「……一旦引いて様子を見たい奴は?」
草原に円を作るように座った面々は、片手を上げながら採決をとるジールを見つめている。
「……このまま乗り込みたい奴。」
その言葉に今まで微動だにしていなかった全員がスっと姿勢よく腕を伸ばした。
爽やかな風が吹く昼下がり、薄々と感じていた空気を無視して多数決にまで持ち込んだジールだったが、ここには血の気の多い者しかいないのだ。
最後の希望であったカイトでさえ、真顔で腕を上げている。なんならその膝の上にいるパチネッコもいつもより縦に長い気がした。
「……わかった。」
正直、色々準備してから万全の状態で臨みたかったジールだがここでは少数派である。
目の前でヒラヒラと見せつけるように手を上げるヒソカと、期待した様子でこちらを見てくるノアに否とは言えないだろう。
空になった酒瓶を覗き込んでいるダッカルに関してはただ単に準備がめんどくさいだけのような気もするが、決まってしまった以上ジールが口を挟む余地は無い。
脳内で盛大に駄々を捏ねつつも、大人な対応を見せるジールはひとつ息を吐いて議論の結論を出した。
「今から『一坪の密林』入手作戦を決行する。」
※※※※※※※※※
ことの発端は約一週間前。
月例大会で『聖騎士の首飾り』を手に入れたジールは、その後の月例大会にも参加しつつカード集めと修行に没頭していた。
偶に帰ってくるヒソカを迎え入れつつしみじみと大会のことを振り返るくらいには、その時から時間が経っている。
どこかで聞いたことのある名前だと思っていたダッカルが、プロハンターの仕事の時に見かけた人物だとわかったときは爽快な気分になったものだ。
(いやー、準備したよ星付きの授与式。主に必要な書類とか書類とか書類とか。確かにあの時ダッカルの名前もあったわ。)
案の定、すっかりダッカルのことを忘れてしまっていたが、向こうが初対面だと思ってくれている所は幸いだろう。
勿論それはダッカルがジールみたく相手のことを忘れている――なんてことでもなくただ初めて会った時にジールが麻袋を被っていたためだ。
まさか協会内でも有名な、麻袋を被り声を発することも無い変人がこんなところにいるとは思わないだろう。
おかげでジールは会ったことある相手の名前を忘れる失礼な奴というレッテルを貼られずに済んだのだった。
それからもダッカルやノアとは偶に協力したり、カードを奪いあったりと素敵なフレンドライフを築いている。
ゲームを始めから半年が経とうとしているジールは埋まってきたバインダーを眺めながら、今までの思い出に耽っていた。
「ジール、行くぞ。」
ゲーム内で仲良くなったカイトはパチネッコの世話をやきながらジールに着いてきてくれている。
今も、時間指定のあるカードを取りに行くためにわざわざ声をかけてくれる出来た友人だ。
買い物リストと書かれた指令書にそってゲーム内で必要なものを集めなければならないイベントに、気前よく付き合ってくれるのは素直に有難かった。
バインダーを仕舞い、小屋から出てきたジールは少し身長の伸びたカイトを見る。
「武器は参考になったか?」
午前中はずっと念の修行をしていたカイトに、その進捗を聞く。
少し前に使い勝手のいい武器について聞かれた時は驚いたジールだが、その意図を察しいくつかお気に入りの武器について話したのだ。
「ああ、助かった……。」
手元のパチネッコを撫でながら礼を告げるカイトは、物言いたげにジールを見ている。
その視線を受けたジールはショップで購入したバールや、ついでに紹介しようと選んだネイルハンマーなどの工具を渡したことを思い出した。
もしやそれの事かと考えているが、もしかしなくてもその事である。
「……普通の武器は既に見ただろう。」
「つまり、それ以外にも目を向けろということか。」
歩き始めたジールが誤魔化すように説明すれば、いい方向に捉えたカイトが一人納得してくれる。
脳死したジールが武器といえば、とエクスカリバールについて話してしまっただけだが何とか相談相手としての体裁を保つことが出来たようだ。
人が歩き均された道を横に並んで歩く二人は、時折すれ違う小動物に目を向けながら話を続ける。
