Mobile Suit Gundam MUV-LUV G-ALTERNATIVE   作:武者ジバニャン

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投稿遅くなり申し訳ございません。

この作品は台本形式で進行します。台本形式が嫌いな人はブラウザバックを推奨します。

それとですが、この作品にはマブラヴのストーリー内の原作時系列、設定などを無視したり改変したり、ご都合主義な部分があります。

それも含めてよろしくお願いいたします。


イメージOP1「閉ざされた世界/劇場版機動戦士ガンダム00」

イメージED1「signs ~朔月一夜~/マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス



第十九章 帰る時

《あらすじ》

 

唯依たちを帝国に送り返すために恭子から帝国において信頼できる人間――巌谷榮二のことを教えてもらい、託未はすぐさま彼にコンタクトを行った。

最初託未からのコンタクトに警戒する巌谷に、彼の警戒を解き且つ信用を少しでも得ようと託未は唯依や上総、並びに恭子の生存を知らせることにした。

唯依たちの元気な様子に巌谷は喜びを禁じ得なかった、そんな彼は当然託未に感謝の言葉を口にした。

自分たちに感謝を述べている巌谷に対して託未は彼女たちを帝国に送り返したいと提案すると、彼は最初難色を示すがこれを機に帝国にとって謎の存在である白い悪魔たちとの交流を図ろうと悠陽に伝え、彼女もこれを無駄にはできないと賛成することに。

 

 

__________________________________________________

 

 

 

帝都首都東京・帝都城

 

帝都城の上座の間にて一人の壮年の男が正座し、静かに待っていた。

 

「....」

 

彼は日本帝国現政権内閣総理大臣・榊 是親、現政権をここまで引っ張り日本を主導してきた人物。

決断力や判断力は他の閣僚とは違い力強く、一度決断したことをすぐさま実行するなどリーダーとして資質は充分にある程の男である。

だが物事を強硬してしまう節があり、国内の反対を押し切っての国連誘致や生産業の海外移転などの強硬策を行った為、しばし民主主義に反しているとの非難を受けていた。

更には政威大将軍から国家の実権を奪い、傀儡にしてしまうなど帝国国民だけでなく帝国軍の将兵すら憤りを隠せない。

そんな榊首相がここに居るのは悠陽に呼ばれたからである。

襖が開かれる音がした途端、是親は直ぐに深々と頭を下げて入室した人物...悠陽が座するのを待つ。

 

悠陽「表を御上げください。榊首相」

 

是親「は!」

 

是親はゆっくりと頭を上げ、目の前の上座に座している悠陽を見つめる。表面では冷静ではあるが内心では感嘆とした感想を抱いていた。

 

是親「(変わらず、慈悲に満ちた微笑みを浮かべながらもその瞳は力が籠っておられる。これが私の娘と同年代なのだから末恐ろしい御方だ....)」

 

などと思いを抱く是親に悠陽は語りかける。

 

悠陽「榊首相、此度急な呼びかけにもかかわらずお越しくださり感謝を申します」

 

彼女は首相に対して頭を下げて見せる。これに彼はそんな彼女の憂いを否定するかのように口を開いた。

 

是親「殿下、私は貴方にそのように仰ってはなりません。私はいかなる時も日本と国民の為に、そして政威大将軍たる殿下の為にも今を尽くしております」

 

是親はそう語る姿に悠陽を護衛するために隅で控えている真耶はそれを不快そうに顔を強張らせる。

 

真耶「(将軍家を傀儡に貶めている男が、何を戯言をっ!!)」

 

そんな彼女の怒りを余所に、悠陽は是親にゆっくりと頭を横に振って彼の言葉を否定する。

 

悠陽「いいえ。貴方と私は互いにこの日本の為にすべきことをしているに過ぎません。ですからそのような卑下することを申さないでくださいませ」

 

是親「は!」

 

是親は深々と頭を下げて見せる。そんな是親に悠陽は本題に入ろうとし始めるのだった。

 

