口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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ゆっくり投稿予定です。よろしくお願いします。


転生?進研〇ミでやりました。

 

拝啓……

 

んー、手紙なんて書いたこともないし、あってるのか分からんな、140文字のアレならすぐ書けるんだけど。

まともに始められもしないわ。

はてさて、私的な時間は全てゲームや漫画につぎ込んで来た俺ですが。

モブを名乗れ無くなるような体験をしたんですよ。

 

気になる?

 

 

 

 

 

 

転生だよ✩……野郎の星マークには辛いものがあるな。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

会社から、帰ってきてゲームをする。風呂に入ったあとは、新しく買った漫画を読み、たまに小説を漁ったりもする。

 

 

そんな特筆すべきものも無い日常が続いていた。

 

 

そしてある時、俺は転生した。なんで気づいたのか、単純な事だ。自分が産声を上げていたんだから。

どんなに鈍い野郎でも自分が赤ん坊になれば悟るだろう?

あぁ、生まれ変わったのか…ってな。

ぼんやりと光が見えるだけの視界だが、それでも遠くを見る仕草がしたくなった。

 

ほぼ反射のように泣き声をあげていたが、転生したと気づいたとき、俺は心の底から叫ぶように声を上げた。

周りの助産師さんなんかは、元気な子だと喜んでいたがそんな事はどうでもいい。

いや、中身成人男性のガチ泣きを穏やかに受け流してくれた事は大変ありがたかったが。

 

 

それよりも、重大な事実に気づいてしまったのだ。まだ完結していない漫画や、ルートを回収しきれていないゲームが、もう二度と出来ない可能性の高いことに!!

ほんとにマジでやり直しを要求したかったね。なんなら、死ぬ前まで戻して欲しかったよ。

 

 

お父さんが、怖々と抱き上げてきたが構ってる余裕は無かった。

親父の髭面はかなりの強面だったが、泣かないでいたのだ、それで勘弁して欲しい。

 

 

転生してみたいなと思ったことがないと言えば嘘になるけど、もう少しキリのいい所で死にたかったという思いの方が強い。せめて、明日発売の新刊だけでも読ませて欲しかった…。

 

全く、神様も気が利かないなと思っていたんだ。

 

 

 

 

そう、思っていた。つまり、今はそんな事思ってはいない。

 

 

“それ”に気づいたのは生まれてから数ヶ月後。

目が見えるようになってからだ。

両親に連れられ…といってもまだ歩けるような体でもないので抱っこをされてだが、街へ出かけた時のこと。

街の様子を観察していたときに、店の看板を見て思った。

 

 

(あれ、ハンター文字じゃね?)

 

 

漫画やゲームへの未練を、浪漫の心が上回った瞬間だった。

そこからは、坂を転がり落ちるように、次々とハンター世界固有の情報が転がり込んできた。

ハンター協会や、ヨルビアン大陸だの、天空闘技場だの、俺が読んでいた漫画に出てくる単語がたくさんあった。

 

 

(マジかよ。神様最高じゃん!)

 

 

 

見本の様な手のひら返しだった。見物料をとって展示出来そうな美しさだ。

 

 

だって、考えても見てほしい。漫画の世界だぞ?

学生の頃なんかは、定期テストの度に二次元へ行きたいと愚痴っていた程だ。

 

そりゃあ、漫画の世界なんて、漫画で読むからいいのであって、実際に行ったらなんて事はない現実になるのはわかっている。

が!しかし!俺からすれば世界観そのものが好きな漫画やゲームも多いのだ。

 

HUNTER×HUNTERなんて、まさにその筆頭。

魔獣を見ただけでも、感激の涙を流して膝から崩れ落ちるだろう。(多分そのまま喰われて死ぬ。)

むしろ今、大陸に立っているという事実だけで、ご飯3杯はいける。(思わず床を叩いて確認した、手が痛くなるだけだった。)

 

 

なんでそんなに喜べるのか?簡単だ、俺がオタクだからだ。

 

