お客様!困ります!あーっ!トリガーはいけません!   作:クロアブースト

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時系列は原作4巻の黒トリガー争奪戦後のボーダー隊員正式入隊日です。
回想とボーダー隊員正式入隊日の一幕です。


番外編〜人越拳になった修のオリジン〜

これはかつて修が人越拳となる前の訓練の一幕。まだ一人称が俺となる前の時点だった。

 

白亜は眼窩に穴が空いてない仮面を渡す。その仮面では眼窩部分に穴がないので目が見えないのは明白だった。

 

「これは?」

「目隠しだ。これから視界を閉ざした状態での戦闘訓練を行う」

「視界を封じる必要性が?」

「例えばボーダーならカメレオンや煙幕、地形なら光の無い真夜中や洞窟での戦闘など視覚が役に立たない状況下でも戦える術を身に付ける必要がある」

「確かにそうですね」

 

修は納得する。現にトリガーの説明の際にカメレオンの実演を白亜は見せた。

そして発動中に他のトリガーは使えないという欠点を聞いて楽観視していた修は白亜から設置済みのスパイダーのワイヤーを使った奇襲でトリオン体を首吊りさせられたという経験があった。

トリオン体だから苦しくは無かったが慢心を突かれて首吊りで宙に浮かせられた感覚は二度と経験したくないと思わされた。

 

「合格点はこの穴の無い仮面を付けた状態で銃弾を掴めるようになることだ」

「そんな事が可能なんですか!?」

「俺が出来て証明した。後は死ぬ気で鍛えれば可能だ」

 

修は知っている。確かに白亜は天才ではあるのだが、誰よりも努力家なのだ。何故なら理論立てて努力方法を教えるには才能ですぐ上達するだけでは教えられないからである。つまりは白亜自身が誰よりも努力している証なのだ。

 

「因みにこの仮面による目隠しを香取や木虎に訓練でやったら目隠しプレイですね!と喜んでやったぞ」

「えぇ……」

 

修はドン引きする。やっぱり白亜の弟子は自分を除いてイかれた連中なのを再実感する。

何せ初めて姉弟子である二人の訓練を見た時にこいつらまともじゃないと修に痛感させたのである。

木虎はスパイダーで自身の両手を後ろに縛った状態でひたすら斬撃を避ける回避訓練をやってたし、香取は無数のハウンドをシールド不使用という縛りプレイで拳銃のバイパーと回避のみで避け続ける訓練をやっていた。修は当初二人のような訓練を見た時に出来るはずがないと思ってしまった。

だが白亜はそんな軟弱な精神を見抜いて甘ったれるなと喝を入れた後に基礎技術を叩き込んだら平気で訓練を課したのである。

修はボーダーで人間死ぬ気で鍛えれば何とかなるんだなぁと学んだのである。

 

そうして視覚を閉ざして耳やレーダー頼りでの戦闘訓練を行うようになった。

因みに油断すると片手を掴まれて空中で大車輪のように回されて視界は見えないのに身体が何度も回転する浮遊感で方向感覚すら狂わされて吐いたりもした。

仮面付けた状態でスパイダー式メテオラ起爆地帯を潜り抜ける訓練では何度も引っかかって爆発に巻き込まれて吹っ飛んだりもした。むしろメテオラでトリオン体が破壊されない設定にしたせいで爆風で吹っ飛ぶ感覚を覚えてしまった程である。

後はレーダーに頼ってたらダミービーコンを転がしてレーダー探索を妨害したり、足音に慣れたらメテオラ連発して雑音を増やして妨害したりと容赦なかった。

 

余りの過酷さにまた三途の川を渡り掛ける修だったが、今回は三途の川渡りが一回だけで何とかコツを掴めたので成長したなぁとホロリと感動した。

順調に価値観がぶっ飛んでいる証拠である。普通の人間は修行で三途の川を渡ったりはしない。なおその価値観は少なくとも三弟子は共通なのだと修は思っていた。自分が一番過酷な修行をしていたのだと気付くのはずっと先なのは余談である。

 

 

そして休憩時間に白亜から何故強さを求めたのかを聞かれて答える。

 

「ずっと後悔しているんです。あの時、麟児さんをぶん殴っても止めるべきだったって…千佳が泣いてるのを見た後で何度も思ったんだ」

 

修の原点。千佳が初めて泣いた時に思ったのは己の無力さと覚悟の足りなさだった。

トリガーを得た麟児さんが門を調べに行くと行った時に自分は確かに参加させて欲しいと言った。

だが修が荒事に向いてないが故に死ぬ危険性から一度断られた。修が諦めなかったからこそ麟児さんは次の土曜という敢えて実行日を過ぎた嘘の情報を教えることで危険から遠ざけたのである。

 

そこで無力さを感じた。もし自分がもっと強かったならば麟児も頼もしいと思って断らなかったかもしれない。勿論そうじゃないかもしれない。

けど千佳を心配しておきながら他人事だと楽観視していなかったのか?

