口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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今回はヒソカサイドのお話です。

よろしくお願いします。


殺人事件には目撃者

 打ち寄せる波に暑い砂浜、海沿いに並んだ屋台には海の幸が売られている。

 活気のある声は街の明るさを表すかのように日の出の時間から途切れることなく聞こえてきた。

 

 『海辺の街 ソウフラビ』ジールと別れたヒソカはある人物を追って、街までやってきたのだ。

 

 【磁力(マグネティックフォース)】を唱えてソウフラビに着いたのが昨日の夜遅くだったのもあり、ヒソカが起きたのは日も登りきる昼直前。早く行動しなければすれ違うこともあるだろうが、ゲームの利便性をしっかりと把握しているヒソカに焦りはなかった。

 

 一枚しか無かった磁力(マグネティックフォース)さえなんの躊躇いもなく使えるヒソカは、たとえ見失ったとしてもまた見つければいいと思っている。

 

「あ、やっと見つけた♥」

「なんだヒソカじゃないか!」

「……お前なぁ。」

 

 市場をフラフラと散策していれば、少し先に昨日見つけた二人を発見する。

 声をかけられたノアはニコニコのヒソカに駆け寄った。昨日の夜、急に目の前に現れたヒソカが要件も言わずに帰ったことを知っていたダッカルはその様子を見て何か言いたそうにしている。

 

 しかし、そんなことはお構い無しのヒソカはダッカルの持っている紙袋に視線を向けながらマイペースに話し始めた。

 

「兄さんが修行し始めちゃったから暇なんだ♠二人は何してるの?」

「そうなのか!なら、一緒に朝食食べてくか?」

「ゲームの中に来てまで修行とは変わってんな。」

 

 ダッカルが持っているのは朝食らしい。お誘いを受けたヒソカは特に断る理由も無いしと、二人について歩く。

 

 市場の騒がしさを気にしない三人組は、適当な階段を見つけて腰を下ろした。ダッカルは紙袋の中からサンドイッチを取り出すとノアとヒソカに渡してくる。

 

「おらよ。にしてもお前って兄貴の傍から離れることあるんだな。」

「ずっと一緒にいると思ったのかい♦」

「俺そっちのサーモンがいい。」

「ハイハイ。そりゃあんだけ引っ付いてりゃ思うだろ。」

 

 ダッカルの手からサーモンのサンドイッチを勝手に抜き取ったノアも頬を膨らませながら、頷いている。

 

「兄弟いないから羨ましいんだぞ!」

「フフフッ、兄さんは凄いからね♥」

「まぁ人形作るのも上手かったし、腕っ節も充分あるしな。」

「ダッカルが褒めるなんて珍しいな。」

 

 ――いつも酒が貰える時くらいしか相手のこと褒めないのに。

 ノアが感心する横で酒瓶をラッパ飲みするダッカルはそんな事は無いと言いたげだが、その姿では説得力も何もないだろう。

 

「そんで、そんな凄いお兄さまに追い払われたのか。」

「何でだろうね♦」

「寂しいならもっと早くこっちに来れば良かったのに。」

 

 食後のデザートまでちゃっかり食べ終わったヒソカは肩を竦めながらわざとらしく笑っていた。

 マサドラで別れてから数日経っているという事は、その間のヒソカは一人で行動していたのだろう。

 それを思い浮かべたノアは眉を八の字にさげながらヒソカのことを見上げた。一人は寂しかっただろうとヒソカを思っての事だが、ダッカルはどうせ遊び飽きてこちらに来ただけだと思っている。

 

「俺らも情報が掴めなくて暇してたからな!一緒に遊ぼう。」

 

 にっこりと笑いながら手を差し伸べるノアは、コミュ力お化けのようだ。

 ジールが見ればノータイムのお誘いに震え上がっただろうが、ここにいるのは同類だ。

 

「いいね♣︎是非お願いするよ♥」

「おー、怪我はするなよ。」

「何言ってるんだ。ダッカルもくるんだぞ!」

 

 酒瓶を持っている手とは反対の腕を掴まれて引っ張られたダッカルは、やっぱり駄目かとため息を吐きながら腰を上げた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

「おい、あんまり離れんなよ。」

 

