お客様!困ります!あーっ!トリガーはいけません!   作:クロアブースト

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この話は玉狛第二が出来た時点でのお話です。なので時系列が進んでいるので本編のネタバレ要素もあったりします。

白亜が肉食系ボーダー女子に押し倒されるのを見たいだけなら飛ばしてOK



幕間〜アリステラの攻防戦〜

これはアリステラの攻防戦の一幕である。

 

 

 

旧ボーダーとアリステラの兵士達が奮闘する一方の敵軍の遠征艇内

 

「おいおい、高みの見物のつもりだったが……儂が出る必要があるのか……」

 

敵軍の玉座で寛いでいた男が立ち上がる。彼はこのアリステラ侵攻軍の大将であり黒トリガーである【軍旗】の使い手だった。

 

「ッハ!申し訳ございません。大将!我々の力不足故に苦戦しております」

「よいよい、城攻めは本来3倍の兵力を必要とする位に難易度が高いのだ。その後詰めの為に儂がおるのだ」

「では!」

「これより儂が指揮を取る。皆の者、儂に着いて来い」

 

この男の出陣で情勢が傾く。旧ボーダーとアリステラの兵士達の尽力で何とか拮抗していた戦線は崩壊してしまう。

 

 

 

 

戦線の崩壊は突然だった。

 

切欠は今まで鍔迫り合いをしていた相手が突如緑色のモヤを纏い出した。その次の瞬間、相手のブレードが受け太刀していた弧月をバターにナイフを入れるかの如く斬られてしまいそのまま袈裟斬りされてしまう。

 

「え……?」

 

その光景に旧ボーダーの隊員は反応出来ずにあっさりとトリオン体を破壊されてしまう。

 

 

 

 

「ここは私が防ぐわ!だから貴方達は回り込んで……え?」

 

エスクードで作ったバリケードで相手の弾丸を防いでいたのだが、突如敵の弾丸の威力が増してエスクードが紙なのかというように容易く貫いてエスクードを起動していた女性隊員のトリオン体を蜂の巣にしてしまった。

 

 

 

 

「チャンスだ!くらえ!」

 

相手の隙を突いて拳銃トリガーから弾丸を放ちヘッドショットをする。回避不能な決定打……

 

 

それが相手兵士の頭に直撃するもカン!と傷一つ付かずに弾かれる。

 

「な!?」

 

驚愕に驚く旧ボーダー隊員への反撃で弾丸を撃たれてしまいトリオン体が破壊されてしまう。

 

 

 

 

 

各地で敵兵が突如敵兵が強化されてしまい、味方が次々とやられていく報告が上がっている。

 

一方西側の防衛地点で白亜と迅、小南の三人は【軍旗】が動く前に侵攻していた相手の一小隊を既に壊滅し終わっていたからこそ影響を受けなかった。

だが、戦線が膠着していた他の部隊は敵兵の突然の強化の被害にあって戦線が崩壊していたのである。

 

「拙い……このままだと全滅する……」

 

迅は顔を真っ青にしながら言う。未来が見れる迅が言うのだ。恐らくそれは高確率で実現してしまうのだろう。だからこそ白亜は決意する。

 

「迅、小南、お前達は王子達の護衛に向かえ!」

「!?」

「な!?」

「敵が強くなった以上、王子達の護衛が心元なくなったから増員が必要だ。ここの殿は俺一人で良い」

 

白亜は判断を下す。敵兵が強くなってしまった以上、ここでの殿の重要性より、王子亡命失敗のリスクを補填する必要が生じてしまったのである。

 

「そんなことしたらアンタが死んじゃうじゃない!」

「なぁに、ここで死ぬのも旧ボーダー隊員の責務だ。この任務に参加した段階で覚悟はとうに出来ているさ」

「馬鹿!アタシと約束したじゃない!もう命を投げ出したりしないって……」

「小南……かつての死のうとしたことは無駄死にだったが、今は違う。託す為の死は無駄じゃない」

 