悠陽「榊首相、此度お呼びしたのは他でもありません。実は帝国技術廠の巌谷中佐がある者にコンタクトを受けたようなのです」

 

是親「ある者?それは一体...」

 

どういうことなのか分からず訝しげになる是親ではあるが、悠陽は意を決して答えるのだった。

 

悠陽「それは...二度も我が国を救って下さった、白い悪魔たちです」

 

是親「な!?」

 

是親は思わぬ答えに驚愕し、思わず正座を崩して立ち上がろうとしてしまう。しかし直ぐに平静を取り戻して彼は再び正座をしてどういうことなのかと問いかける。

 

是親「白い悪魔たちがコンタクトを――しかし本物なのですか?」

 

悠陽「巌谷中佐は彼らとの会話の途中、五摂家の一つ崇宰家現当主にして横浜の戦いで行方不明になった崇宰恭子が彼らに保護されていることが分かりました」

 

是親「崇宰家のご当主が――」

 

悠陽「はい、それと斯衛武家の篁家のご息女と山城家のご息女も保護されているようです」

 

是親「なんと!?」

 

悠陽「そして彼らは明日に保護した者たちを帝国に送り返すためにやってくるのです」

 

悠陽は託未たちが明日に帝国にやってくると伝える。是親は少し考え込んでから悠陽に、彼ら白い悪魔たちに対して何か考えがあるのだろうとそれを問う。

 

是親「保護してくれた者たちを送り届けてくれるのは嬉しいことです、しかし殿下はそれだけでは終わらせないとお考えでは?」

 

悠陽「....」

 

そう、悠陽は彼ら白い悪魔たちとこれを機に繋がりを作ろうと考えている。彼らが力を貸してくれるなら日本はBETAの脅威に対して抗うことができるかもしれない、彼らの未知の技術は必ず日本を救ってくれると悠陽はそう思っている。

彼女は是親の問いに決意を持った表情で眼を逸らすことなく力強く答える。

 

悠陽「はい、私は彼らと手を携えるべきと考えております」

 

是親「本気、なのですね...?」

 

彼女は肯定するようにゆっくりと頭を縦に振る、悠陽のその様子にこれは本気だと直ぐに理解できた。

 

悠陽「彼らが明日来られたら、会談を設けたいのです。その時には貴方もご一緒して欲しいのです」

 

是親「....」

 

是親としてもこれは良き機会なのかもしれないと考える。今まで謎の存在である彼らと接触し、何とかして交渉のテーブルについて貰って彼らが協力してくれれば日本は今後もう独力で何とかしていけるかもと考えた。

アメリカは京都の戦いで核を撃とうと画策し、日本はそれを拒んだことでかの国は一方的に日米安保条約を破棄した。

今の日本は最早あの国にいつまでも頼ることは危ういと思える、ならば新たな道筋を見つけてそれを選ぶしかないと是親はそう思案する。

であれば日本を二度も救ってくれた白い悪魔たちと交渉し協力を呼びかける、不安な要素は拭えない所もあるがそうも言ってられない。

是親は意を決した面持ちで悠陽に答える。

 

是親「――分かりました。私も彼らに協力を望みたいと思います」

 

是親の返答に悠陽は嬉々とした微笑を浮かべる。是親が快諾してくれればこちらとしても助かる、これを機に彼とも今後日本の為に手を携えて行きたいと考える悠陽である。

 

悠陽「ありがとうございます、榊首相」

 

是親「彼らは明日に、と仰っていたのですね?」

 

悠陽「はい」

 

悠陽はそう答えると是親はこれは急がねばと口にし、悠陽にこれで暇にすると言ってすぐさま上座の間から出ていったのだった。

是親が居なくなった後、悠陽の傍らで真耶は不満と言った顔を浮かべていた。

そんな侍女である彼女に悠陽は溜息を溢して尋ねる。

 

悠陽「いかがしましたか?月詠」

 

真耶「はっ。恐れながら殿下、正直私はあの榊めが今回参内することに憤りを捨てきれません」

 

