Mobile Suit Gundam MUV-LUV G-ALTERNATIVE 作:武者ジバニャン
それとですが、この作品にはマブラヴのストーリー内の原作時系列、設定などを無視したり改変したりする部分があります。
それも含めてよろしくお願いいたします。
イメージOP1「閉ざされた世界/劇場版機動戦士ガンダム00」
イメージED1「signs ~朔月一夜~/マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス
」
前回、帝都移転の為に撤退中の帝国軍の殿の為に残った五摂家・斑鳩家当主斑鳩崇継が率いる第16大隊が、BETAによって追い詰められた所へ托未たちが駆けつけ見事に彼らを救う。
その後も託未たちはBETAを執拗に追い詰めるも奴らは北陸に進路を変更、佐渡島に再上陸を図った。日本帝国海軍第二艦隊がこれを阻止すべく奮闘するがBETAの佐渡島侵略を阻止できず結果佐渡島は制圧されてしまい、地球に新たな21番目のハイブ【佐渡島ハイブ】が建設されてしまった。
そして今回の話は托未たちの母艦である強襲揚陸艦【ディーヴァ】から始まる。
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医務室にて現在托未たちによって保護されている帝国斯衛の衛士である篁唯依は、ゆっくりと双瞼を開いた。
唯依「...ッ...ん...」
瞼を開いた彼女はその身体をゆっくりと起こす。周りを見渡す視界に映るのは見なられぬ部屋であった。
真白い部屋で初めてみる機械――人一人が入れるポッドみたいな物がある、しかも周りには丸いボールのような物がナース帽を被り飛び跳ねながらポッドを観察している。
唯依「こ..ここは?」
唯依はそれらを気になりながらもゆっくりと医療ベッドから立ち上がる、その時だった――
唯依「....ん?」
彼女自身に何か違和感を感じとる。彼女は自分の身体に目を向けるといつの間にか強化装備が脱がされ、代わりに患者衣を着せられていた。
余りのことに理解できないとばかりに戸惑う唯依。
唯依「え?いつの間に...どうやって、誰が?」
すると彼女に先ほど丸いボール型の物――医療チームとして編成されたペットロボットであるメディカルハロたちが唯依に気付き、彼女の周り集まる。
ハロ1「オキタ!オキタ!」
ハロ2「ナオッタ!ナオッタ!」
ハロ3「ゲンキ?ゲンキ?」
唯依「え...あ、あの...」
メディカルハロたちは唯依の周りを飛び跳ねる。彼女は戸惑う中、部屋の周りを見渡す。
唯依「上総は...?」
彼女はそこで上総の姿が見当たらないのに気付き、唯依はハロたちに上総が何処か問い掛ける。
唯依「ねぇ!上総は!?何処にいるの!?」
彼女はメディカルハロの一体を持ち上げ、顔を近づける。その表情は鬼気迫る程にハロに問い詰める。ロボであるハロは感情というものはない――ないが唯依に迫られて困るように球体上部の左右に付けられているカバー2枚を羽根のように羽ばたかせたりしてしまう。
ハロ1「ハロ!ハロ!ポッドノナカ!ポッドノナカ!」
唯依「ポッドの中?もしかして...」
彼女は先ほど視界に映った人一人が入れるくらいの大きなポッドに目を向ける。訝しげに彼女はゆっくりと近づき、ポッドのガラス張りになっている箇所に目を覗かせてみると――
唯依「あ!上総!!」
そこにはポッドの中、エメラルド色の液体の中に浸かりながら口元を酸素呼吸器に付けて眠りに着いている親友・山城上総の姿がそこにはあった。彼女の表情はとても心地良さそうにして、静かに眠り続けている。因みにポッドの中の彼女は強化装備がない――完全に裸の姿である。
彼女の様子を見た唯依はハロたちに振り向き大丈夫なのかと問い掛ける。
