Mobile Suit Gundam MUV-LUV G-ALTERNATIVE 作:武者ジバニャン
この作品は台本形式で進行します。台本形式が嫌いな人はブラウザバックを推奨します。
それとですが、この作品にはマブラヴのストーリー内の原作時系列、設定などを無視したり改変したり、ご都合主義な部分があります。
それも含めてよろしくお願いいたします。
イメージOP1「閉ざされた世界/劇場版機動戦士ガンダム00」
イメージED1「signs ~朔月一夜~/マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス
」
前回、宗陰の勧めでシミュレーターを行った上総。しかしその結果は初心者として当然の終わり方ではあったが、しかし彼女がBETAから受けた精神的な傷によって八つ当たり気味に行い、結果にそれが反映された為に起きた。
宗陰は彼女が恐怖から逃げるようにシミュレーターで戦っていたことを指摘。対する彼女はこれを必死に否定したが、しかし図星であるので無理だった。
自らの無力と悔しさによって限界だったのか、上総は涙を流して部屋に閉じこもる。
余りにも厳し過ぎる言葉を吐いた宗陰は彼女に負い目を抱いたのか、彼女に謝罪を述べて更に優しく諭してやることに。
彼からの優しさに彼女は内に抱えていた物の重みが消え、同時に別の――それも思春期の甘酸っぱい淡い想いが彼女の内に沸々と湧き出すのだった。
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今回の話の始まりは宗陰が上総の部屋に向かった最中の頃、格納庫では託未が黒ハロと共に愛機であるHi-νガンダムのメンテナンスを行っていた。ツナギ姿でメンテ作業を行う彼の近くにはそれを見学している恭子と唯依が居る。
そんな作業中の彼に質問を恭子が投げかける。
恭子「ねぇどうしてこの艦には貴方たち以外に人は居ないの?」
託未「ここにはハロたちが居る。それで十分だ」
恭子「でも人手不足じゃなくて?」
託未「あいつらは人よりも有能であり人間なんかよりもコストが安い、だから人はそこまで要らない」
実際は人手なんか元より居ない。彼らは安住の地を求めんが為に旅に出たのだ、しかし結果はBETAとの血みどろの戦いに満ちた殺伐とした世界に辿り着いてしまった。
この世界で人材を探すなんかして自分たちの技術や量子演算システムであるヴェーダや、そして託未たちにとって最大級の重大な機密であるジェネレーション・システムが露見でもされれば一大事処ではない。
最悪システムを欲しがる愚かな俗物どもを一匹残らず皆殺しにしなければならないという面倒事が起きかねない。
だから人なんて雇うことは出来ないし、しないし、したくない。それに人間よりも機械が――特にハロたちのような従順なサポート系のロボが居る以上、そこまで人を欲しがる必要性は皆無なのである。
ハロたちは医療や整備、艦内での清掃や炊事など優秀に働くことができる。しかも実はモビルスーツの操縦も可能で戦闘も託未たちや宇宙世紀時代のベテランのエースパイロットたちのデータをインストールさえすれば、一つの強力な戦闘部隊に早変わりすることが出来る。実は以前にハロたちだけの編成でシミュレーターでやらせた所、一個のハロ部隊だけで三個師団程の敵を全滅させるというとんでもない結果を弾き出した。
もし必要と感じたらハロたちを戦闘用に切り替えて共に戦って貰うことになっている。
託未「人手不足とは感じない」
恭子「そう、なの...」
彼からの返答に恭子は考えこむように黙るが、今度は唯依が託未に問い掛ける。
唯依「そう言えばモビルスーツって動力はバッテリーなのですか?」
唯依はモビルスーツもまたバッテリーで動いているのか知りたかった、これまでに見たガンダムの戦闘ぶりを見てバッテリーで動いているのかそれか全く別の動力で動いているのかそれを確かめたかったのだ。
