Mobile Suit Gundam MUV-LUV G-ALTERNATIVE 作:武者ジバニャン
それとですが、この作品にはマブラヴのストーリー内の原作時系列、設定などを無視したり改変したりする部分があります。人によってはかなり好き嫌いが分かれると思いますが、ご了承ください。
以前の作品であるMUV-LUV G-ALTERNATIVE Sad five of manから話を使い回したりしますので、それも含めてよろしくお願いいたします。
イメージOP「閉ざされた世界/劇場版機動戦士ガンダム00」
イメージED「signs ~朔月一夜~/マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス
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あの人、不思議な感じだった。何でか分からないけど、どうしてかそう思った。それにあの人の眼...あの眼、何か、何処か悲しそうな...そんな感じがした。
普通の人とは何かかけ離れたような何かを秘めている気がした。とても得体の知れない何かを背負っている風にも見えた。
唯依「あの人の名前...なんていうんだろう...」
私がそう考えていると、既に家の直ぐ傍まで着いていた。その家の門の前にある車が数台停まっている。
唯依「あ!あれって!」
私は嬉々な気持ちを抑えきれず、家に向かって走りだした。
ばあや「おかえりなさいませ、お嬢様。本日のご学業は如何でございましたか?」
私の帰宅に気づいたばあやが笑顔で迎えてくれた。でもそれよりも
「あ!お嬢様!」
唯依「ごめんなさい!ばあや。後で話すから!」
私は中庭を覗くと母様と巌谷のおじ様が何やら話し合っていたのだ。おじ様は父様の親友で、よく家に遊びに来て私を自分の娘のように思って可愛がってくれた思い出がある人だ。
巌谷「裕唯からの伝言です。くれぐれもよろしくと...」
栴納「そうですか。ありがとうございます」
私は2人の元へ姿を見せて声をだす。
唯依「ただいま帰りました!」
栴納「あら、お帰りなさい唯依」
母様が私に出迎えの言葉を口にしておじ様もそれに続いて言葉を述べてくださった。
巌谷「おや、唯依ちゃん。お帰り」
唯依「やっぱりおじ様ぁ...あ!」
おじ様に会えたことに喜んでついいつもの口調で口走ってしまった。まだ任官してないし、訓練生のままだがそれでももう子供のように馴れ馴れしい呼び方は失礼に当たる。
唯依「失礼いたしました!巌谷中佐殿」
巌谷「おやおや、見事な敬礼だ。私の知っている可愛いお嬢ちゃんは、いつもの間に立派な衛士さまになったのかな」
おじ様の優しい声音に私は恥ずかしさと、それと同時に敬礼を褒めてくださったことに嬉しさが込みあがって頬を赤くして顔を少しばかり俯いてしまう。
そんな私を微笑みながらおじ様が諭すように言葉を紡いでくださった。
巌谷「正式な任官前だし、プライベートだ。今まで通りでいいよ」
唯依「はい、おじ様」
栴納「じゃあ唯衣、お願いね」
唯依「はい、かしこまりました」
母さまはこれから、巌谷のおじ様の為に御夕飯を準備に向かった。本来であれば母がする事ではないのだけど、おじ様は父の友人で良くしてくださった人だ。故に母自らが献立を作る事にしている。
巌谷「ああ、そういえば!」
唯依「...?」
巌谷「帝国国民を守るため、身体に気を付けてしっかり励んでほしい、とさ。お父さんからの伝言だ」
唯依「ありがとうございます。父様とは最近お会いになったのですか?」
巌谷「いや、昨日たまたまかけた電話でね。娘に言いたい事があるなら、手紙でも電話でもいいから自分で伝えろって言ってやったよ」
巌谷のおじ様は、微笑みながらそう言ってくれた。
唯依「あはは、父さま筆無精だし、電話も苦手ですから。それに集中しはじめると時間を忘れてしまうし」
私も笑いながら返した。おじ様もそれに「確かにな」と笑いながら答えてくれた。おじ様は本当に心優しい方だ、いつも私や母様と父様を思い見守ってくれる。
巌谷「確かにあっちも色々佳境らしいからなあ。当分は市ヶ谷に缶詰だって言っていたよ」
唯依「そうでしたか....」
父様、相変わらずだなあ....。よく書斎に閉じこもって、何日も研究開発に没頭されていたって、そして心配した母様がとうとう三日目に泣きながらお小言を言って....父様、頭を低くさげて、恐れ入ってたっけ...。
そういう一見子供っぽいところ、篁の矜持に繋がってるんだ。そういう父様が本当に誇らしい。
唯依「でも、おじ様も忙しいのでしょ?お体が心配です」
巌谷「まあ、このご時世だ。忙しいのは仕方ないさ。俺たち開発屋に限らず、このところ斯衛軍も帝国軍もてんやわんやだからね」
唯依「大陸の戦況、ですか?」
私がそう聞くとおじ様の表情が強張った。まずい!...。軍事機密に触れてしまうことを聞いてしまったかな。
巌谷「ははは、“戦況ときたか!さすが斯衛の衛士候補生だ。あ~、あの唯衣ちゃんが、そんな大人な質問をするようになるとはなあ~」
唯依「お、おじさまあ~」
巌谷「はははっ!いやあ~すまんすまん」
本当にもう.....また子ども扱いして。
巌谷「そういえば、戦術機の実機訓練は明日からだったな?」
唯依「え?はい!そうです!」
巌谷「斯衛軍養成学校の訓練機は、撃震。卒業して任官すれば瑞鶴かぁ」
