龍門近衛局のとある部屋にて、鬼族の女性がペンギン急便の3人のトランスポーターに依頼をしていた。
「チェン隊長からの重要な依頼です」
鬼族の女性、ホシグマの真剣な表情に、3人のトランスポーター……テキサス、エンペラー、鉄華団団長オルガ・イツカだぞぉ…も真剣になる。
「郊外にて警備にあたっているロドスの簡易拠点に届けて下さい」
「なんだよぉ、結構簡単じゃねぇかぁ」
「オルガ、少し黙ってろ」
「すみませんでした」
突然死にかけながら口を挟んだオルガに、エンペラーが注意をする。流石の団長も皇帝の名を冠するエンペラーには頭が上がらなかった。まぁエンペラーはコウテイペンギンでは無いが。
「…いいですか?配達の条件は3つ。午前0時までに届けること。水平を保つこと。強い衝撃を与えないこと」
「……物騒な注文じゃねぇか。理由は?」
「内部機密です」
「中身は?」
「機密です」
「あ?お前状況わかっtピギュッ?!」
ドゴォ!
「ゔゔッ!」
「黙ってろっつっただろーがッ!」
エンペラーに襟首を掴まれ、勢い良く殴られたオルガは、何故か体の至る所から血を流しながらその場に倒れる。そして、スピーカーなどが無いにも関わらず、何処からともなくフリージアが流れた。キーボーウノーハナー
彼らは死んだオルガを黙って無視したまま、荷物を持って仕事へと向かう。
「そういえば……」
ふと、ホシグマが漏らした言葉に、テキサスとエンペラー、そしてついさっき蘇ったオルガが振り返る。
「また先日もマフィア相手に暴れたそうですね」
「耳揃えてキッチリ弁償しただろうが!」
「あぁ、落とし前はキッチリつけさせてもらった」
「オルガは何もやってなかっただろう?」
テキサスが言った通り、マフィア相手の抗争で彼は何もやっていない。いや、マフィアとの戦闘中に、
「くれぐれも、荷物に影響の無い様に」
「あぁ、わかってる」
念には念を入れて、ホシグマは彼らに釘を刺す。
「では、ロドスの皆さんによろしく」
「よぉし、気ィ引き締めて行くぞォ!」
ドゴォ!
「うるせぇつってんだろッ!」
そろそろキレてきたエンペラーのブローが炸裂し、オルガは至る所から血を流しながら鉄分の華を咲かせた。そして何処からともなくフリージアが流れる。キーボーウノーハナー
「あぁ、おう……お前ら、予定通りに頼むぜ」
「………ん?どうしたテキサス」
オルガがテキサスが向いている場所を見ると、そこにはウルサスの少女がひょっこりはんをしていた。
「こんな所に居ちゃ駄目だ。お家に帰りな」
「そうだぞ」
「お家…無くなった」
「なんだと?!」
少女の言葉に、オルガが反応する。
「家族は?」
テキサスの言葉に、少女は首を横に振った。それを聞いたテキサスの顔は一切変わらず、オルガは悲しそうな顔をした。オルガには、家族を失った悲しみはよくわかるのだ。
「鉄華団は、お前を歓迎する」
「勝手にすんな、ウチは迷子センターじゃねぇよ。行くぞ」
「なっ、なぁオイ!」
少女を無視しようとするエンペラーの肩を掴もうとしたオルガだったが、その前にウルサスの少女がエンペラーの裾を掴んだ事により、オルガが希望の華を咲かす事にはならなかった。
「……あのなぁお嬢ちゃん、俺達はプロの運び屋だ」
「…………なんだ?」
テキサスが後ろに振り返ったのを見たオルガは、死にまくった事で得た直感で、己の死期を悟った。
「運んでもらいたいなら、相応の対価ってもんを―――」
「危ねぇ!」
その時、エンペラー達がいる場所に大爆発が起こった。
大爆発から3人を守ったオルガは、至る所から血を流しながら、けして枯れない華を咲かせた。そして何処からともなくフリージアが流れる。キーボーウノーハナー
