口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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ヒソカ視点でのお話です。よろしくお願いします。


絵、人だけはとっても上手かったよ。

side ヒソカ

 

 

やあ!にぃからはひー君って呼ばれているよ。

 

今はね、にぃのお見送りをするためにママと玄関に来てるんだ!

 

僕のにぃは凄いんだ。一緒に遊んでくれるし、何回勝負しても勝てないんだよ。

 

にぃは、道場ってところに行ってるからとっても強いの。今日こそは勝ちたいなって思うんだけど…。あっ、もう学校行っちゃう!

 

「にぃ!今日、鬼ごっこしたい!」

 

「…すまん、はっぴょうかいの練習があるから無理だ。」

 

無理?遊べないの?

 

「えー、なんで!」

 

「母さん、ひー君、行ってきます。」

 

「行ってらっしゃい。気をつけてね。」

 

「……行ってらっしゃい。」

 

にぃ、学校行っちゃった。

しょうがない、にぃがダメならトモとシータのところに行こう。

……今日は、勝負がしたかったのに。

 

母さんに言ってから、二人がいつも居る公園に行く。予想通り、砂遊びをしていた2人を呼んで鬼ごっこがしたいことを伝える。

 

 

 

 

……2人とも弱い。つまらない。

 

「遊んでくれてありがとう。」

 

「俺、楽しかった!」

 

「ヒソカ君は速いねぇ。」

 

トモは、自分のこと俺って言うんだよ。

この前、僕も自分のことを俺って言ったらにぃが凄く驚いた顔をしてた。普段は全然驚いたりしないから、僕の方がびっくりしちゃった。

また今度言ってみようかな!…オラオラ系って呟いてたけど、そういう名前の人かな?

 

 

明日は、にぃと鬼ごっこしたいなぁ。

 

 

 

 

 

 

「にぃ、今日鬼ごっこしたい!」

 

そう言うと、にぃは少し眉毛を下げてこちらを見てきた。困ってる?

 

「…すまん、今日も忙しいから。」

 

駄目なんだ、そっか。

 

「ジールちゃん。行ってらっしゃい。」

 

「……行ってらっしゃい。」

 

「行ってきます。」

 

パタンと音を立てて扉が閉まる。部屋に戻ろうとしたママが、動こうとしない僕を見てしゃがみこんできた。

 

「ジールちゃんはね、学校でやらなきゃいけないことがあるのよ。ヒソカちゃんと遊びたくない訳じゃないの。」

 

「うん。」

 

わかってるよ。にぃ、いつも学校に行ってるもんね。ただ、いつもより帰って来るのが遅くて遊べないのが嫌なんだ。

 

どうしたら良いんだろう。

 

ママに手を繋がれて部屋に戻ると、おもちゃが入った箱が隅に出されていた。

つみきでもしようかな?この前、にぃが作ってくれたぴらみっどは綺麗だった。僕も作ってみようか。

 

 

 

 

ご飯を食べたあとは、ママとお出掛けする。

 

ママは僕に上着を着せてから、部屋のあちこちをまわってる。鞄に大事なものを入れてるんだって。

ママが出かけるときは、どこに置いたかしら?って言いながらいつも探してる。中身が揃わないと出掛けられないから、僕はいつも玄関で待ってるの。

 

 

そっか、にぃも鞄の中身が揃わないと学校に行けないよね?

 

 

 

夕方になって、僕はにぃが帰って来る時間になるから玄関のところで待ってるんだ。いつも直ぐに鞄を置きに行くから、後をついていって鞄の中身を隠せば、明日は一緒に鬼ごっこできるよね!

 

わくわくしてると、玄関の扉が開いてにぃが入ってきた。

 

「おかえりなさい!」

 

「ただいま。」

 

にぃは、白い袋を手に持って帰ってきた。

早く部屋に戻らないかな。ジッとにぃを見ていたら、にぃがその袋を僕に渡してきた。なに?くれるの?