悠陽「どうしてです?」

 

っと彼女がそのような疑問を投げかけると、真耶は自分が抱いているものを悠陽に対して吐く。

 

真耶「あの男を中心とした内閣のせいで今の将軍家がどのような扱われ方となっているかは、殿下が一番ご存知のはずです!国政の決定権利のすべては奴らが握っており、皇帝陛下や政威大将軍殿下を蔑ろにするあのような――」

 

収まらない是親に対しての怒りの声に、悠陽はスッと手のひらを向けてそれを鎮める。真耶は未だ憤りを隠すことができないでいるが、悠陽はそのような彼女に己が思うことを口にする。

 

悠陽「月詠、貴方の言いたきことは分かります。されどそのように未だ過ぎたことに固執しては何も変わりません、私はこれからの時代において新たな吹くであろう風がそんな事柄を変えてしまうのではと考えています」

 

真耶「殿下...」

 

悠陽「人は過去から学び、今を知り、そしてそれを未来に繋げるべく懸命に生きていくべきと思っております。私たちがその姿勢を崩さず一つ一つやっていけば必ずや実を結ぶはずですよ、月詠」

 

悠陽の言葉に真耶は自分が未だに溜まっている現政権への不満と憤りを飲み込み、それをこれ以上表に出すことをやめる。

自分の主は政威大将軍という役職に就いているが、それは現政権によって形骸化されてしまいただのお飾り同然の扱いをされてきたと言うのに、それを不満や愚痴を漏らさず全てはただ日本とそして国民のためにと一人健気に奮闘しようとしているのだ。

 

真耶「殿下。如何なる時も私は貴方様をお守りいたします」

 

そう彼女は深々と頭を下げて主である悠陽に誓った。従者からの言葉に悠陽はただ微笑みを浮かべて首を縦に振り、一言。

 

悠陽「そなたに、感謝を....」

 

 

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彼女らがそのようなやり取りをしている中、帝都城から出ていった是親は自身を乗せたリムジンの中で後部座席の背もたれに身を任せて寛ぐ。

 

是親「はぁ~」

 

疲れた様に寛ぐ是親を見て秘書は口を開いた。

 

秘書「如何でしたか?殿下との会談は」

 

是親「嗚呼、例の白い悪魔たちとのことで話があった」

 

是親は徐にネクタイを緩めて力を抜いて顔を上に向けてそう呟く。秘書は驚くが、是親は尚も言葉を繋げる。

 

是親「明日はかなり大変なことが起こる。今すぐに準備せねばならん」

 

そう告げる是親を乗せたリムジンはそのまま日本現政権の中枢である国会議事堂へと走るのだった....。

 

 

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一方、巌谷との会話を済ませた託未たちはと言うと、ブリーフィングルームに集まっていた。

五人は当然のこと、唯依や上総それに恭子、そして武と純夏の2人もこのルームに集められた。

託未から明日帝国に送り返すことへの内容を聞かされている最中である、唯依たちは真剣に彼の話を聞いている。

 

託未「送り返すと言っても帝国とそんな密接してやり取りしたという訳ではない、ただ俺たちが一方的にやって来て保護したお前たちをそのまま返すんだからな」

 

恭子「じゃあ貴方たちは私たちを返した後、そのまま姿を眩ますの?」

 

彼女は託未に対して自分が知りたいことを投げ掛けた。彼女にしてみれば彼らが自分たちを帝国に返した後直ぐにとって返して再び姿を消すのでは?と按じている。

正直彼らには政威大将軍たる煌武院悠陽と謁見にしてもらい、出来るなら帝国に、そして更には斯衞に来て欲しいとすら思っている。

それは彼女のみならず上総もそう感じているし、そして唯依も....。

 

唯依「(託未さん...)」

 

彼女としても託未には自分と同じ場所にそれか近しい所に来て貰いたいと内心願っているのだった。

彼女がそんな想いを抱いているなかで託未は、恭子の問いに答えていた。

 

