Mobile Suit Gundam MUV-LUV G-ALTERNATIVE   作:武者ジバニャン

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この作品は台本形式で進行します。台本形式が嫌いな人はブラウザバックを推奨します。

それとですが、この作品にはマブラヴのストーリー内の原作時系列、設定などを無視したり改変したり、ご都合主義な部分があります。

それも含めてよろしくお願いいたします。


イメージOP1「閉ざされた世界/劇場版機動戦士ガンダム00」

イメージED1「signs ~朔月一夜~/マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス



第十七章 震える彼女

《あらすじ》

 

前回、恭子たちをディーヴァに招き入れた託未たち。彼らは恭子に異世界から来た者であることを教えた。

更に託未たちが人間同士で戦争をしていたことを聞き、恭子は驚き愕然とする。互いに価値観が違うことに動揺する恭子ではあったが、最後には託未が決して言い争いをする為に話した訳ではないと不器用に告げると彼女は笑い益々新月託未と言う男に、益々の興味を抱くのだった。

 

今回の話は彼らの話が終わった後から始まる。

 

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ディーヴァ艦内・通路

 

託未の案内で今から部屋に向かう恭子と2人の後について行く唯依は、歩きながら2人の少女たちは託未の後ろ姿を見つめていた。

 

恭子「フフッ」

 

恭子は託未の後ろ姿を見つめて微笑み、唯依は神妙な顔をしている。2人して目の前の男の事が一体どんな人生を送って来たのかそれが凄く気になっている。

 

唯依「...」

 

彼女らがそんなことを考えているなど知らず、託未は黙々と歩きそして目的の部屋へと辿り着き立ち止まって恭子に教える。

 

託未「ここが君の部屋だ」

 

っと言いながら部屋の扉前の端末を操作し自動ドアが横にスライドし開けられる。

 

恭子「まぁ!素敵ねぇ!」

 

ドアの向こうの部屋の光景に彼女は感嘆な思いを抱き、素直に感想を述べる。部屋の内容は武と純夏が案内された部屋と同じ作りの高級なビジネスホテルのような作りでなされている。

因みにだが唯依と上総もこのような同じ作りの部屋である。恭子は好奇心旺盛な表情で部屋の中に入り、見渡しながら託未に口にする。

 

恭子「とても素敵な部屋ね!ありがとう託未!」

 

託未「お気に召して何よりだ」

 

彼女が嬉しがる姿に託未は無表情で淡々と興味無さげに答える。すると恭子はムッとなった顔で彼に至近距離まで近づき、自身の顔を彼の顔に近づかせる。

 

恭子「もっと愛想良くできないの?」

 

託未「...なんで」

 

恭子は突然託未の眉間に指で小突く。いきなりのことで何だとイラッとするが恭子は彼に言う。

 

恭子「眉間に皺が寄ってるわ」

 

託未「....」

 

託未は何も言わず部屋から出ようとするが恭子が呼び止める。

 

恭子「あ!何処に行くの?」

 

託未「...機体の整備に向かう」

 

そう言って消えようとする託未。それを聞いて恭子は興味を抱きついて行っていいかと問い掛ける。

 

恭子「ついて行っていい?」

 

託未「なんでだ」

 

恭子「ガンダムをもう一度見てみたいの。ダメ?」

 

彼女は首を傾げて上目遣いで託未を見つめる。彼女は少しでも彼を理解したい彼を知りたいという気持ちがあり、一瞬でも彼の傍に居て知っておきたいという考えを持っている。

彼女の思惑など知らず託未は正直何故そこまで鬱陶しい位に絡んでくる理解できないとばかりに彼女のことを横目で睨む。

しかし彼に睨まれようと恭子は負けじと微笑みで返し、もう一度問い掛ける。

 

恭子「ダメ?託未」

 

託未「.....勝手にしろ」

 

そう言って彼はそのまま格納庫へと向かって行く。それを見て恭子は部屋から出て唯依に一緒に来るかと尋ねた。

 

恭子「唯依も来る?」

 

唯依「え...?あ....はい!」

 

唯依は力強く首を振って返事をして恭子と共に彼の後を追うのだった。

 

 

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シミュレータールーム

 

 

一方、シミュレータールームでは宗陰が目の前の大型モニターを無表情で淡々と見つめている。そのモニターに映っているのは――

 

上総「くっ!!この!!!」

 

