口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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お出かけ回です。よろしくお願いします。



花子さん、男子トイレにもいるっぽいです。

意識が飛んで、気づくと午前の時間が過ぎていた。

どうも、人形劇が出来ないお兄ちゃんです。

 

 

父も、仕事先から帰ってきて外出用の服に着替えていた。スーツ似合ってますよ。

……どっかのヤクザかと思ったけど。

ほんと強面がすぎる。

 

さて、問題の俺の格好ですが……。

 

なんということでしょう。いかにも下町のガキんちょといった洋服は、シワのないシャツと半ズボンでシティーボーイ風(死語)に。

 

毎晩、自然乾燥と称しドライヤーなんぞかけたことのない天パが、しっかり解かされイケイケにセットされています。

 

匠()に渡された上着には、ファーが付いておりまだ寒い外に出ても安心設計。仕上げにクマのリュックを背負えば何処でも行ける俺の完成です。

 

……頑張った。フリフリを回避したのだ。

今回のクマリュックは妥協できるラインだ。

今までは、洋服にこだわってると思われるのも恥ずかしいし、母が選んでくれたものを断って悲しませるかもしれない、と思い何も言えずにされるがままだった。

しかし、今日の俺は一味違った。

「どれがいいかしら。」と洋服をいくつか見せられる中で(そう、いつも発言権はあったのだが、なにぶん選択肢が可愛いすぎた。)

「……もう少し格好良いのがいい、な。」

頑張った。素晴らしい努力だ。約4年越しの成果に俺は感動している。

もじもじしながらも言った言葉は伝わったのだろう。ニコニコしながら、母も答えてくれた。

「あらあら、そうね。男の子ですもの!」

いつも頷くだけだったが、好みを伝えることは喜ばれるらしい。

無事、格好良い男の子風の服が用意された。

ほんの少し、あるなら最初から用意して欲しかったなと明後日の方を見ながら思った。

 

 

 

とまあ、こういった経緯により格好良い俺が爆誕したわけだ。

 

ちなみに、弟ことひー君は白と黄色のトップス(裾にはフリフリがついている)にモコモコの上着を着ている。全体的に可愛らしい感じに仕上がっていた。

 

……ちゃんと、写真も撮っておいた。

ひー君が大きくなったら、この子の小さい頃は〜って話しながら誰かにみせてあげよう。楽しみだ。

 

 

そうして家族皆で車に乗り都市の中心へ向かう。

さて、そろそろ気になる行先の発表をしようではないか!

 

テケテケ、デン!

ずばり、バイキングレストランだ!

 

ねっ、ひー君の食べれるご飯もあるんだぞ。楽しみにしていたまえ。

 

チラッと、子供用の座席に座っているひー君を見てみる。どちらかというとムスッとした表情だが、何を考えているかはいまいちわからない。

 

父が車を運転して目的地まで連れてってくれるんだ、ちなみに助手席は母が座っている。後ろ2席に子供といった感じだ。

 

まあ、何もない車内は暇かもしれない。俺も失くしたくないので絵本は家に置いてきている為、手持ち無沙汰になるかと思った。が、そんなことは無かった。

 

車窓から見える外は、最高に楽しい。

 

もともと、外出は好きなのだ。

店に並んでいるものを見るだけで、前世では見たことも無い道具が見られたりする。生き物とかもだ。

ちなみに今見てるのは八百屋だ。青信号になるまで、その店先にあるドきつい色のフルーツを観察している。林檎の横にあるんだからフルーツだろ、多分。

あっ、3つ買っていった人がいた。よくあんな赤と青のマーブル模様を食べようと思ったな。

甘いのだろうか。

 

信号が変わったため、独特なセンスの八百屋を後ろに俺は瞬きをしつつ窓から視線を外す。

ひー君の座高では、まだ窓から外が見えないだろうと様子を見ようとするとひー君がこっちを凝視していた。

 

とっても驚いた。ちょっとこっちを見ているとかではなく、紛うことなき凝視だ。何を思ってこっちを見ているのか。

 

「……どうした。」

 

「…。」

 