託未「基本的にモビルスーツは熱核融合炉で動いている」
恭子・唯依「「っ!?」」
熱核融合炉――原子核を融合させる際に生じるエネルギーを利用する動力機関。ガンダム世界、特に宇宙世紀世界ではエネルギー発生機として「ジェネレーター」と呼称されるのが一般的である。宇宙世紀ではトレノフ・Y・ミノフスキーという人物によって研究・開発された「ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉」と呼ばれるタイプが主流となっている。
数百m~km単位のサイズを有する炉をm単位サイズにまで小型化させ、これによって電力や熱エネルギーなどが産出される他ミノフスキー粒子も副次的に生成される。これらのエネルギーの生成が行われる期間は長く実質的に無尽蔵と呼べるレベルの期間作動し続け人為的な操作による動作停止や破壊以外で停止する事は無い。
この世界にとっては正に夢みたいな動力システムに恭子と唯依の2人を驚愕するには十分であった。
唯依「核で動いているのですか!?」
託未「嗚呼、熱核融合炉だ」
恭子「戦術機みたく人型状の兵器に収まるサイズの、しかも核融合炉なんて....。まだ人類でそこまでの技術なんて持ってないわよ!」
思わず声を張り上げてしまう2人ではあるが、無理もないだろう。戦術機の動力源はバッテリーで動いてはいるが宇宙世紀のモビルスーツと比べると稼働率は劣る。
2人からすれば人型サイズの兵器に収まる核融合での動力なんて異常とも言える、この世界で熱核融合炉を現実に形にするとしてもかなりの時間を要するのは必至である。
そんな動力を積んでいる目の前のガンダムに彼女らは驚嘆の表情を浮かべ見つめる。
託未「よし。これで終了だ」
メンテナンスが終わった託未は2人に近づいてきた。
託未「終わったぞ。いつまで俺のHi-νガンダムを見つめているんだ?」
恭子「え、あ...ごめんなさい」
唯依「ごめんなさい...」
2人は申し訳なさげに謝る。未だに信じられないと言う気持ちを抱いているようだが、しかし現実にあるのだから仕方ないことなのだ。
託未「それよかもう部屋で休め」
唯依「託未さんは...?」
託未「俺は部屋に戻ってシャワー浴びる」
託未はそう言って格納庫から出ようとすると恭子と唯依も付いて行く。その道中で恭子は内心こう考えた。
恭子「(彼らの力があれば帝国は力を取り戻すことが出来るはず、どうしたら彼らを殿下と逢わせられるかしら....)」
そして唯依は....。
唯依「(もうすぐ託未さんと別れる....そんな)」
彼女は顔を俯いてその表情は悲しみに変わっていた。
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翌日、いよいよ明日には唯依たちを帝国に返すこととなった。そこで託未たち五人はそのことで話し合いとなった議題が、どうやって彼らを帝国に返すべきかという事だった。
蒼真「んで?どうやって彼らを帝国に返す?」
森羅「そりゃ、そのまま返すだろ?」
睦城「もしかして帝都に直接行くんですか?帝国に警戒されますよ」
宗陰「だがこのまま居させる訳にはいかないだろ」
託未「....」
託未たちがそんな話し合いをしている最中、唯依は食堂でずっと考えこんでいる。
唯依「.....」
彼女はこう考えている。明日には自分は帝国に帰る、確かに喜ばしいことであろう。帝国に帰ればきっと戦死したと思っているであろう両親が自分の生存を知れば、喜んでくれるはず。
それに巌谷もまた両親と同じく喜んで馳せ参じてくれるはずと思う、本当に喜ばしくそして待ち遠しいものなのだとも理解している。なのに今の彼女の顔はとても暗く全然嬉しさとはかけ離れている。
唯依「ハァ....」
彼女の心にあるのは両親や巌谷などではなく、一人の男の顔が浮かんでしまっている。その顔はいつも無愛想で眼つきが鋭くいつも睨むようなものなのに、一瞬だけ見せる優しさに満ちた笑み見せてくれると思うと想像とは言え彼女の顔は沸騰した薬缶みたく赤くなってしまう。