シミュレーターの仮想空間でネオジオンのギラ・ドーガ十機を相手に戦っている上総が操るリゼルの姿がそこにあった。

シミュレーターとは言え彼女は初めてモビルスーツを操っている。動きがとても拙く、そしてビームライフルを使っての狙いが定まっていない。

何せ仮想空間とは言えど戦っている場所は宇宙空間であり、しかも彼女が相対しているギラ・ドーガたちの設定はレベル3――強さで言えば並みのモビルスーツパイロットとほぼ同等のレベルである。

彼女が撃ったビームは一機も撃墜出来ず、散開して応戦する。

 

上総「ちっ!!」

 

苛立ちを募らせながら彼女は操縦桿を握り締めてトリガーを引き続ける。その際彼女の頭の中で一瞬ある光景がフラッシュバックする、それは彼女にとって忌むべきものであり消えぬ記憶である。その記憶――京都駅にて彼女は負傷し大破した瑞鶴から脱出出来ず、迫りくる戦車級の姿...。

彼女は大きく首を振ってその忌まわしい記憶を振り払い、余計に苛立って目の前のギラ・ドーガに叫びながらビームライフルを乱射する。

 

上総「ウオオオオオオォォォォォーーッ!!!!」

 

まるで自分の弱さをひた隠しにしたくて、その怒りで八つ当たりみたくリゼルを操る。しかしギラ・ドーガはそんな上総の思考など知らず彼女の攻撃を次々と躱してビームマシンガンで応戦して、リゼルの装甲を破壊していく。

 

上総「ぐぅ!!!」

 

そして極めつけに使い捨て対MS用ロケットランチャーであるシュツルムファウストを発射して止めを刺した。

一斉に発射されたシュツルムファウストが上総のリゼルに向かってきた。

 

上総「っ!!?」

 

しかしこれを躱す術がなくそのまま彼女のリゼルは撃墜されてしまい、爆炎に包まれてシミュレーターはそこで終わった。

 

『シミュレーションが終了しました。またのご利用お待ちしております』

 

アナウンスがポッド内に響く中、彼女は顔を俯いて下唇を嚙み締める。

 

上総「....っ!!!!!!!」

 

 

 

ダンッ!!!!!

 

 

彼女はポッド内の壁に握った拳を八つ当たりみたく叩く。彼女は顔を俯いたままポッドから出てきた。そんな彼女を宗陰が黙って見つめている横で、純夏と蒼真が同じくポッドから出てきた武を労う。

 

純夏「タケルちゃん、お疲れ様!」

 

蒼真「お疲れ様。どうだった?シミュレーターとは言えモビルスーツを――特にガンダムタイプを動かした感想は」

 

武「.....」

 

純夏「タケルちゃん?どうしたの?」

 

顔を俯いて武は身体を震わし、それを純夏は幼馴染である彼を心配し始める。

 

武「....げぇ」

 

純夏「え?何?」

 

武「...げぇ...すげぇよ!!すげぇ良かった!!」

 

彼の顔は完全に無邪気な子供の顔になって蒼真に感想を述べた。

 

武「凄かったよ!!霧夜さん!!!」

 

蒼真「そう?良かったね」

 

武「はい!!!」

 

彼が喜ぶ中、上総はずっと黙って落ち込んだままな為蒼真はそれに気づき武にシミュレータールームから出るように促す。

 

蒼真「じゃあもう出ようか、白銀くん」

 

武「え...?あ、はい」

 

純夏「はい」

 

蒼真は宗陰に後任すとばかりにウインクして武と純夏を連れてシミュレータールームから出ていく。宗陰はフッと笑いながらも直ぐに表情を無にして彼女に視線を向ける。

 

上総「....」

 

上総はまだ黙ったままである、そんな彼女に宗陰は口を開いた。

 

宗陰「...どうだ?」

 

上総「.....」

 

宗陰「まぁ初めてだったのだから仕方あるまい」

 

上総「.....」

 

一向に口を開かず沈黙したまま顔を下に向けている上総。宗陰は直感で彼女が何かを振り払おうとしていることに気づき、彼女に問う。

 

宗陰「...お前、何を焦っている?」

 

上総「っ!!?」

 

この一言に上総は眼を大きく開き身体をビクッとしてしまう。しかし宗陰は言葉を止めない。

 

宗陰「お前――何かを払拭したいが為に、シミュレーターをやってみたかったのか?」

 

上総「....ッ」

 

宗陰の言葉は正に的が当たっている。上総は京都駅で遭遇した戦車級に囲まれ喰われかけたあの時、彼女は確実に恐怖を抱き支配されていた。

衛士として死と隣り合わせなのは覚悟していた、彼女の実家山城家は幾つもの衛士を輩出していた。当然彼女の兄たちも送り出され、そして兄たちは皆BETAによって喰われ殺されている。

