口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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今回はまったり導入回です。時期としてはハンター試験から少し経った辺りになります。

よろしくお願いします。


第四章 放浪期
訪れたのは流星街


 

 不要になったものが投棄され、辺り一帯が廃品で埋まっている。背丈以上に積み上がったゴミ山はそこら中に点在しており、遠くの方まで同じ景色が続いていた。

 

(目標確認、人影なし。……本日も見えるのはゴミばかりであります!)

 

 器用にもゴミ山の頂上まで登ったジールは、被っている麻袋をズラして単眼鏡を覗き込んでいる。そのレンズが向く先にはジールの目的地である流星街があるはずだった。

 

(……街まで遠すぎない?)

 

 ハンター試験を終えたジールはネットで目撃情報を集めながらヒソカの捜索に励んでいた。そして数ヶ月のうちにネット上の最低限のシステムを作り終えたジールが次に向かったのが流星街である。

 目撃情報が外部に出ない場所であるため、実際に自身が出向いて現地で情報収集をするつもりなのだ。

 

 趣味と実益を兼ねて行き先を決めたジールだが、流星街の入口と思われる荒野を歩くこと一日、さらにゴミ山に阻まれ三日が経っている。

 事前知識として人が住んでいることは把握していたがその場所までがあまりにも遠かった。

 

(絶対入る場所ミスった気がする。)

 

 方角も見失いそうな景色の中で、定期的に周囲を確認しているジールはやっと大きな建物の影を見つけたばかりだった。

 周りを観察しながら歩いたとしても流石に時間がかかりすぎている、と外枠のみが記された流星街の地図を広げて、ペンで書き込む。

 

(あっちは……南東か?あのデカい建物の周りに街があることを祈ろう。)

 

 壊れかけの冷蔵庫の上で胡座をかきながら地図と風景を見比べるジールは、単眼鏡を鞄に仕舞い麻袋を被り直した。

 

 ゴミ山から飛び降りたジールは所々に残っている車輪の跡を見下ろす。移動手段を間違えたことを薄々感じながらも、ジールはまだ見ぬ聖地をモチベーションに歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 ジールが人を見つけたのはそれから数時間後のことだった。

 だんだんとゴミ山の高さが低くなっていき、地面が顔を見せ始めた所でジールは平屋の建物が立ち並ぶ区画に到着する。

 様子を見るからに住宅地だろうか、と洗濯物がかかっている路地を覗き込みながら辺りを観察しているジールは周囲からの視線に晒されていた。

 

 まあ当然の反応だ。見るからに不審な格好をしている輩が外からやってきたのだ、見るなと言う方が難しいだろう。

 しかし、周りの人々がジールに何かをしてくることはなかった。

 

(流石。来るもの拒まず、奪い去るものフルスイングな流星街さんですわ。)

 

 麻袋の下から盗み見る人々は警戒心をこちらに向けても、攻撃的なものを向ける人は一人もいない。

 きっとここでジールが何かを害する行為をすれば一瞬で敵対関係になるのであろうが、それまでは確実に平和な関係を築けるのだ。

 

 200m程の道を突っ切り、住宅街を抜けたジールは更に先の景色を見た。

 

 そこには再び現れたゴミ山と、遠方に点在する街のようなコミュニティがあったのだ。

 ようやく流星街の街の部分を確認出来たジールは密かにガッツポーズをする。そしてこれからの本格的な調査の為に近くの店屋に立ち寄る事にした。

 

『服を数着購入したい。』

 

 ジールは店の奥でカウンターに寄りかかっている店主にフリップをみせた。

 

 なるべく周りから浮かないように服装から揃える作戦だ。真っ先に周囲と合わせるべき部分があるはずだが、まずは洋服らしい。

 

 突然の来客に驚き、その様相に驚いた店主だったが商売の機会を逃すことはしなかった。店の壁にかかっている洋服を数点持ってきながら、店主はジールのことを観察している。

 

「服ならこの辺だな、何か希望はあるか?」

 