唯依「ッ!///」
彼女は首を横に振って冷静になろうとする。そこへ――
上総「あ!唯依」
唯依「え?あ、上総」
食堂に来たのは上総であった。彼女はそのまま唯依の隣に座り話かけてきた。
上総「如何なさいましたの?元気がありませんわね」
唯依「まぁ、ね」
情けなく乾いた笑い声を漏らす唯依。そんな親友の姿に上総はこれは重い悩みであるのではと察し問いかける。
上総「もしかして、明日帰れることと関係が?」
唯依「っ!」
唯依の顔が一瞬強張るのを上総は見逃さなかった。彼女はやはりと感じ、唯依に語る。
上総「そうでしたのね?....私と同じですわね」
唯依「え....?」
唯依はキョトンとして上総を見つめる。上総はそんな彼女に自分が抱えてる気持ちを素直に話し始める。
上総「私も今の貴方と同じでしてよ。家族の元に帰れる、なのに何故かそんなに嬉しくないの」
唯依「上総....」
上総「....」
上総自身、此処に対して最初何とも異質な場所と感じた。異世界から来た戦艦、そしてその戦艦と最強の機体・ガンダムと共に居る異質な五人の男たち。
彼女にとって理解に苦しむ物だったが、しかし宗陰に自分が抱えていた重荷を取り払われてから変わった。それどころか彼に対して憧れとか更には淡い感情などが芽生えてしまった。そのせいかいざ帰れるとなると嬉しさよりも寂しさが募る。
出来ればもう少し此処に居たいーーそう願うばかりなのが今の彼女の心情だ。
唯依「私...」
上総「ん?」
唯依「私...本当は」
その時食堂にまたも誰かが訪れてきた。入ってきたのは恭子である。
恭子「2人ともどうしたの?」
唯依・上総「「恭子様...」」
彼女は2人と向かい合うよう椅子に座り、何か悩みかと問い掛ける。
恭子「何か悩み事?」
唯依「それは...」
上総「はい....」
2人は神妙な顔を浮かべる。明日には自分たちが帝国に帰還出来ると言うのに彼女らの顔は晴れやかではない、何故そんな顔をしているのか恭子は思う。だが彼女は少し考えると直ぐに分かり、2人に何故そんな顔をしているのか当ててみた。
恭子「もしかして2人とも、此処にまだ居たいの?」
唯依・上総「「っ!」」
2人は恭子にそれを当てられビクッとなり、それを見た恭子はやはりと思う。
恭子「此処が気にいったのね。でも今は帝都に居る貴方たちの家族に無事を知らせないといけないわ」
唯依・上総「「はい....」」
2人はそんなことを分かっている。帝国に居る家族に自分たちが生きていることを伝えないといけない、きっと家族は自分たちのことを思って涙しているに違いない。
恭子「じゃあ私は部屋に戻るわね」
唯依・上総「「....」」
そう言って彼女は食堂を後にして居なくなった。恭子が居なくなっても2人はずっと悩むように顔を俯いていたのだった。
彼女らがそうしている中、恭子は一人部屋に戻るべく通路を歩いていた。
恭子「....」
1人歩く中、彼女の心中ではこう思っていた。このまま彼らにただ帰してもらいそれで終わっていいのか?と。
折角こうして彼らと会話を交わすことが出来たこの機会は必ず帝国にとって無くしてはならないものとなる、それに彼女自身も個人的にこの程度で彼ら――正確には彼との関わりをここで終わらすのは不本意である。
彼女としては出来れば彼らにはこのまま帝国に来て、そして叶うならば共に政威大将軍殿下の下に着き、そして同じ斯衛に入って欲しいと願いながら通路の壁にもたれかかり指で冷たい壁になぞるように触る。
恭子「....ッ」
気づけば彼女の表情がまるで恋する乙女のようなそれとなってしまっている。すると彼女は切なげにある者の名を口にする。
恭子「....託未」
っとその時――
託未「何だ」
恭子「きゃあ!!」
突如背後から本人から声をかけられて恭子は思わず悲鳴を上げてしまう。彼女は顔を赤くしたまま後ろに居る託未に振り向き抗議する。