彼女としても身内が殺されていることで自分にもそのような覚悟を背負うことを心掛けてはいた、いたが実際に体感したものとは全く違っていた。

あの時、託未たちが現れなければ自分と唯依は間違いなくBETAに喰われるというバッドエンドを辿っていたと思うと――彼女はそう思うだけで恐ろしく堪らなかった。

実際このディーヴァに保護されてからというもの、彼女は夜魘され悪夢に苦しんでいる。何とかしてそれを払拭しなければ今後衛士としてやっていくことが出来ないと踏んだ上総はモビルスーツに注目する。

あの力を少しでも近づきたくてシミュレーターをやってみたが、結果この様となってしまい彼女は深く落胆する。

そんな彼女の気持ちを当てた宗陰は淡々と更に言葉を紡ぐ。

 

宗陰「力を振るえば何かを忘れられると思ったのか?」

 

上総「....それは」

 

宗陰「お前がやってることは力を盾にして、恐怖から逃避をしたいだけだ」

 

上総「ち、違いますわ!!!私は!!!」

 

彼女は必死に否定しようと声を荒げるが、対する宗陰は無表情で彼女を見下ろして言う。

 

宗陰「必死こいて否定する辺り図星だぞ。戦場で受けた恐怖を否定しようと暴走した奴は幾度も見たことがある....今のお前みたくな」

 

上総「そんな....私は」

 

宗陰の言葉に愕然してしまう上総、しかし宗陰はそれでも止めない。目の前で危ういことをしてる奴に忠告してやらないと周りの人間を巻き込みながら自滅して、最悪の結末を迎えてしまうなんてのがあり得る。

事実そう言った不幸はガンダム世界でも幾つかあった。そんな経験からか宗陰は目の前の彼女にそれを諭すように説く。

 

宗陰「力は元来、他に使う奴や己に使う奴だっている。だがな、逃げることを口実に使う奴は本来居ないんだ」

 

上総「....ッ」

 

宗陰「逃げることに力を振るうな。そんなことをする奴はただの半端者以下だ」

 

宗陰に説かれて顔を俯き唇を嚙み締めて、体を震わしてから彼女は何も言わずにその場から走って出ていった。シミュレータールームから出てきた所を偶然偶々歩いていた睦城と鉢合わせとなる。

 

睦城「っと...これは失礼を。大丈夫ですか?」

 

上総「.....」

 

等とぶつかる所であった彼女にそう声をかける睦城であるが、彼女は一切口を開くことなくそのまま立ち去ってしまう。

気になって睦城はシミュレータールームに入り、そこに宗陰が居ることを知る。

 

睦城「どうかしたんですか?ここで」

 

宗陰「ん?嗚呼、睦城か。別に」

 

睦城「そうですか...嗚呼、先ほど山城上総さんが走って出ていきましたが、何かあったんですか?」

 

宗陰「ん?....嗚呼、まぁな」

 

何とも言えない複雑な雰囲気を晒す宗陰に睦城は「これは何かあったようですね」と感じ取り、彼に近寄り聞いてみることにした。

 

睦城「よければお聞きしますよ」

 

宗陰「睦城...そうだな。実は―――」

 

宗陰は先ほどの彼女とのやり取りを話すことに、それを聞いた睦城は少し苦笑交じりで口を開く。

 

睦城「フフ...なるほど、そんな事が...」

 

宗陰「俺は間違ったことを言ったのか?睦城」

 

睦城「いえ、貴方のそれは間違いのない正論ですよ。ですが...」

 

宗陰「が?何だ?」

 

睦城の表情が何か思い出し黄昏れるようなものとなり、目も遠いものを見つめるように何処か寂しい。そんな彼が話し始めた。

 

睦城「....痛みに苦しむ中で味わう恐怖は、精神に深く根強くくるものがあるんですよ。だからそれを必死に振り払いたい――そしてそれを記憶から消したい....」

 

宗陰「.....」

 

睦城の話に宗陰は只々静かにそれを聞き、彼の横顔を見ている。それに気にせず睦城はこう言う。

 

睦城「だから何かで逃避したい...何かに八つ当たりしたい...まぁ理解できない話ではありませんよ」

 

宗陰「...だからといって」

 

睦城「えぇ、その通り。力でそれを払拭してもその結果どうなるかなどたかが知れている。1人で潰れるなら何も思いませんが、しかし周りを巻き込んでの自滅は最悪以外の何者でもありませんがね」

 

物思いに耽ってからいつもの淡々としながら眼鏡の左右のレンズをつなぐ、鼻にかかるブリッジ部分を人差し指で弄りながらそう口にする。

そう口にしてから彼は宗陰に上総を追いかけないのか?と問い掛ける。

 