何も言わないー。ねぇ、どうしたの?何か顔に付いてた?あー。でも、いー。でもいいから言って欲しい。

何もない間がつらい。

 

「…待っていろ。」

 

面白い話なんぞは出来ない。今日の朝に身をもって知った俺は、同じ轍を踏まない男なのだ。

 

クマの腹のチャックを開け、中から薄めのハンケチを取り出す。

そして、それを折り紙の要領で折っていく。

……出来た。多少、耳が曲がっているが良いだろう。元々、手先は器用な方だと思っていたのだが、幼児の短い指だとやりにくかったのだ。仕方ない。

 

出来上がった猫の顔(のつもり)をひー君に渡す。

シートベルトのせいで渡し難かったが、しっかり握られているのをみて手を離す。

 

「…猫だ。」

 

あぁ!もう一言つければ良かった…。

これで遊んでね、とかさぁ。今更言うのも変な間ができてしまう気がするし諦めた。

 

どうだろうかと様子を見れば、まあまあだろうか。

ジッと、手の中の猫を見ながらその手をニギニギしている。

 

…これは、お兄ちゃんムーブ出来たのでは?

いいぞ、弟を思いやれる良いムーブだ。なるほど、世の中のお兄ちゃんは移動中の対応も出来るのかもしれない。

 

 

満足して、また街の観察をしようと窓の方を向き、流れる景色に目をやると、

 

「だぁ。」

 

弟の唸り声がした。何事かとまた弟の方を向くと、そこにはただのハンケチに戻ったそれをこちらに突きつけてくるひー君がいた。

どうやら、猫の型が崩れてしまったようだ。

ハンケチを受け取り、また折っていく。多分、直せ的な要望だろう。

そして出来上がった猫を渡してやると、さっきよりも嬉しそうにして受け取った。

細められている目と、ぷにぷにのほっぺを持ち上げる様はご機嫌な空気を伝えてくる。かわいい。

 

猫を握ったまま何度か手を振り回し、また引っ張り始めた。それから猫の耳を掴んで引っ張った途端、型が崩壊した。

なるほど、さっきもこんな感じで崩れたんだろう。

 

「だだだ。」

 

まぁ、糊付けしてるわけではないし仕方ないか。

突きつけるように出されたハンケチを貰い、その流れで折り直す。

そして出来上がった猫を渡してやる。嬉しそうな顔をして受け取る弟を見ていると、さっきよりも早い段階で崩壊したハンケチが返ってきた。

 

まさか、この流れが気に入ったのか?

 

最初よりもクオリティが上がってきた猫を渡すと、やはり崩されたハンケチが戻ってくる。

 

それから俺は、レストランに着くまで延々と猫を折り続けたのだ。結局街の観察は出来ずじまいである。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

やってきました!レストラン!!

もう本当、着いてよかったよ。何度も何度もハンケチを折って…。

最後の方なんて手渡そうとする段階で耳引っ張られて崩されてたから。

 

車から降りた父が俺を抱き上げて、ドアを閉める。

 

大きなビルに入っているレストランは、明るい内装で清潔感がある。フロアの大部分を占めていることもあり広い。ゆとりを持って置かれているテーブルは時期的なこともありそのほとんどが埋まっていた。

シックな木製の扉は開けたまま固定されており、オシャレな店への敷居をさげている。

 

父が受付兼会計のカウンターへ行き、予約している旨を伝えるとそのままスムーズに奥へと通された。

流石、スタイリッシュだ。こんな男になりたい、参考にさせて頂こう。…まずは髭かな。

 

ネームプレートが置かれた4人用のテーブルは、うち2脚が子ども椅子という万全さである。

 

バイキングのルールを説明した後、一礼して去っていった店員さんを見送るのもそこそこに、渡されたプレートを持って両親の方をみる。

 

「あらあら、楽しみなのね。早速選びに行きましょう!」

「そうだな。こいつは俺が連れていくからお前が面倒みてやれ。」

 

ひー君を片手で抱え込んで立ち上がった父は、空いている手の方で自身のプレートを持った。

 

「そうね、じゃあジールちゃん一緒に行きましょうか。」

 

母に手を引かれ料理の並んでいる区画に行く。

最近、両親が俺の心を読んでいるのではと疑うレベルで意思を汲んでくれる。

やだ、俺喋らなすぎ…!?

