もしBanG Dream!のヒロインと付き合っていたら… 作:エノキノコ
のしかかるような暑さは最近徐々に重量を下げていったが、日中は充分と汗が肌を
未だ緑が多いものの、着々に黄色や赤の割合を増やしている周囲の
ここからある1人を探し当てなくてはならないのは普通なら
改札近くの壁に寄りかかり、群衆をどこか
少女がちらつかせた感情が
「大丈夫、私も今来たところだから」
一見気遣いに聞こえるが、以前5分遅刻して小言を
そこまで考えたところでなにか引っかかるものを感じたが、その正体が明らかになる前に彼女が
こちらを追いかけるように手に込める力を強めた彼女は、今日初めて
彼女に行き先を
そんな思慮を置き去りにして半歩先を行く彼女の迷いのない足取りが止まったのは、長方形のガラスを白い木で
なぜここで足を止めたのか訊ねても、彼女は口元に
金色の髪が反射した光の
予期していたものとは真逆の対応に戸惑ってしまっている様子を見た彼女は、耐えられないかのようにくすくす笑い声を
「安心して、ちゃんとお店に話はつけてあるから」
その言葉にようやく緊張が解けていくのを感じつつ、なぜ教えてくれなかったのか、ささやかな講義をしたところ、慌てる
「ほら、そんな顔しないで。好きなもの頼んでいいから」
その発言にとりあえず胸の気持ちを押しやって、
「いいえ、こんな時間に無理言って呼び出したのは私なんだから、そのお
いつもと同じ
彼女が
そんな口にするのが大変恥ずかしい思想を聞いた彼女は、しばらくのあいだ表情が変えずに固まってしまう。
本心を告げた
「あなたってたまにそういうキザなことを言うわよね。・・・もしかして、狙って言ってるのかしら」
浮ついた言葉を意図して口にしている
「わかってるわよ、ただ、ちょっとからかってみたくなっただけ」
遅まきながら、またしてもしてやられたことを認識し、この手のやりとりでは彼女には敵わないという、何度したかわからない確信と共にテーブルに沈み込む。
そんなこちらに彼女が向けてきた笑顔は、一緒に差し出してきたメニュー表で顔を隠すことを強要させた。
注文してから十分足らずで、店員さんが同じケーキと紅茶をふたつずつ、テーブルに並べてくれた。
店員さんに一礼してから
長く考えたが熱に冒された頭では中々決められず、千聖と一緒のものを頼む形で運ばれてきたケーキは、生クリームを塗られたスポンジの
三角形に切られたケーキの半分ほどにフォークを落とし込むと、
続いて飲んだ紅茶が甘さの
「そんな
彼女がなにを頼んだかは、少し考えればすぐに思い当たった。閉店した喫茶店でお茶できているのは、彼女が事前に話をつけてくれたおかげなのだ。
店長の人と交渉してまでここに案内してくれた彼女にお礼を口にすると、彼女は首を左右に振る。
「お礼なんていいわよ。私、ここの常連だから結構顔が
そう言う彼女の声は、少し、ほんの少しだけ沈んだ感情が含まれてる気がした。それを裏付けるように、笑顔にも薄い
そんな
「・・・あなたに、隠し事はできないわね。・・・大したことじゃないのよ、ただ、女優の肩書きを外した私に、価値があるのか考えちゃう時があるの」
隠していた感情を徐々にあらわにしていった彼女は、瞳を伏せながら続ける。
「今ここでお茶できてるのも、私が女優だからこそなんだと思うの。それに、あなたが私を好きになったのも…」
その先の言葉を察して、すぐさま否定の声で続きを遮った。
確かに、女優の彼女は魅力的だ。手を伸ばしても絶対に届かない場所で見せる彼女の微笑みは、
しかし、様々な色を混ぜながら隣で咲く笑顔が一番好きなのは、なんの迷いもなく断言できる。後者が、決して前者に劣るものではないことも。
でもおそらく、揺れる
「でも、私は…んっ!?」
なにか言おうとした
彼女は小さくお礼を
それから、残ったケーキと紅茶を食べ終え、店を出て駅へと向かう間、千聖と言葉どころか視線すら交わらなかった。理由は間違いなくあの出来事だというのは、事後から今現在まで流れている気まずい空気からも明らかなのだが、空気が変わってから襲いかかってきた羞恥心の対処のせいで、謝罪する余裕など残っていなかった。
「ねえ…一緒に帰りましょう…?」
すごく久しぶりに聞いた気がする彼女の声は、いつもの
「じゃあ、お願いね」
手の繋がりをぎゅっと強める彼女の顔が直視できないまま、右手に伝わる温度や柔らかさに耐えつつ、彼女の家の方面の電車に乗り込んだ。
しかし、帰宅時間と多少被っていたのか、小さい
こうなった以上電車から降りる前には謝罪できたらと思っていたが、半ば抱きつかれるような体勢では、謝るどころか心臓が飛び跳ねるのを
次いつ会えるかわからないので、せめて謝罪だけはしておこうとこちらが口を開く前に、赤紫の瞳がこちらを見上げてくる。
「さっきはありがとう。ちょっと驚いたけれど、本当に嬉しかったわ」
上目遣いにドキッとしてしまうこちらに、頬にまだ
「でもあれ、私のファーストキスだったのよ。もう少しロマンチックなムードでしたかったわ」
残念そうに呟く彼女に周囲に聞こえないぎりぎりの声量で謝ったものの、彼女は表情を明るめてくれない。
どうしようか悩んでるうちに電車が止まり、ドアが開くので、外に流れる人々に合流するため、彼女はこちらから離れる—
寸前に、彼女と顔を合わせる関係上
接触を終えてもまっさらなままの思考に、彼女が甘い言葉を
「これで許してあげる。・・・私も大好きよ」
それによって転びかけたものの、意識は未だ唇に残る彼女の熱に持っていかれていた。
こんにちは、エノキノコです。まずはこの小説を読んでいただきありがとうございます。
今回は普段よりかなり短く、さらに誕生日祝いと言いつつ日付が過ぎてしまって申し訳ありません!納得いくまで
次回の投稿は4月の10日に出来たらいいな…と思っていますが、こちらも多分間に合いません!間に合わないとわかっているのに無茶な目標を掲げているのは、その日が次書く予定のヒロインの誕生日だからなのですが、もう千聖さんでこの有様なので、本当に期待せずにお待ちください。もちろん間に合うように努力はします!
最後に、お気に入り登録をしてくださった皆さん(名前の方は今回も割愛させてもらいます。すみません…!)、星8をつけてもらいました如月刹那さん(高評価ありがとうございます!)、感想をくださったなかムーさん(評価の方もありがとうございます!)、星10をつけてくださったrain/虹さん(小説、いつも楽しく読ませてもらっています!)、そして最後に、本編と反比例して長くなった後書きを読んでくださったあなたにこの場を借りてお礼をさせてもらいます。ありがとうございました!!