託未「かもな。いきなりやってきて“では今すぐ会談を設けましょう”なんて訳にはいかないだろ」

 

恭子「それは....そうだけど」

 

託未「それにだ、仮にもし会談を設けたとしてもこちらにも準備がというのがある。今回するとしてもほんの少し時間で切り上げる」

 

恭子「そう...」

 

恭子は託未の話を聞いてショックを受けて落ち込み、顔を俯かせるのだった。これには唯依も同様で彼女は託未に悲しくそして寂しげに見つめる。

そんな二人とはうって変わって上総は宗陰に視線を向けると、彼は「託未の言う通りだ」と返すのみでそれ以上は口にはしなかった。

それが余計に上総の顔に暗くすることには十分であった、彼女としては宗陰ともっと傍に居たいと願う感情が日に日に強くなっていたのだった。

恭子は何とか出来ないか一考する、そうしている彼女を余所に託未は武と純夏に身体を向けて語りかける。

 

託未「お前たちも日本帝国に戻ったら、向こうの指示に従え」

 

武と純夏「「は、はい!!」」

 

託未「じゃあ皆、明日に備えて寝てろ。いいな?」

 

託未がそう言うと宗陰たちを引き連れ、ブリーフィングルームから出ていく。彼らが出ていった後のブリーフィングルームは微妙な空気に包まれていた。

武と純夏はようやく日本に帰れるという安心感によって綻んでいるが、唯依たちは違っていた。

彼女らは未だに複雑な心境を抱き、どうしたらいいのかと悩んでいる様子である。

彼らを置いてブリーフィングルームから出ていった託未たちは歩きながら会話を交わす。

 

森羅「んでよぉ、帝国にあいつら返す為に行くとしてだ。向こうが俺らに敵対するってことは?」

 

睦城「あり得ませんよ。我々はそうならないように帝国に対し、自分たちが味方としての売り込みをしたのですよ」

 

睦城の話に森羅はハイハイと言いながら肩を竦めながら苦笑する。そう言う中、宗陰が森羅に言い聞かせる。

 

宗陰「帝国で俺たちを敵視する奴なんてまずいやしない」

 

蒼真「ならいいんだけどさぁ」

 

 

蒼真も両手を後頭部付近で組みながらぼやく。彼らがそんなことを言っている所へ託未が四人に振り返り口を開いた。

 

託未「それよりもだ、明日に備えろ。いいな?」

 

四人「「「「了解」」」」

 

託未たちも明日に備えて自室に向かうのだった。そしてその夜、皆それぞれの部屋で眠りについてた、艦の操舵や周囲索敵はハロたちが代わりにやってくれている。

彼らに任せれば速やかに知らせてくれるのだ、寝静まったディーヴァ艦内は静寂に包まれていた。

静かな中、唯依が居る部屋では彼女はベッドに入っていたが未だ寝むることが出来ずに切なそうな表情を浮かべ、天井を見上げてまま思い耽っていた。

 

唯依「.....託未さん」

 

彼女は自分が気になる男の名を口にする。身体を天井から背けるように横になる、すると彼女の視界に託未から貰った携帯通信端末機が映る。

あれを貰った時託未は言った.....“お前は明日祖国に帰ることになるが、別にそれで俺との繋がりが消える訳じゃない”っと。

これを聞かされた際、彼女の心は満たされそして本当に嬉しかった。だが今では明日には託未たちと別れないといけないと言う現実に今の唯依の心にチクチクと感じ、次第に瞳が潤み涙が流れてしまう。

 

唯依「託未、さんっ....っ...」

 

 

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そして翌日、とうとう唯依たちが帝国に帰還する日が訪れた。唯依は身体を起してベッドから立ち上がり、服を着替える。

複雑な心境の為か着替えがとてもゆっくりと遅く重かった。しかし着替えを終わらせた彼女は部屋を出る、その面持ちは暗かった。

 

唯依「....はぁ」

 