恭子「いきなり後ろから声をかけないで!!ビックリするじゃない!!」
託未「...お前が勝手に驚いただけだろ。それに何壁にもたれかかっているんだ?」
恭子「え!?そ、それはぁ....な、何でもないわよ!」
託未「そうか。そんなことよりもだ、お前たちを帰す方法なんだが....」
恭子「なに?」
託未「帝国の中で信頼できる奴を知っているか?その人物と接触したい」
託未の話を聞いて恭子は考えるように顎に手を添えてそれらしい人物を思い浮かばせる。するとハッとなって彼女は託未にその人物を教えるのだった。
恭子「居るわ。帝国に於いて私が信頼における人物が...」
託未「どんな人物だ?」
恭子「以前は斯衛軍に属しておられた人で古くからの武家の出なんだけど、訳あって廃家して現在は帝国陸軍技術廠に席に着いておられる方よ」
託未「その人物の名は?」
恭子は託未を見据えて答える。
恭子「日本帝国陸軍技術廠・第一開発局副部長・巌谷 榮二中佐よ」
託未「技術屋か...」
恭子「若い頃は戦術機のテストパイロットを務めるほどの凄腕のベテランだった方よ」
彼女の話に託未は巌谷という男に関心を抱く。そんな中、恭子がーー
恭子「あ、そう言えばさっき、唯依がーー」
託未「ん?」
・
・
・
・
唯依「はぁ...」
一方唯依は、あの後上総と別れて一人でまた物思いに耽っている。このまま此処に居たいと言う気持ちが確かに存在して、帝国に待っている家族の元へ帰りたい気持ちよりも勝っている。こんなこと斯衛の衛士として許される物ではない、ないのだがーーそれでも今の彼女には己を律して押し殺すことが不可能であった。
そこへ.....
託未「何をしている?」
唯依「え?!託未さん!」
背後から託未が声をかけてきた。突然現れた彼に対して動揺する唯依だが、そんな彼女に気にせず託未は隣に並ぶのだった。
気になる男が今自分の隣に並んでいることに、彼女の心臓の鼓動が早まりどうしても落ち着かない。彼ら二人を包む空間は沈黙によって気まずいものに、しかしそれを先に破ったのは託未であった。
託未「何か悩んでるようだな?」
唯依「え?....いえ、そんなこ....」
紛らわそうと否定の言葉を口にしようとするが、しかし全てを口から出すこと出来なかった。彼女が抱いている物を託未は何かは知らないが図星であるのは見抜いている、何故彼がそんなにまで彼女にそんな鋭く見抜けたのか?それは恭子との会話の時ーー
[回想]
託未「唯依がどうした?」
恭子「あの子、悩んでいるみたいなの....」
託未「悩み?」
恭子「えぇ。その、もし時間があれば聞いてあげてほしいの」
彼女のお願いに訝しげに見つめる託未、それでも恭子は切実に彼に懇願した。
恭子「お願い。ちょっとだけでもいいから」
託未「....分かった」
恭子「っ!ありがとう!託未」
[回想終了]
託未「それでどうなんだ?」
唯依「あ、その....」
淡々と聞いてくる彼女に悩みの有無を聞いてくる託未、しかし余り感情を外に見せることをしない彼の問い掛けは不器用すぎるぐらい残念な程であった。
唯依からしたら戸惑いを見せるのは当然であろうが、しかし彼女は託未に答える。
唯依「....私、可笑しいんです」
託未「あ?」
唯依の顔が何か寂しげに笑っているようだった。
唯依「確かに家に帰れるのは本当に嬉しいんです。でも――」
託未「どうした?」
唯依「私....ここの生活が凄く好きになってしまったんです」
託未「ここの生活が、か?」
託未からすれば不思議なものだ。この戦艦ディーヴァは今いる世界のどの軍艦よりもハイテクなのは分かるし、それに他のよりも快適感があるのは確かである。
だが所詮このディーヴァも戦艦であるし戦場で扱われる為に存在する兵器の一つだ、それがここの生活が好きになるという理解できない答えに託未は訝しむ、だが唯依は苦笑交じりで言葉を紡ぐ。
唯依「皆さん本当に、いい人です。とても良くしてくださりました」
託未「そうか」
