口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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今回は警察署内からのスタートです。

よろしくお願いします。


小衝いた。

 軽い音を立てて置かれたカードに、目の前の警官達は目を見開いた。

 同行のために声をかけた時から一切の動揺を見せることなく対話する男は、自分達の想像を遥かに超える存在なのだ。

 

「…………有益な関係を築こう。」

 

 足を組み余裕を見せるようにこちらを見据えるジールは、ドタブカから視線を逸らすことなく返答を待っている。

 

 小さな空間が一種の威圧感で支配されかけた時、ヘレスメは声を上擦らせその空気を破った。

 

「分かりました。上と掛け合って来ますので時間を頂いてもよろしいですか?」

 

 その表情はギリギリで作られたものであり、一瞬で雰囲気が変わったジールに呑まれているのは明白であった。

 我に戻ったドタブカは功労者を見上げ、その意図を読み取り心の中で礼を述べる。

 

「……わかった。」

 

 背もたれに身体を預け、目を瞑ったジールは警察側の対応を待つつもりなのだろう。

 いつもより丁寧に立ち上がったドタブカはヘレスメに着いてくるよう視線で促し、扉の方を向いた。

 

 そして数歩進み手をドアノブにかけたところで、背後からかけられた声にドタブカの心臓は止まりかけた。

 何事かと二人がゆっくりと振り返れば、携帯を取り出したジールがそれを使いたい旨を伝えてくる。

 全くもって心臓に悪い男だと考えながらも、顔には出さず快諾したドタブカは今度こそその個室から退出した。

 

 上司が許可を出すことは分かっている。あとはこの短時間でいかに情報をまとめられるか、プロハンターを相手に無能を晒すわけには行かないと二人は頭を悩ませた。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

(ひー君、闘技場満喫してたなぁ。楽しんでるなら呼ばない方が良かったか?)

 

 三十分後に再会の約束を取り付けたジールは、一人取り残された個室でだらけていた。

 取り出した伝家の宝刀はジールの想像を超えた効力を発揮し、ほぼ喋ることもなく話が進んでいったのだ。

 ちょっと信用が上がればいいかなと考えていたジールからしてみれば、否定的な言葉が一切出てこなかったことにハンター協会のやばさを改めて実感する出来事だった。

 

 くわばらくわばらと手を擦り合わせて拝み倒した後に、ライセンスを鞄へ仕舞ったジールは目の前の写真に目をやる。

 

 置きっぱなしにされた玄関ホールの写真には、壁にかけられたツバメのモチーフがくっきりと写っていた。

 見覚えのあるモニュメントと、既視感を覚える事件にジールは首を突っ込まずにはいられない。

 

(ツバメの会に所属している金持ちが襲われる……デジャブだな。)

 

 ここ数年でジールが集めてきた情報はかなりの数になる。自身の掲示板やサイトから情報を拾い集めたり、ベレーくんや情報屋を頼って手に入れてきたもの達だ。

 

 ラケルスス家の方は不本意ながらも、暫く滞在していたのである程度の事は分かっている。

 歴史ある名家だとか血筋だなんだと騒いでいるが、あれらも決して妄言ではない。

 本当に過去長い間その土地で貴族や資産家などと名前を変えてやってきているのだ。

 

 暗殺者を送り込まれたりと、人格者というわけでもない彼らがああしてデカい顔を出来るのには理由があった。

 先祖代々珍品、希少品、骨董品など昔からの歴史的価値やその有用性を買われた品の管理をしてきたのがラケルスス家である。

 国からの莫大な管理費が支給されており、品々の保護や管理を任されているのだ。

 

 長く続いているからそう言った品々があるのかなど正直分かったものでは無いが、その役割上新しく珍品が届けられることもある。

 まさに雪だるまのようにその立場を大きくしていったラケルスス家は多少の事では潰れない面倒くさい家となった。

 

(まぁ、俺的には人選完全にミスってんなとだけ言っておこう。)

 

 しかし、長く続いているものが腐敗するのは世の常だとでもいうように、近年のラケルススもその役割を真っ当にこなしているとは言えなくなっていた。

 