おじ様、私の学校でのことを知っていて下さったのか。確かにおじ様は今は帝国陸軍の技術廠で技術将校として働いてるけど、昔は斯衛軍で腕に言わせた凄腕の衛士でもあったご経験をお持ちで、しかも開発衛士...テストパイロットまでもお勤めになっていたんだ、知ってて当然だ。
それでも私のことを気遣って下さってる、凄く嬉しい。
巌谷「どちらも良い機体だ、だがいずれは...」
おじ様?どうしたんだろう。お顔が神妙になられて。
唯依「いずれは?」
巌谷「...」
おじ様は難しいお顔になり、縁側から中庭に出て外の風景を眺めながら私に話してくれた。
巌谷「この国土を、BETAに蹂躙されるわけにはいかん。今は優秀な戦術機が一機でも必要な時だ」
唯依「おじ様...」
私はそう語って下さるおじ様の背中を見つめた。そして意を決して立ち上がり、おじ様にいずれは戦場で活躍する意思を伝える。
これからはもうおじ様や父様や母様、そして将軍殿下やこの国のためにも私たちも頑張るという意思をお伝えする。
唯依「暫しのお待ちを!私も間もなく...」
巌谷「勘違いしてはいけないよ」
唯依「え?」
巌谷「国土も大事だが、君たちのような年端もいかない少女たちが前線に出ることのないように、我々はそう願いながら働いている。焦りは禁物だよ」
唯依「おじ様...はい」
おじ様は内心重い気持ちを持っているんだ。もうBETAとの戦いは20年以上も続いてる。そのせいで人口だってかなり激減しているし、それの影響で私たち若い世代が徴兵されている。いくら武家とは言え、おじ様や父様はそんな私たちが前線に赴くことに深い辛い気持ちを持っていらっしゃるんだ。
こんな事がいつまで続くんだろうか、私たちが前線に出ても戦いは無くなりはしないんだろうとは思う。
だからきっと...あの“噂”だってしたがる人達も...。
唯依「そう言えば....」
巌谷「ん?」
唯依「あの...おじ様は知ってますか?大陸での噂...」
巌谷「.....」
おじ様の表情がまた強張った。そう、噂とは安芸たちがしていたあの噂、BETAの数の猛威に苦しむ私たち大陸にて突如現れた謎の五機の戦術機。圧倒的な戦闘能力で五機というたった少数でありながら数の暴力を振るい続けるBETAに対して、有り得ない力で次から次へと蹂躙している。戦場から帰還した負傷兵や避難していた現地の一般人も目撃している。
彼ら...「白い悪魔たち」の噂だ。
巌谷「噂?ああ、例の「白い悪魔たち」の噂か...」
やはりおじ様も知っていたんだ。ここまで広まってるし、それにおじ様の反応を見てると噂は本当なんだって思えてくる。やっぱり実在するんだ。
ならば当然皆彼らを知りたがってる。未知の戦術機、圧倒的な力、それらを扱える技量、全く何も誰も分からないのが不安なんだ。
唯依「はい...あの、おじ様はどう思います?」
巌谷「...確かに大陸では多くの衛士たちが、それを見たという話が出ているのは事実だ」
唯依「じゃあ...」
巌谷「だが、あくまで噂だ。実在するとは限らない」
唯依「そう...ですよね」
巌谷「まあ、そんな事が気にならなくなるぐらいに立派になるんだな?唯衣ちゃんや」
唯依「も、もう~、おじさまあ~!」
巌谷「はははは」
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俺は長時間帝都を散策していた。途中見知らぬ学生と思しき少女とぶつかったりしたが後は何もトラブルは起きなかった。
あの少女のことを直ぐに記憶の彼方に追いやった俺。
それにしても散策していたら夜になるとはな、帰りが遅くなって俺を待っていた宗陰が腕を組んで壁に寄りかかって横目で俺に出迎えの言葉を漏らした。
宗陰「遅かったな。託未」
託未「ただの散歩程度で説教か?お前は俺の母親か」
宗陰「だったらもっと自分の価値を理解しろ。お前は俺たちの大将なんだぞ」
託未「はいはい」
宗陰「託未?」
俺の軽るい返事に睨みを利かせる。こいつは昔から真面目すぎる所があるから大変だ。真面目すぎて森羅みたいな不真面目な奴が居るとどうしても許せん性格と来ている、あのブライト・ノアみたいに修正する勢いがあるから厄介だ。
託未「...分かったから、睨むな。反省している」
宗陰「ならば良しだ」
俺たちは小型艇のブリッジに入ると、別の会話に移った。
託未「宗陰、何か変わった事はあったか?」
宗陰「ああ、有った」
託未「何だ?」
宗陰は、一度言葉を溜めてから端末を操作して映像を見せながら説明をし始めた。
宗陰「実は先ほど、月から地球を監視していたアプロディアから報告があった。大陸のH16の
託未「とういうことは、次に狙われる可能性があるのは...日本」
宗陰「ああ。確実にな」
託未「ふむ」
宗陰の話に考え込む、BETAが東に侵攻するのは新たなハイブ建設のためであろう。今からディーヴァで向かって行って構わないのだが、しかし俺は....。
託未「.....静観だ」
宗陰「いいのか?」
託未「ああ。仮にBETAが本当に日本に向かってくるなら、その時は討てばいい」
宗陰「分かった。もう暫くの休暇と洒落込むか」
託未「ああ、そうしとけ」
だが宗陰の予想は見事、実現する事になる....。
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衛士としての道を歩み始めた唯依たち訓練生は、更衣室にて衛士としての基本装備にし
てその証とも言える衛士強化装備に着替えてる最中であるが、更衣室の中では年ごろの少女たちが何やら色々な声を上げている様子。