重い溜息を漏らす唯依。っとその彼女の足に何かがコツンと硬い物が当たる感触がした、彼女は何かと足元に目を向けるとそこに託未専用のハロ――黒ハロが居た。

 

唯依「黒ハロ?」

 

黒ハロ「唯依 唯依 オハヨウ オハヨウ」

 

唯依「うん、おはよう」

 

彼女は黒ハロを抱き上げ、そのまま艦橋へと向かうのだった。一方、艦橋では託未がインカムを耳に付けて巌谷中佐へと連絡しようとしていた。

 

巌谷『もしもし?』

 

託未「新月です」

 

巌谷『嗚呼、待っていたよ』

 

託未の連絡を実は今か今かと巌谷中佐は待っていた。何故ならあの白い悪魔と謳われる者たちが今日自分たちの前に現れるのだ、これを抑えろと言われても流石に無理というものである。

まるで子供めいた逸る気持ちを内心に抱く巌谷中佐を余所に、託未は淡々とこれからの行動を話し始めた。

 

託未「自分たちはこれから帝都に向かいますが、そちらにとって都合の良い場所はありますか?」

 

巌谷『それについてなのだが、帝都城に向かって欲しい。そこで受け入れ用意が急遽ではあるが整っている』

 

託未「了解です。森羅、帝都城へ最大船速」

 

森羅「オーライ」

 

託未の指示により森羅の操舵によってディーヴァは帝都・東京にある帝都城へと進路を向けて船の速さを上げる。

 

巌谷『どれくらいで此方へたどり着くんだ?』

 

託未「最低でもあと一時間は」

 

巌谷『そんな早くか....』

 

託未「はい」

 

巌谷『ではこちらも帝都城に向かうのでそちらで会おう』

 

託未「了解」

 

彼らがそんな会話をしている中、唯依が艦橋に入ってきた。彼女よりも先に上総と恭子、そして今回初めて艦橋に入った武と純夏までも居る。

唯依に気づいた上総が声をかけながら近寄ってきた。

 

上総「唯依、おはよう。昨夜は眠れまして?」

 

唯依「え...あ、うん」

 

上総「ん?」

 

彼女の様子に訝しむ上総だが、唯依はそれよりも艦長の席についている託未の方へ視線を向ける。彼は唯依の視線になど気づかず通信越しで巌谷中佐との話に集中していた。

唯依は忙しいと思われる彼に対して切なそうに見つめるのみで、声をかけられるような隙がないと思い顔を俯かせる。

彼女がそんな様子をしていると、とうとうディーヴァは日本の首都である東京上空を通る。地上に居る帝国国民は突如として現れた戦艦ディーヴァの出現に様々な声を上げるのだった。

 

「なんだあれは!?」

 

「空に大きい船...!」

 

「どこかの国の新兵器か!?」

 

等と皆空を飛ぶディーヴァの姿に奇異な目で見上げている。ディーヴァが目立つと思ってか、蒼真は賑やかに冗談を口にし始める。

 

蒼真「地上に居る人たち、きっと驚きで足を止めてるだろうねぇ~。正にこれは所謂黒船来襲的な?てことは俺たちペリーみたく来ちゃった感じかなぁ、ハハハ♪」

 

森羅「なぁにが黒船だ、バァカ」

 

っと、森羅が毒づいてツッコミを入れる。そんなやり取りをしていると巨大な城が見えてきた。日本にとって無くてはならない政威大将軍・煌武院悠陽がいる帝都城である、目的の場所が艦橋からでも目視出来た。

 

託未「帝都城が見えたな」

 

宗陰「みたいだな」

 

一方、帝都城からもディーヴァの姿を確認出来た。城に居る斯衞の者たちは驚きの声を上げる中、司令官たる男・紅蓮醒三郎は堂々とした態度で一切動揺などしておらず、上座の間に赴き主である悠陽に知らせる。

 

紅蓮「殿下」

 

悠陽「分かっております。彼らが来たのですね」

 