唯依の感想に託未は無愛想に返事する。唯依はふと思ったことを口にする。
唯依「それにしても皆さんって本当に仲がいいんですね。戦いでは信頼し合って感じがしてました」
託未「そりゃそうだろう。ガキの頃からの腐れ縁だからな、嫌でも互いがどのように動くか分かる」
唯依「子供の頃から...?」
託未「.....それよりもだ、此処に居たいというのはやはり一度帝国に帰ってからにしろ」
唯依「託未さん....」
託未は無表情で淡々と冷たく言い放った。唯依は悲しげな瞳で訴えるみたく彼に見つめるが、だがそんな彼女に託未は懐から何かを差し出した。
唯依「これは....?」
彼から受け取ったのはハロの顔をした丸いピンク色の機械であった。それが一体何なのか理解できない唯依に託未は説明をし始める。
託未「それは小型の通信端末機だ。そいつを指で触ってみろ」
唯依「え?あ、はい」
彼女は託未に言われるがまま端末機を指で触ってみるとハロの目をした部分が発光し、「ハロ!」っと音声が鳴ると端末機に立体映像が映し出される。
唯依「え!?なにこれ!?」
託未「....」
すると託未がまたも懐から彼女と同じタイプで黒い端末機を取り出して何やら操作をし始める。そこから更に彼の端末機が突如鳴り響く。
『ハロ!登録!登録!』
唯依「きゃ!な、なに!?」
託未「驚くな。今お前の端末機のIDを登録した。これでいつでもどこでも通話ができる」
唯依「え....?」
彼女はキョトンとしてしまう。どうやら余りのことに理解が追いついていないのかもしれない、しかし託未は尚も話を続ける。
託未「端末機の下部分に大きなボタンがあるのは分かるな?」
唯依「え...?は、はい」
託未「それを押してみろ」
唯依「は、はい」
彼女は徐に言われるがままボタンを押してみると立体映像の画面が変わった。映像には連絡先と記載されている。中身は託未の顔と彼の端末機のIDが書かれている。
託未「映像にある俺のIDをタップしてみろ」
唯依「え?タップ?」
託未「触れということだ」
唯依「あ、はい」
指示通りに映像の彼のIDをタップすると託未の端末機が鳴り響く。
『ハロ!着信!着信!電話デロ!デロ!』
彼は端末機を耳に当てる。そして彼女にも耳に端末機を当てろと促して彼女もそのようにする、すると――
託未『聞こえるか?』
唯依「え?」
目の前にいる託未の声が端末機から聞こえてきた。
唯依「き、聞こえます」
託未『そうか。問題ないようだな』
唯依「あのこれは...?」
託未『これは所謂携帯式の電話の役割も担っている。更にこいつは携帯式のPCの機能も持っているコンパクトで有能なものだ』
唯依「そうなんですね、凄いです....でも託未さん」
託未『ん?』
唯依は言いにくそうにしながらも彼に思ったことを伝える。
唯依「あの...こんなに近くでは電話の意味が...」
彼女の恐る恐る呟いたツッコミに託未は暫し沈黙した後、口を開いた。
託未「む。そう、かもな」
唯依「あ...フフ」
託未「ん?」
彼女は思わず笑みを溢してつい笑ってしまう、託未の天然めいた姿に彼女は可笑しく見えたのであろう。
唯依「フフ、フフフ。託未さん、可笑しいです」
託未「そう、か」
彼女が何故笑うのか未だ分からない託未だが、少なからず今の彼女が先ほどよりもいい顔になっている為か別段思うことはなかった。
託未は彼女に帰す為の算段を説明してやることに。
託未「お前たちを帰すための算段がついてきた」
唯依「え?そうなんですか?」
託未「嗚呼、帝国のとある人物と接触したい思う」
唯依「誰ですか?」
彼女は首を傾げながら託未にそれが誰のことなのか気になって問い掛ける。
託未「巌谷榮二という男だ」
唯依「え!?」
託未から聞きなれた名前を聞き唯依は驚きを隠すことが出来なかった。自分が出した名前に覚えがあるのかと思い託未は彼女に聞いてみることにした。
託未「知っているのか?」
唯依「はい、その方は私の父の親友で戦術機開発を担っている方です」
託未「ほぉ、そうなのか」