「やだぁこれ、きっつーい!」
「あ~も~!真面目にダイエットしとけば良かった!!」
強化装備は戦術機周辺装備という位置付けであり、基本的に衛士が戦術機に搭乗する際に着用する一種の防護服である。
かなり高度な伸縮性を持ちながら衝撃に対しては瞬時に硬化する性質を持った特殊保護被膜、各種装置を収納したハードプロテクター類とヘッドセットで構成されている。
この特殊保護被膜は全身に密着しており、着用者の筋電圧測定からバイタルデータ及び水分の回収。
電圧収縮によって血液の偏りを防ぐ耐G機能等を備えている。
そして他にも通信機、GPS発信機を搭載していて、さらには耐衝撃性能に優れ、防刃性、耐熱耐寒、抗化学物質性といった高度な耐環境性能だけでなく、バイタルモニターから体温・湿度調節機能、カウンターショックなどの生命維持機能も備わっている。
防刃性や耐熱性はもちろん被膜部分にもあり、刃は相当ゆっくり接触させない限りは傷もつかない(しかし流石にBETAの破壊力に対してはほとんど無力である)
このパイロットスーツは内蔵バッテリー式となっていて、連続フル稼働で約12時間、生命維持機能に限定した省電力モードで最大72時間の容量があり、戦術機に搭乗した際は機体側の電力で稼働、自動で充電モードへ移行する。
2リットルの飲料水パックを内蔵しているが、緊急モード時は汗及び尿の分解濾過装置による循環機能も備えている。
戦術機の操縦においては、ヘッドセットとスーツ全体で脳波と体電流を測定し、装着者の意思を統計的に数値化し常にデータを更新、戦術機や強化外骨格つまり戦術機周辺装備の1つであり、緊急脱出システムの核。そしてその予備動作に反映させるという、間接思考制御のインターフェイスとして機能を持っている。
ヘッドセットは戦術機のサブコンピューターとしての機能を担い、戦域情報のデータリンク端末として衛士のオペレーションを補助する役割を担っている。
内蔵された高解像度網膜投影装置により、コクピット内にディスプレイ類を必要しないだけでなく視力の強弱も影響しない。これは両頬先端を押すことで起動展開し、戦術機から離れても一定距離までなら使用することができ、戦術機のカメラの映像も映すことが可能なのだ。
頸部には高機動時の急激なG変化による損傷を防ぐハードプロテクターが存在し、コンピューター等の主要電子装備が収められて、頸後部には着座用のロックコネクターがあり、腰部、下腿部の四点支持にて座席に身体を固定する。
このようにこのパイロットスーツは超高性能なスペックを誇っており、人類の生存率を上げている要因の1つと言えるだろう。
....などと聞こえはいいが、これに対して初見で強化装備を身につける女子からすれば抵抗があるだろう。
前述した通り、胸から股関付近までが半透明の被膜であるため見た目が物凄くエロい、つまり女子の身体のラインがハッキリと丸わかりなのだ。
しかも現在訓練生である彼女たちが纏っている77式衛士強化装備は胸から腹部にかけて肌色に近い色となっており、ヤバイくらいにエロい。
これにも理由がちゃんとあり、敢えて肌色に近い色にする事で訓練兵の羞恥心を麻痺させ、身体のラインがモロに出て実質裸に近い強化装備を身に付ける事への抵抗感を無くす為というのが主な理由となっているのだ。
安芸「でも強化装備って言うの、なんか恥ずかしくないか///?」
その着替えている中で安芸は恥ずかしながらに隣で着替えている志摩子に聞くと、彼女は笑顔で安芸に対してからかう。
志摩子「あ~その幼児体系じゃあねぇ~」
安芸「あ~~!むぅ~!!」
和泉「フフフ」
何分初めての強化装備に彼女たちが恥ずかしがる中、彼女...篁唯依は真剣な顔で強化装備を身に包んでいた。
唯依「(これが本物の77式強化装備。やっとここまで来たって実感が湧いてきた)」
彼女は身に包んだ強化装備の感触を己の身体で感じ取りながら、これからの訓練により励むことを固く決意する。
唯依「いよいよだ...」
そんな彼女を鋭い眼つきで睨む一人の少女が居た。
上総「....」
黒いストレートロングヘアが特徴の彼女の名は、山城上総。
唯依と同じく京都にある斯衛軍衛士養成学校に通う訓練生で、外様武家でありながら数多くの衛士を輩出している山城家の娘。
そんな彼女は自分よりも譜代武家として優遇されている唯依に対して対抗心を抱いていた。そして今日から始まる戦術機実機訓練にて自分こそ、彼女よりも優れていることを証明すべく唯依への敵意を燃え上がらせているのだ。
そして強化装備を身に纏った彼女たちは訓練機である撃震に乗り込み、とうとう実機訓練を始めた。実機訓練は愛宕山演習区域にて行われる。
まず最初に行われる訓練は低空飛行による編隊飛行訓練である。これは光線級によるレーザー照射に対する対策で高い位置での飛行は的にされる為、低くして飛ばないいけない。
しかし実機での低空飛行は唯依たちにとって初手から難易度が高いものだった。
そんな彼女たちに帝国陸軍から京都の斯衛軍衛士養成学校に教官として出向しており、唯依たちの指導を担当している真田 晃蔵の怒号が彼女たちに飛ぶ。
真田教官『揃いも揃って、何だその様は!!シミュレーター教練に戻りたいのかっ!!!戦術機は貴様らにとって武具甲冑であり、馬でもあるっ!!手足のように使いこなしてみせなければ話にならんぞっ!!』
しかしそれでも中々に初回でいい結果を出すなどまだ無理なのであろう。お次は戦術機による歩行しながら周囲の警戒をしつつ密集編隊隊形の訓練に入る。