 

「お土産だ。」

 

中を見ると、紙で出来た鳥がたくさん入っていた。

綺麗な鳥だ。これを僕にくれるの?うれしいな。

 

にぃがチラチラこちらを見ている。どうしたんだろう、変な動きだね。

 

「……にぃ、ありがとう!嬉しい!」

 

そういうと、にぃは少し嬉しそうだった。これで何しようか…。

たくさんあるから家の外みたいに並べてみようかな、おっきな怪獣を使うのもいいかもしれないね。

なら、作ってくれたにぃも誘わなきゃ。

 

 

「これで怪獣ごっこしよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっちゃった。

 

にぃと遊ぶのが楽しくて、鞄の中身を隠すの忘れて寝ちゃった。

うっすら窓から光が入ってくる室内で、目が覚めると昨日の事を思い出した。

…よし、にぃはまだ寝てるから、今から隠してしまおう。

 

なるべく音をたてないように静かに歩く。

そして、机の横に置いてあるにぃの鞄を開けて中を確認してみる。いくつかの本と、筆箱と、ハンケチ、ん?箱が入ってるよ。

 

気になって引っ張り出してみると、いつも絵を描くときに使うやつだった。

 

「クレヨン!」

 

おっと。慌てて口を手で塞いだ。チラッとにぃが寝ているベッドの方を確認する。うん、大丈夫みたい。

 

今から全部隠してると、にぃが起きる時間になっちゃうのでクレヨンだけ隠すことにした。

何処に隠せばいいかしばらく悩んだけど、僕の枕の下に決めた。これならにぃが見つけることも無いだろう。

 

念のため上から枕を何度か押して、もっと隠れるようにしといた。

 

にぃが起きてきて、着替えている時とか僕が勝手にクレヨンを取ったことがバレないかソワソワしちゃったけど、にぃは全然気づかなかった。

 

そして、にぃは学校に行くために玄関に立っている。

 

「にぃ!今日も学校行くの?」

 

「あぁ、」

 

中身揃ってないから行けないでしょ?えっ、行っちゃうの?

 

「行ってらっしゃい。気をつけてね。」

 

「行ってきます。」

 

「……行ってらっしゃい。」

 

 

えー、行っちゃったんだけど。

 

どうしよう。鬼ごっこのお誘いも言ってないのに。

とりあえず、枕の下に隠しておいたクレヨンはおもちゃ箱に片付けとこ。

 

 

もしかしたら、中身が足りなくて早く帰って来るかもしれない。なんなら、中身が違うから学校に行ってないかも。

 

もし、にぃが早く帰ってきてもいいように庭の様子を見ておこうね。

 

 

 

 

「ただいま。」

 

にぃを出迎えるために玄関で仁王立ちしていた。

 

「おかえりなさい!今日、学校行ったの?」

 

僕がクレヨンを隠しておいたんだ、きっと学校も行けなかったよね?

…帰ってくるの遅かったけど。

 

「?…行ってきたぞ?」

 

やっぱり駄目だったらしい。なんでさもう!

 

「……一緒に遊ぶ。」

 

僕はちょっとご機嫌ななめだよ。ちゃちな遊びじゃ満足しないからね!

にぃを引っ張ってリビングの方まで行く。

 

 

……にぃと道場の技をやるの楽しいよね。

 

拳法ってやつをしているにぃはとってもかっこいいの!にぃの隣に並んで、一緒にパンチの練習をする。にぃが腕を前に出す時に、風がヒュッてなるのがとってもいい。

 

それに、パンチの真似が上手く出来るとにぃが褒めてくれる。ふふっ、嬉しい。

 

にぃと一緒に遊べたが、まだ鬼ごっこは出来てない。

明日こそは学校に行かないようにしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むくりと、ベッドから起き上がる。横目で見たにぃはまだ寝ている。

 

昨日中身を隠しても、にぃは学校に行ってしまった。今日は、もっと別のを隠したいな。

僕は考えたんだ、お外に出れないものは何かって。そこで上着はどうだろう。

今は、まだ外が寒い。上着を着ないで外に出ようとするとにぃもママも怒ってくる。

 

 

昨日よりも、もっと音を立てないように歩く。

ラックに掛かっているにぃの上着を取って、また枕の下に隠そうとしたが、上着の裾が枕の横から見えていた。

 

これではいくらにぃでも気づいてしまう。白い枕のところから青い布が出てるの。とりあえず掛け布団をかけて隠したが、にぃにバレないよう見張っておかなくちゃ。

 

 

ご飯も食べ終わって、部屋に戻ろうとするにぃを追い抜いてベッドに駆け込む。

見つかったら学校に行ってしまう。隠そうと思ってもいい場所がない。

 