唯依「はい、いつも私を娘のように可愛いがってくださってます」
託未「.....」
託未は顎に手を添えて何か考えこむ、すると彼は新たに質問を投げ掛ける。
託未「お前の父親は?何をしている人物なんだ?」
唯依「父は巌谷のおじ様と同じく戦術機開発を主とした職務に着いておりまして、そして斯衛にも所属しています」
託未「因みにお前の家系は武家の出か?」
唯依「はい、崇宰家直系傘下の譜代武家としております」
彼女は何の疑いもせずすらすらと託未に教える。彼はどうやら恭子のみならず有力な武家の出の娘を保護していたと内心幸運だと感じている。
五摂家の血筋を持つ恭子と、その配下である高位の武家の生まれたる唯依を帝国に送り帰してやれば確実に相手は自分たちを無下にはしないだろう。
託未「そうか。ありがとう」
唯依「い、いえ!そんな!こちら、こそ...///」
彼から礼の言葉を送られ頬を赤く染めてモジモジしてしまう唯依。そんな彼女に託未はーー
託未「お前は明日祖国に帰ることになるが、別にそれで俺との繋がりが消える訳じゃない」
唯依「託未さん...」
託未「それに今、お前にその端末機を渡したんだ。お前が連絡したい時にすればいい、多少話相手になってやれる」
唯依「え...?いいんですか?」
託未から出た言葉は唯依にとって望外の喜びだった、嬉しくて顔が綻んでしまうくらいだ。彼女は大事そうに両手で彼から貰った端末機を包んで胸に抱きしめてから託未に礼の言葉を口にする。
唯依「ありがとうございます///大事にします!」
託未「そうか。じゃあな」
唯依「はい!」
そのまま唯依と別れて託未はディーヴァの艦橋へと向かう、そこには宗陰たち四人が待っていた。彼を待っていたばかりに宗陰が近寄ってきた。
宗陰「既に睦城が情報を入手した」
睦城「巌谷榮二は現在技術廠にて職務中です。彼への直通回線はいつでも繋げられます」
森羅「俺らにやらせたら、この世界の情報セキュリティなんざチョロいもんだ」
蒼真「こっちもいつでもOK♪」
睦城が眼鏡のブリッジ部分を人差し指でクイッと動かしながら報告する横で森羅が寛ぎながら座席に座って粒やいている。
蒼真も傍受されないようモニタリングする準備している。
これで準備は大丈夫だと認識した託未は迷いなく艦長の座席へと近寄り、そのまま席についた。
彼は艦長の座席に備え付けられている端末を操作しながら、右耳にインカムを付ける。
彼が操作し終わると通話の接続音が鳴る、そしてーー
『もしもし?』
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《第二首都東京・帝国陸軍技術廠》
場所は第二首都となって機能している東京に、新たに存在する帝国陸軍技術廠。
その建物の在る一室に、1人の男...巌谷榮二中佐と彼の女性秘書が入室してきた。
彼は今日も今日とて帝国防衛省で新型戦術機に関する会議をやっていたが、上手くいかず話は平行して決まらなかった。
巌谷「ふぅ...」
っと、溜息を吐きながら己の椅子にもたれ掛って座った。
秘書官「お疲れ様です中佐。今お茶をお淹れます」
巌谷「ああ、ありがとう」
っとその時、彼のデスクの上に置かれている電話が鳴り響く。秘書官は一度お茶淹れを止めて電話を取ろうとするが、巌谷が手で制した。
巌谷「大丈夫だ。電話は私が出る」
秘書官「分かりました」
秘書官は了解し再びお茶淹れの用意を始め、巌谷はそれを確認して電話に出た。
巌谷「もしもし?」
『....はじめまして、巌谷榮二中佐ですね?』
電話の声の主は男であった。だが聞くだけで体に氷柱が突き刺さるようなこの鋭い声音に、巌谷は表情を険しくして、密かに録音し会話を受話器から外部音声に切り替える。
これにお茶を用意した秘書官が「何事か?」という顔で声を出さずに近づく。そのまま巌谷は会話を続ける。
巌谷「―――そうだが....君は?」
『貴国を二度救った者だ、白い悪魔と呼べば分かると思うが』