 ほぼ自室で勉強やらマナーやら修行やらと引きこもっていたジールにも分かるほどに、あの家の人達は仕事をしていなかった。

 どこかしらの上流階級のパーティーに顔を出したり、自身の屋敷で催し物をしたりと毎日着飾っているのだ。

 

 そしてそれを指摘した外部の者や、その役割を貰い受けようとした者が過去にはいたらしい。

 その報告書を読んだ時には、ジールも全力で応援したがその結果は良いものでは無かった。

 

 百種類近くの品々を完璧に管理するノウハウはラケルススにしか伝わっておらず、無駄に頭が回る歴代の当主たちは美味しい蜜を逃さぬよう物だけでなく、その管理方法も外部へ漏らさないよう徹底していたのだ。

 よって、代わりになる者が現れないためラケルスス家はその立場を脅かされることもなく今に至っている。

 これが、面倒くさい家と言われる所以だ。

 

(仕事しないのに、ギリギリのラインは守ってくるから嫌なんだよ。)

 

 まあしかし、それを知って大人しくしているジールでは無い。

 脱走の目処が立った時に、おっさん達が出かけているのを見計らってパクって来た物がある。

 

 いとこが生まれる前までは、ジールも管理方法の一部を教わっていたのだ。

 正直、国が大金をかけるのに納得出来るくらいには珍しい物や、有用性の高いものが多くジールは本格的に人選を心配した。

 

 そして、管理方法をしっかり学んだ物の中から拝借した(返すとは言っていない)のがジールの持っている鞄である。

 

 生き物以外ならいくらでも物が入る優れものだ。但し、カレーは入れちゃいけない。中でひっくり返って中の物がカレー臭くなるからだ。

 入り口さえ通れば体積も質量も増えない、入れた物さえ忘れなければ(この点だけは相性最悪)まさにドラ〇もんを名乗れそうな性能であった。

 

 肌身離さず持ち歩いている相棒、又の名をオタクの闇。それを労わるように撫でたジールは、タイミングよくかかってきた携帯を手に取った。

 

「…………。」

「……何か言ってよ。」

 

 受話器のマークを押してから、無言で耳に押し当てたジールは数刻前に別れたイルミからの言葉を待った。

 

「……あぁ。」

 

 念のため廊下の方に意識を向けながら、返事をしたジールは電話の向こう側から聞こえてくる騒がしい音に耳を傾ける。

 

「まあいいけど、そっちは大丈夫そうなの?」

「……燃えた金持ちのことらしい。」

「なに、人体発火?」

「……いや、郊外の屋敷だ。」

 

 多少の食い違いなどもはや誤差の扱いだ、ジールの言葉二割とイルミの読解力八割で状況を伝え終わったジールは黙りこくったイルミの様子を心配していた。

 

「ふーん、ならこれも関係あるかも。」

 

 警察側も何かしら掴んでいるはずだと、ジールが伝えた後のことだ。

 僅かな移動音のあとにイルミから画像が送られて来たそこには、あからさまに屋敷の周りを巡回している警官達の姿が写っていた。

 

「暇つぶしに今夜の仕事先を見に来たらこれだったんだよね。」

 

 先程見せられた写真の屋敷と同程度の建物には何かがありますよと言わんばかりの警備員がおり、昨日の放火と関係があるように思えてくる。

 

 それ等を踏まえて今までの警官達の発言を何とか精査しようとした所で、ジールはこの部屋に向かってくる気配を察知した。

 

「……この後は?」

「昼でも食べに行こうかな。」

「分かった。」

 

 ジールが警察に連れていかれようと気にしない。マイペースに過ごすらしいイルミは、ジールの声色が変わったことを察して秒で通話を終了した。

 

(珍しくデレてきたな。)

 

 こちらを心配してくれたのだろうと、図太い解釈をしたジールはノックの後に入ってきた見覚えのある二人に意識を向ける。

 

「お待たせしました。」

 

 ダンボールを抱えて戻ってきたヘレスメは、ジールに笑顔を見せながら荷物をテーブルの上に置いた。その後に続いて入ってきたドタブカは相変わらず厳つい顔面をしている。

 

 ジールは許可が出たのかとドキドキしながら目の前に座るドタブカを観察していた。

 

「上に確認をとってきた。資料の閲覧も問題ない、そこの箱から取ってくれ。」

 