師匠が死んだ時に絶望して自殺しようとよぎってしまったがその時は小南のお陰で無駄死にせずに済んだ。そして今回の戦死は迅や小南、アリステラの王子達の為に死ねる託す為の意義がある。それは決して無駄死にじゃなかった。

 

「でもアンタには生きてやり遂げたい目標があるじゃない!初恋の人に振り向かせる為に頑張って来たのに……こんなところで命を掛けるなんて……そんなの……」

「初恋の人は大切だ……けど俺にとっては迅や小南も大切なんだ………」

「だったらアタシも……」

「甘ったれるな!」

「!?」

 

小南が残ろうと提案しようとしたのを白亜は一喝する。

 

「ここでの勝利条件は一番強い奴が殿に残って、二人は護衛として向かって王子達の亡命を成功させる事だ!

この中で一番強い俺が殿を……

未来予知と実力のある小南が王子の亡命する為の護衛になるのが最適解だ!

小南がここに残る必要性は絶対にない!」

「!?……ぐすっ……」

 

小南はグズりながらも理解してしまったのだ。ここで自分が残ることは迷惑でしかなく意味だってないことを……

 

ここで小南が白亜の代わりに残った結果、小南が死亡し突破されて王子達の逃走に追いつかれた場合に亡命失敗率は跳ね上がる。

 

そして小南が一緒に残って殿の死亡するまでの猶予が増えたところで亡命している王子達への援軍が迅のみだった場合……

もしも迅一人で手に余る敵が来たときに亡命する王子達は全滅する。

 

小南は受け入れた。後は……顔を真っ青にしている迅に声を掛ける。

 

「亡命成功する未来は確定したか?」

「ああ……確かに今の決断でその未来は確定したよ……」

 

亡命成功自体は喜ばしい事だ。それでも迅が泣きそうな顔をする理由はきっと白亜の末路を見てしまったのだろう。

 

「なら良い。ほらさっさと行け」

「けど……そんなことをしたらお前は……」

「それ以上は言う必要はない!さっさと行け!」

 

会話を打ち切り白亜は護衛に向かえと指示する。

 

「お前までいなくなったら……俺は……」

「みっともなく泣け!そんで立ち上がっていつか笑い話にでも出してくれれば俺は満足だ」

 

迅が俺と同じく仲間の死を抱え込むのは分かっていた。けれど今この場で抱え込むなと言っても死ぬ未来が確定した自分が……

 

迅を置いて先に逝く白亜が言う資格は無いのだ……

 

迅の頭にコツンと軽く拳を当てて笑顔で言う。これが最後だからこそ最後の顔は最高の笑顔で言うのだ……

 

「頼んだ!」

 

白亜のその言葉に迅はまだ泣きそうな表情を戻せていなかったがそれでも……

 

「おう、任された!」

 

迅はハッキリと答えて小南と共に王子達の護衛に向かったのである。

 

 

 

 

そして二人が去った後に、白亜は独り言を言う。

 

「あ〜あ、死ぬ前に未練が沢山あるなぁ。初恋の人にはリベンジ告白をやり損ねるし、小南との約束は破るし、きっと幽霊に化けて出るな」

 

楽しそうに言う白亜。悲しむ必要はない。だって今はかつての師匠が病死した時とは違う。やるべき努力は尽くしているのだから……

 

「だから後はどんなことをしてでも一秒でも長く生き続ける事だ。何だ手段を選ばなくて良いんだから簡単じゃないか……」

 

だって戦争中だ。ルールなんてあってないようなものである。

 

「さぁて……せっかくならば大将頸獲りに行こうか。困難すぎてワクワクするぜ!」

 

何せ強化された敵軍を掻き分けて大将の元に向かって討ち取るのだ。黒トリガーだっているだろう。だが不可能ではない。何せ亡き師匠のお墨付きなのだ。自分が強いことは……

 