真田教官『移動隊形にシフト。接敵前進。3000m地点でウェッジワン!攻撃隊形・Δ』
戦術機で歩兵のように移動する訓練生たちが操る撃震。すると突然大きな的が現れると皆攻撃態勢に入るが、和泉が操縦する機体が真横から現れた的に驚き、隣りの安芸の撃震と衝突してしまう。
和泉「きゃあ!」
安芸「うわっ!!」
真田教官「何だそのざまは!!貴重な戦術機に傷でも付ける気かっ!!全員死亡!!戻ってグラウンド10周!!」
唯依たち「「「「「え~~~~~!!!」」」」」
やはりかなり難儀してるようだ。翌日には小隊単位での模擬戦闘が始まった。模擬戦闘に使われる突撃砲には訓練用の弾、つまりペイント弾が使用されている。
負けた小隊は強化装備のままグラウンド10周の罰が待っている。これには訓練生たちの多くがぜぇぜぇ言いながら走らせられ、ぶっ倒れてしまう者が続出した。
次には訓練用模擬長刀を担いだ、戦術機同士での一対一での近接格闘戦が行われる。そこでの試合では、篁唯依と山城上総による模擬戦が行われようとしている。今彼女たちは指定座標に移動し終わる。
真田教官『開始座標確認!』
唯依「赤、篁候補生、座標確認」
上総『白、山城候補生、座標確認』
真田教官『現座標維持、号令を待て』
唯依「了解!」
上総『了解』
両者の擊震はそれぞれ所定の位置に着き、真田教官からの号令を待つ。
この二人がこうして争うのはこれが初めてではない、実は衞士となるにはまず総戦技試験というあらゆる科目が詰まった試験項目を全てクリアしなければならない。
項目に記された試験をクリアして、最後に四人一組の小隊単位で装甲剣道という運動着と顔の上に自分の身体を守るプロテクターとヘッドギアを身につけ、剣道ということで当然竹刀を装備して小隊単位でやるという試験だ。そしてこれらの試験で上手く上位の成績を納めて選ばれるのは36人中12人まで。
唯依の小隊と上総の小隊は決勝でぶつかり合い、彼女達二人はここで一対一で勝負しあった。
しかし結果は唯依たちの負けとなる。試合では負けたが試験での成績は上位に食い込む程に良かったので見事合格した。
だが唯依にとって装甲剣道での事は忘れられないものであり、この戦術機を操っての模擬戦で見事リベンジを果たしたいと固く誓っている。因みに今回の戦術機を使っての模擬戦は模擬用の長刀を使っての試合形式での模擬戦である。
唯依「(今度こそ、山城さんに勝つ)」
彼女が決意を固めていたその時、通信で真田教官からの号令が発せられる。
真田『では!始めっ!!!』
真田教官の号令が出ると、二人がそれぞれ操る擊震が同じタイミングで一気に前に出た。
二機の擊震は長刀を振り下ろすタイミングもまた同じで、勢い良く打ち合って弾ける。
唯依「くっ!」
上総『ちっ!!』
弾け互いに後ろへと後退したが、唯依よりも先に上総が機体の態勢を取り戻して再度唯依に襲いかかる。
上総の上段から振り下ろす長刀に、唯依は92式多目的追加装甲という戦術機が装備する盾でこれをいち早く防御し防ぎきる。
しかし防御からの攻撃に転じることが容易には移すことが出来ない。
上総の攻撃を一方的に受けるのがやっとと言う位である。
何とかせねばと思いながら好機の時を伺う、そこへ上総から接触回線が。
上総『どうしましたの!!この程度なのかしら!!篁さん!!』
唯依「くっ!!」
彼女からの挑発に苦虫を噛み締めたかのような苦悶の表情を浮かべる唯依。
だが上総の攻撃には一切隙がなく、今防御を緩めて攻撃に転じようとすれば間違いなく彼女の長刀の餌食となるのは必定である。
だが上総の方も内心焦ってはいる。先ほどの一撃を盾で瞬時に防御された際、上総は声にはしなかったが顔は驚きを隠せなかった。
あの一撃で終わらすつもりであったのが、上手く決まらずこうして唯依に反撃の一筋を与えないよう攻めて攻めまくっているのだ。
上総「(ですけど、このままじゃあ埒が飽きませんわ!)ならば!!!」
上総はとうとう勝負に出ようと唯依の撃震が装備している盾を突きで弾き、唯依の機体のバランスを見事崩した。好機と見た上総はこれを逃しはしなかった。
上総「もらいましたわ!篁さんっ!!!!」
唯依「っ!!」
上総は上段からの勢い良い振り下ろしが迫る。これを見ていた上総の小隊メンバーは「勝った」と歓喜し、志摩子たちは唯依が負けると思い目を閉じてしまう。しかし唯依は冷静であった、彼女は長刀で防御したのだ。
上総「なんですって!?」
唯依「フッ!!!」
防御状態のまま機体のバランスを敢えて崩して、逆に上総の撃震の態勢を崩した。
上総「き、機体のバランスが!!」
突然のことに戸惑い上手く反応出来ない所を、唯依が逆転の一手とばかりに模擬長刀で上総の機体胸部を牙突する。思わぬ一撃、これによって勝敗が決してしまう。
真田教官『一本!!勝者!!篁!!』
真田教官の一声で志摩子たちは唯依の勝利に大喜びで騒ぎ立てる。
志摩子「やったー!!唯依!!」
安芸「流石は我らの小隊長!!」
和泉「逆転勝利!凄い!!」
彼女らの歓喜は唯依が機体から降りても冷めることはなく、演習場から撤退してシャワー室でも皆騒いで話の肴にしてネタにするくらいだった。唯依はそんな雰囲気が何処か苦手な為に、強化装備のまま皆がシャワーを終わらすのを待っている。
唯依「皆早く終わらないかな...」
そんな彼女に視界に自分と同じく強化装備の姿のままの上総の姿が。
唯依「山城、さん....」
彼女もまた唯依と同じで今のシャワー室に行きたくない様子なのであろう。