睦城「追いかけないのですか?」

 

宗陰「....確かに言い過ぎたな。行ってくる」

 

宗陰は睦城にそう告げて、シミュレータールームを後にする。一人となった睦城はフッっと笑い呟いた。

 

 

睦城「フッ......くだらないことを思い出してしまいしたね」

 

 

 

=====================================================

 

 

ディーヴァ艦内居住ブロック・山城上総の部屋

 

一方、此処託未たちに提供されてから使われている山城上総の部屋では、上総がベッドに顔を埋めて涙を流してシーツを濡らしてしまっている。涙を漏らして彼女は呟く。

 

上総「私は....ッ..ただッ.....ッグス....」

 

そんな悲嘆にくれる彼女、そんな時部屋内部の端末から来客を知らせるアラームが鳴る。アラームに気づき内心鬱陶しいと思いながらも端末のタッチパネルにタップし、部屋前に居る来客と通話回線を繋ぐ。

 

上総「....はい。どちら様....?」

 

宗陰『俺だ』

 

上総「.....何か」

 

宗陰の顔が端末に映ると上総は機嫌が悪くなる、ここまで来てまだ何か言いたいのかと心の中で毒づく。だが彼の口から出る言葉はそれを裏切る形となる。

 

宗陰『....すまなかった』

 

上総「え....?」

 

彼から出た謝罪の言葉に彼女は呆然とする。まさかあんなにまで厳しい言葉で自分を追い詰めた男から突然謝るなんて信じられなかった。

どうしてという気持ちが一杯である彼女に彼の気持ちなど理解できる訳なく、気になって彼女は端末を操作して部屋の扉のロックを内部から解除した。

 

上総「あ、あの....どうぞ」

 

扉が開かれ中から上総が出てきて宗陰を中に招き入れようと誘ってくる。宗陰は気が引ける気持ちを抱くが彼女の瞳を見て、どうしても断れ難いものを感じ致し方ないと割り切って入る。

 

宗陰「.....」

 

上総「.....」

 

部屋の中が沈黙に包まれる、だがその静寂を先に破ったのは宗陰であった。

 

宗陰「さっきは厳しすぎた、すまなかった」

 

上総「いえ!そんな!!....元々は私が....」

 

宗陰の言葉に上総は動揺する。元々彼女自身が力を振るって恐怖を振り払うようにしながら、シミュレーターの敵に八つ当たりをしてしまうという見苦しい真似をした自分にこそ原因だと改めて思う。

そんな中、宗陰が彼女にある事を問う。

 

宗陰「怖かったか?」

 

上総「え....?」

 

宗陰「京都の戦いで、お前が経験したことだ」

 

上総「それは.....」

 

淡々と問い掛けてきた宗陰に上総は顔を俯いて黙ってしまう。彼女の気持ちとして本来武家として生まれたからには、そのような恐れを無くしていなければならないのに――っと、だから彼女はそう自分の中に芽生えた恐怖という弱さを認めることが出来ず、シミュレーターでの醜態を晒してしまったのだ。

 

上総「....はい」

 

ようやく素直に認め頷いた彼女。そして実際にあの日体験した死の恐怖を頭だけでなく体も覚えていたらしく、上総は震える自分の身体を自分の手で抱きしめる上総。更には――

 

上総「ッスン....ッ.....グスッ」

 

瞼を閉じて涙を再び流してしまっている。悲しみに溺れ未だ自分の手で震える己の身体を抱きしめて上総を、宗陰は表情を変えることなく見つめていたがすると彼は徐に上総に近づき――

 

上総「え....?あ、あの....あぁッ///」

 

 

頭の上に彼の手が置かれ、優しく撫で始める。それが彼女にとって決して不愉快なものではなく寧ろ心地よく暖かくて、そして気持ちが良いとも思い、処かずっとこうして欲しいとすら希ってしまった。

行き成りの事で満足に言葉を出ない上総に宗陰が――

 

宗陰「....お前のそれは当然のことだ」

 

上総「え...?」

 

その言葉に上総は不安気に彼を見つめる。すると宗陰はその訳を話す。

 

宗陰「恐怖を抱かない者はそうはいない。だからお前が抱くそれは当然のことだ」

 

上総「....ですが、わた...くしは武家の者.....です....涙を流す...わけにはいきません....」

 

然れども彼女は武家の者として彼女は律していかないとと、何とか涙を止めないといけないと思うが宗陰はそれを否定する。

 

宗陰「...だが、お前は子供だ」

 

上総「っ!?そんな!?わたくしは!!」

 

