口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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よろしくお願いします。


善行には酒

 

 大きな島の中心、大樹の生い茂る森で出会ったのは二日酔いで死にかけているおっさんだった。

 

 体調が優れない中でもヒソカの腕を正確に掴んだ手を反射で叩き落としたが、その感触はジールの反撃に対応したものであり半分程はオーラで守られていた。

 

(待て待て、弟に変な輩が近寄るのも良くないが、このおっさん中々出来るプレイヤーだろ。)

 

 酒にやられているためか、身体の周りに留まるオーラに乱れが見えるが、明らかな念能力者に目の前の人物がゲームのイベントでないことを理解する。

 

 つい先程パチネッコを保護したジールからすればデジャブを感じる登場だが、先程の可愛いシルエットのパチネッコと比べると何とも助ける気が起きない。

 

(……とりあえず水でも置いて去るか。)

 

 酒の臭いに鼻を埋めているパチネッコをヒソカに預け、麻袋からペットボトルを取り出したジールはそっとおっさんの横に置いた。

 

「――どうせなら、酒がいい。ッぷ。」

 

 何やら図々しい要求が聞こえた気もするが、最低限の事は済ませたと判断したジールは面倒事に巻き込まれる前に茂みから退散する。

 

 その様子を見ていたヒソカも何も言わず兄の後を負った。

 

「凄く体調が悪そうな人だったね♣︎」

「パチチ!」

「……見習うなよ。」

 

 気を取り直して森の中を進み始めたジール達は、何となく小声で男について話しだす。

 正直、ジールにはヒソカが酒で二日酔いになるイメージなど無かったが、見習って欲しくない大人の見本である事には変わりない。

 

(まぁ、ひー君はお酒よりも別のものに酔いそうだけど。)

 

 再会してからたまに見かける陶酔した表情を思い出し、思わずげんなりとしてしまったジールだが、未だ下ネタに走らないだけまともだろうと自身を慰めていた。

 

 年々最低基準を更新し続けているジールだが、それに気づく気配は一切無かった。

 

 時折出てくるモンスターを倒していると一時間程が経ち、順調に森を横断するジールは遠慮なくフリーポケットを埋めていく。

 

 中には届かない木の実を代わりに取ってやるだけでカード化したモンスターもおり、戦闘以外の要素を楽しんでいると歩いている道にも勾配が出てきた。

 

 この辺りは記憶にもしっかり残っていると、ジールがその期待を高めた時のことだ。

 周囲に複数の気配を確認した後に、一斉に飛び出してきた人影にジール達は構えを取った。

 

 両の手で数える以上に居るであろう手練に包囲され、一筋縄ではいかない空気を感じる。

 

 

「「「お願いします!!助けて下さい!!」」」

 

 

 短刀や打刀などを手に持った山賊達との間に乾いた空気が流れた。しかし、綺麗な土下座を披露している山賊達は気にしていない様だ。

 一触即発の雰囲気が崩れたのを悟ったヒソカはつまらなさそうにトランプを山賊に投げつけた。

 

「お願いします!!」

 

 顔の横スレスレに刺さったトランプに一瞬ビクついた山賊の一人が繰り返すように更に頭をさげる。

 

「御三方の助けが必要なんです!!」

「……んん?」

 

 ここで、これまで一切の動揺が無く、寧ろワクワクしながら見守っていたジールが首を傾げた。

 山賊の言葉に自身とヒソカ、パチネッコを見遣り指さし確認をする。

 

(パチネッコを入れて三人組ってことか?)

 

 パチネッコはパーティー判定されるのか、とジールがイマイチ納得のいかない表情でヒソカに問いかけようとしたところだ。

 

「おいおい、ここでも人助けしてんのかよ。」

 

 背後からの声に一瞬で気配を探ったジールは15m程離れたところに立っている男を見つけた。

 距離からして、同じパーティーと判定されたのだろう。

 

 見覚えのあるペットボトルを掲げながらこちらに近づいてくる男は、水ありがとな!助かったわ。などと声をかけてくる。

 あまりの回復の早さに酔っ払いの演技も疑ったが、それよりも接近に気づけなかった方がジールにはショックであった。

 

「礼と言っちゃあれだが、手伝うぜ。」

 

 若干の顔色の悪さは残っているが、オーラの流れからしても体調は戻ったのだろう。

 顎の無精髭を撫でながらキメ顔で言ってくる様はまあまあ様になっている。

 

(なんだろう……無性に張り倒したくなるな。)

 