 裾のほつれたシャツや、継ぎ跡のあるズボンを並べた店主はジールに向き直り商品を勧めてくる。

 ジールとしては周りから浮かなければそれでいいのため店主にはそれらしい物を選んで欲しい旨を伝えた。

 

「あー、この後は中央に向かうのか?」

 

 ジールのリクエストを聞き、少し考え込む様子をみせた店主は頭をかきながら話し始めた。

 

「ならここじゃ買わねえ方がいいな。あっちの方が良い服が手に入るし、住んでる奴らもそれなりのもんを着ているぞ。」

 

 店主が言う分には、むしろ今の格好の方が向こうでは浮かないらしい。親切にも教えてくれた店主にジールが感謝の念を抱いていると、相手は期待に添えなくてすまんなと笑っていた。

 

『頭はこのままだと目立つだろうか。』

 

 その後ジールが見せてきたフリップに、何故目立たないと思っているのかと店主は若干口元を引き攣らせたが、そこは長年の接客技術で乗りきった。

 

「まー目立つな、面倒事が嫌なら外すことをお勧めするさ。」

 

 店主の言葉を受けて、フムッと顎に手を当てたジールは捜索のし易さと情報漏洩の可能性を天秤にかけ前者をとった。

 流星街で自分の名前が広まることもないだろうという結論に至ったのだ。

 

『一番高いサングラスを買おう。』

 

 この前、久しぶりに麻袋を外した時に眩しさで目がやられたジールは対策を立てていた。

 色々教えてくれた店主へのお礼も兼ねて一番高い物を注文したジールはカウンターの下からでてきたサングラスを見る。

 

「いいデザインだろ?レンズは少し小ぶりだがツルの装飾はイチオシだ。」

 

 手に取ってサングラスを見ているジールに、自慢する様に装飾部分を指先した店主は楽しそうだった。ついでに告げられた値段もジールが払えるものだったため、直ぐに支払いを終えたジールはその場で麻袋とサングラスを取り替える。

 

 どうやらジール好みのデザインだったらしい。

 

 麻袋の下でぺたんこになっていた髪を手櫛でほぐしながらサングラスを装着したジールは、店主にグッと親指を立てて返事をした。

 

「へへっ、そりゃよかった。このサングラスも男前に買ってもらえて嬉しいだろうよ。」

 

 流石店主だ口が上手い、と気分よく店を出たジールは店主の見送りを背に受けながら流星街の中央へと向かっていった。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

(食べ物も普通に美味しいよな、野菜とか生肉は少ないけど都会的なものもチラホラあるし。)

 

 ジールは屋台で買った干し肉を噛みちぎりながら昼休憩を取っていた。適度に人通りのある区画で本を読みながら腹ごしらえをする様は完全に周りと馴染んでいる。

 

 大きな城のような建物はまだ少し先だが、店や家などが多く集まる場所に到着したジールは、聞き込みをしながら一通りを見て回っていた。

 

 ジールは店が集まるこの区画の外にぽつぽつ建っている小屋の方まで見に行きたかったが、親切な人に止められたのだ。

 曰く、その小屋を縄張りにしている人達もいるから気をつけた方がいいという。

 

 そうして次の大きな区画に行くか、もう少しここに留まるかで悩み始めたジールはひとまず昼休憩をとることにしたのだ。

 

(あと、もし見れそうなら旅団の小さい頃も見てみたい。……数kmくらい離れたところから。)

 

 しっかり自身の欲望にも忠実なジールであった。

 しかし流星街が馬鹿みたいに広いことはこの数日で実感している。会えるのはその年のガチャ運を全てつぎ込んた時くらいだろう。

 まあ元々少ないジールのガチャ運などあってないようなものだが。

 

(そんな簡単に会えたら誰も課金なんてしないわな。)

 

 きっと会えたとしても心臓発作で倒れるだろう。

 ということで数km先からチラ見させて下さい、と図々しい条件をつけて神頼みをしたジールは缶切りを探して立ち上がった。

 

(缶詰買ったのに食えないじゃん。)

 