子供と言われて上総は言葉に怒気を含めてしまうが、宗陰はそんなの気にせず彼女に諭す。

 

宗陰「俺からすればまだお前は子供だ。子供のお前が大人ぶってそのようにプライドを掲げて言うなんて、10年早い。それと――」

 

上総「それと――何ですか?」

 

宗陰「恐怖をその身で味わい、かつそれをこれから忘れずにいれば強く生き残れる」

 

上総「わたくしに....それが出来ますでしょうか....?」

 

不安気に彼の顔を見つめ問い掛ける。そんな彼女の気持ちに気づき彼はいつもの険しい顔から、微笑交じりの優しさに満ちた表情を浮かべる。

 

上総「ッ///!?」

 

彼の笑みは上総にとって思わぬ不意打ちであった。このディーヴァに来てからと言うもの上総は宗陰が笑った顔など見たこともない。いつも託未や睦城のように淡泊だったり厳しかったり、冷徹だったりする感じの男というイメージがあったので彼のそんなギャップを魅せられてしまった。

衛士として志すまでは温室育ちのお嬢様である彼女に、このような男からのときめきに対する耐性などない。

故に彼女のハートはこんな簡単に射抜かれたようだ。しかし宗陰は気づくことなく言葉を紡ぐ。

 

宗陰「お前は、その恐怖を味わった。ならこれから強くなればいい...だから、今は泣け」

 

彼の優しさに彼女はもう我慢できそうになく、気付けば既に声に出して泣くこととなる。

 

上総「う...ッ...あ..あぁ...グスッ...うあああぁぁぁぁ...!」

 

そして泣き止むまでの間、ずっと宗陰は優しく抱きしめて頭を撫で続ける。

 

 

 

 

 

 

 

泣き止み彼女は頬を赤くしてずっと恥ずかしそうに、ベッドの上に座って顔を俯いてしまっている。

 

上総「うぅ~///」

 

宗陰「少しは落ち着いてきたか?」

 

上総「は、はい...あ、あの!」

 

宗陰「何だ?」

 

彼に何か伝えたいのか、彼女は頬を赤くしながら口を開く。

 

上総「ありがとう...ございます///桐生さん///」

 

そう口にした上総の顔が嬉しそうにして、モジモジしだしている。彼女の心では先ほどまで抱いて恐怖が何処かに行ったかみたいに、今の上総は震え処か涙はもう流れていない。

もう落ち着いているようだから大丈夫だろうと判断した宗陰は、彼女の部屋から出ようとする。それを見て上総は彼を呼び止めた。

 

上総「あ、あの!!」

 

宗陰「まだなにか在るのか?」

 

上総は勇気を振り絞って宗陰にあるお願いを伝える。

 

上総「あの...下の名前で、呼んでいいですか...?」

 

彼女が恐る恐ると上目遣いでそう尋ねてくる。宗陰からしてみれば何故に彼女が名前を呼びたいのか理解に苦しむが、しかし上総からしてみれば目の前の彼に対して今までとは違う何か――淡い想いが沸々湧き上がっていくのを感じる。

その所為なのか、彼女は宗陰の名前を呼びたく彼にその許しを求める。

 

上総「あの....ダメ、ですか...?」

 

宗陰「.....」

 

切なく問い掛ける上総に宗陰が――

 

宗陰「.....ハァ~、分かった」

 

上総「っ!本当ですか!?」

 

溜息混じりで宗陰は上総に名前を呼ぶことを許した。彼が許可してくれたことに上総は歓喜の極みと言わんばかりに満面の笑みを浮かべてベッドから飛び跳ねる。

その様子を見て宗陰は「ほんとまだ子供だな」と彼女に聞こえないように呟き、部屋から立ち去ろうとする。

 

宗陰「それじゃあ、これで失礼するぞ。じゃあな」

 

上総「はい!宗陰さん!」

 

宗陰はそのまま上総の部屋から出ていくのだった。

 

上総「フフフ♪ウフフ♪エヘヘ♪」

 

彼がいなくなった後、部屋に一人となった上総は嬉しそうにニヤニヤしてベッドにそのまま倒れ込み、顔を埋めて足をバタバタさせる。

 

上総「しゅ、宗陰さん///フフフ///宗陰さん///」

 

彼の名前を何度も嬉々として呼び続ける。彼女の中で宗陰という存在が大きくそして好意的なものになりつつあった。まるで唯依が託未対する感情に酷似していた。

 

宗陰「ん?....気のせいか」

 

廊下を歩く宗陰は一瞬何かを感じ取るが、気のせいと思い捨て置いてそのまま歩き出すのだった...。

 

 

 

 

 




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