 ダッカルの少し前を歩くノアとヒソカは、見晴らしのいい荒野を歩いていた。

 

「……最近プレイヤーが死んでる事件があってダッカルが五月蝿いんだ。」

「へぇ♠色々言ってくるのは兄さんも一緒だよ♥」

「そうなのか?あの人そんな風には見えないけど。」

 

 ノアの頭の中には、一緒にカードを手に入れるために頑張ってくれたジールの姿が浮かんでいた。

 元々、自分の趣味に全力で人間関係を放棄していたジールは口出しするタイプでは無い。普通の弟なら放任主義の名のもとに好きにさせていただろう。

 

 放任したらヤベーのが弟になったため、こうして気にかけているのだ。

 

「でもね見えない所で上手くやる分には言われないんだよ♠たぶんバレてるけど♦」

「なるほど参考になるな。」

 

 内緒話をする様にコソコソと話す二人は楽しそうだった。

 人の多いところで行動するようにと制限をかけていたダッカルもノアの楽しそうな様子を見て新しい酒瓶を開ける。

 

 ヒソカの希望で広いところまでやってきた三人はここら辺でいいだろうと荒野の真ん中で立ち止まった。

 

「それで、何をしたいんだ?」

「組手♥」

「…………あー。」

 

 ノアよりも少しだけ付き合いが長いダッカルは、初対面の時に向けられた視線の意味を理解した。

 

 生まれつき念が使えるノアはオーラの変化を敏感に感じ取ることが少ない。隣に立ったヒソカのオーラが練られ増えていく様子を眺めるだけで、ノアがその場を離れることはなかった。

 

 しかし状況を正しく理解しているダッカルからしてみれば、質が変わったオーラを警戒せずには居られない。組手という言葉を信じるなら正面からやり合いたいはずだが、一先ずノアをその場から遠ざけなければと考えていた。

 

 目の前で瞬時に戦闘態勢に入ったダッカルを見たヒソカはにっこりと笑いながら己の勘の正しさに舌なめずりをしている。

 隣のノアも気になる部分はあるが、戦うのならこっちだろうと標的を定めたヒソカが緩く構えをとった。

 

「……めんどくせぇから止めにしたいんだが。」

「えぇー付き合ってくれても良いじゃないか♦」

「なんだ?審判でもするか?」

 

 二人のやり取りから審判役を買ってでたノアは、ウキウキで離れたところまで走って行った。

 

 仕事上似たような性格の相手をしたことがあるダッカルは、向き合うヒソカが戦闘を強く好んでいる事に気づいた。

 そして修行のために弟を追い払ったジールの事を思い出し、納得のため息を吐く。

 

「おいおい、お兄ちゃんの前では良い子にしてたじゃねぇか。」

「やだなぁ♥だからこうして追ってきたんじゃないか♠」

「リードの紐はもっと短くして貰いな!」

 

 ぶつぶつと文句を言うダッカルだが、この場では二人が乗り気になっている。

 自分一人が嫌がっても変わらないことを察したダッカルは先程開けた酒瓶を飲み干し瓶を放り投げだ。

 

「よし!じゃあ三本先取でいくぞ。」

 

 何をしたら攻撃が当たった判定になるのか一切の説明も無いが、審判役のノアが満足そうにしているためそのまま試合が開始となった。

 謎のルールだが戦えれば細かいことは気にしないヒソカには特に問題無かった。

 

 初めは互いに拳や蹴りを入れながら身体を暖めていく。

 スピードは申し分無いが、大人と子供の体格差である。いくらヒソカがパワーを持っていてもダッカルと比べると押されてしまうのが現実であった。

 

 暫くして、先に動きのキレが増してきたヒソカはヒットアンドアウェイで確実にダメージを入れていく戦法に切り替えた。

 今までヒソカの攻撃の殆どを避けているダッカルに確実に当てるための作戦だ。

 

 ヒソカの右脚がダッカルの足元を狙って繰り出される。

 

「中々いい動きじゃねぇか。」

「もっと仕掛けてきてよ♣︎」

「生意気言うなよ。」

 

 ヒソカは久しぶりの手応えがある相手に喜びを全身で表していた。

 先程の蹴りは避けられてしまったが問題は無い。

 