 本日のお昼ご飯は前歯を折りにきている干し肉と、割高だった謎のフルーツ、そして本命のテリヤキの缶詰だ。

 謎のフルーツにやられて痒くなった舌を口の中で転がしながら、ジールはゴミ山へ缶切りを探しに出る。

 

 

 そして街とゴミ山の境目に突っ立ったジールは何気ない動作で視線を滑らせ、引っかかった違和感に目を向けて何事も無かったかのように座り直した。

 

(ッスーー、フラグ建築パネー。)

 

 ゲンドウポーズをしそうになり、慌てて誤魔化したジールは読み終わった本をそれっぽく開く。

 

 ジールが遠目に確認したのは、シャルナークとクロロだった。

 

 神頼みの要望通り、かなり離れたところからでも確認できた二人は念能力者特有のオーラを纏い、ゴミ地帯から店の区画に向かって歩いているようだった。

 一瞬で脳裏に焼き付け、平静を装って座ったジールだったがその内心は見事に荒ぶっている。

 

(やーばい、今年の運全部使っちゃった。どうしようどこかにお布施してバランスとれる?大丈夫?いや、きっと俺の持ち金じゃあ足りねえ、内臓売っぱらうしかねぇ。…まあ待て、まずはこの幸運に感謝するべきでは?それだ。神様仏様まじてありがとうございました。つきましては、ひー君捜索の方にも是非ともお力添えを…何卒よろしくお願いします。はぁーなんまんだぶ、なんまんだぶ。アーメン。よし、……最っ高に良かった。レアだ。子供の頃のシャルナークとクロロ=ルシルフル、神はいた。大人の頃の面影を残したあの感じ、恐れ多くも写真に収めたい。もはや盗撮。存在するだけで犯罪者を生産しちゃう二人もやべぇが、二人が既に犯罪者(かもしれない)なんてこった。しかーし、言っていい?言うよ?あのクロロ=ルシルフルに見覚えあるんだけど?ジーザス!マジかよ!どこだ何処で会ったんだ、思い出せ俺!マジで会ったことあるのに忘れるのはオタクの風上にも置けねえな、風下に置いて毒ガス撒くぞ。えー、どこだっけなぁ。)

 

 豆粒の程の遠目で確認しただけではしゃげるのがジールクオリティ。

 

 己のフラグ回収の速さに慄きながらも、どこか見覚えのあるクロロの姿に頭を悩ませるジールは適当に本のページを捲った。

 オーラの気配から二人が三本先の道へ入っていったことを確認しつつ、本から視線を外さないジールは今世紀最大に脳みそを絞っている。

 

(あの顔……どこで?夢の中で?若干否定出来ないの怖すぎる。俺の妄想だった?――――あっ、)

 

 奇跡的に思い出したジールは思わず手を叩き納得の表情を見せた。

 

(漫画の旅団結成シーンじゃないですか!いやーすっきり、し……た?)

 

 妄想の中でクロロに会ったなどという変態の称号を返却したジールは安心し、テリヤキの缶詰を持ち直した。

 そして自慢の頭の良さでジールの思考はあるところに行き着く。

 

(……つまり、ちょうど旅団が結成されたということで、ファイナルアンサー?)

 

 興奮とともに握り締められた手の内では、缶詰が見事に爆ぜた。

 缶切りも不要になったそれは、テリヤキのタレを瓦礫の上に滴らせている。僅かに残った理性で本を避難させたジールだったが、缶を持つ手はベタベタだ。

 

 しかし、そんなことを気にしている余裕は今のジールには無い。

 旅団のメンバーを近く(数百mの誤差)で見られたどころか、最近に旅団結成があったというビッグニュースはジールをバグらせるのに十分だった。

 

 放心状態で本を鞄に仕舞い、近くの井戸でテリヤキのタレを洗い落としたジールは汚した地面を土で隠し証拠を隠滅する。

 暫くその場で空を見上げ、小学生ばりの感想文をしたためたところでジールはやっと我に帰った。

 

(よし、今ならひー君の情報も入ってくるかもしれない!)