どうしよう来ちゃう。

 

 

 

 

……ガチャ。

 

「…どうかしたか?」

 

「な、なんでもないよ!」

 

 

危なかった、ギリギリバレてないみたい。

にぃは首を傾げていたが、学校の準備をしに来たことを思い出したのかな。自分の机の方に歩いて行って準備を始めた。

 

僕はそっと部屋を抜け、裏庭まで行く。

そこには窓から落とされた上着が地面に落ちていた。ところどころに土がついて汚れてしまっている。一応、にぃにバレないようにここで見張っておこう。

 

上着の横に座っているといつの間にか家の中が静かになっていた。さっきまでママとにぃが上着を探してバタバタしてたので、直ぐに分かったよ。

 

様子をみようと、窓から部屋の中を覗き込むとクローゼットの扉を閉めたママと目があった。

なんかやばい気する。

 

 

「ヒソカちゃん、こんなところで何をしているの?」

 

窓際までやってきたママは、僕の隣にある上着を見て気づいたらしい。…にぃに言われるのかな。

 

「にぃの上着隠してた。」

 

「人の物を隠すのいけないことよ。」

 

 

とりあえずこちらにいらっしゃい。とママが言うので、にぃの上着を持ってリビングの方に行く。

 

「そこに座りなさい。」

 

ママの声は優しかったけど、いつもより怖い雰囲気だった。上着を握りしめながら椅子に座るとママはゆっくり話はじめた。

 

人の物を許可なく持って行くのはいけないこと。

物が無くなるとにぃが困ってしまうこと。

なんで隠そうとしたのかも聞かれたが、喋りたくなくてずっと黙っていた。そしたらママはお兄ちゃんにはちゃんと言いなさいとだけ言ってそれ以上は聞かないでいてくれた。

 

他にも、学校に行かなきゃ行けない理由も聞いたが、それよりも僕は気づいてしまったのだ。

 

僕が上着を隠してにぃを困らせたから、にぃは僕の事嫌いになっちゃったんじゃないかって。

 

にぃと遊べなくなる!どうしようと顔色を悪くしていると、ママが少しだけ微笑んで頷いた。

 

「ちゃんと謝るのよ?」

 

それからは、いつも通りのママに戻った。

でも僕は、にぃに嫌われるんだと思うとゾワゾワして落ち着かなくて、にぃが帰ってくるまでずっとつみきを叩きつけていた。

 

「ただいま。」

 

…!にぃが帰ってきた。早くごめんねしないと。

そう思っても、にぃと話すのが怖くてつみきをほっぽって洗面所に逃げ込んでしまった。

 

ママとにぃが何かを話している。気になって少し顔を出すとにぃと目があった。

…反射で隠れてしまったけど、これだとにぃに謝れない。

 

 

謝らなきゃと思って後をつけるけど、お風呂の時も宿題をしてる時も、歯を磨いてる時も声をかけられなかった。

にぃも気になっているのか、たまにこちらを見るが僕が隠れてしまいやっぱり話せなかった。

 

 

そして、にぃがベッドに入り寝る準備を始めてしまう。

これ以上は、隠れられないと思って素直ににぃのところへ行くことにした。

 

「にぃ、明日も学校行くの?」

 

「……ああ。」

 

やっぱり学校に行くってことは、もう僕とは遊びたくないのかな。

 

「すぐに帰ってくる?」

 

遊ぶ時間は無くなっちゃうの?僕遊びたいよ。

 

「難しいな。」

 

「そっか。わかった。」

 

やっぱり、ママに僕がやったことを言われて嫌になったんだ。これじゃあ、きっと謝っても遊んでくれない。

どうしよう、ずっとにぃの手を掴んでいたら一緒に学校いけるかな?いいよ?僕、にぃと遊べるなら学校にもついていくよ。

それか、にぃが怪我しちゃったって言えば、ママもお家から出さないよね。鬼ごっこは出来ないけどつみきも楽しいからそれでも良いよ!

とりあえず、にぃと遊べるように何か考えないと……。

 

「ひー君、絵本一緒に読むか?」

 

えっ?今のにぃが言ったの?…嘘じゃない?

にぃと一緒に絵本を読む……。

 

「…誘ってくれるの?」

 

ごめんねも出来てないよ?

