もしBanG Dream!のヒロインと付き合っていたら… 作:エノキノコ
普段なら間違いなく布団の中にいる身体が引き起こした軽い
ここだけ違う時代を切り抜いてきたかのような、周囲の家とは
ゆっくりと戸を閉める女性が
彼女の和服姿自体は今までも何回か見たことがあるのに、未だ最初と同じく圧倒的な
「・・・あけましておめでとう」
無愛想に投げかけられた挨拶にこちらが苦笑しつつ返事をしたあと、なぜか彼女は黙り込んでじっと見つめてくる。
赤が強い紫色をこちらも覗き込んで10秒、見つめ合うのが恥ずかしくなったのか、
「・・・なんかないの」
その
それでもどうにかできないものか、
「もういい、さっさと行くよ」
早足で進んでいってしまう彼女の右手を慌てて掴むと、不機嫌さを全面的に出した表情が
「次からそんな短いこと言うのに時間かけないで」
彼女は急激に顔色を赤く変化させ、こちらに顔が見られないよう首を
そんな感情を頭を左右に振って落とすと、距離が空いてしまった彼女の隣へと
近くにあるそれなりの規模の神社は、元旦のわりには人の密度がなかった。
初日が出てから時間が
だとすれば、人付き合いが不器用な彼女がこんな時間を指定してきたことも納得なのだが、それでも少なくない人数はいて、テンションが多少下がってしまうのは避けられない。これが1人で来ているのであれば、人混みに巻き込まれてまで
自分が考えを行動に移さず、
「・・・これ以上長くなる前に並んどこう」
反対する理由はないので
そんなことを考えていると、
重い足を慌てた
別にリア充
・・・でもまあ、もし自分があんな目に毒な行為をしたいと思っても、あの人たちのようにはならないだろう。
隣で後方にちらちら視線をやっている蘭を見ながらそんなことを考えていると、忙しなく動く
「ち、違うから!!」
頬をメッシュと同じ色の染めた彼女はそう叫んでから、ぷいっと顔を背けてしまう。
なにが違うかはまるでわからなかったが、彼女の大声に驚き、後ろのカップルが黙り込んだので、待ち時間ずっと後ろでアツいやりとりをされると覚悟していた分少し楽になった。時間が経てばまた同じようにいちゃつき始めるかもしれないが、ぶっ通しでやられるよりかは
だが、その引き換えとして隣の少女が一気に不機嫌になってしまった問題に気づいたのは本殿が見えてきた頃で、そこからはどう彼女の機嫌をどう取るかに思考の全てを費やしていたせいからか、正面の人たちが
「・・・もう順番来たけど」
服の袖を引っ張り、
なんで機嫌が悪かったのかはわからないが、とりあえず普段の彼女に戻っているならその疑問は
特に考えず財布から取り出した10円玉を
その
しかし、びっくりするぐらいなにもない。昔はやれこれが欲しいや、お金が足りないなど
そんな無欲無心の精神が宿った理由には心当たりがある。多分、隣の少女と付き合い始めてから、出会ってからの日々が充実しているおかげで、余計な物欲がぼろぼろと
—だとしたら、彼女が隣にいるこの日々が、永遠に続きますように—
ようやく見つけた願いを強く念じてから隣に視線を振ると、下ろしている
なにか言いたげな彼女が言い出すのを待ってあげたいのはやまやまだが、背後にはすっかり静かになったバカップルを含めてたくさんの人が順番を待っているので、この場に長居するのは周囲の迷惑になってしまう。
未だ同じ状態で思考の整理が出来ていない蘭の手を引いて、邪魔にならないような場所まで誘導してからどうしたか
「・・・なんでもない」
それが嘘なのはさすがにわかるが、ここで無理やり口を開かせようとしてもへそを曲げられるだけなのも知っている
「・・・お守り買うのとおみくじ引くの付き合って」
こちらが了承すると、彼女はすぐさま人混みの
しかし、いつもの倍とも言える歩行速度で簡単に見失ってしまい、迷走しつつもなんとか彼女を見つけた時には、蘭は販売所でなにを買うか検討していた。
長い黒髪を持つ巫女さんに相談しながら真剣な眼差しでお守りを見比べる彼女に話しかけるのは
赤い瞳を普段より少し大きく開いた彼女は、まず頬を
来いと問答無用で
「・・・なんで隠れてこっち見てたの」
正確には隠れていたわけではなく、ただ距離を置いていただけなのだが、周囲の人の邪魔にならないように道の