この時を待っていたかと言う顔をする悠陽。しかし彼女にとってこの状況はチャンスと見ていて何ら可笑しい物ではなかった。

これを機として彼らと親睦を深めて日本を守れればと彼女はそう思っているのだ。

悠陽は紅蓮に対して指示を与え出す。

 

悠陽「紅蓮、斯衞軍全体に知らせなさい。決して彼らに対しての攻撃はしてはならぬ、と」

 

紅蓮「は!直ちに!」

 

彼はそのまま踵を返し、悠陽の命令を実行すべくその場から立ち去っていく。紅蓮が居なくなった後、悠陽の傍に控える真耶が声をかけた。

 

真耶「殿下」

 

悠陽「我らも参りましょう」

 

真耶「は!」

 

真耶を伴って悠陽は上座の間から出ていくのだった。一方目的地上空にて停滞しているディーヴァでは、ここからの流れの話をしていた。

 

託未「さて、目的地に着いた」

 

宗陰「嗚呼」

 

睦城「で、ここからは?」

 

睦城の問いに託未は淡々と答える。

 

託未「ガンダムで彼らを乗せていくしかない」

 

ディーヴァの真下にあるのは帝都城やその周囲を囲む関連建造物であり、決して着陸出来るほどの余剰が場所は無かった。

ならばガンダムで唯依たちを運ぶしかないと考える、これには宗陰たちも賛成しそのまま唯依たちにこの事を伝える。

彼女たちもこれを承諾し、皆格納庫へと向かうのだった。

格納庫に着いた唯依たちをノーマルスーツを着て既に準備し終えた託未たちが待っていた。

彼らの姿を見て嗚呼、やっぱりさよならになるんだと唯依の心中は張り裂けそうな程に軋み痛み出す。

そんなことなど気づかず託未は淡々として話す。

 

託未「準備出来たか?では俺たちのガンダムに同乗して貰う」

 

唯依「あ...は、はい」

 

恭子「了解よ」

 

上総「あ、あの!私!宗陰さんの機体に同乗してもいいですしょうか!?」

 

上総が徐に手を勢い良く上げた状態で自分の願望とも言える内容を吐露する。それに対して森羅と睦城はニヤニヤし、蒼真は無邪気に「オー」っと感嘆とした声を漏らし、託未に至っては興味もなくそれを宗陰に視線を向け目で「面倒くさいから任したぞ」と物語って彼に押し付けた。

 

宗陰「....はぁ、分かった。いいぞ」

 

上総「っ!はい!!⁄⁄⁄」

 

仕方なしと諦めて溜め息を漏らしこめかみに手を当てて了承する、彼から許しが出ると上総は嬉々として両手を胸の前に組んで元気に返事をするのだった。

一方武と純夏は自分たちはどうなるんだと思っていると、蒼真が二人に...。

 

蒼真「白銀君たちは俺の機体に同乗ねぇ~」

 

武「は、はい!!」

 

純夏「分かりました!」

 

蒼真から言われて二人ともビクッとしながらも返事してみせると、蒼真はにこやかに言って聞かせる。

 

蒼真「ハハハ。そんなビクッとしなくていいよ、ただ自分たちの居場所に帰るだけなんだからさ」

 

武「自分たちの、居場所...」

 

蒼真から出た居場所という言葉に武は顔を俯かせる。正直日本に帰っても果たして帰る場所など残っているのだろうか?実は自分と純夏の両親は以前にあったBETAの横浜侵攻で自分たちと離ればなれになっているのだ。

もしかしたらと一瞬考えてしまう事がある、純夏はそんなこと口には出さないがそれを不安に思っているに違いない。

っとそんな武の肩に蒼真の手が乗る、突然何かと不思議がる武に彼はいつもの陽気な笑みを浮かべて諭す。

 

蒼真「そんな不安にならなくていいよ。向こう行ったらきっと会えるさ」

 

武「霧夜さん....」

 

蒼真「さ、それを確かめるためにも早く乗って」

 

武「はい!――純夏、行こう」

 