 

「…そうだが?」

 

そっか…そっかぁ。

ふふっ、よかった。にぃはまだ僕と遊んでくれるんだって。

 

「こちらへ来い。」

 

にぃに言われるまま、ベッドの上に乗り込む。

にぃのお気に入りの絵本だ、僕にも見せてくれるんだね。あぁ、にぃは優しいな。にぃを困らせちゃった僕とも遊んでくれるんだ。

 

なら尚更学校に行かないで欲しいな。隠しても嫌いにならないなら、明日はちゃんと家にいてもらえるように隠しておくね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……靴が無い?」

 

玄関で、学校に行く準備をするにぃもニコニコしながら見てられる。

にぃは、僕が隠した靴とお出かけ用の靴しか持ってないよね。これならお家にいてくれる?

今日は、もう靴が使えないからお家の中で遊ぶことになるけど、別に鬼ごっこじゃなくてもいいからね!

 

「にぃ、学校行けないの?」

 

「…そうだな、どうしようか。」

 

引き止められるかな?そう思った時に、ママが後ろからやってきた。

 

「あら、ジールちゃんどうしたの?」

 

「母さん、…靴が無くて困ってる。」

 

にぃが、ポッカリ開いた靴箱を指先ながらママに言う。それを見たママは、こちらの方を見た。

 

「…ヒソカちゃん、今すぐ持ってきなさい。」

 

「えー。」

 

それを聞いたにぃが、びっくりしながらこちらを見た。どうしたの?

 

「……ひー君が?」

 

「えっ、知らなかったの?」

 

なんで?昨日ママに聞いたんじゃないの?

二人でびっくりしながら見つめあってるとママが早く取ってくるように急かしてきた。まぁ…にぃが知りたそうにしてるし取ってこよう。

 

そうして、中庭のひっくり返された桶の下に隠しておいた靴を持って玄関に戻る。

 

「ヒソカちゃん、お兄ちゃんにお話しなかったの?」

 

さっき程ではないけど、それでも僅かに驚いているにぃと、少し困った顔をしたママが僕を待っていた。

 

「何を話すの?」

 

「上着のこと、お兄ちゃんに理由を話して謝るんじゃなかったかしら?」

 

「…にぃが一緒に遊んでくれたから、もういいかなって。」

 

「ダメじゃない、ちゃんと悪いことをしたら謝らないと。お兄ちゃんは何も知らなかったから遊んでくれたのよ。」

 

そうなの?

にぃの方を見るとママと僕の方を見てハラハラしているようだったが、僕が見ていることに気づいたのか、何度か口をハクハクさせてから頷いた。

 

どうやら、僕がやったことは知らなかったらしい。

なんだ、じゃあやっぱり僕のこと嫌いになっちゃうのか。

…もう少し上手く隠せばよかった。

ギュッとにぃの靴を握って俯く。

 

「…ひー君は、俺が嫌いなのか?」

 

にぃの声が泣きそうだった。驚いて顔を上げてにぃの顔を見る。別に涙は出てなかった、眉が少し下がっているだけだ。…けど、にぃが辛そうに見えた。

 

にぃも、僕に嫌われるがイヤなの?寂しい?

辛そうにしないで、僕はにぃのこと大好きだよ!

 

「そんなことないよ、僕にぃのことが大好きだもん。」

 

そういうと、にぃはどこか安心したように息をついた。まぁ、表情はあんまり変わらなかったんだけど。

 

「…なら、どうして。」

 

「……にぃが学校行かないようにしたかったの。…ごめんなさい。」

 

僕、にぃと遊びたかったんだ。

ママは僕とにぃの方をじっと見つめている。

にぃになんて言われるのか不安になって涙がでてきた。すると、頭の上ににぃが手を乗せてきた。

 

 

「そうか。俺もひー君には寂しい思いをさせた。すまなかった。」

 

「もう、遊んでくれない?」

 

「?…そんなことはない。」

 

「本当?」

 

「ああ、たくさん遊ぼうな。」

 

そういって、しゃがみこんだにぃは僕の頬っぺを拭ってくれた。

 

「じゃあ、今から鬼ごっこしよう!」

 

「…それは無理だ。」

 

えっ、なんで!?今遊んでくれる流れだったじゃん。

 

