もしBanG Dream!のヒロインと付き合っていたら… 作:エノキノコ
肌を
行き交う人々の進行を邪魔しないよう
彼女の笑顔に釣られて口元が
しかし、令王那はそこから次なる会話に
最初のデートから毎回されるこの行動に、初めての時はどう対応すればいいか分からずフリーズしてしまったが、流石に何回か経験を重ねてきた今なら、何を要求されているかわかっているので、ひとつ
「ふふっ、ありがとうございます♪」
いくら言っても
玲於奈が
「今日はゲームセンターに行きたいんです!バンドメンバーが話していたゲームをやりたいんですけど、2人で出来るものだから、キミとやりたいと思って」
いいですかね?そう確認してくる少女に
これも、彼女と出かけている時には毎回していることなのだが、自分が
「じゃあ、いきましょうか」
いつになったら慣れることかわからぬ自分に苦い笑みが
入り口付近に設置された両替機で、2人して一枚の札を10枚の金貨に変えたのち、
「あっ!ありました!」
バンドやってるし音ゲーとかなのかな、などと、安直な予想しかできない自分の隣の少女がどこか
「はい、そうですよ。・・・もしかして、ゾンビとか苦手でしたか?」
彼女の問いにすぐさまかぶりを振ってから、なんか意外だったからと、胸の中になった感想を率直に
「ははは…、まあ、確かに私のイメージとは合わないですよね…。でも、私も意外とこういうのに興味があるんですよ」
たどたどしく
盛大な電子音と共に切り替わった画面を見たのち、振り返った少女の瞳は、強めの光が飛び交うこの施設の中でも、確かに煌めいて見えた。
言葉にせずとも、早くプレイしたいと物語っているその視線に
ざっと見てみたが、十字キーや決定ボタンの類は存在せずに銃型のコントローラーが2つあるのみだったので、この手のゲームをやったことのない身としてはどうするべきがわからずに令王那へ視線を送ると、彼女は銃をホルスターから引っこ抜いて画面に向け、赤色のターゲットを銃口の先に出現させた。そのまま2人プレイのアイコンへターゲットを合わせて引き金を引くと、銃声と共に画面に操作説明が表示される。
令王那が進行方法を知っていたことにほっと胸を撫で下ろしつつ、操作説明を食い入るように凝視すると、特に複雑な操作が必要になるわけではなく、敵に弾丸に当てればダメージが与えられ、頭に当てればさらに大きくHPを削れる、残弾の6発を打ち切るとリロードされるまで攻撃不可というものだけで、全部で5つあるステージの奥に存在するボスを全て倒せばゲームクリアの、初見の人にもやりやすい設定となっていた。
「もう進めてもいいですか?」
ルールが飲み込めたところで、頷いて令王那に
「ふふーん♪下調べはしっかりしてきましたから!全部のステージをクリアするつもりで行きますよ!」
自分の想像よりずっとやる気だった令王那が、 銃を握っていない
・・・しかし、実力とは気合ではなく、経験や知識と直結するもので、どちらも持ち得ていない自分は彼女より先にHPが尽きてしまい、大部分を令王那1人で戦わせる事態となっている。
それはチャレンジ回数5回目となり、初めて
しかし、元々2人プレイのゲームとして敵の数が設定されているため、1人で全てのゾンビを
「あー…。負けちゃいました…」
画面に向けていた銃を下げる彼女が、回数を重ねるほどにしょんぼりしていくのを目の当たりにしていくと、罪悪感が
「いえいえ!むしろ知らないゲームにここまで
助けた10倍は救われているのにも関わらず、優し過ぎるフォローをかけてくれる少女が直視できずにいる
「一旦休憩にしませんか?私、少しお腹すいちゃいました」
その提案を聞いた瞬間、こちらがお金を出して少量でも負債を返済しようと考え、
「いえいえ、今日付き合ってもらってるのは私ですし、
自分が訊ねたのは食べたいものなのに、出費を