 自信よりも高い位置にある顔を見上げながら、理不尽なことを考えていたジールだが先程の言葉を思い出し慌てて口を開いた。

 

「……有り難い話だが。」

「なになに、ガキが遠慮するんじゃねぇ。」

「いや、貴方の事をだな。」

「良いってことよ。金もそれなりにあるし腕っ節だって心配いらねぇぜ。」

「いいじゃないか♠手伝うって向こうから言ってるんだし♦」

「おうよ。」

「…………わかった。」

 

 この先の事を知っているジールが何とか止めようとしたが、会話でどうにかしようなど土台無理な話なのだ。

 ヒソカの援護射撃により諦める形で男の提案を受け入れたジールは、土下座のまま放置されていた山賊達に声をかけた。

 

「……引き受けよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

「これは聞いてないぞ。」

「……聞く気が無かっただろ。」

 

 やれ病気の子供がいると、子供服が必要だと言われて一番背丈の近いヒソカが上裸になり、何故か要求されていない下まで脱ごうとするのを阻止したところで、ジール達も身ぐるみを剥がされた。

 

 ジールは山賊に全部あげるつもりで来たため、ログイン時にいつもの鞄は置いてきたしフリーポケットもあげる為に埋めていたのだ。

 

(まあゲームの外から持ち込んだ物はノータッチだったけどな。……冷静に考えれば分かるのに、全部持ってかれるイメージしか無かったわ。)

 

 想定外の部分もあったが心構えの出来ていたジールと、嬉々として渡していたヒソカに対してシャツもカードも持っていかれた男は酷く落ち込んでいた。

 

「うぅ、せっかく手に入れた霧瓶状が。オレの酒ェ。」

 

 インナーと長ズボンだけになったジールは、隣でメソメソと嘘泣きする男に呆れた視線を向けている。

 最初に言っていた通り持っていた金の金額もそれなりのものだったがこの男にとっては酒の方が大切らしい。

 確かにフリーポケットから出てきた酒の種類は尋常ではなかったが、あの酔い方を見る限り少しは節制した方が良いだろう。

 

「いや!男に二言はねぇ。助けるつったのはオレだからな。」

「……心遣い、感謝する。」

「おじさん、立ち直りも早いね♦」

「おじさんじゃねぇ、ダッカルって呼びな。」

 

 涼しい格好となった三人は目的地も同じだからと揃って山を降りていた。

 

(……ダッカル、ビ。美味そうな名前だ。はて何処かで聞いたような?)

 

 コートなどは遠慮なく持っていかれたジールが違和感を誤魔化すように腕を組み、ヒソカの反応を横目で確認する。

 腹筋の割れた上半身を惜しげも無く晒している弟は兄の横から覗き込むようにダッカルを見ていた。

 

 その視線がダッカルのオーラを追い、含みのあるものに変わっていくが当の本人は気にしていないようだ。

 殺気までとはいかないまでも気持ちのいいものでは無いだろう。おそらく気づいてはいるのだろうに先のやり取りからさっぱりとした性格のダッカルは気にも止めていない。

 

 その反応で切り抜けられる実力ゆえか、じっとこちらを見てくる目の前の男はヒソカの挑発に乗らなかった。

 

(うーん、ひー君じゃないけどどれだけ強いのかは興味あるよな。)

 

 名前といい、伝わってくる強さといい思考の端に引っかかるものを考えるジールは、何かを伺うように自身を見てくるヒソカに気づかなかった。

 

 山賊と会ってから何にも遭遇しない順調な旅路を進むジールは、名乗りを上げたダッカルに返事をするのも忘れて考え込んだ。

 

 その様子を見ていたダッカルは雰囲気の戻ったヒソカと目配せをしている。

 

『おい、お前さんの連れ黙りこくってどうしたんだよ。』

『おじさんが何かやったんじゃない?』

『やってねぇよ。おい、声かけろって。』

『やだ、自分でしなよ♥』

 

 言葉にするならこんな感じだろう。最後は調子よくウィンクで締めたヒソカが前を向いてしまったせいでダッカルは自分から声をかけざるを得なくなった。

 

「おい、にいちゃん大丈夫か?」

 

 サングラスのせいで表情がイマイチ分かりにくいジールに声をかけるのは意外と勇気がいる。

 普段はそんな些細なことなど気にしないダッカルだったが、会話のテンポを崩されると調子も悪くなるようだ。

 

 豪快なオヤジ系かと勝手にカテゴライズしていたジールからすれば予想外の声掛けだろう。

 