 

そう思うのも仕方ない。気になるものはすぐ気が付いてプレートに乗せてくれるし、悩んでいる時もそれを分かっているかのように提案してくるのだ。

 

「悩んでいるの?ならデザートは後でまた選びに来ましょう?」

 

「…うん。」

 

「あぁーう。」

 

「それより、スープはどっちがいいかしら。」

 

「そっちのカリー風のでいいだろ。」

 

「…ぎゃうぁ。」

 

当たってるんだよなぁ。しっかり甘口なのも確認して頂きありがとうございます。

俺、ダメ人間になっちゃいそうだよ。まだひー君の方が喋ってるよ。どうやら、俺と同じカリー風のスープに興味があるようだが、流石にピリ辛はまだ早いだろう。ミルクスープにでもしときたまえ。

 

「そうね、ヒソカちゃんはミルクスープにしましょう!」

 

ほんとに心読まれてないよね?

 

皆で仲良く料理を選び、テーブルに戻ってきた。

父は、魚料理が中心に意外と酢の物が好きなようだ。

母が、サラダと肉。特に鶏肉が多い。

俺は、肉。ローストビーフとかも好き。朝頑張ったおかげか、トマトは今回見逃してくれるらしい。ガッツポーズである。

弟は、リゾットを更にやわらかくしたものと、スープだった。

ここら辺では米をあまり食べないので、俺もリゾットをよそってもらった。白米ではないが、懐かしの味である。

 

味の感想を言ったり、食べあいっこしたりと和気あいあいな雰囲気だ。

 

そもそも、今日のお出かけはただの外出ではない。

2月14日……

そう、バレンタインである。

しかも両親の結婚記念日もセットでついてくる。

どうやら父がバレンタインに合わせてプロポーズをしたらしく、昨年母がこっそり教えてくれた。

意外にもフェミニストな父である。ぜひかわいい彼女ができた際にはデート先の相談にのって欲しいものだ。

 

美味しい肉に舌鼓を打ちつつ、店内を見渡す。

埋まってる大半のお客さんはきっとカップルとか夫婦なんだろう。

ちょっと前の俺なら様式美に則って爆発させる所だが、聖地巡礼の準備で忙しいから嫉妬している暇もないのだ。ないんだよ。…末永く爆発するといいさ。

 

なんて、悟りでも開けそうな事を考えながらカップル達を観察しているとある1組が目に止まった。

 

…ンッブッフォ!

 

若っけえぇぇぇぇぇ!!

危うくスープを吹き出す所だった。そんなベタな。

ゴボッ、ハッ。むせた。

 

店内のカップルの1組、あれシルバ=ゾルディックでは?待って、若い。分かっていたけど若い。

キャラに会えた喜びとかよりも、若かりし頃の姿に驚いていてしまった。

 

はぁ〜、イケメンやわ。そしてもしかしなくても、その前に座ってる美人はキキョウさんでは?

マジか。黒髪つり目の美人じゃん。キルア君あの人の顔面切りつけたの?勇者じゃん。

 

はぇぇ。確かにここはパドギア共和国のお隣さんですし?行動範囲としてはおかしくないと思いますよ?…それにしても、堂々としてらっしゃいますね。まあ、顔が割れてないからコソコソする必要もないんだろうけど。

 

あっ、立った。キキョウさんのお腹大きくないか?着ているワインレッドのシンプルなドレスが途中盛り上っているので、多分妊娠しているのだろう。

…時期的に考えてイルミ君ではなかろうか。なるほどなるほど。

妊婦さんの身体を気遣ってか、シルバさんがエスコートしながら会計のカウンターの方へ歩いていった。

 

俺はスープをちびちび飲みながら、その姿を目で追いかけるも完全に見えなくなったところで追うのをやめた。

 