「・・・わかりました。なら、食べるものは君が決めてくださいね」
2度目の質問で今度こそ食べたいものはなにか訊き出そうとしていたこちらに、令王那は予想外の条件を突きつけてくる。正直、そんなことを言われても自分は今特段食べたいものがあるわけではないので、出来れば彼女に決めてもらったほうがこちらとしても助かるのだが、ここで彼女から無理に意見をもらおうとして勘定
ジャンクフード特有の空腹の自覚を誘う
こちらが選んだものでいいと言ってくれたのだから、その通りの采配を振るのが正解なのかもしれないが、どうせ食べてもらうなら、玲於奈がより喜んでくれるものを選びたいと思ってしまうので、自分の
そんな自分勝手な疑いのある思考に
しかし、休日の小腹が空いてくる時間帯だからか、短くない列がレジ前から伸びていて、さらにそれを形成するのは自分とは異性の人のみという、なかなかに違うお店を選ぶ理由を考えたくなる状況だが、あの場所以上に令王那を喜ばせられるような出店は見つけられないので、
結論から言えば、周囲の反応は予想していたものよりずっと軽度なもので、自分の思慮が無駄に
もしかしたら、令王那への
とりあえず足を止めて様子を
少し前まで顔に目いっぱい浮かべていた感情とは反転するその顔色に、床に張り付いていた
周りの視線が集まってくるのを肌身で感じながら、追い打ちをかけるように煌めく赤色の瞳と目が合ってしまい、じっとりとした汗が背に
確かに大きな音を響かせたのはマズかったかもしれないが、別に故意でした行為なわけではないしと、誰に言うものでもない言い訳を胸の内で零してから、口元を意識的に湾曲させて右手を振ったが、
自分の直感が針を刺す場所を探している
「すみませんいきなり…ってええっ!?」
いまだ選定途中の謝る理由のうち、どれに対して彼女が苦い思いをしているのかがわからないまま頭を下げていると、困惑と焦り混ざり合い、どこか呆れがほんのり帯びた声が落ちてきた。
「・・・え、えっと、とりあえず顔を上げてください」
その通りに元の高さに戻した視線の先にいる少女は、声質と同じ感情が顔に示されており、続く言葉は隠し味程度だった色が幅を利かせている。
「なんであなたが謝ってるのかは割と予想がつきますけど…。私、別に怒っていませんよ」
完全に
いきなり距離を縮められて顔に熱を籠らせるこちらの瞳に対し、少女は一ミリたりとも目を逸らすことなく口を開く。
「私に気を遣ってくれるのは嬉しいです。でも、私のことを気にしすぎて自分の声を飲み込むのはだめですからね」
わかりましたか?そうひと
「あの、すぐに連れ出してしまった私が言うのは変かもしれないですけど、・・・さっき鳴っていたアラームは確認しなくて大丈夫ですか?」
ほとんど意識の外に追いやられていたことを指摘され、硬直、焦りの思考の
「なら、早く受け取りに、他にも楽しいことをいっぱいしに行きましょう!」
ついさっき同じように連れられたのにもかかわらず、重心が前のめりになるこちらへ、ちらりと見せた少女の表情は、目を細めるほどまぶしい笑顔だった。
「はぁ~、今日は楽しかったですね~…」
すっかり紺色に染まった空の下で、一人の少女は月に背を向けて器用に歩きながらぼそりと呟く。
文末に若干の
ゲームオーバー画面の前で令王那と約束を交わした時を、
「今日は私に付き合ってくれて、ありがとうございました。すごく連れまわしてしまったので、迷惑だったかもしれないですけど…」
乾いた笑みを響かせる令王那に、大きくかぶりを振る。連れ回されたと言えば二重の意味でそうかもしれないが、それで迷惑なんてことは絶対になく、むしろ今日一日楽しめたので、むしろこっちが感謝したいくらいなのだから。それに元はといえば、バタバタした理由を作ったのは自分で…。
そんな思考を