唯依「.....」
彼女は普段、言葉や態度とか表に出るものをいくら重ねても何一つ見えない所があった。唯依は彼女を知りたいと思った。そう思い立ったが吉日と言った感じで唯依は上総の後を追うように歩きだした。
彼女の行きついた先はグラウンドに備えてある水飲み場にたどり着く。そこには今回の演習で流した汗を流しかのように自分の頭を冷たい水で流している上総の姿が。
唯依は彼女に声をかける。
唯依「あの...山城さん」
唯依の声に気付き蛇口のバルブを閉めて顔をこちらに向ける上総、彼女の眼つきは鋭いものだった。
上総「...なにかしら?」
唯依は一瞬物怖じしそうになった。上総からしてみれば今回の演習で自分を打ち負かしてくれた相手の顔なぞ見たいとは思いたくはないだろう。しかし唯依は...。
唯依「あの、良かったら...これ、使って」
上総「....」
唯依は用意したタオルを上総に差し出す。
唯依「タオル、顔を拭くのに....」
上総「....」
唯依「.....」
暫し緊張感が唯依を覆った。いつも互いに競い合う仲になっていた彼女とこのような会話なぞしたことないのだ。だがその緊張感は直ぐに消え去った。何故なら上総の表情が柔らかくなり、微笑みを浮かべて唯依が差し出したタオルを受け取る。
上総「ありがとう。使わせていただきますわ」
唯依「っ!うん!」
唯依は嬉しくなり自分でも気付くぐらい笑顔になっていた。互いに笑い合う彼女たちは距離が近くなった気がする。これがきっかけで上総は唯依を始め、志摩子たちとも仲良くなることに。
今後も彼女たちは衛士としての訓練に励んでいく。
しかしそんな彼女たちが頑張りなどを嘲笑うかのごとく世界の情勢は著しく悪くなる一方であった。そしてそれは宗陰が漏らした言葉通り、予想が的中する。
そう、BETAの日本侵攻である。
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山口提督「神風、か。皮肉だ」
副官「はっ。北上中の台風4号は、観測史上最大級だそうです」
山口提督「よりよってこの様な時に....」
山口提督の手が強く握られていた。それは悔しさと苛立ちを露わにしていた。そう現在日本列島に記録的な台風4号が何とBETAと並走しているのだ。そのため各帝国艦隊は後手に回ってしまい、まともな艦隊行動が出来ていない。
山口提督「かつて7月に、このような台風は殆どは起きなかった」
副官「はっ。一説によれば、ユーラシア大陸の地形改造が気象変動に大きく影響していると....」
山口提督「どうやら天は、我らに与しないと決めたようだな」
副官「....はい」
2人の間に少しばかりの暗い雰囲気が漂ったが、直ぐに切替て状況の確認に徹した。
山口提督「状況はどうなっているか」
副官「こちらをご覧ください」
副官の言葉に従いモニターに眼を向ける。
副官「この台風4号の影響により、連合艦隊の主力は沖縄近海にて足止めされております。日本海に展開中の第3、第8打撃戦隊が当海域に急行です」
山口提督「この大時化では、援軍は望み薄だな」
副官「....」
山口提督「万が一に備えはどうなっている。陸軍と本土防衛軍の状況は.......」
副官「ハ!現在.....」
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託未たちは今、ブリーフィングルームで今回の状況の確認をしている最中であった、彼らは大型モニターを用いての宗陰の説明に皆真面目に聞いていた。
宗陰「帝国軍は、九州、中国地方に縦深防衛態勢で万全の構えを強いてやるそうだが、
この記録的な豪雨による水害、土砂災害などが各地で頻発している。その所為か、通信、兵站ラインに障害が発生して混乱しているらしい」
蒼真「うわあ~。運がないね。帝国軍は」
睦城「確かに...この状況下での作戦行動はまず無理でしょうが、事が事だけに仕方ないのですがね」
森羅「それにこの荒れた天候の中、補給だって儘ならない状態でBETAの大群に向けての砲撃はそろそろヤバいんでない?」
宗陰「ああ、確かにもう間もなくだろうな。継続性を優先して、砲撃間隔を空けてはいるが、侵攻圧に対する面制圧の緩和性は著しく不足している。それ故に....」
托未「BETAの上陸阻止不可能。だな?宗陰」
説明している宗陰に上陸阻止の不可能の確認を取る託未。彼の言葉に同意し頷き宗陰は日本の最悪な末路を口にする。
宗陰「ああ無理だ。間違いなく日本はBETAに蹂躙される」
託未「そうなったら....ん?」
突然、通信が届いた。モニターにアプロディアの顔が大きく映し出される。
アプロディア『皆さん』
託未「どうした?アプロディア。月からの地球観測で何かあったのか」
アプロディア『はい...事は急を要します。此方をご覧になってください』
五人「「「「「....」」」」」
託未たちが居るブリーフィングルームの大型モニターに映し出されたのは、大規模のBETA郡が対馬海峡に入水する所であった。入水する個体群の後方からもかなり数が荒廃した大地を埋め尽くしている。
アプロディア『規模は軍団クラス。しかも後続からも尚も規模が続出。その総数...10万超』
森羅「ヒュ~♪」
睦城「ほう」
蒼真「ムリゲーだね」
宗陰「ああ、帝国軍にとって絶望的な状況だな」
託未「確かにな」
しかし五人の反応は意外にも軽く、まるで如何でも良いと言わんばかりの態度であった。
アプロディア『皆さん、如何しますか?』