 雑談などを挟むことなく淡々と進んでいくやり取りを、ジールは有難く思いながらヘレスメが開けたダンボールの中を見る。

 

 半分には物的証拠となるナツメトカゲの舌や、破片などが保管されている。残りはファイリングされた資料が綺麗に収められているが、ジールはそれ等を手に取る前にあるものに手をつけた。

 

 フィルムで保護されているそれは一枚の手紙だ。

 

(……やっぱり予告状が来てたか。)

 

 ジールには最初の問答で不審に思った部分があった。

 ドタブカがジールに犯行の有無を問いただした時の事だ。彼は“犯人”ではなく“共犯”かとジールへ訪ねてきたのだ。

 ジールはこれを聞いて他に主犯が分かっているかのような発言だと思った。

 

 監視カメラで見つけたりでもしたのかと考えたが、先程イルミから送られて来た写真を見てひとつの仮説を立てた。

 警察の事など刑事ドラマでしか知らないジールからすれば、犯行前に警察が動く理由は予告状一択だ。

 

 一瞬で燃え尽きたにも関わらず、一般人に被害が無いのも警察が予告状を見て事前に行動したからだと考えれば中々に筋が通る。

 

 そしてジールはもうひとつ気になっていたナツメトカゲの舌を取り出す。

 透明なケースに入れられたそれは形からしてもジールが売っていたものに間違いない。

 

 そのままケースを裏返し油袋の部分を観察したジールはひとつ納得するように頷いた。

 この間も、二人の警官は緊張しながらその様子を見ていたが集中しているジールには関係のない事だ。

 

(やっぱり相手は念能力者か……。)

 

 着火剤として有名なナツメトカゲの舌だが、本来は放火に使われるようなものでは無い。

 販売する際には、安全面から中の油を全て抜くように規定が設けられている。裏のルートでは油入りの舌が出回ることもあるが、ジールはクリーンな販売をしているのだ、当然規定に沿って油抜きをしていた。

 

(それに舌の油だけ使っても一部屋吹き飛ばすのが限界だろう。)

 

 屋敷を一瞬で燃やす程のポテンシャルはこの舌には無い。それを考えれば必然的に出てくるのは念能力者であった。

 

 ケースに入ったナツメトカゲの袋には、ジールが油を抜く際に開けた穴がある。その部分を中心に凝で舌を見れば僅かにオーラの残りが確認出来た。

 

(わざわざ道具を使ってくるのだから具現化系は無いだろう。時間が経ってもオーラが残っているということは放出系か、屋敷を燃やしたことを考えれば強化系や操作系もアリだな。)

 

 ふむ、と顎に手を当て思考の海に沈んでいたジールだったが、ここが取り調べ室であったことを思い出した。

 

 顔を上げれば、こちらを伺うようにじっと見ている二人と目が合う。それに驚きながらも、話を進めるためにジールははじめに礼を述べた。

 

「……ありがとう、色々分かった。」

「それだけでいいのか。」

 

 ドタブカが言っているのは取り出された予告状とナツメトカゲの舌の事だろう。

 ジールの知らないところで資料集めに奔走していた側としては拍子抜けである。

 

「いや、残りは後で見させてもらうが……、これについて聞きたい。」

 

 そう言ってジールが指したのは予告状だった。

 ジールの指につられて視線を移した二人は、これがどうしたのかと首を傾げていた。

 

「もう一件、届いてないだろうか。」

 

 思い当たる節があるのか、ハッと表情を変えたヘレスメはジールの方を見て頷いた。

 

「あります。今日の夜に犯行を予告したものが届いていると聞きました。」

 

 コピーなら直ぐに持ってこれると、手帳を確認したヘレスメはジールの返事もそこそこに出ていってしまう。

 

 そして残されたジールとドタブカは、互いに気まずい思いをしながら黙り込んでいた。

 ジールはファイルを取り出し読むふりをしながら沈黙を誤魔化し、ドタブカはコーヒーでも買いに行こうかと立ったり座ったりを繰り返している。

 

 そろそろ限界だとジールが悲鳴を上げかけたその時、個室のドアーがノックも無く開け放たれた。

 