「またなにか我慢しようとしていますね!」
若干の痛みを与えながら左右への伸び縮みを繰り返させて令王那は自白を強要させてくるが、こればかりは本当に言っていいのか断言できない以上、
「・・・まあ、そこまで言いたくないならいいです」
そう腹を決めかけた矢先、眼前の少女はやけにあっさり手を降ろした。同時に口から飛び出た
閉ざしていた口をすぐさま開き、思いっきり頭を下げながら謝罪をするが、少女はあくまで変わらぬトーンの声を頭に投げかけた。
「・・・あなたがここまで気を遣うってことは、何か理由があるってことですから。別にそこまで気に病む必要はないですよ」
だから頭を上げてくださいという、少し柔らかくなった声のままにしたのち、どこかで話せたら話したいというセリフの代わりに、謝罪の言葉を重ねるこちらへ、令王那は呆れと諦めがブレンドされた吐息で返答する。
本当は一度飲み込んだ言葉を伝えたい。しかし、彼女の優しさに甘えた結果、彼女を傷つけることだけは、絶対にしたくないのだ。
—本当に、ごめん…—
それでも、本質は令王那を想っての意思決定だとしても、彼女からしてみれば交わしたばかりの約束を破られたわけなのだから、こちらが責められてもなんの不条理もない。
そんな思考だけが頭の中にぽつんと残っている状態で零れた声は、泣きじゃくる子供のように情けなかった。それでも、それでも、ただ謝罪の言葉を重ねるしか、彼女に誠意の伝える方法を、今の自分は思いつかない。
「・・・ごめんなさい。ちょっと意地悪でしたね」
突如ぐいっと顔を持ち上げられ、もう一度同じように震わせようとした喉にあった空気が、胸の奥へ還っていく。視界の全てを独占する少女の表情は、胸に詰まる感情が涙になってしまいそうなくらい優しいものだった。
「私がキミに意見を伝えて欲しいのは、キミに苦しくなってほしくないからです。口に出すのが嫌なら、無理やり言葉にしないでも大丈夫。私は、キミに笑ってて欲しいだけですから」
そう言う少女の微笑みに連れられるまま、自分も口元に笑みを宿す。それは酷く不恰好なものだったが、令王那は満足気に大輪の笑みを見せると、こちらの腕に自らの手を絡めて身体を預けてくる。
寒さ引き立つ夜でさえ、強い熱を分けてくれる、少し駆け足気味で、とても愛おしいリズムが、ずっと隣にあるよう願いを込めて、少女と手を強く繋いだ。いずれ大輪へと成る未熟な
こんにちは、エノキノコです。まずは、この小説を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
そして、本当にお久しぶりです…!前回の更新が7月11日ですから、実に40日も待たせてしまい、誠に申し訳ございませんでした…!!お気に入り登録も減ってるだろうと覚悟しておりましたが、むしろ増えていてびっくりしました…。こんな筆の進みが遅い作者を見捨てないでくれた読者の方々には、本当に感謝の念でいっぱいです。本当にありがとうございます!
そして、次の投稿なのですが、おそらく来週中には上げます。色々と初の試みをしてみているので、皆さんのニーズに合うかは分かりませんが、良ければ楽しみにしていてくれると幸いです。
最後に、お気に入り登録をしてくださっている皆さん(これからもよろしくお願いします!)、星8を付けてくださったテレフォン31さん、春はるさん(高い評価を付けていただき、光栄です!)、星10評価を付けてくださった碧翠さん、でっひーーさん、おたか丸さん(投票できる数に限りのある星10が知らないあいだにここまで増えていることに驚いてます…!)、感想をくださった春はるさん、ポッポテェ…さん(作者の励みになっています!)、そして、久々の後書きを最後まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました!!