秘書官「ッ!?」
巌谷「な、なんだと!?」
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《強襲揚陸ディーヴァ・艦橋》
巌谷『なんだと!?』
巌谷の驚愕の声が艦橋内に響く。託未はそんな驚く巌谷に対して話を続ける。
託未「いきなりこんなことを言われれば、まぁ混乱するのは仕方ない」
などと冷静に淡々と口にする託未に、通話越しから巌谷は戸惑い気味に話かける。
巌谷『き、君は....本当に...』
託未「信じられないのは仕方ない。しかしそれを本当だという証明してくれる者たちがおります」
巌谷『者たち...?誰だね?』
託未「今呼んできますので、少々お待ちください」
巌谷『....分かった』
巌谷は疑心暗鬼でありながらも、通話してきた相手の真意を確かめるべくこのまま待つことを承諾する。託未は蒼真に唯依や上総、そして恭子を連れてくるよう指示する。
蒼真はこれを了解してそのまま艦橋から出ていき彼女たちの下へと向かった。暫くして蒼真に連れられて唯依たち三人が艦橋に入ってきた。
唯依「あの、託未さん。何かご用ですか?」
託未「嗚呼、今帝国軍の巌谷榮二氏と話していた所で、俺たちが本物の白い悪魔だと信じて貰う為に彼と話してほしい」
託未からそう言われた唯依と上総は驚愕するが、恭子に至っては冷静だった。託未から巌谷のことを聞かれたことがある為恐らく彼が何らかの方法で巌谷と接触を図ることは理解していたのだ。
っとそうこうしていると託未が唯依にインカムを手渡す。彼から耳につけて話してみろと言われて彼女は恐る恐るインカムのマイクに話かけることに――
唯依「あの...おじ様、ですか?」
巌谷『ッ!?唯依ちゃん!唯依ちゃんなのかい!?』
唯依「はい!そうです!」
巌谷『今までどうしていたんだ!!』
巌谷は彼女の両親と共に彼女の安否を心の底から安んじていた。もしかしたら...っと思うことが多々在り、最早こうまで期間が空くともうダメなのではと半ば諦めていたが、実際に彼女の声を聞いて巌谷の瞳が潤んでしまうが秘書官の手前もあるので眼を擦り、何とか誤魔化しながら問い掛ける。
唯依も彼から聞こえる声に心配してくれていると言う嬉しさと申し訳ないと言う気持ちが入り混じって、訳を話した。
唯依「ご心配をおかけしてごめんなさい。私は部隊の仲間である上総と一緒に彼ら――白い悪魔と呼ばれる方々に、あの京都の地獄から助けていただき保護してくださいました」
っと彼女がそう話すもので巌谷はそれを聞き、唯依が噓や出まかせを言っているわけではない思い始める。すると彼女が――
唯依「それと私たち2人だけではありません。此処にもう一人おりますので代わりますね」
巌谷『ん?』
唯依は自身が身につけていたインカムを恭子に手渡した。恭子はそのまま唯依から受け取って耳につけて口を開いた。
恭子「巌谷中佐。私です、崇宰恭子です」
巌谷『ッ!?崇宰さま!?ご無事で?!』
恭子「はい、私も彼らに救われてこうして保護して貰っております。だから大丈夫です」
恭子の声を聞き、巌谷は余りのことが一度に来た為に足に力が入らず椅子にへたれこむにして凭れ掛る。しかしこうして彼女らが生きてくれたことに託未たちに感謝せねばと巌谷は首を振ってしっかりしようと意気込み、恭子に話かける。
巌谷『崇宰様、先ほどの人物と話がしたいので代わってくださいませんか?』
恭子「分かりました」
恭子は託未に目線を送ると彼は会話に出る。
託未「只今代わりました。それでいかがでしょうか?巌谷中佐」
巌谷『いやぁ驚いたよ。まさかこんな嬉しいことが起こるなんて....信じよう。そしてありがとう!』
巌谷は直立して通話越しに頭を深々と下げて礼の言葉を口にする。そんな彼に託未は変わらず冷静に対応する。
託未「いえこちらこそ。それと彼女たち三人だけでなく民間人2人も保護しております」
巌谷『そうなのか。それなら更に礼を言わねばならないな』