とはいっても殆どがカイトが話すのにジールが短く答えるだけだが、そのスタイルで定着した二人に違和感は無い。
「あそこの偶蹄目の目の付き方は珍しいな。」
「肉食だろう。」
「あの足で獲物を捉えるのか!見てみたい。」
「プログラムが組まれてるなら見れるぞ。」
「……夢の無い奴だな。」
会話の大半はカイトの興味により生き物で占められている。
(ほんとに好きだよなぁ。それで言えば抱えられてるパチネッコも珍しい生き物だろう。)
まだ目的の街まで距離があるため、のんびりと視線を下ろしたジールはカイトの腕に収まっているパチネッコを撫でる。
それに気づいたカイトもジールの次にパチネッコの頭に手を乗せてその感触を楽しんでいた。
「ジールについてきたコレは、どこか生息地が決まっているのか?」
「確か、北の方にいると聞いた。」
「なるほど逸れたんだな。群れがあるなら帰してやりたいが……。」
ふと話題がパチネッコに移ったところで、ジールはカイトの呟きにハッとした。
出会った後からずっとくっついて来たため気にしなかったが、普通に考えれば野生の生き物は自然に返してやるべきだろう。
自然界で潜む気の無い黄色い毛玉だが、こいつにも生きていた場所があるはずだ。
「よし、次は北に行こう。」
「……お前の唐突な発言にも慣れてきたぞ。」
アントキバで会った店主の話を思い出しながら次の目的地を決めたジールは、さっさとミッションを熟してしまおうと見えてきた商店街に視線を向ける。
――ゲームの中で必要な雑貨があればここに来ると良いだろう。
特殊な道具はマサドラに多いが、食料品などはこのアルクラ商店街の方が種類がある。
夕方に行われるセール品を手に入れようと店の前に並んだジールは、他の店で物色していたカイトを呼んだ。
「……何かあったか?」
「そこの花屋にガーデニング用の道具があったから見ていた。」
そう言ってカイトが指さした先には伐採用のノコギリから高枝バサミ、鎌などがありゲーム特有のものなのか黄金に輝くものまで揃っていた。
「眩しいな。」
「感想がそれか……。ジールが武器の参考に色々見た方が良いと言ったんだろう。」
「なるほど。」
サングラスをつけているクセに眩しいとはどういうことか、感想に困ったジールが何となくで返したことを察したカイトが説明を加えた。
半年も一緒に行動していれば、ジールの意外とマイペースな性格にも気づく。
普段口数が少ないせいで誤魔化せているジールは、少し慣れてくると自分から声をかけるようになるのだ。
まあ、結論だけ話して相手を混乱させることも多々あるが少しずつ知り合いが出来てコミュ力赤ちゃんを卒業出来たということだろう。
ちなみに一番ジールの傍にいるヒソカについてはお兄ちゃんムーブのせいで未だに誤魔化せているとだけ言っておく。
「只今より!アルカラ商店街名物、冥府の牛切り落としを行いますー!!!」
カランカランとベルを鳴らしながら叫ぶ定員は、押し寄せる客に引くことなく商品を捌いていく。
話していたせいで出遅れたジール達もその人混みの中へ入ろうとする。
プレイヤーなのか、キャラクターなのかは分からないがものすごい熱気がジール達を襲った。
プロと呼ばれるだろうおばちゃん達は定額を差し出しながら肉の入ったビニールに手を伸ばす。
揉みしだかれサングラスが曲がりそうだと思いながらもゴリ押しで最前列へ出たジールは3000ジェニーを叩きつけ、赤紫色の肉を手に入れた。
それからはまた人の波に逆らいながら店の出口へ向かい、最終的には人々の足元から這い出でるように退出する。
(店の前に並んだ意味ねーじゃん。やばかった、食い物が人に与える影響半端ない。)
膝についた埃をはらいながら、背後の戦場を振り返ったジールは、壁際に避けながらなんとか出てきたカイトに手を伸ばす。
「平気か?」
「……あれは無理だろう。」
絡まった髪を解きながら疲れきった様子を見せるカイトもジールと同じように店の中で揉まれてきたようだった。
なんなら普段の修行よりも疲れを見せているカイトに、ジールは自身の修行メニューを見直そうかと考える。
(結構ボロボロになったし、俺の求めていた修行はこれだった???)