 もう一度同じように駆け寄ったヒソカは、次に鳩尾を狙って脚を上げる。

 それを見たダッカルが同じように避けようとしたところで、足元の違和感に気づき腕でのガードに切り替えた。

 

「チッ、触りたく無かったが仕方ねぇか。」

「ほら♠まだあるよ♥」

 

 相手のペースが崩れたタイミングを逃さずに正面から連続で拳を入れたヒソカは、再び距離をとってダッカルの方を見た。

 

「うーん、二本!」

「小細工なんかしやがって、やっぱり変化系かよ。」

「ダッカル避けてたのに意味なかったな。」

「あれ♦バレてたんだ♠」

 

 ヒソカの発を警戒して接触を控えていたダッカルは、隠で足元に設置されたオーラを見てヒソカの発の性質を考察する。

 

「どうする?動けないだろう♥」

「まぁいいか。」

 

 ダッカルはその場から動く様子は見せず、ノーモーションから念弾を放った。

 音が置いていかれる程に初速の速いそれは避けたヒソカの横を通り過ぎ地面を抉る。

 

「俺の本領はここじゃねぇが、少しくらいは見せてやるよ。」

 

 動けなくさせ、これからどうしようかと考えていたところで遠距離武器を見せられてしまえば、ヒソカの手札が一気に削られてしまう。

 

 しかしそれだけで苦戦するヒソカでは無い。

 なにより念弾の威力はえげつなかったが兄の追いかけてくるそれよりは避けやすいのだ、ヒソカは迷いなく突っ込んだ。

 

「おいおい、慣れてんな。」

 

 避けられないダッカルがヒソカの腕を掴み遠くに投げながら呟いた。

 流石に空中で狙われて仕舞えばオーラでガードするしかない。

 

「ダッカル、一本!」

 

 痣を作りながら地面に着地したヒソカは回避用の仕掛けを張りながらダッカルの背後に回った。

 

 容赦なく後頭部を狙った蹴りもダッカルの手に止められてしまう。目まぐるしく変わる戦況に直ぐ適応できるのは戦闘経験が物をいうだろう。

 

 動けないなりにヒソカの攻撃を捌けるダッカルの戦闘力の高さは、ヒソカの興奮材料だが勝敗の決め手になるとは限らない。

 

 背後からの攻撃を止められた瞬間、ヒソカはいやらしく笑うとバンジーガムを解除した。

 

「あ”っ…。」

 

 足元のオーラが消えたダッカルは踏ん張る暇もなく横に吹っ飛ばされた。

 

 今までガムの粘着力を利用して踏ん張っていたダッカルはその適応力を逆に利用されてしまったのだ。

 

「ヒソカ、一本!しゅーりょー!!」

 

 上手く受け身を取り、直ぐに立ち上がったダッカルだが審判が終了と言ったためこの勝負はヒソカの勝利で終わりとなる。

 

 適当に砂埃を払ったダッカルはノアとヒソカが話しているとこへ歩いていく。

 

「凄いな!ダッカルが蹴られてるところなんて初めて見たぞ!!」

「そうなのかい?彼強いよね♦」

「勿論だ。なんてったってシングルのプロハンターだからな!」

 

 急に勝負を仕掛けられどうなるものかと思ったが、ヒソカがルールを守るタイプの奴で良かったとダッカルは考えていた。

 向上心のあるやつは悪くねぇと上玉の酒を開けたダッカルは、個人情報を垂れ流すラジオを止めに入る。

 

「ペラペラ喋るなって言ってるだろう。」

「止めるなダッカル!お前のことを褒めてくれる人なんてスナックのママくらいだろ!」

 

 どうやら幼心にダッカルの良いところを伝えようとしていたらしい。

 しかしここにジールが居れば、小さい子をなんでところに連れ込んでるのかと注意のひとつもあっただろうが、ここにはだらしない大人と未成年しかいない。

 

「ねえ、シングルって強いの?」

「プロハンターは強いぞ!その中でもダッカルは裏のやつらを纏めて――んぐぅ。」

 

 ジールが意図的にハンターの情報を遮断しており、自分からも興味が湧かなければ調べようとしないヒソカはダッカルから見ても驚く程にプロハンターについて知らなかった。

 