このアプロディアの問い掛けに.....。
託未「まあ...様子見だな」
冷たく、そして冷酷に、託未はそう決めた........。
その後、重慶ハイブからのBETA郡は朝鮮半島から北九州沿岸に上陸。更にその数時間後には長崎と佐賀に第二次・三次上陸のBETA郡が出現。九州南西部の防衛線は完全に機能を失った。
これも台風4号の影響で、帝国軍、米国軍共に艦船と航空機が全く機能出来ず、ダメになった為である。
しかし状況は更に悪化した。中国地方全体に展開していた帝国軍本土防衛軍・西部方面部隊の主力は、日本海沿岸から散発上陸したBETA郡に側面を突かれ指揮系統が混乱、瓦解してしまったのだ。
北九州からの上陸と側面上陸に挟み撃ちされたうえ、観測史上最大の台風4号がゆっくりと東進。つまりBETAと台風が並走しているという、この訳が分からない状況は日本帝国にとって最悪といえよう。
この結果、本土防衛軍西部方面部隊は壊滅。それでも九州・四国・中国地方で生き残った部隊が各個にBETAを迎撃している模様。しかしBETAの強力な物量押しに絶望的な戦いを強いられていたが、その僅か一週間後、九州・四国・中国地方はBETAに完全に占領されることとなった。
本来であれば事前に想定されていた四国を結ぶ巨大橋群を爆破する算段であったが、それもまた台風4号の影響、加えてBETAのあまりにも早い侵攻に対処しきれず仕舞いとなってしまったのだ。
これまでの出来事でなんと西日本だけで一千万以上の死者並びに行方不明者が出た。
託未「これは予想以上だ」
宗陰「ああ、この状況は確かに酷いな」
蒼真「だったら...どうするの?」
宗陰「そうだな。で?どうする?まだ様子見か?」
託未「ああ、京都での状況で動く」
宗陰「分かった。ではそうしよう」
託未「ああ、お前たちも良いな?それまでハロたちと共に、機体のメンテを万全にしとけ」
三人「「「了解」」」
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夜、廊下に備えてある公衆電話の受話器を持ちながら何処かと通話している和泉の様子は、信じられないと言わんばかりのものだった。
和泉「そんな....噓.....でしょ....?」
受話器を手から離し、足に力が無くなり膝から崩れ落ちて泣き出した。
和泉「――いやああぁぁぁぁっ!!!」
突然の悲鳴に唯依は部屋から抜け出して和泉がいる廊下へと駆け走る。そこには先ほどの悲鳴を上げて涙を流して嗚咽する和泉と、そんな彼女に何と声を掛けてやればいいか分からず只々目を伏せている安芸と志摩子の姿がそこにあった。
唯依はこの状況を見て直ぐに悟った、和泉の恋人は亡くなってしまったのだと。そこへ唯依の後を追うように上総も駆けつける。
上総「どうしましたの!?」
志摩子「和泉の恋人が、九州の戦線で....」
上総「そう、でしたの....」
上総もまたこれを聞いて何も言えなかった。しかし彼女はゆっくりと和泉に近寄って彼女の背中を摩ってやる。そんな彼女たちが居る場から直ぐ近くある食堂からテレビの音声が聞こえる。
『BETA侵攻に対し、日本帝国軍及び本土防衛軍、在日米軍、国連軍は舞鶴と神戸を結ぶ首都京都前面に三軍共同の防衛線構築。日本海、瀬戸内海、大阪湾に連合艦隊を配備』
このニュースの内容に安芸は眼つきを鋭くして呟いた。
安芸「任官の繰り上げって、やっぱりこれかな....」
実は彼女たち訓練生の任官まで本来後三ヶ月はあった。しかしBETA日本侵攻に対し戦力を整える為にも多くの衛士が必要であった。なので例え未だに訓練課程半ばである彼女たちも今回の防衛戦に組み込まれる為、任官を繰り上げたのだ。
唯依「....」
この後、彼女たちは直ぐに配備命令が下ることとなった。場所は嵐山仮設補給基地である。
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秘書官は画面を用いて今回の作戦概要を説明した。
秘書官「―――以上が、本防衛の概要になります」
巌谷「....帝都の避難状況は」
秘書官「軍人や軍属を除き、現在京都市内に残っているのは、作戦を支援する政府機関職員、報道関係者、自力で避難が可能な武家衆の屋敷守などです」
巌谷「.....」
秘書官「一部を除き、民間人の退避は既に完了しています」
巌谷「“一部”.....。避難を拒んだ民間人か」
巌谷は、“一部”という言葉に反応し敢えて彼女に聞いた。秘書官は巌谷の問いにとても重苦しさを顔に表しながらも彼女は秘書官として責務を全うすべく報告を続ける。
秘書官「はい...捜索と強制退避は本日1900をもって打ち切りとのことです」
巌谷「作戦遂行に追われ、今は一兵たりとも惜しいということか....」
秘書官「はい...」
2人の間に暗い雰囲気が流れる。
巌谷「...........今回」
秘書官「はい?」
巌谷「今回....彼らは現れるのだろうか....」
秘書官「“彼ら”とは?...まさか」
秘書官は、巌谷が漏らした“彼ら”という言葉に心当たりがあった。それは紛れも無く【Hi-ν】【ΞG】【FAZZ】【クロスボーンX1フルクロス】【ペーネロペー】....五体のガンダムのことであった。
秘書官「もし現れるなら、西日本がBETAに陥落される前に来てほしかったです」
巌谷「ああ....そうだな。ご苦労、下がってくれ」
秘書官「ハッ!失礼します」