どうやら疲労でまともな思考回路が焼き切れたようだ。
手元に大きなビニール袋を持った二人は店の外で待っていたパチネッコを拾いに行きながら、一先ず回復しようと話し合う。
「買い物リストも殆ど終わっているし、どこかで休憩していかないか?」
「ああ。」
「飲食店でも探そう。」
精神的に大きくダメージを受けた二人が、商店街の通りを歩きながら適当な店に入ろうとしたところでジールの目は一点から動かなくなってしまった。
「……ん?どうした。」
立ち止まったジールに気づき、隣りを歩いていたカイトもその視線を追ってその店を見る。
『本屋』
なんの捻りも無い店名だが、休息を求めていたジールにとってはとても魅力的な名前に見える。
この後喫茶店に寄ったとして、その場に本があればどれだけ素敵な休憩になるだろうか。
ゲームの中で流通している本のセンスがいいことはリサーチ済みだと、フラフラ吸い寄せられていくジールの目は輝いているように見える。
疲れたなんだと言っておきながら寄り道する元気の残っているジールは本当は疲れてないのではないのかと疑うカイトだが、正真正銘ジールは疲れている。
但し本については別腹なのだ。
木製の扉が開く音に、仕方がないからついて行こうとジールの後を追ったカイトはそこで頭を抱えることになる。
「そんなに買ってどうするんだ。」
「……。」
少々バツが悪そうに顔を背けたジールは何十冊と積まれた本を抱えている。
「とりあえずバインダーにでも……」
「入らない。」
「あぁ、そうか。買い物リストの品物を入れてたな。」
――なら、なんでそんなに買ったんだ。
目で訴えてくるカイトは、ジールの馬鹿すぎる行動に呆れながらも少し不思議がっているようだった。
まあ無理もない。普段、計画を立てて根回しをすることで万全の状態に持っていこうとする男がこうも無計画な買い物をしたのだ。
これに関してはいつもの癖としか言いようがない。
ハンター世界を満喫できる書物に関して我慢出来ないジールは、魔法の鞄にかまかけて書店を空にする勢いで本を買う。
今回も所持金がジールの行動を止めてくれたが、鞄を持っていないことをすっかり忘れていたジールは止められなければ棚の一つや二つ空にしていた。
しかし買ってしまったものはどうしようもない。ゲームの中に返品なんて仕様はないので持っていくしかないのだ。
カイトの分と合わせて肉をバインダーに仕舞ったジールは両手で本を抱えながら、隣りのカイト見る。
その腕にも厚めの本が十冊ほど乗せられており、居場所を奪われたパチネッコがカイトの頭上へ避難していた。
休憩どころでは無くなったジールは、流石に申し訳なさを感じているようで何か解決策は無いかとバインダーのページを捲る。
そしてフリーポケットのページまで来たところである妙案を思い付く。
――バインダーに入り切らないのなら、入る人に預ければいいのだ。
カイトはジールと行動を供にしているため、ポケットの多くが埋まっている。そこで一枚のカードを取り出したジールは、抱えている本が落ちないようにバランスを取りながらスペルカードを唱えた。
「
光に包まれたジール達は、そう離れていない草原に降り立つ。
視界が明瞭になる中、オーラが練られた状態のヒソカに身構えるがその対象が自分達でないことに気づくと直ぐに構えを解いた。
「あれ♦兄さん達じゃないか♥」
どうしたのかとこちらへやってくるヒソカは多少の興奮状態にあるようだが、ジールにとっては本を仕舞う方が先だった。
「この本をひー君のバインダーに入れて欲しいんだが……。」
「でもそれカードになってないよ?これからカード化するのかい♠」
首を傾げながら聞いてくるヒソカに、ジールはやっと己の状態がいかに不自然であるかに気づいた。
ジールにとって本がこの状態であることは当然である。しかし、それはアイテムがカードとなるこの世界以外での話だ。
たとえ本屋に並んでいる本がカードの状態でなくとも、購入と同時にカード化して渡されるのが普通だろう。
一緒にいたカイトもジールの予想外の行動に驚いていたせいで気づくことが出来なかった。
さらに言えば、疲労で焼き切れた思考ではまともなことは考えられないということだ。
(おいおいおい、どうしたんだ俺。電話しながらスマホを探すみたいなボケをかましやがって。その手に持ってるものはなんですか!!君は何で電話してるんだい!?俺は何をバインダーに入れようとしてたんだ!?本のままねじ込むつもりかよ。)
バインダーに入れるという発想があるのに、カードじゃないことに気づかないとは。
己の信じられないやらかしに固まったジールは、未だ返信を待っているヒソカと見つめ合うことになる。