 脳内の引き出しをひっくり返しながら記憶を漁っていたジールは少し驚きながらダッカルを見上げた。

 

「……ああ、すまない。ジールだ。」

「ボクはヒソカ♦よろしく♥」

 

 どうやら兄の自己紹介を待っていたらしい。ジールの後に続いてあっさり名乗ったヒソカはひらひらと手を振る。

 促してまで得た返答なのだ、満足そうに頷くかと思ったダッカルは先程のジールのような表情をしたかと思えば誤魔化すように笑った。

 

「おう!」

 

 

 

 それから三人は他愛のない会話をしながら山を下っていた。

 しかし会話の中にはカードの入手方法や店での裏技など有益な情報が混ざって零される。ゲームが始まってからそう時間が経っていない中であれだけの資金やカードを集められたのだ、中々のやり手だと思っていたジールはダッカルの評価をまた一段階上げた。

 

(……これだけ出来るってことはそれなりに()()()()()が分かるゲーマーの類いか?でも、それにしては肉体派なんだよな。)

 

 まるで世のゲーマーが貧弱かのような言い分だが、ジールの中ではそのイメージで固定されている。

 中々に謝罪会見が必要そうな偏見で考えながらもダッカルに対する考察は止まらない。タンクトップの下には鍛えられた逆三角形が存在を主張する。

 どこか覚えのある感触に刺さった小骨を弄るジールはしかし開けた風景にそんな悩みも吹き飛んだ。

 

「……おぉ。」

「へぇ♣︎」

「おっ!」

「パチッ!!」

 

 三者四様で漏れた感嘆の声は目の前の岩場に消えていく。

 山のような岩石に挟まれ谷底に居るような感覚に陥る。視界を一色に染める岩肌は圧迫感を持ってジール達に迫ってきた。

 

「……色々いるな。」

 

 一気に変わった風景に意識を取られながらも先程の反省を生かしたジールは周囲の気配を探るのを忘れなかった。

 何体かの集団で動いているものや、遠方にうっすら見える影に視線をやり、すぐさまそれを足元に落とす。

 

 ダッカルがその反応の早さに片眉を上げた瞬間、全員に分かるような地響きが鳴った。

 揺れる地面に二手に分かれるよう飛び去った三人は、その場から飛び出してくる巨大な幼虫に熱い視線を向ける。

 

(……目玉は無し、開口された内部に鋭い歯。表皮を覆うオーラが集中しているのは柄の部分かな。)

 

 真上に向かって飛び出してきた幼虫はそのまま空中で体勢を整え弧を描くように地中へ潜っていった。

 岩石を優に超す体長に、地表では分が悪いと判断したジールはそのまま岩壁に手をかけ登り始める。

 芋虫のような外見に的のような柄が見受けられた。他よりもオーラ量が多く感じ取れたそこが果たして何なのか、考察する様に顎へ手をやったジールは次の瞬間、弾みよく指を鳴らしていた。

 

 何も言わずとも各々が無言で先程のモンスターを観察していた中で一抜けしたのはジールであった。

 

 せっかく登ったというのに飛び降りたジールは地面に掘られた大穴を覗き込み、口元の横に手を添える。

 

「あーーーーーー。」

 

 穴の中へ落とすように発せられた声はそのまま暗闇に消えていく。

 その数秒後、大きな地響きと共にその穴からせり上がってきた幼虫は勢い良く飛び出した。

 再び出てきた幼虫はそのまま空中で体勢を捻り地面へ向かっていく。しかし先程と同じようにはいかないだろう。

 

 地面を蹴って飛び上がったジールは頭上を移動する幼虫に迫る。そして、その開いた口の下。人に例えるなら顎とでも言えようその場所をジールは力強く蹴り上げた。

 

 ガキンッと音を立て、揺れた巨体はその顔面から地面へと落ちていく。しかしこれまでのように地中へ潜るためではない、重い音を響かせながら激突した幼虫はそのまま動かなくなった。

 

 そしてボンッと煙に包まれカードとなったモンスターは風に揺られながらジールの元へ落ちてきた。

 

 ジールの考えは至ってシンプルだ。

 目の無いモンスターがどのように獲物を見つけているのかを考え、後は弱点になりそうな所を探すのだ。

 

(視力が無いなら振動や音…も空気の振動か、それを察知して出てくるじゃないかって思ったけど当たりだな。

 あとはオーラが多く集まってる柄の部分だけど、オーラが集まるのは単純に弱点の場合か、何かしらの能力の起点だろ。弱点なら覆ってるオーラも隠さないと意味無いだろうし、振動を感知する器官だと考えるのが妥当。