敬礼し、彼女は執務室を出た。秘書官が退室して直ぐに巌谷はこめかみに人差し指と親指で摘まみながら自身の心労を感じながら独り言ちる。
巌谷「...我ながら情けない。まさかここまで参ってしまうとは...だが」
巌谷は在る事が気がかりであった。
巌谷「唯衣ちゃんよ...祐唯と栴納さんを悲しませるなよ...」
我が子のように想ってきた少女の事を考え、彼女を気にかけていた。彼女の無事を願う様に.....。
そしてここまでに九州、四国、中国地方をもBETAに占領され、とうとう奴らが首都京都にまで迫ってきた。
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如月中尉「最後に言っておく、我ら等の任務はこの嵐山基地の防衛にある」
今、唯衣たちは嵐山基地にて強化装備に身を包んで、彼女らの隊長である如月佳織中尉の説明を聞いていた。
彼女たち訓練生が何故この基地にいるのか、この度のBETA侵攻に対しての繰り上げ任官されたからである。
少しでも衛士が必要となるこの状況、だとしても未だ訓練校を卒業していない彼女らまで召集されるのは余りにも酷い話である。
如月中尉「本来この基地は、我が斯衛と陸軍が共用する帝都鎮守部隊の外郭拠点だ。だが首都防衛計画による所属部隊の前面展開に伴い、首都圏に点在する他の基地や駐屯地同様、臨時補給基地として運用されている。
つまり、京都外郭高地西端に位置する当基地は、最終防衛ラインに展開する戦術機甲部隊の兵站を一手に司る重要拠点なのだ。
兵站が軍に於ける生命線である以上、補給基地の警護は重要な任務なのだ。
帝都に迫る異星起源種どもの規模に抗する為、正規戦力の殆どを前線に抽出した今、貴様等新任に出来る事は、
この兵站の要所を護りきることだけだ!
実戦経験のない、ましてや教程も満足に終えていない半学徒衛士には過ぎた名誉といえよう!」
この時、唯衣たち訓練衛士たちは握り拳をしながら聞いていた。確かに彼女たちは満足に教程すら終えていない、
半学徒衛士たち。故に悔しいのだ、その中でも唯衣の友人である能登和泉はそれ以上に悔しかったのだ。
なぜなら彼女の許嫁が九州の戦線で帰らぬ人となってしまったのだから、BETAに対する激しい怒りを静かに燃やしていた。
如月中尉「いいか、功に逸るな!!自分は足でまといだという事を常に自覚しろ―――分かったかッ!」
「「「「了解!!」」」」
如月中尉「―――ブリーフィングは以上だ。別命あるまで待機。尚、貴様たちの戦域データリンクへのアクセスは制限されている。待機中は通信とバイタルモニター以外機能しないと肝に銘じていろ―――以上、解散ッ!」
彼女の号令と共に、全員が敬礼をとって解散した。
志摩子「足手まとい...か。そんなことを言われる為に頑張って来た訳じゃないのに...」
安芸「くそ!!いつまでも学徒兵扱いすんなよ」
和泉「後方配属か...忠道の仇、討てると思ったのに...」
その中で和泉は、大切な許嫁の顔写真が納まっているペンダントを眺め、悔しいそうに呟く。
唯依「和泉....」
和泉を気にしながら、安芸と志摩子に諭した。
唯依「...仕方ないよ。如月隊長の言ったことは本当のことなんだし...」
安芸「唯衣...?」
唯依「―――でもそれって、時間とか状況とかが原因で、私たちがどうこう出来る問題じゃあないでしょう?」
安芸、志摩子、和泉...そして彼女たちと共に居る山城上総もこれを聞いていた。
上総「....」
唯依「だから、こうなったのは私たちの所為じゃない。そんな事を気にするのはやめよう?切り替えていこうよ」
この時、唯衣はこう思っていた。安芸や志摩子がどう思うか、今は関係ない。どれだけ言葉を尽くそうとも、事実を見ようと、人は、思いたいようにしか思わないんだから。形だけのものだったしても、部下の命を預かる以上、篁の正道を貫くだけと。
志摩子「そうだね。ちょっと気を張ってたからさ....。後方配置で肩すかし喰らったんで、ちょっとイラついてた」
唯依「前線で戦っている先任のためにも、私たちは冷静でいましょう。小規模の取りこぼしが迷い込んで来ることだってあるんだから...」
安芸「うん...そうだね」
唯衣の言葉に冷静になる志摩子と安芸。
唯依「いつかは必ず必要とされる時が来る。今はその時のためにやるべき事をしよう」
安芸「分かってる...。大丈夫だよ」
和泉「うん...」
安芸たちとの話合いの後、唯衣は1人、休憩用のベンチに座っていた。そこへ...
上総「随分落ち着いているのね?篁さん」
唯依「え?...山城さん」
上総「隣、いいかしら?」
唯依「え?ええ、どうぞ」
上総「では失礼して」
唯衣の承諾をとり、上総は隣に座った。
上総「私の小隊、緊張と弛緩で苦しみ、皆ピリピリしていますわ。事前処置だけでは足りず、後催眠暗示か追加の薬物処置を必要になるくらいに...」
唯依「...そう...なんだ」
上総「私も同じ。事前処置の所為か、自分の感情が妙に客観的になってしまって....」
唯依「...」
上総「後方配属になって、内心安堵している自分の情けない思いを冷静に噛み締めていました」
唯衣はただ彼女の話を真剣に聞いていた。
上総「でもそれと同時に貴方が羨ましい」
唯依「え?どうして?」
上総「貴方がさっき、石見さんたちに言った言葉。あれは私にとって決して言える気がありませんでしたわ。でもそれを平気で言える貴方に羨望と共に嫉妬さえも抱きました」
唯依「山城さん....」
上総は立ち上がって、唯衣の正面に移動し.....