唯依「彼女は大丈夫なの?」
ハロ1「ポッドノ中デ怪我ヲ治療中!」
ハロ2・3「「治療中!治療中!」」
唯依「治療中....いつ治るの?」
ハロたちは唯依の問いに対して自身の回路内で計算をし始める。目の部分がピコピコと光り、少ししてから彼女にその答えを説明する。
ハロ1「最低デモ2週間!2週間!」
唯依「え?そんなに早いの!?」
彼女は驚愕する。上総は京都駅に向かった際要塞級の襲撃で機体が不時着。その時右頭頂部挫傷、左前腕が粉砕骨折、左大腿部は骨折、右肩も脱臼し、強化装備の生命維持装置すら作動してしまうぐらい酷い重傷だった。
それぐらい危険な状態だったのだ、もし帝国の医療施設に彼女を治療させても恐らく一か月以上は掛かるぐらいのものの筈――しかし今回彼女が眠っているポッドらしき機械に居れば、それが2週間という早い期間でその重傷を治してしまうのだ。
唯依はこの事実に呆気に取られてしまう。そんな彼女を余所にメディカルハロたちの目がピコピコとまたも光りだして、何か嬉しいことがあったみたいに球体上部の左右に付けられているカバー2枚を羽根のように羽ばたかせて騒ぎ出す。
ハロ1「ハロ!帰ッテキタ!帰ッテキタ!」
唯依「え...誰が?」
ハロ1「託未タチ!帰ッテキタ!帰ッテキタ!」
唯依「え...?」
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ディーヴァ格納庫内にガンダム五機が帰還し、ハンガーに固定される。各機コクピットから託未たちが次々に降りてきた。
ガンダム五機を整備ハロたちに任せて、五人はヘルメットを脱ぎ艦内の廊下を歩いていた。
蒼真「あ~、疲れたんごぉ~」
森羅「あ゛~だりぃ~」
睦城と宗陰「「ハァ...」」
蒼真と森羅の二人は気怠そうにしながら愚痴り、それを見る睦城と宗陰は情けないと溜息を吐く。
そんな中、先頭を歩く託未の視界に――
託未「ん?」
通路の端で不安気に託未を見つめる唯依の姿を見つける。彼女はモジモジしながらも彼に近寄ってきた。
対する託未はそんな彼女に無表情で迎える。彼ら二人の姿に興味を抱き、宗陰たち四人はことの成り行きを見ている中、唯依が彼に頬を赤くして話してきた。
唯依「あ、あの!お、お疲れ様です...」
託未「...嗚呼」
唯依「....ッ///」
託未「....」
唯依自身、いきなり何故こんな事をしているのか分からない。だがこの男の傍に居るととても嬉しく、そして安らぎを抱いてしまう自分が心の中に居ることに唯依は気づいていた。それが恋なのかどうかはハッキリしないが、しかし決して不愉快で嫌悪感を抱いてしまうものではなく寧ろ自分の中でとても心地いいとすら感じてしまうのだった。
一方託未はその無表情で無反応な態度を崩すことなく、淡々と彼女に話しかける。
託未「体調は、どうだ」
唯依「あ!は、はい!大丈夫です!」
託未「そうか。なら良かったな」
唯依「はい!ありがとうございます!」
彼女はお礼の言葉と共に頭を下げてお辞儀してみせる。その時だった、何か空腹を知らせる音が響いたのだ。
蒼真「ん?なに?誰の腹の音ぉ?」
睦城「自分ではないですよ」
森羅「俺でもねぇよ。もしやぁ~....」
にやけて森羅が宗陰に目を向ける、それに宗陰は眉間を寄せて彼に睨んで問い詰める。
宗陰「...何だ森羅?俺じゃないからな?」
森羅「んじゃあ、誰だ?たく...「森羅舌を引きちぎるぞ?」...なわけないな。じゃあ...」
託未からのプレッシャーを感じそれ以上何も言わず、話を反らして誰の腹の音かの探りを続くが五人は「もしや」と視線が一斉に、お辞儀の姿勢のまま硬直している唯依に向けられる。
当の本人は余りの恥ずかしさの余りに顔を赤くし、彼らに見せられないとずっと顔を下に向けている。その恥ずかしさでどうにもならない唯依に託未は――