 まぁ、もし弱点だったとしても厳重に守られてる所を殴りにいくのも労力がかかるし。なら地中を進むために開けっ放しの口を閉じて顔面叩きつけた方が早いだろ。)

 

 モンスター討伐にテンションが上がったジールは一人で脳内に学会を開いているがその思考の一部も外には出てこない。

 無言でカードをキャッチしたジールが淡々とフリーポケットに仕舞うのを見たダッカルは手を叩きながら近寄ってきた。

 飛び降りる際にジールに置いていかれたパチネッコもヒソカに拾われてジールの肩へ戻っている。

 

「いやー、あんた頭いいな。」

 

 なんとも頭の悪そうな感想である。

 しかしその指摘の裏にはしっかりとした評価が付けられていた。

 

「なんだっけな、戦闘考察?力だっけか。」

 

 何やら昔の記憶を漁っているらしいダッカルは暫く唸っていたが思い出せなかったのだろう。

 顎に添えられていた手は無理だとばかりに揺れている。

 

「そいつも速いが、何より行動に移すまでの躊躇いのなさだな。」

 

 満足そうに頷くダッカルはジールの動きを見て喜んでいるようだが、ジールからすれば解せないことだった。

 ハンター専用とまで謳われているのだ、この時期なら活力の充ちたプレイヤーならそれなりのレベルの者もいるはずだろう。

 

 疑問に思っているジールに気づいたのか、はたまた反応の薄い相手に言葉を重ねたのかは分からないがダッカルの感想は止まらない。

 

「正直、会う場所が場所なら念能力者だとも思わなかったからな。いやぁ見事な攻防だ酒がうめぇ。」

 

 そう言って腰に手をやり何も掴めなかったダッカルは少々不満げに口を尖らせた。

 

 ジールやいつも一緒にいたヒソカは気づかなかったが、念能力者が遊ぶグリードアイランドで一般人のオーラと変わらないオーラを持つジールは奇特だろう。

 先の幼虫を蹴る際に脚へとオーラを流したジールを見て初めて念能力者だと納得したらしい。

 

 その興奮も相まってジールの行動力を褒めるに至ったダッカルは、無くなった酒のことを思い出し遠方を見つめている。

 

 ちなみに、合流していたヒソカはジールを賞賛するダッカルの言葉にしたり顔で頷いていた。

 

「よし、良い肴も見れたし合わせる酒を買いに行こう。」

 

 堀の深い髭面が一気に空気を変えてこちらを向いた。

 もう既に頭の中には酒のことしか無いのだろう。

 

 上がるテンションと共に顕現量の増えたオーラがダッカルの身体を覆っていく。それが僅かに足元へ流れた瞬間、ダッカルが視界から消えた。

 

 遅れて感じた突風に、ジール達はダッカルがマサドラの方へ駆けたことに気づく。

 走り出す直前に見せたあの表情。あれは確実に着いてこいと言っていた。

 

 いや、正確に表現するなら“着いて来れないかもしれないけど”頑張って着いてこいよ。だろうか。

 ジールの偏見と曲解は混じっているが煽られているのは間違いない。

 

 ヒソカの抱えているパチネッコを抜き取りポーチの隙間へねじ込んだジールはオーラを練りながら地面を蹴った。

 

(…………上等だ。)

 

 ダッカルが走り出してから僅か数秒の出来事だ。

 既にダッカルの影は見えないが、探りやすいオーラの塊とモンスターがカードになる効果音が聞こえる。

 偶には羽目を外すのもいいだろうと、ダッカルに付き合うことにしたジールは後ろをピタリと着いてくるヒソカを見ながら目標に向かって駆けた。

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 その二時間後、僅かに息を切らしながら垂れてくる汗を拭ったジールは目の前の露天でウキウキと酒を選ぶダッカルに恨めしげな視線を向けていた。

 

 約70kmの長距離を一切の休みなく駆け抜けた男は消耗した様子を一切見せない。

 ジールも移動速度に文句は無い。もう少しあの場所のモンスターと遊んでいたい気もしたがマサドラに来たかったのも事実。

 

 しかし、オーラを消費しながら有り得ない速度で走っていた本人が全く応えていないのが微妙に解せないのだ。

 ジールも己の体力がなかっただけだと分かっているが、それとこれとは別である。

 

 毎朝の走り込みを増やす決意をしつつ心の中では体力ゴリラと罵っておいた。

 