しかしこのままでは何も解決しない。
ジールと同じように気づけなかったショックを受けてるらしいカイトも自身の腕にある本を見ながら固まっていた。
三者三様に固まった空間で風だけが吹く中、ジールの耳は何かを拾い上げる。
「……う”ぅ。」
近くから聞こえてきたうめき声に、ヒソカから視線を外したジールは弟の背後に倒れている男を見つけた。
背の高い草の間から見える身体はあらぬ方向に曲がっている四肢をくっつけており、ダメージは大きそうだ。
ヒソカのオーラが練られていたのは戦闘中だったからなのかと納得すると同時に、とりあえず情報収集から始めようと調子を取り戻したジールはヒソカに倒れている人物について訪ねた。
「ん?マサドラから熱心に追いかけてきたからね♥あんまり長くはもたなかったけど♣︎」
(つまり追い剥ぎガチャをドブった不運な奴と、把握。)
抱えていた本をヒソカに渡しながら声をかけてきてもいいかと聞けば、既に興味は無くなっていたようであっさりとした返事が返ってきた。
そしてジールが話を聞こうと一歩踏み出したところで、倒れていた男は一瞬のうちに姿を消した。
本当に不運な奴だったと数秒前まで生きていた男を思い浮かべながらも、既にどうにかできることでは無いとジールは次の方法を考える。
「今のプレイヤーはどうなったんだ。」
「おや見たことないのかな♥死亡したプレイヤーはゲームから
「……ヒソカが殺ったのか。」
思うところがあるのか、感情を伺わせない表情でヒソカと言葉を交わすカイトは笑みを見せるヒソカに視線を向ける。
「向こうが楽しいことをしようって誘ってくれたのさ♦」
こちらを揶揄っているとも思える声色で喋るヒソカに一瞬眉を寄せたカイトだったが、それ以上は何も言わなかった。
「……マサドラが一番近いか。」
地面に視線を落としながら零された言葉は次の目的地を考えているようだ。
ジールは遠目にうっすらと見える球体の屋根に現在地を把握すると、NPCから情報を集めることにした。
「それでこの本たちはどうすればいいんだい♥」
「……カード化する方法を調べる。」
「なら手分けして持っていくか。」
二枚目の
渡されたうちの半分を継続して持つことになったヒソカも久しぶりの兄に喜んでいるようだ。
そしていくらかの大金を支払い得た情報は以下の通りだった。
ゲーム内に存在しているカード化されていない本の出処は一つである。
また酒好きの森の主はその余生を書籍と共に過ごしているらしく、こうして森から流れてくる本がある。
――読めない本など本では無い。
そう豪語する主は変な形で本を保管する変わり者で、本屋の店主はよく困っているそうだ。
本をカード化する為のアイテムがその森にあるらしく、そのアイテムを使う事でカード化することができる。
などといった、ジールと気の合いそうな森の主の話を聞いたジールは、一先ず森の場所を聞き向かうことにした。
お買い物リストのミッションの途中ではあったが、大量の本をどうにかしなければフットワークも重くなってしまう。
殆ど購入も終わっている事だし先にこちらを優先してもいいかとカイトに訪ねたジールはその頭に乗っているパチネッコの方を見た。
「……君の群れの近くらしい。」
「パチ?」
「上手くいけば仲間に会えるということか。」
「パッ!パチチッチ。」
相変わらず目も見えない毛玉だが、その体の揺れから喜んでいることがわかる。
隣で森の主が戦えるのか興味津々なヒソカもジールについてくるようだ。
そうして大量の本を抱えながら街を出たジール達はすれ違うプレイヤーに二度見されながら地図の上へと移動していく。
地図の端とまではいかなくても、マサドラからかなりの距離があるその森は辿り着くのにかなりの時間を要した。
袋などを使い工夫しても大量の本がジール達の邪魔になる。何度か手放そうとする空気も流れたがその度にジールがそれを止めて進むの繰り返した。
途中、陸地を分断する様な川が出てきた時など、本さえなければ突っ切れたのだ。
そうして遠回りをしながら北の森を目指したジール達は島の中でも僅かに空気が冷たい平野に出る。
その先には背の高い木々が生い茂る森が視界の端まで続いていた。
昨夜から走り続けたジールは森に僅かな違和感を感じたが、その正体も分からず感じた違和感を流した。
「やっとか……。」
疲れたパチネッコがカイトの頭上で溶けている。
それを抱き上げ毛並みを整える手はいつもより弱くここ数日の強行軍がいかに長かったを物語っていた。
探索は休んでからにしようと誰からともなく提案され、それに全員が頷く。
近づいてなにかイベントが起こっても面倒だと、森から距離のある場所に荷を下ろしたジールは近くの岩に腰掛けた。