託未「いえそれよりもここからが本題です」
巌谷『本題?』
託未「はい彼らを貴国に送り返したいのです。出来れば明日にでも」
巌谷『明日にか!?』
託未からのいきなりの話に巌谷は驚く。唐突なのでそれは仕方ないと言える、しかし五摂家の一つの崇宰家の現当主が生きていることを知らせれば、城内省も黙っている訳にはいかないだろう。
それにこんな偶発的な事とは言えるが彼らから接触してくれたのだ、巌谷はこれを逃すことは出来ないと思い託未からの申し出を何とかして見せようと答える。
巌谷『分かった。今から掛け合ってみよう』
託未「助かります」
巌谷『しかし例え明日彼女たちを送り返すとして、どうやって来るんだ?』
託未「我々には戦艦があります。それで彼らを送り返す」
巌谷『情報にあった空中に浮遊するという戦艦か...。分かった、こちらも何とかしよう』
託未「ありがとうございます。では明日にまたご連絡します」
巌谷『連絡の手段がこちらにはないのだが....』
託未「またこちらからしますのでご心配なく」
巌谷『分かった』
託未「では....」
託未がそう通話を切ろうとした際、巌谷に止められる。
巌谷『ちょっと待ってほしい!!君の名を聞いていいか?』
託未「申し訳ございません。名乗るのが遅くなりました、自分は新月託未と申します」
巌谷『新月、託未』
託未「ではこれで...」
託未はそう言い残して通話を切った。
・
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通話が終わり、巌谷は椅子にもたれ掛るように座った。
巌谷「ふぅー」
秘書官「如何しますか?中佐」
巌谷「如何も何も、これを殿下にご報告するに決まっているさ」
秘書官「ですが....」
巌谷「君も聞いていただろう。間違いなく崇宰家のご当主である崇宰恭子だった」
秘書官「しかし本物である可能性が...」
巌谷「こんなことがいたずら電話であるほうがよっぽど可笑しいと思わんか?」
巌谷に諭されて秘書官はこれ以上何も異を唱える事はしなかった。確かに今まで接触手段が何一つ無かったのだ、ならばこのか細い糸を振り払う必要なはない。寧ろそれを喜んで掴むべきではなかろうかと....。
これが日本の――ひいては人類の光明になるのではと....。
そして巌谷は悠陽に報告することとした。悠陽はそれを聞き、至急巌谷に煌武院の屋敷に来るように伝える。
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悠陽「そうですか」
真耶「.....」
紅蓮「.....」
崇継「ほう...」
巌谷「は!」
巌谷は自分が体験した話を悠陽らに説明した。この内容を聞いた一同はこれに対してどうすべきかと悩む。確かに保護されている恭子たちを出迎えるべきなのは分かるが、彼らの真意が測りかねている。
そんな中、崇継はこれはいい機会だと喜びに満ちた顔をして悠陽に意見する。
崇継「殿下、これは正に好機と思われます。彼らが保護した者たちを送り届けてくれるのです、これを機に彼らとの繋がりを作るべきです」
紅蓮「口が過ぎようぞ、崇継よ」
そんな崇継を諌めようと紅蓮が割り込む、しかし悠陽をそれを制した。
悠陽「よいのです紅蓮。ですが彼らが崇宰家のご当主や並びにその他にも保護して頂いた方々たちを送り返してくださるのです。無下にするなどできません」
真耶「殿下....」
紅蓮「では、如何様に?」
一同、悠陽を見つめる。そして彼女は意を決して口にする。
悠陽「漸く見つけた光明、これを逃す事はなりません」
真耶「では...!」
悠陽「はい。彼らの要望通り、明日にでも保護された方々の受け入れをします」
悠陽の言葉に皆納得する。そうして翌日に悠陽が城内省を仲介して帝国全体に託未たちがくることを知らせるのだった....。
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