 親切心でノアとダッカルがプロハンターとはなんたるかを教えていると、ヒソカはどこか納得したように頷く。

 二人が何に納得したのか不思議そうに見ている中でヒソカは口を開いた。

 

「うん、だから兄さんはなりたがってたのか♠」

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

「ねぇねぇ兄さん♥ダッカルはプロのシングルハンターなんだって♦」

「おい、ヒソカ!」

「なんでも裏の人達を纏めたらしいよ♠」

「バラすなって言っただろーが!」

 

 一月の月例大会の為にアントキバで兄と再会したヒソカは会って早々にダッカルの事を話し始めた。

 プロハンターに興味がある兄が聞いたら喜ぶだろうという親切心のはずだが、止めようとするダッカルの拳を避けながら話し続ける辺り確信犯かもしれない。

 

「……ほう、それはすごいな。」

「でしょ♣︎」

「だよな!」

「パーチッ。」

 

 三人で仲良く話している周りで騒ぐダッカルは完全にアウェーだった。

 

「あの、」

「あぁ、煩くしてすまんな。」

 

 ジールが連れてきたひょろ長い男は、酒瓶を振り回していたダッカルに遠慮がちに声をかけてきた。

 初対面で自己紹介もまだなのに、色々言われても分からないだろうと気を利かせたダッカルは銀髪の男の方に向き直る。

 

「……俺の名前はダッカルってんだ。よろしく。」

「プロハンターってほんとですか?」

 

 切れ長の瞳がキラキラしている様にも見える。

 お前もかとダッカルが肩を落としたところで広場のステージに立った男が声を上げた。

 

懸賞の街(アントキバ)の月例大会!今月は二人綱引きだ!!』

 

 周りを見ればかなりの数のプレイヤーが集まっていることが分かる。ゲームが始まってから最初の月例大会はその存在を知っている者ならば参加してみようと思うのが大半だろう。

 

 先程のヒソカの言葉で何か考え事をしているジールは盛り上がる周囲から浮いているがそれを気にする者はいない。

 

 それよりもヒソカとしてはジールが連れてきた男のことが気になって仕方が無かった。

 ジールの隣に立ちながらも、ヒソカはダッカルと話すその姿をチラチラと盗み見ている。

 

(えっ?誰あれ?兄さんと一緒に居たよね??ボクが遊びに行ってる間に知り合ったってことかい♠)

 

 カイトの鍛えられた様子に興奮しつつも、兄から一切の説明が無いためヒソカはどう動いていいか考えあぐねていた。

 

『では次のジール&ヒソカペア!ペー&カルロスペア!前へ。』

 

 マイク越しに呼ばれた二人は心ここに在らずな様子でステージに上がっていく。

 カイトに預けられたパチネッコも心配するように鳴きながら見守っていたが、縄を持ってからは早かった。

 

『始め!!』

 

 審判の男が縄から手を離すと同時に引っ張られ、踏ん張る暇もなく引き摺られた対戦相手はステージの上に転がっていた。

 

『勝者ジール&ヒソカペア!さて、次の対戦は――』

 

 注目を浴びている二人はしかし周囲の視線に気づかない様子だ。

 

 ヒソカが念弾に慣れている理由がジールだと聞き親近感が湧いたダッカルも話しかけられずに見守るだけだった。

 ノアとダッカルのペアが呼ばれステージに上がっていっても軽く応援の言葉をかけられるだけに終わる。

 

 幸い人数が多い大会だった為、時間はたっぷりあった。

 途中で気にするのも面倒になったヒソカがジールの横顔を眺め始めたところで、決勝戦の組み合わせが発表される。

 

『ジール&ヒソカペア!ノア&ダッカルペア!』

 

 負けたプレイヤーも優勝者が気になるのだろう、ステージの周りに集まり危なげなく勝ち上がってきたペアに注目していた。

 

 そして今まで通りジールの後ろにヒソカが立ち縄を握る。相手もダッカル、ノアと並んで縄を持っていた。

 審判の男が縄に手をかけ、始めの合図を出そうとしたところでジールは何かに気づいたように顔を上げた。

 

「あっ!」

 

 正面からその表情を見たダッカルはジールの悩みが解決したことを察するだろう。

 サングラスの下にあってもすっきりしたと言わんばかりの様子に良かったなと声をかけそうになる。

 