託未「...飯にするか」
宗陰「そうだな」
森羅「確かに腹減ったなぁ~」
睦城「では食事にしますか。今日の料理当番は――」
蒼真「あ!俺だ」
蒼真が自分に指を指して今日の料理当番が自分であると思い出す。彼は急いでその準備の為に皆を置いてその場を後にする。
ディーヴァでは、彼ら五人が順番に全て自分たちで料理を作っている。その為今日は蒼真が料理当番なのである。
蒼真が慌てて行ったのを見てから託未が唯依に――
託未「お前も一緒に飯食うか?」
唯依「え...ご一緒していいんですか....?」
託未「京都の戦いからお前何も食べてないんじゃないか?」
唯依「あ、はい...そうです」
託未「なら遠慮するな。食いたい時に喰え」
あの地獄からずっと生き残る為に戦い続きで何も食事はしていない。まぁあれほどの凄惨な戦いの中でそんな余裕もなければ、緊張で空腹感など在ろうはずがなかった。
しかしここに来て緊張感もなく、あの地獄から生還したことへの安心感、更にこのディーヴァで体調が回復した影響からか彼女の身体は空腹を訴えている。
ならここでそれを満たしてやることも人間として当たり前の行為であろう、託未は彼女に誘っているのだ。
唯依「じゃ――じゃあ、ご相伴させていただきます///」
彼女は恥ずかしがりながらも彼の提案を受け入れる。
託未「嗚呼――だがその前に...」
唯依「はい?」
託未は彼女の格好を見つめる。彼の視線を受けて唯依は自分の格好が患者服のままであることに気付き、はしたないと恥ずかしがる。
唯依「あ///」
託未「まともな着替えが必要だな」
宗陰「ハロたちに服の用意させるか?」
睦城「そうですね。ハロ、彼女に服の用意を...」
ハロ「リョウカイ!リョウカイ!」
いつの間に居たハロたちが、球体上部の左右に付けられているカバー2枚をパタパタと動かして、睦城に言われたことを実行すべく唯依の身体をスキャニングする。スキャンした彼女の身体情報を基にハロは近くの部屋に入り、何かの作業を始めた。
唯依はハロが何の作業をしているのか気になり覗き込むと、ハロが彼女の身体のサイズを基に彼女の為の服を作っている。素早い速度で彼女の衣服を完成させ、唯依にそれを渡す。
ハロ「デキタ!デキタ!」
唯依「あ、ありがとう」
託未「ならそれを着替えてくるといい」
唯依「は、はい」
宗陰「一応、女性更衣室がある。そこの突き当たりにあるから直ぐに分かる」
唯依「ありがとうございます!じゃあ」
唯依は更衣室に入ると患者服を脱いでハロが作った衣服に着替える。彼女が着替えた衣服――反ティターンズ組織であり、反地球連邦政府組織【エゥーゴ】の女性士官用の制服であった。
自分が着替えた服を見回して新鮮な気持ちを持つ。
唯依「これ、サイズピッタリ...」
着替えた彼女は更衣室から出て行くとハロが待っていた、ハロは彼女を食堂まで案内すんべく誘導する。連れられて托未たちが居るであろう食堂にたどり着いた唯依の姿を見て厨房で料理中の蒼真以外の面々が反応を見せる。
森羅「お!いいんでねぇか?」
睦城「サイズは大丈夫ですか?」
唯依「は、はい!大丈夫です!」
宗陰「ほう、似合ってるな。なぁ?託未」
託未「あぁ?」
宗陰にいきなり話を振られる托未、唯依はそれが気になるのか彼に上目遣いで見る。話を振られた託未は暫し沈黙するが、それでも彼女の姿を見て答えた。
託未「...確かに似合ってる」
唯依「ッ///!!」
託未の返答に唯依は三人に言われるよりも、彼に言われたことが何倍にも嬉しいという気持ちを抱く。
その嬉しさと恥ずかしさでモジモジしてしまう彼女、そんな賑やかな所に蒼真が声を上げる。
蒼真「みんなー、ご飯出来たよー!」
森羅「お!出来たか!!」