「済まないオルガ。助かった」
「へっ、団員を守んのは俺の仕事だ」
「合流地点まで走るぞ。死んでも荷物は落とすな」
「うん」
「あぁ、わかってる」
こちらに来るマフィアとオルガが生き返ったのを確認したエンペラーは、後ろにいるウルサス族の少女へ顔をチラッと向ける。
「嬢ちゃん、死にたくなけりゃここに隠れてな…………行くぞ」
「ちょっ、待ってくれ」
少女に忠告し、走り出す
「………お、キタキタ」
「……オルガ?」
裏路地の近くで停まっていた車のサイドミラーでテキサスとエンペラー、勝ち取りたいBGMを流しながら走って来るオルガを見た運転手エクシアと後ろの席に座っているミカ。エクシアはエンジンを掛けながら、窓から顔を出す。
「鬼ごっこはもう終わり?」
「いいから出せ出せ!」
「待ってくれ!待てって言ってるだろうgヴァァァァァァァァ!!!」
発進する車をギリギリ掴んだオルガだが、そのまま車に引き摺られながら発砲し、希望の華を咲かせ、フリージアを流した。キーボーウノーハナー
「引き摺ってごめんねーオルガ」
「止まるんじゃねぇぞ……」
「止まらなくていいってさ」
「そのままでいいんだ……」
ミカの言葉に色々と困惑するエクシア。まぁいつもの事である。現にエンペラーとテキサス、ミカは全然気にしていない。
「ふぅ…エクシア、安全運転で頼むぜ」
「了解……ボス、人間の配達なんて珍しいね」
「あん?」
エンペラーが横を向くと、荷物を膝の上に置いて固定しているミカを挟む形で、さっきのウルサス少女がちょこんと座っていた。
「どほぉぉぉぉい?!オイ!隠れとけっつっただろうがよぉ!」
「何っ?!(驚かすのは)勘弁してくれよ」
「煩いよ二人共」
少女がいる事にエンペラーは驚き、後ろにある窓まで這い上がって来たオルガは色々と驚いたが、死にはしなかった。
「どうするんだ?」
「どーすんの〜?」
「俺はいいと思うよ」
「あぁ、鉄華団はお前を歓迎する」
「降ろすのか?」
「ボ〜ス〜?」
前にいる二人が聞いて来たのに便乗して、オルガとミカが口々に言い始め、更に二人が追い打ちをかける。そしてトドメに、ウルサス少女の期待するような無表情で、エンペラーを見ていた。
「………ったくしょうがねぇなぁ。オメーをどうするかは仕事が終わってから決めてやる」
色々と耐えかねたエンペラーがそう口にする。エンペラーの優しさに、
「グズったら放り出すからなッ!」
「…………テヘっ」
「可愛いじゃねぇかぁ」
「この辺りだよ」
彼らを乗せた車は、到着予定の場所の近くへとやって来た。
「なーんか静かだね〜」
「……!死亡フラグじゃねぇかぁ」
エクシアがポロッと漏らした言葉によって、オルガの死亡が確定した。どうやらエンペラーとウルサス少女も気づいた様だ。
「鬼ごっこの続きだエクシア、安全運転で頼むぜ。三日月もだ、荷物をキッチリ支えてろよ」
「わかってる」
「OKボス!」
エクシアはアクセルを勢いよく踏み、車のスピードを上げる。
「うぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ヴァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
前から飛んでくる銃弾や矢、アーツを豪快に避けるが、大きく避けたせいでオルガは振り落とされて希望の華を咲かせ、車の方は目の前に敷かれていた車のバリケードを避けようとしてスリップし、回転しながら倉庫へ突っ込んで行った。