生まれた世界に感謝をし、三日三晩喜びの笑顔を浮かべ…よかったな、これで乳児じゃなかったら、奇声を上げながら街を駆けずり回っていたところだ。

そして、やっと落ち着いたとき。

 

俺は決心した。必ずやこの世界で聖地巡礼をしてみせると!齢9ヶ月のことだった。

出来たらハンターにもなりたい。ハンター世界の空気にはタンパク質が含まれていると聞いた、それならワンチャンあるのではないか。

 

 

キャッキャウフフと笑っている俺を、母は優しく撫でてくれた。

第2の母よ。あなたの息子は既に将来の夢を決めました。これで、小学校の作文で書くことには困りません。(小学校があるかはしらんがな。)

 

 

じゃあ、その過程でキャラにも会いに行くのか。答えは微妙なところである。

 

 

当たり前だが、キャラが嫌いとかいう訳では無い。それに、会ったとしたら一人の人間として誠実に対面したい気持ちもある!

相手は、生きている人間だ。会話を重ね、意思疎通を図れる以上、推し声優に出会った時ぐらいのテンションで臨みたいものである。

 

 

だが、それには問題がある。

そう、相手は会話のできる存在なのだ。

 

ここで思い出して欲しい、前世の俺の生活を。

全く人との会話が無いのである。もはや活字が友達だった。ベッターでさえ壁打ちしかしないような男なのだ。

仕事の時に話すだろうって?業務連絡を会話にカウントするのは人の尊厳として認めたくない部分がある。察してくれ。

 

まあ、長々と御託を並べたが一言でいうとコミュ障。これに尽きる。

 

キャラに会ったとしても、まともに会話ができる自信が無い。

そして、そんな醜態を晒すと分かっていてキャラに会いに行く勇気などない。

クソう、俺が営業成績でトップを張れるような話術を持っていたら、クジラ島に駆け込んでいたのに。主人公ェ…会いたいよぉ。

 

 

モブ生活で培ってきた平凡な表情筋は、顔中の穴という穴から液体を垂れ流すなど非凡なことはさせてくれない。その代わりに、心の中では床ダンをしながら顔をくしゃくしゃにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな出来事から、早数年。先月、3歳のお誕生日を迎えた俺です。

 

 

ただいま、両親の寝室に向かっています。

 

俺の両親は、優しい穏やかな母と、強面で少しツンデレの入った父である。

 

中身が成人しているせいで、あまりはしゃぎ回ったりしない俺を気味悪がることなく愛してくれるできた親だ。

 

コンコンッ

 

「…父さん、母さん。……産まれたの?」

 

 

そう、俺が今寝室へやってきた理由は母の出産が終わったからだ。

先程、ドキドキしながらリビングで待っていた俺のところに助産師さんがやってきて、無事に産まれたことを教えてくれたのだ。

まだ、妹なのか弟なのかも分かっていなかったが、新しく家族が増えるのだ。

昨年の秋頃に母のお腹が大きくなり始め、その事を伝えられた時は年甲斐もなくはしゃいだものだ。前の人生では一人っ子だったのもあり、弟や、妹の存在には憧れていた。

あの時、ほぼ無表情ながらもソワソワしていたのが伝わったのだろう、両親がこちらを微笑ましいげに見ていた。

 

そして遂に、新しい家族との初対面である。

 

木の軋む音を立てながらドアが開く。

中には医者や助産師がベッド近くに立っている。少し離れたところで険しい顔をした父がいた。何も知らなければ不機嫌なのかと慌てるが、3年と数十日共に過ごしているうちに理解した。あの表情は緊張しているのである。

大方、母の出産の行方に不安を覚えているのだろう。

 

それも、部屋にやってきた俺を見つけ、眉間のシワが消えた。それでも、まだまだ強面なのだが、緊張もほどけたのだろう。

俺を抱き上げ、母のいるベッドの方へ連れていってくれた。

 