上総「お互い、生き残りましょう」
唯衣に向かって手を差し出しす。それは握手を求めるものであった。唯衣はこれを受け入れ、握り返した。
唯依「ええ、頑張ろ」
上総「ふふ」
その時......
安芸「唯衣ッ!大変だッ!」
唯依「どうしたの?安芸」
安芸は走ってきた為、息を整えてから伝えた。その内容は...
安芸「はあ...はあ...敵の前衛が突出して、西ヶ嶽付近まで迫ってるってっ!」
唯依「!?」
上総「西ヶ嶽って!?眼と鼻のさきじゃない!!」
2人は安芸と共に皆が待機している詰所に戻った。中隊の皆は、既にこの情報を聞いてい為、動揺を隠せなかった。
それは他の中隊の衛士たちもそうだった。
「帝都絶対防衛線の最外郭が接敵して....まだ数時間しか経っていないのに....?」
「この短時間で三つの防衛線が突破されたか....最良の可能性でも一部が綻んだということでしょ!?」
その瞬間、基地内に警報アラームが鳴り響いた。
【基地内アナウンス】「中隊規模BETA郡接近、西南西距離約14000、待機中の全衛士出撃準備。繰り返す、中隊規模BETA郡接近....」
上総「皆さん、行きましょう!!」
上総の言葉に、唯衣たちは直ぐさま格納庫に向かう。彼女たちは己が搭乗する機体...82式戦術機 瑞鶴に乗り込む。
唯依「父様っ...母様っ...!!」
唯衣のまた己の機体に乗り込み、自身の胸に手を当てて目を閉じて覚悟を決める。
唯依「(見ていてください!私は―――本物の斯衛になります....!そして...!!)」
意を決し目を開き、これから行われる戦いに固い誓いを口にする。
唯依「これまで頂いたご恩に、唯衣は必ず報います!!」
彼女は乗り込み、その瞬間レバーを握る手の力が込みあがる。彼女の網膜投影が作動した同時に、安芸の通信が流れた。
安芸「―――進軍速度が速すぎるっ!?前衛部隊は何やってんだっ!!」
志摩子「後方の補給基地なのに...なんで!?」
取り乱す二人に唯衣は...
唯依「ここはもう、最前線なのよ....!」
如月中尉「ファング1より全中隊に告ぐ」
網膜投影画面に如月中尉の顔が映る。彼女は唯依たち中隊衛士たちの顔を見渡し不敵に笑みを浮かべる。
如月中尉「フッ....スッキリしたようだな。貴様等は実に幸運かつ効率的だ!無駄飯も2食しか食わず、一度の惰眠に貪らず、着任したその日に実戦が味わえるのだからな!」
彼女の言葉に皆、息を呑みこみ聞いていた。
如月中尉「今の所、即時撤退命令は出てはいない。であるならば、持ち堪えれば戦線を維持される可能性が高いという事だ!」
彼女の声の力強くなる。
如月中尉「斯衛の矜持、とくと見せつけろッ!!BETAにも帝国軍にも―――アメ公にもだッ!!」
「「「「了解!!」」」」
如月中尉「ようし!だがその前に、まずは訓練通りにやって見せろッ!!武勲を挙げるのはそれからだ、分かったかッ!?」
「「「「了解!」」」」
2度目の返事を聞いた如月中尉はモニター越しで敬礼する。
如月中尉「貴様らの健闘に期待するっ!!」
唯依「....」
唯衣は静かに、ここには居ない父と母に告げた。
唯依「...行ってまいります」
CP「アラシヤマ・コントロールより、ファング中隊各機、規定に従い発進位置へ」
唯依「こちらファング2、規定に従い、発進位置へ前進」
次々と唯衣たちを乗せたそれぞれの瑞鶴が、カタパルトに移動し始めた。
そして唯衣の瑞鶴がカタパルトに辿り着き、発進準備に入った。
CP「アラシヤマ・コントロールよりファング中隊各機、発進を許可する―――武運を」
その言葉と共に、各瑞鶴のジャンプユニットから火が噴く....そして
唯依「ファング2・篁―――ブラスト・オフッ!!」
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託未「では作戦のおさらいだ。まず、ディーヴァを京都まで移動、京都上空に辿りついたたら、すぐさま各機発進。京都上空から降下し、市街において戦線が酷い所からBETAを駆逐。俺たちが攻撃している間、ディーヴァは上空から援護砲撃を行う。この時、対レーザー防衛策としてアプロディアが開発してくれたレーザー攪乱幕を使う。これにより敵光線級のレーザーを無力化にする」
託未たちは既にティターンズのノーマルスーツに着込んで作戦会議に入リ、そして全員殺気立っている。
森羅「いつの間にそんなもんを?」
宗陰「月を占拠した後からだ」
睦城「それは見事ですね」
蒼真「確かに、それなら安心だね」
森羅「だな」
託未の説明に対して全幅の信頼で納得した3人。
託未「では―――総員、出撃準備ッ!!行くぞっ!!」
「「「「了解」」」」
各員格納庫に急ぎ向かい、各々のガンダムに搭乗。
ハロ「カタパルトハッチオープン!カタパルトハッチオープン!」
ハロの合図と共にハッチが開くと今や夜、暗闇とそして燃えているであろう都市が垣間見える。その光景の中、五体のガンダムが今、燃える帝都を飛ぼうとしている。
託未「
今、絶望と化した日本の地でガンダムがその牙を剥く.....。
今回はここまで。感想などありましたら、どうぞ。