途中、こんなに見て大丈夫なのかと疑問に思ったが、多分平気だろう。だって周りの人達もチラチラ見てたし、なんなら母も俺の視線が気になって彼らの事を見てた。

「あら、綺麗なお2人ね!」

そうですね、職業知らなきゃそんなもんだよな。

 

途中、疲れて寝てしまったひー君がいたものの楽しく食事の時間は過ぎていった。

ちなみに、デザートはチョコとフルーツを中心に父に選んでもらった。中にあのドきついマーブルが見えて慄いたが、意外にも甘酸っぱくて美味しかった。

見かけによらないな。

 

 

 

美味しい料理に満足した俺達は会計を終えて店を出た。

「父さん、トイレに行ってくる。」

 

「1人で大丈夫か。」

 

「うん。」

 

食べすぎたかもしれない。内側から急かされる感覚を押さえ込みつつ、案内表示に沿って足早に進んで行く。最後の曲がり角を吸い込まれるように曲がった。

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

何の変哲もないタイル張りの床に、いくつかの個室。そこには1人の人物が立っているが、その気配は一般人であれば誰も気づかない程には薄いものだった。

 

 

side シルバ

 

途中、依頼が入ってしまったが妻との約束に影響が出なかったのは幸いした。

 

無論、事情を伝えれば二もなく理解をしてくれるだろうが、これから外出も難しくなる身だ。出来れば共に出掛けたくなるのも当然だろう。

 

気分良く、先程後回しにした処理を済ませ。無事手配した通りに事が進んだことを確認する。

ターゲットの確認をさせ、そろそろ契約も成立しただろうと依頼人の元へ送った執事と連絡を取ろうとした。

 

その時、外の喧騒に紛れ此方に近づく気配がした。

様子からして、普通に手洗い場を利用したい者だろう。気づかれるのも面倒だ、とさらに気配を消しつつ入口の方を見る。

 

駆け足で入って来たのは未だ幼い少年で、黒髪を揺らしながら一直線に個室へ入っていった。

しばらくすると出て来たが、どうやら手が届かないらしい。

蛇口の取手にギリギリ届かず、縁に手を掛けながらプルプルと背伸びをしていた。

 

妻と同じ髪色を見ていると、我が子もこの様に育つのだろうかと思い始めた。出来れば銀髪が好ましいが、黒髪で産まれてくる可能性も十分にある。才能についてはどうしようもないが、立派な暗殺者に育てあげる事は可能だ。

然して、育てあげる時期がある事は承知の上だが、実際に見ていると想像よりも小さいものだ。

 

諦めることなく手を伸ばし、その指先が取手を掠めた。惜しくも届かず、反動で半歩下がったのを横目に、素早く背後まで行き取手を上に引き上げる。

 

急に水が出てきて驚いたのだろう。僅かに揺れた肩を見ていると、少年は、何かを探すように辺りを見始めた。しかし、こんな子供に場所を悟られる程鈍ってはいない。

何も見つからなかったであろう少年は、手を洗い、予め出しておいたハンケチで拭いだした。

先程と同じように一瞬で距離を詰め、水を止めて直ぐに離れる。

流石に何かあるだろうと勘づいたのか、壁の端から端までをじっくり見ていく。先程からあまり表情が変わらない少年は、どうやら勘がいいらしい。

はっきりとはしないが、俺の方をぼんやりと向き、小さく口を動かした。

 

「…、…あ、ありがとうございます。」

 

ぺこりと頭を小さく下げ、勢いよく飛び出す気配が遠ざかると同時に絶を解く。流石に姿を見られた訳では無いだろうが、小さいながらも才気に溢れている少年は礼を言えたことで満足したらしい。

 

慣れない事をしたもんだと思いながら出入口を見つめる。謝礼の前に小さく「…幽霊」と呟いたのは聞き逃さなかった。

今日は愉快な事が続くものだと笑いながら、人混みを歩く。

これ以上妻を待たせて仕事の事を疑われる訳にもいくまいと、歩調を早めて待ち合わせ場所へ向かった。

 

 

今度、産まれる我が子にも会わせてやりたいものだ。

 




次回から、ヒソカが喋り始めます。

お気に入り、評価等ありがとうございます。励みになります。
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