「さぁ…行こうか!」

 

白亜は敵陣に向かって駆け出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というのがアリステラの攻防戦だ。その後、なんやかんやあって生き残った俺が大将頸刎ねた時に手に入れた戦利品がこの黒トリガーの【軍旗】だ」

 

時は現代に戻り、白亜は玉狛支部で新たに新設された部隊である玉狛第二のメンバー達に持ってきた黒トリガーを見せる。

 

それはかつてアリステラを滅ぼした敵国の大将が使っていた黒トリガーである【軍旗】の待機状態であり、外見は掌サイズの黒い旗だった。

 

「まあ簡単に言えば味方の強化だ。ランク戦風に言うなら味方全員のトリオン体が弾丸トリガーだと傷一つ付かなくなり、グラスホッパーや韋駄天の機動力を得て、自分の武器の威力が強くなってシールドや弧月で受け太刀しても防げなくなるわけだ」

「集団戦だと恐ろしいな……」

 

修は呟く。ランク戦で使われたら絶対に困るトリガーの一つだろう。

 

「で、それは一体……」

 

修は尋ねる。白亜を後ろから抱きしめている小南がいた。

 

「あの時は本当に死別すると覚悟したんだから……馬鹿……」

「あ〜この時の話をすると俺がいなくなる時を思い出してしまって衝動的に抱き付いて離したくないらしい……」

 

小南に抱きしめられながら答える白亜。何回もやられてるので慣れていたのである。

 

 

「師匠質問がある」

「何だ修?」

「師匠は確か覚醒したのは第一次大規模侵攻だったはずだな?」

「そうだ」

「では当時は千佳以上のトリオン量も超常現象すら起こせるサイドエフェクトでは無かったので間違いないな?」

「そうだ」

「師匠は化け物だな……」

 

まさかの弟子である修からの化け物呼ばわりである。

 

「白亜センパイ、質問」

「何だ空閑」

「当時使ってたトリガーは『限界突破』だったの?」

 

『限界突破』とは白亜専用のワンオフ一点もののノーマルトリガーである。能力はトリオンさえ消費すればある要素を限界突破可能とするトリガーである。

2倍のトリオンを消費すれば2倍の火力を…

4倍のトリオンを消費すれば4倍の弾丸を…

10倍のトリオンを消費すれば10倍の射程の旋空弧月を撃てたりなどトリオンさえあれば強力なトリガーだ。

 

「いや当時は今の本部で使ってるノーマルトリガーだ。何せ限界突破は第一次大規模で膨大なトリオン量になった後に作成したんだ。もしあの時にあったとしてもトリオン切れを起こしてたから役に立たなかっただろうな」

「うむ……修の言う通り白亜センパイは化け物だな」

 

空閑も化け物認定してきた。

 

「質問です」

「今度は雨取か」

「一体使ってたトリガー構成は何だったのでしょうか」

「ああ、当時は弧月だけだ」

「え……」

「今と違って旧ボーダーの旧式トリガーは武器は固定だったんだ。だから攻撃手はスコーピオン無かったし弧月オンリー。銃手はアサルトライフル、狙撃手はイーグレットって感じだな」

 

つまり彼は弧月一本だけであの戦場を生き残ったのである。雨取は笑顔で言う。

 

「白亜先輩は修くんの言うとおり化け物です」

「雨取お前もか……」

 

最近千佳は他人への自重をしなくなってきた。やはり先日焚き付けてあの修を押し倒した影響だろうか……

人を撃てない弱点も克服してるし愛の力は偉大だな。

 

他のパラレルワールドでのトリガーハッピー千佳や爆破士千佳と比べれば充分健全だから良い変化だ……

 

白亜はそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アリステラの亡命直前〜

 

「見て敵国の遠征艇が撤退しているわ」

 

撤退予定の遠征艇に乗った王女が窓を見て言う。その通りに本来ならまだアリステラで自分達を探すはずの敵国が次々と撤退していったのだ。

 