自分は千佳を助ける為に本当に努力していたのかと疑問を抱いたのだ……

 

そして覚悟の足りなさは麟児さんを止めなかったことである。麟児さんに何かがあれば千佳が悲しむのは分かっていた。例え無力だったとしてもあの場で麟児さんの調査を引き止めることだって出来たはずなのだ。一発ぶん殴って『自分よりも麟児さんがいなくなったら千佳が悲しむことも分からないのか!』って……

そうしたらもしかしたら麟児さんは考え直したかもしれない。例えそれでも行ったとしても今みたいに引き止める覚悟が足りなかったと思わなかったはずなのだ。

 

「だから…僕はもう…後悔したくないんです…やっておけば良かったって!!」

「そうか……だったらまずは近界に行けるように強くならなきゃな……」

「え……?」

「生きてるかはまだ分からん。でも生きてて帰るつもりが無かったらどうする?」

「千佳を心配させるんじゃないって、ぶん殴ってでも連れ戻します」

 

修は即答した。その言葉に白亜は修の覚悟を理解する。それは虚言ではなく有言実行するつもりなのだと……

 

「じゃあ強くなるんだ。遠征は確かに過酷だ。だからこそ仲間に頼るより先に自分が強くならなくちゃいけないからな」

「はい!お願いします!」

 

修はそうして修行を再開する。三途の川渡りを10回超える頃には人越拳の片鱗を見せていたのであった……

 

 

 

 

 

時は戻ってボーダー隊員正式入隊日、修は木虎と共に遊真を含めた新入隊員達の対近界民戦闘訓練を見ていた。

 

「これで大体わかるのよね。向いてるかどうかが。まあ空閑君は完全な初心者じゃないから結果は分かりきってるものだけれど……」

「そうだな……」

 

木虎の言葉に修も納得する。何せ遊真は近界民として向こうの世界を実戦経験を積みながら渡り歩いていたのである。初心者などでは決してないのである。

 

「初めてなら1分を切れれば良い方ね。あなたの時は何秒かかったの?三雲くん」

「時間切れで失格だ」

「え……嘘でしょ!?」

 

驚愕する木虎。だがそれは侮りではなく、本当の意味での驚愕である。何故なら今の修はボーダーでも近接戦闘においてはトップクラスの実力者である。黒トリガー争奪戦後にやった模擬戦でも9対1で木虎に勝ち越すレベルの強さなのだ。

 

「師匠曰く三人の弟子の中で一番才能が無いと言われたな」

「貴方に本当に才能が無かったら今頃ボーダーの殆どは無能集団よ」

 

木虎の言う通りである。人越拳と呼ばれる達人を才能がないと言われたらボーダー隊員の殆どが無能扱いされるのである。

 

「いえ、考えを改めるべきね。才能が仮に無くても努力すれば三雲くんみたいに後天的に強くなれるのだと……」

「そうだな……」

「そして強くした白亜先輩はやっぱり凄いのだと……」

「それには賛同しているが師匠語りは止めろ」

 

木虎の素直さに感心仕掛けていたが、まさかの師匠マンセーを言い出した木虎に突っ込む修。やっぱり師匠が絡むと駄目になるのは変わらないなと思ったのである。

 

 

そして遊真が0.6秒の新記録を出すのを見て周囲が騒ぐ中でも修と木虎は納得しかしていなかった。

 

「流石に貴方が見込んだだけはあるわね。三門中学校の件が無かったら驚愕してたわ」

「遊真の実力は既にA級レベルはあるはずだ。俺とやり合っても十本中三本は取れるからな」

「近接戦闘で三雲くんに三本取れるならとんでもない有望株ね」

 

近接戦闘で修から勝ち星を拾うのは至難の技である。何故なら真地念源流空手という殺人拳を習得した修の強さは他のボーダー隊員達と比べて達人と素人と呼べる位に格が違うのだ。

近接戦闘において重要なのは技術と反射神経の二つだが、修はそれが頭抜けて高い。だからこそ近接戦闘ならば無類の強さを持つのが修なのだ。

 

その後に烏丸が修と木虎に合流したり、千佳が訓練場にアイビスで建物ごと撃ち抜いたのだがそこは割愛する。

修が烏丸の弟子になったと聞いて木虎が白亜先輩という優秀な師匠がいるのに新しい師匠への浮気だなんて処す!?処す!?と物騒なことを言ったり、千佳がアイビスで大穴開けて驚愕する一同にこれが修くんへの愛の力なんだよ!と自信満々に言ってた光景は大したことじゃないのである。

 

そして遊真の記録を見ていた風間が現れて迅の後輩である実力を確かめるという名目で訓練生である遊真ではなく修を指定する。

 

「訓練室に入れ三雲、お前の実力を見せてもらう」

「無理に受ける必要はないぞ三雲くん」

「模擬戦を強制することはできない。嫌なら断れる」

 

風間からの宣戦布告。そして人の良い嵐山や烏丸は断れるという配慮を忘れない。

何故ならマスターランクとはいえ修はまだB級。それに対して風間はA級隊員で攻撃手2位かつ個人総合でも3位の実力者だ。普通なら恥をかくと思われても仕方ない。

だが木虎は知っている。修は地位や名声には固執しないが鍛錬においては木虎や香取を凌駕する修羅なのだと……

 

「ああ、存分に殺り合おう」

「ほう……」

 

溢れ出る闘志を持って答える。臆せず堂々と返答する姿に感心する風間。そして二人は模擬戦をすることになったのだった……




因みに修がオリジン語ってる頃、千佳は兄の喪失を埋めるように自分を守る為に強くなる修にときめいてたりする。

次回:番外編の続きは『人越拳vs風間』『雨取覚醒〜夜戦の怪獣あらわる〜』の予定。一緒にするか別々にするかはまだ未定。
風間 大学生で身長:158cm
修  中学生で身長:182cm
この体格差のミスマッチがどうなるのか(戦闘にほぼ無関係)

本部出禁の海峡支部に興味あるか?

  • ぜひ見たい
  • 必要ない
  • それより三弟子と原作世界へGO
  • 雨取覚醒の方が先だろ
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