「アタシ、テキサスが運転してる方が好きだ」
「ありがとう」
「安全運転つっただろうがよぉ……」
そうこう言ってる間に、車は大勢のマフィアに囲まれてしまった。
「今度こそ隠れてろ嬢ちゃん。三日月は合図を待ってろ」
「わかった」
そう言って、テキサス、エクシア、エンペラーの3人がマフィアの元へと投降する。
外の方では拘束されたオルガが、俺ならどうにでも殺してくれ!何度でも殺してくれ!首をはねてそこらにさらしてくれてもいい!と仲間達を庇おうとし、鉄血の華を咲かせた。キーボーウノーハナー
「こりゃ完全に打つ手無しだな、ゲームオーバーだ」
3人の頭にボウガンが突きつけられる。
「お前らがなッ!」
何処からともなく振られたメイスが、マフィアを複数人吹き飛ばす。そこには、盾とメイスを持ったフォルテ族の女性がいた。
彼女は
「邪魔するでぇ……オラァ!」
クロワッサン無双に気を取られているマフィア達の隙をついて無力化するメンバー達。オルガもさてとと蘇り、油断していたマフィアを迫真の銃撃で無力化する。
「予定通りだねボス」
エクシアが笑顔で、プロレス技を仕掛けるエンペラーに言う。
そして、これまたいつの間にかマフィアの車の上に、
「それでは、スペシャルゲストの登場でーす!」
「ミカァ!」
合図とともに謎の大爆発が起き、そこにさっきまでいなかった人物が複数人と、2機のモビルスーツが現れた。
「ペンギン急便の皆さん!配達、ご苦労様です!」
「皆、バエルの元へ集え!」
爆発と共に出てきたのはロドス・アイランドと呼ばれる製薬会社の社員達と、そのCEOのアーミヤ、そしてロドスのドクターであるバエル厨のマクギリスだ。出て来た2機のモビルスーツの内の1機は、ガンダムバエルである。
「行くぞ、バルバトス」
そしてもう一つのモビルスーツは、ガンダムバルバトス。オルガの合図で出て来たのだ。操作しているのは三日月オーガスである。勝ったな、風呂食って飯入ってくる。
その後は、特に苦戦を強いる事も無く鎮圧した。あった事と言えば、ロドス職員の一人であるジェシカが撃った銃弾が、オルガの希望の華を咲かせた位だろう。
「確かに受け取りました」
「鉄華団の働きに感謝する」
一応言っておくが、ペンギン急便は鉄華団じゃない。
「俺が言える事じゃねぇが、こんな時まで武器の支給とは、アンタらも落ち着かねぇな」
「武器?…………待って下さい、何か聞こえます」
「これ以上まだあんのかよぉ…」
アーミヤは配達物を地面に置いて、丁寧に開けていく。
「こ、コレは……!」
荷物の中に入っていたのは、プラスチック爆弾であった。オルガは死期を悟った。
「逃げろぉ!」
「団員を守んのは俺の仕事だ!」
それぞれが爆弾から離れ、オルガは一人爆弾に覆いかぶさる。そしてカウンターが0になった瞬間………
「ハッピーニューイヤー」
龍門近衛局の一室で、チェン隊長が笑みを浮かべながらそう言った。
「…………紛らわしい事しやがって」
ロドスへ配送された荷物は武器では無く、爆弾でもなかった。それは、ホシグマが特別な梱包をしたチェン隊長の粋な計らい……チョコケーキであった。
周囲には色とりどりの紙吹雪が待っており、オルガが鉄の華を咲かせた事で流れるフリージアのお陰で、色々と幻想的な光景が出来ていた。
「彼女は我ら
と言うマクギリスの言葉により、ウルサス少女は保護される事になった。今はアーミヤからケーキを受け取っている彼女を見て、微笑んでいる。
「やったな、ミカ」
「あぁ」
ウルサス少女が幸せそうなのを見たオルガとミカは、静かに腕と腕をコツンとぶつけ合わした。