睦城「じゃあ食事にしますか」
宗陰「箸を用意するぞ、あと水とコップだ」
託未「ああ、分かってる」
唯依「あ!私もお手伝いします!」
食事の用意をしようとする彼ら、唯依は一緒に手伝いをすると言って彼らにと言うか託未に付いて行く。
用意が万端となり皆一つ長テーブルに集まって座り、目の前に置かれてる今回の食事の献立を見つめる。
特に唯依は目の前の飯に対して驚嘆していた。
唯依「わー....」
今日の献立はカツ丼、卵と一緒に煮た豚カツが良い具合に美味しそうに出来ている。
彼女は自分の前に置かれた食べ物に興味津々である。BETA大戦以降、人類は食料危機にも直面していた。だが各国は各食料メーカーに手を回して合成食材なる物を発明。
結果何とか食料問題に目処が出たが、しかしこの合成食材には問題がある。
それは味だ。あらゆる合成用の材料を組み合わせた事により、天然物の味に比べると酷く不味いのだ。
香りとてそんなするものではないし、期待出来るものでもない。
一応、天然物の食材は全て無いわけではないが、それでも絶対的に量が不足しているために余り無駄使いは出来ないので合成品を食していかないとやっていけないのが現状である。
しかし彼女の目の前にあるのは、合成品ではあり得ない旨味がある香りを漂わせて、それが彼女の鼻につき余計に腹の虫を鳴らしてしまう。
唯依「あ///」
また鳴らしてしまったことに恥ずかしくなるが、そんな彼女を隣に座っている託未がやれやれと思いながらも四人にもう食べるよう促す。
託未「もう食うぞ、正直腹の虫がなりっぱなしだ」
宗陰「そうだな。じゃあ...」
託未「嗚呼...いただきます」
四人「「「「いただきます」」」」
唯依「あ!い、いただきます!!」
彼らが箸を持ちながら手を合わせて声を上げそのままカツ丼に食らいつき始め、唯依も慌てながらもいただきますと言ってゆっくり一口自分の口に頬張る。
するとーー
唯依「っ!?」
彼女はその味に衝撃を受ける。余りの美味しさに彼女は堪らず箸を動かす速度を上げて、カツ丼を味わう。今まで自分が食してきたどの食べ物よりも美味くそして箸が進む。
彼女の食べっ振りに蒼真は笑顔で味噌汁も薦めた。
蒼真「味噌汁も在るからねぇ。具は豆腐と鶏肉、大根、ニンジンなんだぁ、どうぞぉ~♪」
唯依「は、はい!!いただきます!!」
味噌汁が入ったお椀を受け取り、一口味噌汁の汁をズズッと飲むとこれがまた彼女の味覚を刺激し、美味さに酔いしれてしまう。
唯依「う、美味い!!」
蒼真「でしょ~」
唯依「....」
彼女は何故か神妙な表情を浮かべて味噌汁が入ったお椀をテーブルに置いてしまう。
どうしたのかと思う託未たち、すると彼女は徐に口を開いた。
唯依「あの....」
託未「ん?」
唯依「助けていただいて、本当にありがとうございます....でも」
宗陰「でも?なんだ?」
唯依「貴方方は一体何者なんですか?見たこともない戦術機に乗ったり、この空飛ぶ戦艦だって異常です。こんな物、とても少数の人間が保有できるはずがありません!」
託未「...で?」
托未に向けて懇願するように彼女は言う。
唯依「貴方たちが何者なのか、教えてほしいんです。お願いします!」
彼女は頭を下げて彼らに改めて希った。自分たちに頭を下げている少女の姿に、託未たちは顔を見合わせてどうするかと考える。
この少女に自分たちの素性を教えるか、それともはぐらかすか悩む中託未が――
託未「....いいだろう」
四人「「「「っ!」」」」
彼の言葉に四人は「え?」っとなりながら彼を見つめる。宗陰が託未に対して教えていいのかと尋ねる。
宗陰「託未、いいのか?」
託未「仕方あるまい。だがそれを教えてもこいつが理解できるとは思えない」
唯依「え...?それはどういう....」
