読み応えがある人は久しぶりだ。
ページを取って僕の物にしてしまいたくなる。
...が、それは流石にまずいだろう。
僕は岸邉露伴であって岸辺露伴ではない。
岸辺露伴らしくならなければならないと自分で書いてはいるが、なにも敵役の時代の彼であろうとする必要はないのだ。
後期の彼はそこら辺の良識はあった。
それにしても....。
「君はどうやら明るく活発で友達も多いじゃないか。いいねぇ...だけどどうやら姉の方が高スペックらしいじゃないか。いや、良いよ。主役にするにはちとインパクトが足りないが、準主役くらいになら丁度いい!!」
「意味が分からない、こと....言ってぇ.....!!」
彼女は僕を睨みつけた。
自分の経歴を見て、叫ぶ僕はさぞ彼女に良い印象で見られてはいないだろう。
しかし人柄的に人を守るために戦う明るい女の子。
優秀な姉が居て、好きな人は姉の事が好きという事をなんとなくだが察している。
良い!人柄も合格だ!!
ここまで行くと、彼女の経験も気になるな!!!
魔族のページは見つけた。
地上の人間とは対極の地下に住んでいる亜人種。
そして....
『私達、対魔忍は人と魔族の不干渉という不文律が破られたことによる治安悪化をなんとかする為に居るんだって!私も、お姉ちゃんは反対するけど対魔忍になりたい!!』
「なるほど....どうやら、僕たちが知らない間に人と魔族という勢力が戦っているということか。それで君たちは人類側の守護者と見て良いようだな....。さて、とても面白い物を見させてもらったよ。さて、次は一緒に任務している相手について....」
「おい。」
闇夜の中。
扉の前。
そこにそれは立っていた。
濃密な殺意と敵意を漂わせてこちらを睨みつける少女。
それを見て、井川さくらは喉を震わせたのだった。
「む....むっちゃん.....」