 

迅は自身の未来予知のサイドエフェクトが嫌いだった。何せいつも彼が心の底から変えたい確定した未来は変えられない。大体が不幸な未来なのだ。

 

最上さんが死んだ……

 

そしてあの時の白亜の発言で白亜も死ぬ未来が確定したはずだった……

 

「ああ……」

 

護衛として外で待機していた迅は膝から崩れ落ちて涙を流す。

 

「迅!?まさかもう……」

 

小南は察する。白亜が殿をしていたからこそ、彼が絶命する未来を見てしまったのかと思ってしまった。

 

「違うんだ小南……これは白亜は死んでない……無事なんだ」

「え……そんな……嘘……」

 

小南の瞳も涙が溢れる。死んだと思っていたのだ。もう二度と逢えないのだと覚悟すらしていたのだ。そんなの奇跡としか言いようが無かった。

 

敵国の遠征艇が全て撤退したのを確認して迅達は白亜を迎えに行く。

 

そして向こうから黒トリガーを持った少年が歩いてきた。

 

「いや〜見通しが甘かった。まさか生き残ると思ってなかったから生き残った時の対策は全く考えていなかった。あのまま遠征艇が出発してたら廃墟に取り残されて餓死するところだったよ……」

 

今日は最悪の日だった。仲間の半数が死んで……

 

師匠である最上さんを失い……

 

親友である白亜まで失うはずだった……

 

 

 

 

全部が変わったわけじゃない。

 

けれど……

 

迅が呪っていた『確定した未来』を彼は確かに変えてくれたのだ。

 

「ただいま、迅」

 

悲しみや反省は数あれど今は無事に生き残った親友に言葉を贈りたかった。

 

「おかえり!白亜!」

 

迅は心から笑って迎えた。

 




因みにこのおかえりは第二の絶望である第一次大規模侵攻前の嵐の静かさである。

トリガーハッピー千佳
→人を撃てない弱点克服の為に人を撃ち続けてたら快感に目覚めた千佳ちゃん。アイビスでバンバン撃ってくる。近付いたら広範囲の弾幕+防御不可のアステロイドをぶっ放してくるのでタイマンだと全く近づけない。

爆破士千佳
→直接撃たなきゃ良いじゃないとメテオラばっかやってたら爆破に目覚めた千佳ちゃん。
試合開始するとシールドをサブにしてフィールドの片っ端からメテオラによる絨毯爆撃で更地にしていく害悪。試合が終わるとどんなマップも大体更地になってる。近付いても正面から広範囲爆破してくるのでどうしようもない。
きっとどのポジションも関係なく死に物狂いで千佳を排除しに動いてくる。

迅 悠一
…白亜と同じく優秀なサイドエフェクトにより手段を選ばなければ救えたはずなのに、努力を怠ったせいで多くの人間を見殺しにしたと思って闇を抱えていた設定。
白亜とは親友であり、同じ優秀なサイドエフェクト故に苦しんできたからこそお互いを理解出来るという同族意識的な感じ。
この世界線だと自分のサイドエフェクトで仲間が不幸になる未来ばかり確定するので自身のサイドエフェクトが大嫌いだった。
そして最上さんが死亡する未来が確定でドン!
白亜が一人で殿すると言ったせいで白亜が死亡する未来が確定で倍ドン!と立て続けに親しい人が死亡する未来を見てしまい思わず泣きそうになった。
そして無事にアリステラの王子の護衛に参戦して何とか亡命成功直前で未来が変わって白亜が生存している事が判明して喜びに崩れ落ちた。
そして白亜からのただいまに心の底から笑っておかえりを言えたというストーリーである。
もし迅がTSして女だったりしたら確実に惚れてたと思う。けどこの作品はホモはノーサンキューなので迅攻略ルートは存在しないのだ。
白亜の二度目の絶望では今度は彼が助ける番だったりする。
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