「変な
下から
そんな心情を知らない彼女が怒りの切先を収めると同時に、巫女さんがふたつの
「なっ!?なに言ってるんですか!?」
蘭の赤くなりながらの反論を
しかし、思わず
もしかしたら今までの彼女の中で一番鋭い目つきで睨んでくる蘭が、いきなりこちらの
「なに赤くなってるの」
鋭い視線を深々と身体に刺しながらの指摘に、いきなりあんなことされて緊張しない人なんていないと反論すると、彼女はこちらの顔を両手で確保して自身の方へと引き寄せた。
普段なら絶対にしないであろう彼女の行動に、さっきより感情が色濃く顔に現れたことを意識させたが、目の前の少女は間違いなくこちらより羞恥をあらわにしている。
「・・・まあ、これならいいよ」
なにがいいのか、そんな言及は残念ながら叶わなかった。自分と彼女が、周囲が妙にざわざわし始めたのに気づいてしまったからだ。
しかし、周囲が反応するのも当然だろう。こんな
そのことをこちらに遅れて気付いた蘭は耳の先まで朱色で固め、こちらの手を問答無用で引っ張ってこの場から
引きずられるように走らされる直前、ちらりと後方にやった視界では、巫女さんが
神社を出てすぐの場所にあった公園のベンチに腰掛ける彼女の隣に座り、近くの自販機で売っていた微糖の缶コーヒーを差し出す。
小さくお礼を言ってから控えめに口をつける彼女に、なにかあったのか訊ねた。参拝したあとからというものの、明らかに様子がおかしいので、それが自分のせいなのなら、解決はできなくても謝罪くらいはしておきたい。
「・・・あんたが変なこと言うからでしょ」
そんな真意がある問いに対する返答は、半分は予想した通りのものだったが、彼女の言っている変なことというのにはまるで心当たりがなかった。
首を
「・・・あれ、無意識だったの」
あれとはいったいなんなのか、そんな疑問が頭に浮かんだ瞬間に訊ねると、彼女は視線を逸らして呟いた。
「ずっと、私と一緒にいたい…みたいなこと」
彼女のその言葉にしばらく放心したのち、ひとつの答えが湧き上がってきた。
つまり、あまりに強い思念が
それを認識した
「変なこと願わないでよ」
そんなこちらに投げられた
「・・・神様なんかに頼らなくても、ずっと一緒にきまってるじゃん」
思わず振り向いた先には、蘭がこちらに負けず劣らずの熱を顔に帯びさせ、ぎこちなく手を差し伸べている。
彼女が要求していることを感じ取り、白く細い指に自身の指を絡めると、彼女はびくりと体を振るわせたが、合っていたことを示すように確かに握り返した。
そういえば、こんなふうに改まって手を
「あんたがなにもしてくれなかったからね。・・・まあ、あたしが恥ずかしがってたこともあるけど…」
こちらがなにもしなかったのも、彼女が拒絶するかもしれないからという
彼女は最初、完全に忘れていたような反応をしたが、すぐになんの未練もない笑顔を浮かべた。
「まあいいや、来年また一緒に来ればいいから」
そう言うと彼女は、声は無くとも視線だけで、そうでしょと問いかけてくる。手に伝わってくる熱が強まるのを感じながら、
こんにちは、エノキノコです。まずはこの小説を最後まで読んでいただきありがとうございます。
危惧していた通り、4月10日に上げるという掲げた目標を達成できませんでしたが、まさか+3日もかかるとは思いもしてませんでした…。ちょっとだけ言い訳をさせて貰えると、4月に入ってからリアルがそこそこ忙しくなり、徹夜という手段が使えなくなってしまったのが原因だと思います。多分これからは今までより更新ペースが下がりますが、週に1話は上げられるよう頑張りますので、ご理解の方よろしくお願いします。
次回の詳しい日時は未定ですが、ヒロインはリクエストをもらったひまりちゃんの予定です。
最後に、お気に入り登録してくださったみなさん(たくさんの方々にしてもらい、嬉しい限りです!)、星1をつけてくださったナコトさん(精進します…!)、星7を付けてくださったチルッティドラグーンさん(誤字報告や、感想でのご指摘、助かりました!)、星10を付けてくださったtamukazuさん(数少ない最高評価をこの作品に使ってもらい、ありがとうございます!!)、そして、待たせてしまった読者のみなさんに、最大限の謝罪と感謝を!!!