「まだ日はあるが、早めに寝床を整えよう。」
「そうだな。」
ジールとカイトが枯れ枝を拾い、厚めのタオルケットを出したりと準備を進める中で、ヒソカは元気に走るパチネッコを観察していた。
先程まで溶けていたパチネッコだがもう回復したらしく三角の耳を動かしながら地面の上をコロコロと転がっている。
試しにヒソカが手を伸ばせば跳ねることでそれを器用に避けて見せた。
そして英気を養い、明日には森の様子を見に行こうかとジールが考えていたところで遠くの方から声が聞こえてきた。
「おー!飼い主と一緒じゃねえか。」
「ジール!カイト!ヒソカ!久しぶりだな!」
駆けながら手を振るノアと酒瓶を傾けながらゆっくりこちらへやってくるのはダッカルだった。
待ち合わせをするでもなく出会うとは珍しい。
向こうもそう思ったのか、いつもよりテンションの高い二人はパチネッコで遊ぶヒソカに声をかけながらジール達に近づいてくる。
「こんなところでどうしたんだ?」
「愚問だろう。」
このゲームの中でどこかに行くなどカードを手に入れる以外に何があるのか。そういった想いを込めて言ったジールだったが、とりあえず半年間修行をしていた人には言われたくないだろう。
「そうか!やはりジール達も『一坪の密林』を取りに来たのだな。」
「「「えっ、」」」
予想外の名前が出て驚いたジールとカイトから声が出たが、なんでお前も驚いているのかとノアの横に立つダッカルに視線が集まった。
「俺はてっきり酒盛りに来たのかと……」
意外にも本気で驚いているダッカルは、森の方を見ながら欲望をこぼした。
「なんでそうなるんだ!一坪の密林をゲットする為に森の主に会うと聞いただろう。」
「いや、酒好きの森の主がいい酒を持ってるって俺は聞いたぜ!!」
相変わらず仲良くやっているらしい二人だが、言い合っている内容を聞いているうちにこれまでの事を振り返ったジールはひとつの結論に至った。
(つまり俺達は一坪の密林イベントにリーチをかけていたらしい。)
ダッカルの言う酒好きの森の主はジールも聞き覚えがある。
島の中にあるフラグのひとつを偶然にも回収していたようだ。
(もう少し情報を集めてきた方が良かったか……、まぁ森まで来れたのも奇跡だしなぁ。気づけたノアが凄かったということで。)
一人納得したジールは、言い合っている二人の間に入ってその喧嘩を仲裁しようとする。
「待て、今回はノアの情報がアタリだ。」
「ほら言っただろう!脳みそまでアルコール漬けになってるから忘れるんだ。」
「そんなわけねぇだろ!せいぜい肝臓までしか浸かってねえよ!!」
「そこじゃないだろ。カルビの言う酒好きも間違ってないがピースのひとつだ。」
「ほらみろ!」
「ピースのひとつだってジールが言ってるだろ!カ・ル・ビ!!」
ジールが何とか止めようとしているが、二人の勢いに声を張り上げるだけで精一杯だった。
それからしばらくして、埒が明かないと二人の頭に拳を落とし正座をさせたジールは、頭を冷やせと一晩放置した。
「落ち着いたか。」
「…………悪かったんだぞ。」
「反省した反省した。」
朝食の準備しながら二人の様子を見に行ったジールは、それから四人で話し合いを始める。
話題は目の前の森をどうするか。
その結論は冒頭のとおりとなるわけだが、予定と違った情報が出たジールはもう一度情報収集をするつもりでいた。
(まじかよ……レアカードはいつもクールなカイトもノリノリにさせるのか。)
ひとまず寒い気候の土地に合わせて最低限の買い出しはすると近くの街まで向かったジールは、先程の多数決を思い浮かべ、ため息をついた。
食料や森の中で方角が確認出来る道具も買っていこうかと、道中でリストを作成しながら一人道を歩く。こうした想定外の出来事も旅の醍醐味だろうと気分を切り替えたジールは知らなかった。
残されたメンバーが何を話しているのか……。
「とりあえずパチネッコ追いかけるついでに奇襲しに行こうよ♥」
次回は一坪の密林戦です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
ここすき、感想、評価などいつも励みになっています。
ジールとヒソカが行く場所(今後、協専からの仕事で行く順番の参考にします。)
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大きな街の時計
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地底海
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いやがらせの館