「ドタブカさん!変質しゃ……来客が!」

 

 滑り込むようにして入ってきた若い警察官はとにかく慌てているようだった。

 きっとドタブカの居場所を聞いて走ってきたに違いない。肩で息をしながらドアーに手をついている警官は縋るようにドタブカを見た。

 

 慌てるような人物が来る予定はなかったはずだと、疑問に思いながらドタブカがその警官の方を向き詳細を訪ねようとする。

 その光景を見ながら、警官が言いかけた変質者の言葉に心当たりのあるジールは少し気まずそうに声をかけた。

 

「……すまない、俺の連れだ。」

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 先程の取り調べ室から移動したジール達は会議室の様な所で向き合うような形で集まっていた。

 

 片側には、ドタブカと予告状を持って戻ってきたヘレスメが微妙な表情をしながら座っている。

 その対面にいるのは入り口まで弟を迎えに行ったジールと警官の視線を独り占めしているヒソカだ。

 

(……似合ってるからって放置してたけど、警察署にこの格好は不味かったな。)

 

 ジールにとっては見慣れてしまった奇術師スタイルのヒソカだが、不審者を取り締まる場所では大層な悪目立ちをしている。

 とは言いつつもプロハンの仕事をしている時のジールも中々に不審者だ、弟の前だからとサングラススタイルで生活していなければ速攻で容疑者になっていただろう。

 

 そんなことは棚に上げ、着替えてくるように伝えれば良かったと考えながらジールは持ってきてもらった予告状のコピーに視線を落とした。

 

 そこに書かれているのは犯行場所や時間など見本のような予告だ、なにかの招待状に見えなくもない。

 また、コピーをもらったヒソカは隣でつまらなさそうに眺めていた。用紙をつまみ上げ薄目で眺めている様はまともに考えるつもりがないことを全力でアピールしている。

 

 予告状に書かれている時刻は15時ジャスト、予告通りならばあと30分程で事件が起こるだろう。

 ヘレスメの話では、別の班が現場に向かっているようで放火のあった屋敷の事件とは別で考えられているらしい。

 というのも、人の集まるこの時期は金目の物を狙って犯罪を犯すものも少なくない、またマフィアなどの危険人物が集まっているためオークションの時の警察は多忙であった。

 ぶっちゃけて言えば犯行予告など珍しくなく、中にはイタズラも混ざっている。放火の時に書かれていた名前と今日の犯人の名前も違う物だった為、別事件として扱われていたらしい。

 

(まあ、ツバメの会のことを知らなきゃ偶然タイミングが被っただけとも言えるしな。)

 

「この屋敷まではどれくらいかかる?」

 

 ちらりとヒソカがジールの方を見る、ジールはドタブカ達の方を向きながら予告にあった屋敷の場所を指さした。

 

「今から出れば、15時までには着けます。」

 

 ジールの意図を汲み取ったヘレスメがそう返せば、車を取ってくると言い残しドタブカが部屋を出て行った。

 

「……わかった、君達はそれで来い。」

 

 そう言って立ち上がったジールを、ヘレスメはどういうことかと口を開けながら見上げている。

 大体伝えただろうと満足したジールはそれに気づかないまま。楽しそうにしているヒソカに目配せをし出ていった。

 

 車なんかよりも早く行ける方法があるのだからと、街中を走っていくジールの横に並んだヒソカは建物の隙間を飛び越えながら話しかけてくる。

 

「捕まえるの?」

「……あぁ。」

「ボクも手を出していいんだろう♠」

「……口は塞ぐなよ。」

「分かってるよ♥」

 

 署の中はつまらなかったらしい、出てきた途端饒舌になったヒソカはニコニコしながら道を間違えそうになるジールを案内している。

 

 地図を一々出さないと場所が分からないジールは便利だなと考えながらいつの間にか前を走っているヒソカの後を付けていく。

 人々を下に見ながら信号も無い場所を突っ切る。

 

 予告状に書いてあった名前はなんだったかと思い出していたジールは相手のことについて思い出したことをヒソカに伝えた。

 

「……相手は念能力者だか「 へえ♥」」

 