「そうね、ジールちゃんは学校に行かないと。」

 

「えぇー。」

 

「……帰ってきたら、特別な遊びをしよう。…では、行ってきます。」

 

「…行ってらっしゃい。」

 

「えぇ、行ってらっしゃい。頑張ってね。」

 

パタンと音を立てて扉が閉まる。

そして、この前と同じようにママがしゃがみこんできた。

 

「お兄ちゃんの発表会は今日終わるわ。」

 

「?…うん。」

 

「だから、早めに帰って来てくれると思うの。それまではお兄ちゃんを困らせたバツとして我慢しなさい。」

 

「……!!」

 

それだけ言うと、ママは僕の手を引いてリビングへ戻っていった。

 

「ごめんなさいね。私もヒソカちゃんに寂しい思いをさせたわ。」

 

「…ううん、遊びたいのはにぃだから。ママは一緒にご飯食べてくれるし。」

 

「そう。」

 

それからは、大人しくにぃが帰って来るのを待った。

今回は、にぃを困らせちゃって危うく嫌われるところだった、これからはにぃに嫌われないように上手くやらなきゃ。

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

「ただいま。」

 

「にぃ!おかえりなさい!」

 

「おかえりなさい。」

 

やっとにぃが帰ってきた。ずっと特別な遊びが何か考えながら待ってたんだよ。

 

鞄や上着を部屋に置きに行く後を付けていく。

入口から覗いて待っていると、動き易い服に着替えたにぃが出てきた。

 

「何して遊ぶの?」

 

「…組手。……なんでもアリだ。」

 

手を引かれて、部屋の中心まで連れていかれる。

 

それから向かい合って、パンチやキックを順番に掛けていった。言われた通りに動くのは、上手くいけば褒めて貰える半面、もっとワクワクしたいって思っちゃう。10分くらいかな、お互いに打ち合っているとにぃが構えをといた。

 

「…これくらいでいいだろう。」

 

「もう終わり?」

 

これが特別な遊びなの?

 

「…楽しいのはこれからだ。」

 

珍しくにぃがにっこり笑った。いつも褒める時しか笑わないのに。

驚いて固まっていると、さっきよりも速いスピードで蹴りがきた。慌ててガードをして防ぐと、すぐに空いたところに拳が入る。

初めてやられた動きに、対応しきれず当たってしまう。

 

直前で力を抜いたのか、全然痛くなかったが、今までとは全く違ったそれにワクワクが止まらなかった。

 

「もっかい!もう一回しよ!」

 

「あぁ。」

 

それからは、にぃに全然拳が当たらなかったし、足を引っ掛けて体勢を崩されることもあった。

 

どれくらいやってたんだろう。

 

「……これで終わり。」

 

最後に蹴りを払われて、にぃが宣言した。

僕は息絶えだえだった。にぃも少し疲れてるようだ。ちょっといい感じのところまでいけたのに。

左で殴るふりをして、蹴りを入れるの!

まぁ、かすっただけだけど。

 

「えー!もっとやりたい。」

 

「……疲れたから終わりだ。」

 

「じゃあ、明日やろ!その次も!」

 

息を整えながらにぃを見ると、ジッとこちらを見ていた。どうしたんだろう。

 

「……特別と言っただろう。毎日はやらない。」

 

「…ケチ。」

 

あっ、にぃが目を僅かに見開いてこっちをみている。ケチって言われたのショックだったのかな。なら、毎日やって欲しい。

 

「…やらない。(毎日やったらそのうち殺されそうじゃん。ムリムリ。)」

 

考えてる事がバレたのか断られてしまった。

そうしてちょっと落ち込んでると、にぃが学校の鞄から紙を出してきた。なんだろう?

 

「発表会で描いたものだ、ひー君にあげる。」

 

そこには庭に座ってる僕が描かれていた。

 

「へぇー。そっくりだね。」

 

「……いらないか?」

 

そんなわけないよ!組手の方が楽しかったけど、にぃが作ったものはどれも綺麗だからね!

 

「ううん、嬉しいよ!」

 

 

 

その後、ママからこっそり発表会の内容を聞いて、この絵は組手の次にお気に入りになった。

 




ヒソカがお兄ちゃんと遊びたくて頑張ってみる回でした。

評価、お気に入り、感想等ありがとうございます。励みになります。
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