 

 ちらっと見かけただけで、ジールの気力はMAXまで充電されていた。現金だなと自覚しながら立ち上がったジールは聞き込みを再開しようと歩き出す。

 手始めに物を買えばよく話してくれる店を狙っていこうかと、ジールはごきげんだった。

 

 

※※※※※※※※※

 

『いやー、見てないねぇ。』

『赤髪?分からないわ。』

『多分見てないと思うけど、他の所も行ったら?』

 

 意気揚々と聞き込みを再開したジールだったが、その成果はあまり良くなかった。

 話を聞いてくれる人は何人かいたものの、めぼしい情報は無く、それらしい人物もいないようだ。

 

(やっぱり流星街には来てないか……、別の区画か……。)

 

 聞き込みのために買った商品を鞄に仕舞いながらジールは日が暮れてきた街中を歩いていた。

 訪ねた人が皆、流星街に詳しいわけではないし、日々の生活に不必要な情報を切り落としている者が大半だろう。

 

 ジールは前からやってくる人を避けながら、最後にもう一度街を散策したら切り上げようかと考える。

 

(せめてもう少し詳しい人か、協力者が居ればいいんだけど……俺、お友達作るの苦手だし。)

 

 己の苦手分野を嘆きつつ、細い路地から出てきたジールは先程とは違った騒がしさに顔を上げた。

 日中にやってきたときにはなかった人だかりに、好奇心をあおられたジールは典型的な野次馬となって輪に加わる。

 

 大きな通りに並ぶ店と店の間を囲むように集まる人々は、思い思いに喋りながら一点を見つめていた。

 何やら怯える声や、状況を訪ねるもの、噂を回す声が聞こえてくる。その人々の間を縫うようにジールが中心へ向かって行けば、そこには人が倒れていた。

 

 仰向けになっているその男は身体中に痣をつくり事切れている。

 

 集まった人々はその打撲痕や、明らかに折れている足を見て騒いでいたのだろう。しかし、ジールは別の部分に目をとられていた。

 

(うっわ、グロい。)

 

 男の顔面から上半身にかけて、その体の表面に大きなイボのようなものが出来ていた。その数はひとつやふたつなんてものではなく、様々な大きさのものがびっしりと並んでいる。

 まるで魚の鱗のように存在を主張するそれは男の顔の大半を覆い“蠢いて”いた。

 

(なにあれ、流星街の皆さんはあんなキモイもの見てもスルーなの?メンタル鋼かな?……多分見えてない感じだな。)

 

 珍しくドン引いているジールは念能力の可能性をかんがえながら、男の様子を観察する。

 

 周りの反応からみるに、打撲などは普通の外傷だろう。男に寄生しているナゾのイボが原因かは分からないが、見た感じは殴られた時の痕だ。

 

 そしてオーラの様子からしても十中八九が念能力であるナゾのイボは、他者に植え付けられたものだとジールは仮説を立てた。

 死んでからも念能力が残ることはあるが、これはそこまで強いものではない。となると死んだ男の能力ではなく、別の誰かの能力だろう。

 

 店のゴミや、よくわからない箱などが置いてある隙間に転がっている男自身には少しのオーラも残っていなかった。

 

 気持ち悪いイボが見えない周りを羨みつつ、見逃しがないよう注意深く遺体を見たジールはさらに嫌なものを見つけてしまう。

 

(ノーセンキュー!イボにきしょい顔面つけてる奴とは死んでも会いたくねぇ。)

 

 顔の周辺にあるイボが蠢いたかと思えば、子供の落書きのような顔がこちらを向いたのだ。

 黒く塗りつぶされた目と一本の線で書かれている口元は笑っているように見える。

 

 そんなものと目があったジールは、能力者の趣向を疑った。

 サングラスの下で全力で嫌そうな顔をしたジールはとっととその場を去る。すれ違いに遺体を回収しに来た白服を見送りながら、ジールは先程見た光景を脳内から消そうかと思案していた。

 