『始め!!』

 

 そしてダッカルがジールに気を取られた瞬間、油断の無かったヒソカと集中力の戻ったジールが縄を引き勝負は決した。

 

「あーーーーー!!!」

 

 声を上げたノアは、引っ張られダッカルの腰にぶつかりながらも負けた気配を察して目を瞑った。

 

『優勝はジール&ヒソカペアです!!』

 

 思い出せなかったことが分かりすっきりしたところでジールは、ステージの中央へと連れてこられた。

 視界には多くのプレイヤーが映っており、ここでやっと月例大会に参加していたことを思い出したのだ。

 

 兄と一緒に勝てたことが嬉しいヒソカは、隣に立つジールのことを覗き込む。

 そこには優勝出来て嬉しそうにしながらも、どこか悔しそうな雰囲気を見せる兄がいた。

 

 また自分には分からない難しい事でもあったのかと流したヒソカは、カイトやダッカル達のいるスペースへと戻っていく。

 

「よっ!おめでとさん。」

「まあ祝ってあげるんだぞ!悔しいけどな!」

「おめでとう、ジール。」

「パチ、パチチ!」

 

 賑やかに迎えられた二人はそれぞれお礼の言葉を言いながら、カードをバインダーにしまった。

 

 そしてヒソカがカイトのことを聞こうとジールの方を振り向くと、何故かジールとダッカルが話している。

 やっと聞けると思ったところで邪魔が入った。

 もう本人に聞いた方が早いかと、丁寧にパチネッコを撫でているカイトの元へ寄っていく。

 

「なあ、カルビ。」

「……………………なんだ。」

 

 祝い酒と称して新しく酒を飲み始めたダッカルは、声をかけてきたジールをありえないという風に見ながらも返事を返した。

 

「シングルの授賞式は最近だったか?」

「……ああ、まだ一年経ってねぇんじゃねえの。」

「仕事の斡旋所を作ったか。」

「なんだ、お前さん知らなそうな顔してたろ。」

 

 ジールからの質問が、ダッカルの素性を問うものだと気づいたダッカルはそれまで一切触れてこなかったジールを不思議に思った。

 

「………………忘れていた。」

「おい。」

 

 若干気まずそうに言うジールに、こんな男前を忘れんなと文句を言おうとした時。

 

 

 ――うわぁぁぁああああ!!!!

 

 

 少し先の路地から悲鳴が聞こえてきた。

 

 反射でノアの前に立ったダッカルは、周囲に注意を向けながら変化が無いことを確認すると警戒をゆっくり解く。

 

 大会が終わり人もはけ始めた時間帯だ。誰がトラブルでも起こしたのかとそこまで興味を抱かなかったヒソカ達は、噂する周囲に耳を傾けながら雑談に耽っていた。

 

 野次馬に向かった者たちが状況を把握したのだろう。

 だんだんと騒ぎが大きくなっていくのを感じながら、見に行くかと相談をしていると近くのプレイヤーの話し声が聞こえてきた。

 

「なぁ、お前見たか?」

「ああ、やばかったぞ。地面も真っ赤に染まってた。」

「だよな、真っ二つだぜ。」

 

 その言葉に誰かが死んだらしいことが分かる。

 ヒソカはもし強そうな相手なら戦ってくれないだろうかと考えながら、次のターゲットに据えようかと悩んでいた。

 

 そしてふと視線に気づき顔を上げると、ジールがこちらをじっと見ている。

 

(なんだろう?ボクを心配してるとかかな♥)

 

 怖がってなんかないよ、と気持ちを込めて手を振って見れば、ひとつ頷いた兄はまた周囲の様子を観察し始める。

 安心してくれたようで何よりだと、笑うヒソカはすれ違う思惑に気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(よかった……。違うっぽいし、ひー君がプレイヤー狩りで名を馳せることは無さそうだ。)




次回から、グリードアイランドの話も折り返しです。

ここまで読んで下さりありがとうございました。
評価、感想、ここすき等励みになっています。

ジールとヒソカが行く場所(今後、協専からの仕事で行く順番の参考にします。)

  • 大きな街の時計
  • 地底海
  • いやがらせの館
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