彼女は彼が言っていることにどんな意味があるのか分からないでいるが、そんなの彼には知ったことではない。托未自身「知りたいのであれば、理解できなくとも教えてやる」という気持ちで言ってやった。
託未「俺たちは――異世界から来た」
唯依「.......え?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべてしまう唯依。彼女の様子を見た森羅は気怠そうに口にする。
森羅「まぁこうなるわな。異世界から来ましたーなんて言って、理解できるお頭してる訳ねぇかぁ」
唯依「え...あ、あのう、今...」
託未「言った通りだ。それ以外にない」
っと彼が淡々と返すも、唯依は堪らず勢い良く立ち上がる。託未が自分たちが異世界から来たなどと彼女からしてみれば実に酔狂な言葉であろう、しかし彼らが言っているのは事実であり噓ではない。
だがいきなり非現実的な返答を真に受ける人間が居るなどこの世に居るかと問われれば、まず居ない。
それ故に彼女は声を荒げる。
唯依「ふ、ふざけているのですか!!!」
蒼真「んぅ~?
睦城「食べながら話すのやめなさい」
彼女が怒鳴る中、カツ丼に食いついて食べながら喋る蒼真、その蒼真の頭に睦城が軽く小突いて注意する。そんなやり取りですら唯依はイラつくがそこへ託未が彼女に語る。
託未「俺が言ったことは事実だ。噓は言っていない」
唯依「し、しかし!!」
託未「じゃあこの戦艦や俺たちの機体も、日本や世界各国で作れる代物なのか?」
唯依「そ、それは...」
横目で唯依を鋭く見つめる託未の視線と共に向けられた言葉に、彼女は後ずさった。確かにこの戦艦ディーヴァやあの五体のガンダムを簡単に作れる国など存在しないだろう。
技術のレベルが違いすぎる、世界の中でも技術が先進的な米国ですら形に出来るかどうかすら怪しい。それを考えると唯依は強く何も言い返すことが出来なかった。
そんな少女に対してこれ以上苛めるのは大人げないと託未は、彼女に席に戻って食い残してるカツ丼をさっさと食うように促した。
託未「さっさと喰え。飯が冷めるぞ」
唯依「は...はい、すみません...」
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話はそこで終わり、引き続き彼らは食に浸り続けた。その後彼女は何かを考えこみながら気付けば格納庫に来て、Hi-νガンダムを眺めていた。
唯依「....」
彼女は食堂で託未に言われたことを思い返していた。
唯依「異世界の、技術....」
そこへ托未がやって来た。
託未「おい、俺の機体を眺めて何かあるのか?」
唯依「え?あ、いえ!ただ...」
託未「ただ...何だ?」
彼女の神妙な態度に託未は近づき、彼女の隣に立つ。彼が自分の隣に近寄って来たことに不愉快な気持ちなど無く、逆に頬を赤く染めて嬉しく思ってしまうのだった。
そんな自分に対して熱い感情を抱いていることに強化人間としての能力からか、それを悟るも託未は無視して淡々と問い掛ける。
託未「何を物思いに耽るんだ?」
唯依「あの...皆さんが異世界から来たのなら...」
託未「ん?」
唯依「皆さんが乗る機体...あれだけの性能を持ってないと生き残れなかったのですか...?」
託未「そうかもな。俺たちが経験してきたのは楽なものではな無かったな」
唯依「じゃあ...皆さんの世界にも――BETAみたいな敵が...?」
託未「はぁ?居ないぞ?」
唯依「え...?」
託未「俺たちの世界では、基本的に――人間が敵だ」
唯依「え...?」
彼女は余りの答えに衝撃を受けて、目の焦点が定まらず何もかも彼女の頭の中に入ってこない。しかしそれでも何とかして問い掛けることが出来た。
唯依「に...人間、ですか?――どうして?」