 珍しく言葉を遮られた上に目の前の人物が興奮しているのを見れば、ジールはわざわざ忠告しない方が良かったかと後悔したくなる。

 気を抜くなと言うつもりが、微妙に逆効果な気がしてきた。

 次から言うのやめとこうかなと、ジールが現実逃避を始めたところで二人は目的の場所へと到着する。

 

 イルミが先程送ってきた写真の場所と同じ所だ。何故暗殺者にも依頼を出しているのかを後で考えたいなと思いながらジールは絶を使って警察官の間を抜け敷地へ侵入した。

 

 何も言わずとも後を着いてきたヒソカを確認したジールは、意味の無い礼儀正しさを発揮して玄関から屋敷の中に入っていく。中を物色しながらリビングの方へ向かへば、ソファーの横に置かれたツバメの像を発見した。

 

(……ビンゴ。)

 

 思わず指を鳴らしそうになったジールは深呼吸をして後ろのヒソカへ振り返る。

 自分は色々調べているが、ヒソカがツバメの会について覚えているかを確かめるためだった。

 

「ひー君はツバメの会を覚えているか。」

「ん?覚えてるよ飛行船のやつでしょ♦」

「……他に知ってることは?」

 

 首を横に振ったヒソカは何かあるのかと不思議そうな顔を見せる。

 その表情を見て嫌な気分になっていないことを確認したジールは自身の調べてきたことを伝えておこうと決めた。

 何から話すべきかと記憶を漁っていたところで、ジールは屋敷内に現れた強いオーラの気配の方へと走り出した。

 

 時間を確認すればまだ予告の時間ではない、先に準備でもしに来たのかと勘ぐりながら屋敷の外れに向えば仕掛けが終わったのかオーラの気配が徐々に弱くなっていく。

 

(話も途中だったのに、タイミング悪いぞ。)

 

 しかし思考とは裏腹に、やっと巡ってきたチャンスを逃すものかとジールは一段とスピードを上げて屋敷の裏へ回り込んだ。

 

 見える影は敷地内の林へ消えようとしている。鞄からナイフを取り出したジールはその背に向かって得物を投げるが躱されてしまった。

 

 ちょこまかとナイフの軌道を読んで避けているらしい影にイライラを募らせたジールは距離を詰めて数本のナイフを同時に投げる。

 

 そのうちの二本は相手の胴体と足に向かって真っ直ぐ飛んでいく。残りのナイフは同時に投げるのに慣れていないからか、影から大きく外れてしまっていた。

 

 その事に気づいている相手はそれまでと同じように二本のナイフを避けた、残りのナイフも掠ることなく落ちていくだろうと影が逃亡しようとしたところで、その背中にナイフが刺さった。

 

 死角からの攻撃にいつナイフが投げられたのかと驚き振り返れば眼前にはオーラが迫っていた。

 

 ジールは動きを止めた相手をオーラで簀巻きにしながら自身の足元へ引き寄せる。

 

 相手がナイフの軌道を正確に読んでくることを逆手にとり、避けないであろう場所でナイフを止めたのだ。

 

 落ちるはずだったナイフが見事相手に刺さり捕らえる隙を作ったジールは見事にオーラで捕まえた。

 こちらに引っ張った時に固定されたナイフが肉を切ったのはご愛嬌だ。

 

「あれ、もう捕まえちゃったの♠」

 

 置いていかれたヒソカが窓を乗り越えてジールの元へやってきた頃にはロープで手足を縛られた男がジールに監視されていた。

 

「ボクも楽しみにしてたのに♦」

「……。」

 

 落ち込む仕草を見せながらジールの足元にしゃがみこんだヒソカは不満をありありと見せながらジールを見上げた。

 呼び出しておきながら置いていったことに少々の罪悪感を刺激されたジールは、息を吐いて近くに建っているビルを指さした。

 屋敷の裏に存在するその屋上は、こちらを監視するのにピッタリだろう。

 

「……あちらが当たりだ。」

 

 聞いた瞬間目の前から姿を消したヒソカを思い、これでチャラかなと考えたジールは屋上で引き止めた相手をいつ解放するか、ヒソカの動きを予想しながら探っていた。

 

(固まったままの相手はつまらないだろうし、サービスサービス)

 




次回はツバメの会について進展します。

ここまで読んで下さりありがとうございました。
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