 能力者が近くにいるなら警戒するためにも情報を集めておこうかと思っていたが、確実にメンタルを削られている。

 

(あ〜お客さま、街中でのグロ映像をご遠慮ください〜。いやまじで。)

 

 そんな騒ぎを気にしない大半の住民は買い物をしたり、家に向かったりと変わらない日常を過ごしていた。

 

 ジールは先程のグロ映像を思い出し、夜ご飯のメニューに頭を悩ませている。

 そして空がだんだんと薄暗くなっている中で、軽めのスープとパンを購入したジールは行儀悪く食べながら歩いていた。

 

 固いパンをスープにつけながらモグモグしているジールの目的地は空き小屋だ。

 

 とりあえず夜を過ごすための場所がいる。昼間、聞いたところによると流星街にまともな不動産屋はないようなので、適当に住み着いて問題ないらしい。

 しかし厄介な場所を引き当てると、家賃の代わりに首から上が持っていかれるようなので気をつけなければいけない。

 

 そして食べ終わったスープのカップをゴミ山に捨てたジールはポイ捨てをしたような罪悪感に襲われていた。

 だが、今日の寝る場所を決めるためにもゴミ山の前で立っているわけにはいかないので、ジールは早々にゴミ山をあとにする。

 

 その後、屋根が半分なくなっている小屋を検分し、生活痕がないことを確認したジールはやっとの思いで腰を落ち着けた。

 

 月も出てきた夜分に寝袋を引っ張り出てきたジールだが直ぐに寝付くことは無い。

 

 出てこなかったヒソカの目撃情報や、物騒な事件のことを思い出して捜索場所を移そうかと悩んでいるのだ。

 

(離れた方が良いよね……移動するか?デカい建物の方に行ってみようかな。)

 

 ぽつんと星空の見える小屋の中で寝袋に収まっている芋虫は、適当な星座を探しながら明日のことを考える。

 なによりジールには懸念事項があった。

 

(……もし移動先にもストーカーが着いてきたらどうしよう。)

 

 そう、先程のナゾのイボ事件(ジール命名)の途中から何者かに見られている気配がしたのだ。

 目の前のイボが気持ち悪すぎて初めは気づかなかったが、イボの顔を見た辺りで視線を感じた。

 

 男の自分にストーカーが着くものかと、勘違いの線も考えたがいつまでも外れそうに無いかった視線にジールはその場を去ることにしたのだ。

 街を出る少し前まで着いてきた視線の主のせいでいつもは野宿するジールも家を探す羽目になり、こうして小屋の中で寝袋に入っている。

 

 途中から無くなった視線にジールは諦めたと思っているが、万が一もありえる。

 

 ストーカー(仮)が着いて来れないように朝早くここを出るべきか否か。ヒソカの捜索から一気に気にする項目が増えたジールは一等星を睨みながら唸り声を上げていた。

 

 そして暫くそうしていたかと思えば、ジールはムクリと起き上がり枕にしていた鞄を漁り始めた。どうやら何かを探しているようだ。

 

(……せっかく自由に動けるようになったのになんで悩んでるだろ。もう嫌だ。二次元に逃げよ。)

 

 見事な思考の三段ジャンプ。

 ジールの手元から出てきたのはジャポンから取り寄せた漫画だ。うつ伏せに姿勢を直したジールは月あかりを頼りに一巻から読み始めた。

 

 横に平積みされている巻数は二桁はあるだろう。嫌なことがあると趣味に走るのはよくある事だが、節度は守った方がいい。

 結局、朝方までガッツリ読み込んだジールは続刊が欲しくなり寝袋の中で跳ねていた。

 

 見事現実逃避を果たしたジールだが、次は別の問題も抱える事になる。

 

(……流星街に本屋あったかな。次はそこに行こう。)

 

 

 徹夜でガンガンとなっている頭を抑えながら目的を増やすジールの辞書に、本末転倒は載っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジールが一人で行動しているので全く喋りませんでした。
次回は話す相手も出てくるので、もう少しマシになると思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
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