託未「どうして、か――さぁな」
唯依「さ、さぁなって....」
彼は素っ気なくそして簡単に唯依の問いを返して見せた。これに彼女は理解できない、人間同士――つまりそれは人と人とのによる戦い...戦争...争い...そして殺し合い。それは多くの人の命を無駄に散らす凄惨な行いで、本当ならば誰しもが忌むべきと非難すべきものだ。
戦争では兵士は勿論戦場で死ぬが、だが時には何の罪もない力も持たない一般の人でも巻き添えで殺されてしまうことがある。
そのような行為にBETAと戦い、人々を守る為に衛士となった唯依にはまたも理解できなかった。しかし目の前でこの男はそれをさも当たり前に口にする。
託未「俺は何故人間が戦争を、そして殺し合いに興じるのか等とそんな哲学めいた疑問など知らん」
唯依「....」
託未「この世界でも人間同士で戦争していただろ?」
唯依「え...でもそれは、昔のことで....」
託未「今はもう人間同士で団結している――っと?」
唯依「あ....それは――」
彼女は口を噤んでしまう。ここで人間同士団結していると答えられればどれだけ良いものか、しかし現実人類はBETAという途方もない人知を超えた敵と対しても、未だに団結して協力し合うことが出来ていないのが事実だ。
この否定することが出来ない事実に、彼女は落ち込み顔を俯かせてしまう。
落ち込む彼女の様子を見て内心不味いと思いながらも無表情でいる託未。その時だった、彼の足に何かぶつかる感触が走る。
託未「ん?」
唯依「え?」
足元を見ると託未たちをサポートするハロがそこに居た――居たのだが、そのカラーリングは他のハロたちと違い、その色は明るさとはかけ離れた真っ黒で眼つきが悪いハロが托未の足元に転がりこんで、彼の足に尚も小突いて来ながらトーンの低い音声を発した。
黒ハロ「託未 ナカシタ ナカシタ」
託未「黙れ黒ハロ」
黒ハロ「ダマラナイ ダマラナイ」
託未「こいつ....」
唯依「あ、あのう...」
託未と黒ハロとのやり取りを見て落ち込んでいた唯依が、彼らに戸惑いを見せる。
託未「すまないな。だがもうハロは見慣れただろ?」
唯依「は、はい――でも」
託未「嗚呼、こいつは俺専用のサポートをする黒ハロだ」
唯依「黒ハロ....よろしく、ね?」
唯依は身を屈めて黒ハロに指を突いて笑みを浮かべて挨拶する。黒ハロはそんな彼女に返事する。
黒ハロ「ヨロシク ヨロシク」
唯依「うん、フフッ」
託未「....」
黒ハロに笑みを見せる彼女を見つめる托未、そして――
託未「そう言えば、まだ名乗ってなかったな」
唯依「え...?」
彼女は思わず顔を上げる。彼女の瞳に映る托未の顔は以前無表情ではあるが、それでも彼は言葉を紡げた。
託未「俺の名は――新月託未だ」
唯依「あ...///」
托未から名前を教えてもらったのか、それが嬉しくてまたも頬を赤くしてしまうが、彼女は立ち上がり名乗り返す。
唯依「わ!私は!私の名前は篁、篁 唯依と言います!!その...唯依と、呼んでください!!」
託未「そうか。短い間だがよろしく頼む――唯依」
唯依「は、はい///!!た、託未さん///」
こうして彼らの一時の時間が過ぎていく。しかしこの時、佐渡島にハイブを完成させたBETAがまたも日本本土に再び牙を剥かんとしていることに誰も知らない。そしてその次の戦いでこのマブラヴの世界本来の歴史を揺るがしかねない行いを託未がしてしまい、それが切っ掛けで彼の運命の歯車が少しずつ狂ってしまうことを誰も――そして強化人間でもある彼ですら気づいてはいなかった.....。
今回はここまで。ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。感想などありましたら、どうぞ。