純夏「う、うん!」

 

武と純夏は蒼真のΞGに同乗し始める、上総も迷いなく宗陰のペーネロペーのコクピットに乗り込む。残されたのは唯依と恭子の二人だけとなった、託未は残った二人に睦城と森羅の機体に同乗して貰おうと考えていた矢先だった。

恭子が託未より先に口を開く。

 

恭子「託未、お願いがあるの」

 

託未「何だ?」

 

彼女はどういう訳か隣に立っている唯依の背後に移動して、彼女の両肩に手を乗せて見せる。唯依も何事かと不思議がるが恭子はお構い無しに託未に願いを口にする。

 

恭子「私と唯依、二人ともあなたの機体に同乗したいの」

 

託未「ん?何故だ?」

 

訝しげに問いかける彼に恭子は微笑みながらに答えて見せた。

 

恭子「だってこれでお別れになるかもなんだし。最後は気になる殿方と居たいと言うのは女の性よ、だからお願い、ね?」

 

唯依「きょ!恭子さま!?」

 

っと屈託のない晴れ晴れとした笑顔を浮かべているが、片や唯依の方は突如の言葉に動揺している様子。しかし託未は意に介していない風に只々口を開き、目の前の恭子に対して呆れた言うに溜息を漏らす。

 

託未「――ハァ、勝手にしろ」

 

恭子「やったぁ♪」

 

唯依「きょ、恭子さま...どうして?」

 

陽気にウキウキした姿を見せる恭子。彼女とは代わって唯依はどうしてあのような願いをしたのか問うてみた、すると恭子は笑顔を崩さずその答えを喋る。

 

恭子「ん?素直に気持ちを口にしただけよ。唯依だってそうでしょ?」

 

唯依「そ、それは....」

 

自分が一体どういう気持ちを抱いてるのか、完全に理解しているわけではない。

だが託未が近くに居てくれると心が高鳴り熱くなる、彼が居ないと心がソワソワしてどうしても落ち着かず寂しく感じてしまう。

彼女にとって此処はなくてはならない居場所になりつつあったのだ、と言ってもそれは主に託未という存在があるからと言える。

彼女がそんな気持ちに揺らぎ口ごもっている所へ託未から声をかけられる。

 

託未「いつまでもそこに居ないで、早く同乗しろ」

 

恭子「えぇ」

 

唯依「は、はい!!」

 

彼女らは託未の愛機たるHi-νガンダムへと乗り込む、この時2人の為に託未は自分の操舵席のリニアシートの前後に簡易シートを設けた。全員がそれぞれの機体に乗り込んでのを確認した託未は号令をかける。

 

託未「行くぞ」

 

四人「「「「了解だ|分かりました|ヘイヘイ|オーライ」」」」

 

ディーヴァのカタパルトハッチが開き、まず最初にHi-νガンダムがリニアカタパルトに移動し発進態勢に入った。

 

託未「発進時のGは多少あるから舌には気を付けろ」

 

唯依「はい!」

 

恭子「分かったわ」

 

これから発進しようと言うことで事前に託未が発進時のGに対する影響がある為、気を付けろと忠告する。戦術機の発進時のGに比べるとモビルスーツがリニアカタパルトで出撃するGは強い為、気を付けねばならない。

そしていよいよHi-νガンダムが出る。

 

託未「出るぞ」

 

唯依「うっ!」

 

恭子「くっ!」

 

発進時のGに唯依と恭子は苦し気に顔を歪ませてしまう。しかしこのGに慣れている託未は気にも留めていない、そんなことよりも託未はモニターで後続に宗陰たちの機体が付いてきてるのを確認する。

 

託未「来てるな。このまま下に降りるぞ」

 

四人「「「「了解」」」」

 

 

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ディーヴァから発進したガンダムたちが下に降りてくる頃に、悠陽たちも城の外に出ていた。本来政威大将軍たる彼女が城外に出るなどという行動に臣下の者たちは止めはしたのだが、彼女は「自分たちを二度も救ってくれた者たちに対する礼を失する真似はできません」っと彼女は周囲に諭して無理に来たのだ。