「塩堂、からチューに、ハイボール。おっ!こいつもあるのか品揃え良いじゃねえか。」

 

 持久力としては若干ジールを上回っているヒソカだが、それでも呼吸を乱さずに到着することは無理だった。

 そんな二人が離れたところでダッカルを観察していると、背後から大きな声が聞こえきた。

 

「あーー!やっぱりここにいたー!!」

 

 声の高さからして子供だろうか、と叫ぶ内容も気になったジールが確認の為に振り向こうとしたところで、小さな影が横を通り過ぎていく。

 姿からして十歳に届かない位に見える男児は、酒を抱え込むダッカルの元へ一直線に駆けていった。

 

「ダッカルどこに行ってたんだよ。帰るの遅いと思ったらこんなところで油売って!」

「油なんて売ってねぇよ、酒を買ってんだ。」

「屁理屈言うな!」

 

 ダッカルの腰にも届かない低い頭からはポンポンと言葉が出てくる。

 子供用のベストに短パンとフォーマルな格好をしている子供は一通りダッカルに文句を並べた所でそちらを見ているジール達に気がついた。

 

(なんでダッカルみたいな呑んだくれがゲームをやってるのか不思議だったが、子守りか。)

 

 ダッカルについて疑問に思っていたひとつが解消されたなと、納得の顔で子供を見下ろしたジールはこちら見てくる視線とかち合った。

 

「……はっ!ダッカルがお世話になりました!」

「……どうも。」

「キミ、元気いっぱいだね♥」

 

 ジールの顔を見て何かに気づいたように勢い良く下がる頭へ、返答をどもったジールだが世話をしたのも事実だし…と、礼を受け取ることにした。

 

(どっちかっていうと、あいつが子守りされてんな。)

 

 我儘なガキの子守りを依頼された(押し付けられた)ハンターかとも思ったが、どうやら違うらしい。「何勝手なこと言ってんだよ。」「ホントのことだろ!酒臭いぞ!」目の前で始まった漫才をジールはぼんやりと眺めていた。

 

「キミの名前はなんて言うんだい♥その歳でオーラを扱えるなんてすごいね♠」

「ふふん、俺はクーベルト・ノア・バケットだ。」

 

 念の技術について褒められたのが嬉しかったのだろう。胸を、というより腹を突き出しながらハキハキと名乗ったノアの名前を聞いてジールは思わずダッカルを見た。

 

 あまりそう言った事に興味のないヒソカは分からなかったが、一時期でもその世界にいたジールはその名前に覚えがあったのだ。

 

(バケット家って言えば、よっぽどの田舎者じゃなきゃ知ってるような金持ちだぞ。)

 

 ジールが名前を覚えているだけでも余程有名なのが分かるだろう。

 世界大富豪ランキングのトップ10に入ってくると言えばわかり易いかもしれない。

 

 普段表情から何を考えているのか読み取れないジールが、リアクションを見せたのが面白かったのか視線を向けられたダッカルは悪戯をバラすような表情で頷いた。

 

「へぇー♦ノアはいつから念が使えるの?」

「それはなー……、」

 

 よっぽどの田舎者か、興味が無いからスルーしているのかは分からないが、将来有望そうな芽を見つけてご機嫌なヒソカはニコニコしながらノアの話を聞いている。

 

『……経済、傾いてもしらないぞ。』

『バカ言え、オレが居てそんな事になるわけねぇだろ。』

『家出か?』

『そんなことを許した日にゃ、飲んだ酒が喉から出てくわ。』

 

 仲良く話している二人を視界に入れながらコソコソと話すジールに律儀に答えるダッカルは開けた酒瓶を傾けた。

 

 どうやらバケットの両親も承認してこんな危ない所にいるようだが、余程ダッカルの腕が信頼されているらしい。

 その割には先程までノアをほっぽって森で吐いてた訳だが、いいのだろうか。本当に首が飛ばされてもおかしくない。

 

「おお!そんなものもあるのか。」

「そうだよ♠試してみる?」

 

 そしてあちらの方も盛り上がっているようだ。

 先程とは打って変わってヒソカがノアに何かを教えているようだった。

 

 ヒソカの問いかけに頷いたノアは元気よくこちらへ駆けてくる。そしてノアはダッカルの膝をバシバシ叩きながら興奮気味に口を開いた。

 

「運の上がるサイコロがあるんだって!」

 

 

 

 

 

 ――自分達の首もまとめて飛ぶかもしれない。

 

 




次回はカード集めと修行パートが少し入ります。

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