母の腕のなかを覗き込むと、まだくしゃくしゃした顔の赤ちゃんが抱えられていた。

 

「ほら、お兄ちゃんですよー。」

 

そう言って、赤ちゃんの顔をこちらに向ける。

まだ目が見えていない事はわかっているが、小さく手を振ってみた。

 

 

 

「兄弟仲良くするんだぞ。」

 

「…弟?」

 

「えぇ、そうよ。ヒソカって呼んであげて。」

 

「…ヒソカ。」

 

これから、お兄ちゃん風を吹かせてブイブイ言わせようと考えていた矢先である。

 

どうやら、俺の弟の名前はヒソカというらしい。とても、耳に馴染む音である。

よく顔を見ると父譲りの赤い髪が数本、頭に乗っている。

 

……うん、まだ決まった訳じゃない。

ヒソカ=モロウ相手にお兄ちゃんムーブは(怖くて)出来ないが、目の前にいるのは俺の弟である。ムーブをかましても何ら問題はないだろう。

ないったら無いのである。

 

10分ほどの対面を終え、これ以上は母子の体に負担が掛かるからとリビングへ連れてこられた。

また大人しく、窓の外を眺めている風にしながら俺は現実逃避に走った。

 

 

 

 

 

だが、そんな葛藤()も長くは続かなかった。

数日後にはハリのある肌になり、物音に反応しているのか近づくと偶に声をあげるようになった。

小さいものに可愛さを見出すのは、人間の性なのだろう。弟が可愛くて仕方がない。

 

夜泣きは頭に響くし、何が気に入らないのかずっと泣き止まない時は、五月蝿くて自分から部屋を出ていく時もあった。

しかし、毎日見ても飽きない弟に俺は毎日会いに行った。

 

じっと俺を見守ってくれていた両親も、俺が弟に馴れてきたのを見て安心したようだった。

 

半年経てば、目も見える様になり人の後をハイハイで付いてくるようになった。

俺の後を付いてくるのを見た時、その様子が健気に思え、一層お兄ちゃんムーブに力が入る。

 

「ゔぅー……あう。」

 

床を叩くようにしながら這いずってくる。

フサフサに生えてきた髪を揺らしながら、こっちに来る弟は只今食後の運動中である。

 

「……頑張れ。」

 

子供の成長に詳しい訳じゃないため、ちっさい弟が必死にハイハイする姿を見ると、大丈夫なのか不安になる。

 

ズズズ……。

とりあえず、進行方向にある障害物をどかしながら、ラグの上で弟の到着を待つ。

 

「ゔっ。」

 

「……よくやった。」

 

 

こんな時いい褒め言葉が出てこない事にもどかしさを感じる。

無事、しゃがんで待っていた俺の元に到着した弟は、俺にぶつかり進行停止した。

そのまま抱き上げる様に、膝にのせる。

こちらもまだ3歳なのでね、立って抱き上げると揃って倒れかねない。

頭でも打って、将来バカになるのは遠慮願いたい。

 

おや、ご機嫌なようで。

よいよい、俺も新しい絵本を貰ってご機嫌だからな。

ニコニコしてる弟をそのまま、近くの絵本に手を伸ばす。最近はハンター文字を読めるようになって、読み聞かせもできるようになったのだ。

こうした所から、兄貴風を吹かせていくのだ。

日々の積み重ねだよ、ワトソン君。

 

 

 

よくブラコンになったキャラの様に『きゃわわ、天使みたい!マジ可愛いんだけど!?!』と取り乱すほどでは無い。流石に俺がそれを言うのはキモイ。

 

が、それでも大好きなのだろう。

当たり前だが、他人にここまで甲斐甲斐しく世話を焼くことはないと思う。

やっぱり弟だからという感情があるのだ。

そして、俺の弟はヒソカである。

 

うん、しっかりお兄ちゃんムーブしてやるからな!

 

 

 




これからしばらく、主人公とヒソカの幼少期が続きます。
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