彼女の傍に月詠真耶は勿論のこと、紅蓮と斑鳩崇継、更に未知の技術の塊である戦艦ディーヴァや今降りてくるガンダムを見聞するために悠陽の名指しで斯衛の技術局局長である篁裕唯中佐、そして託未からのコンタクトを最初に受けてそれを悠陽に報告を入れた巌谷中佐が今帝都城に到着し、秘書官と共に駆け付けた。

皆空に浮かぶ戦艦ディーヴァとそこから出てきて地上に降りてくる五体のガンダムに圧巻される。

 

紅蓮「あれが、白い悪魔たちか」

 

裕唯「凄い!話だけでどんなものかは分からなかったが、これほどの存在感を持った機体なのか!確かモビルスーツという総称だったな」

 

巌谷「何という....まさかこれほど....」

 

紅蓮は動揺もせずガンダムを真剣な目付きで睨むように見つめ、裕唯は目の前に降りてくる謎の技術の塊とも言えるガンダム五機に感嘆と好奇心によって心をかき乱されながら眼を一時逸らず、そして巌谷中佐は裕唯とは違って余りに話だけの物がいざ目の前に現れると呆気に取られてしまう。

彼らだけではない、斯衞幹部や城内省の面々、警戒のために緊急配備された黒い機体色の武御雷Type-00C型、白いType-00A型に乗る衞士たちも噂の白い悪魔たちの出現に動揺を捨てきれない。

彼らがそうした様相を晒す中、崇継はワクワクとした冷めぬ興奮を内に滾らせている。

 

崇継「(またも再び白い悪魔ーーいや、ガンダムに会えるとは!フフッ)」

 

悠陽「あれが、ガンダム...」

 

真耶「殿下、お下がりを。危険でございます」

 

唖然とする悠陽に真耶は従者として主たる彼女を御守りすべく自身を前に出ようとする、だがそれを悠陽は首を横に振り拒んだ。

 

悠陽「いいえ。私は政威大将軍として下がる訳にはまいりません」

 

真耶「し、しかし!」

 

等とガンダムが地表にその足を着け着地する。帝国側はガンダム五機に対して警戒する中、コクピットの中では託未が同乗している唯依と恭子にいよいよと口を開く。

 

託未「さて、もうすぐでお別れだ」

 

恭子「....えぇ」

 

唯依「は、はい...」

 

彼の淡々とした言葉に二人はしんみりした様子を見せるが、託未は気にせず通信機器を操作して外部回線に設定する。そのまま帝国側に呼び掛け、その場一帯に彼の声が響き渡る。

 

託未『こちらは白い悪魔と呼ばれている集団だ。今より保護した者たちを降ろす』

 

っと帝国側に呼び掛ける託未は次に同乗している唯依と恭子に降りる準備をするように促した。

 

託未「二人とも降りる準備をしておけ」

 

唯依「託未さん...」

 

恭子「.....」

 

彼に言われて唯依は悲しげに見つめ、恭子は顰めてしまう。恭子としてはこのまま彼らとの繋がりが今回で終わってしまえば帝国としても辛くなると懸念しているし、次いで彼女自身の気持ちとしてもみすみす気になっている男と離れるのは抵抗を感じる。

そして唯依はとうとう自分の今の気持ちを吐露してしまう。

 

唯依「託未さん!」

 

託未「なんだ?」

 

唯依は意を決し溢れつつある言葉を思うがままに口から出しながら、身を乗り出して彼が被っているヘルメットに当たるぐらいの距離まで狭めて近き.....

 

唯依「私を託未さんの下に置いてください!お願いします!!!」

 

恭子「ゆ、唯依...」

 

託未「.....」

 

その切実に訴える彼女を託未は、ただただ見つめばかりであった。

 




今回はここまで。久しぶりで凄く雑で中途半端で終わりました、ごめんなさい。

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