ブオンッブオンッブオンッブオンッ
游雲をまるで体の一部かのように扱い、甚爾は史文恭との合間を図る。
対して史文恭は、興奮が抑えられないとばかりにこちらに突っ込んできた。
狼牙棒を振り上げそのまま振り下ろす。
どおおおおおおんっ
辺りが揺れる。甚爾は体を少し右にずらすことで避けた。反撃とばかりに游雲で反撃!
ガンッ キンッ
甚爾は続けざまに游雲の真ん中をもって棒のように∞字に回しながら攻撃する。
史文恭も何とか避けはするが反撃に転じることが出来ない。
「どうしたキョウ、まだギアは上がりきってねえぞ」
「こちらもまだ本気ではないよ、しかしそれは愚の骨頂か...先に仕掛けさせてもらうぞ」
「お好きにどうぞ」
真っ直ぐに突っ込んでいく、直前で止まり狼牙棒で地面をたたき土で視界を遮る。
「⁈」
視界を遮る向こう側から狼牙棒による無数の突きが迫る
「
視界が遮られた直後の正面奇襲、背後に警戒を強めていたことがあだになり一瞬の硬直、数打防ぐも残りを食らってしまい吹き飛ばされる。
追い打ちをかけるように史文恭、吹き飛ぶ甚じに追いつき
「
今度は斜め上から振り下ろす、だがそれを甚爾は空中で体をひねることで回避、続けて史文恭の腹にけりを食らわせそのまま距離をとる。
史文恭も異能を使い蹴りを空いているほうの手でガードする。
「(私は得意とするのは中距離に対して、とーじは近距離だ。懐に入られたら勝てない)」
再度仕掛ける。
狼牙棒のリーチを生かし攻め立てる
「はああああああああああああああ!」
上下左右、狼牙棒を巧みに操り仕掛ける。気は十全に込め一撃でもかすればそこはまるで爪でえぐられたような傷ができる。
本来ならば
「そろそろぶっちぎるぜキョウ」
「!」
史文恭の目が最後に取られることが出来たのは残影のみだった
「(バカな!あり得るのか、人であろうと車であろうといきなりトップスピードになれるはずがない!それなのに)」
甚爾がやったことは単純、停止の状態から最高速度に一気になったというだけだ。普通ならばあり得ない、本来ならば徐々に加速して至る最高速度にいきなり入るなど。
「(クソッ!とーじは!)」
史文恭は游雲の気を探る。
「!」
気を探れはしたが速すぎる。感じとっと思えばまた違うところで感じる、同時に十か所以上で気を感じては消え感じては消えを繰り返す。
「(集中しろ、こちらに攻撃を仕掛けるならば必然的に接近する。ならタイミングを合わせるまでだ!)」
史文恭はいつでもタイミングを合わせられるよう構える。
そして背後から一瞬でおのれに急接近される。
「ここだっ!」
ガキンッ
見事攻撃を防ぐ。しかし、そこには甚爾の姿はなくあるのは游雲のみ!
「しまった!」
今度こそ本当の背後、拳を固く握った甚爾。
「(游雲の気をわざと探らせて私の背後に投げて攻撃、一瞬にして回り込み本命!このためにわざと最初から游雲を使っていたか!)」
人を超えた身体能力と五感、加えて持って生まれた戦闘センス。
自然より発せられた気を五感で感じ引っ掴んで無理やり纏う。常識?そんなものは知ったことかと唾を吐く。
戦闘時の集中は獣のそれだ、黒い火花の確率が1,000,000分の1だろうが関係ない。
他人にとっては1,000,000分の1でも伏黒甚爾にとっては絶対確率。
【黒閃】
「があああああああああああああ」
粉塵を巻き上げ吹き飛ばされる。
やがて止まる。
史文恭は動かない
「師匠!」
凛が史文恭に駆け寄る。凛は己の【生誕】で生み出した生き物で、視覚を共有する能力を持ったものを使いこの戦いを見ていたのだ。
「安心しろ凛」
「気絶してるだけだ」
甚爾がねらったのは、史文恭ではなく史文恭の持つ狼牙棒のほう。
史文恭は狼牙棒の破壊の余波で気絶したのだ。だが逆に直撃していたら?余波のみで気絶をしてしまうなら、当たればどうなっていたのか凛は想像するだけで恐ろしかった。
「キョウは俺が連れていく、凛悪いが先に行ってキョウの家でこいつの着替え用意してくれるか、あと着替えさせてやってくれ」
「八、ハイ」
「さて」
屈んで史文恭の太ももの裏と脇の下に腕を回して持ち上げる、最後に首が辛くないように己の肩に倒してお姫様抱っこの完成。
そして、ゆっくりと歩き出す。
「・・・お前さ、昨日の聞こえてねぇと思ってるだろ馬鹿が」
昨夜、甚爾が史文恭の胸を触ろうとふざけた時の言葉。
『ボソッ(別に言ってくれればいつでも)』
「俺が天与呪縛で五感強化されてるの忘れてたろ。まったく、何がいつでもだよ。今触れねぇじゃん...」
甚爾が史文恭を覗き込む、その顔は.....
「んっ...ここは」
「よう」
「とーじ」
夜、2人が戦って5時間ほど経ちすっかり暗くなっていた。
「負けたよ、最初からお前の掌の上だったとはな。分っていた事とは言え、やはり悔しいものだな・・・敗北は」
「だが、俺が今まで戦ってきた奴の中では、三本指には入るぜキョウ。負かしといて何だが、自信持っていいんじゃねえの?俺とじゃれ合える奴はそういない」
「ふふ、そうかお前にそう言われるとは、そうだなそうするとしよう」
慣れないことは言うもんじゃないと、少し恥ずかしいと思ってしまう甚爾。
「あれがお前の技か、【黒閃】凄まじい威力だ」
「キョウ…俺は」
「言うな分かっている、私のためを思って全力ではなかったのだろう?」
甚爾は本気で攻撃を仕掛ければ、史文恭を殺してしまうと分かっていた。故に速度も、游雲で攻撃をする時も、最後にはなった黒閃も全力ではなかった。
全力でなくとも黒閃を当てれば史文恭は死ぬ、だから狼牙棒に狙いを定めた。
その事を史文恭は全て知っていたのだ。
「お前との約束を守らなかった事は、素直に悪いと思ってる。だが初めてなんだよ、今までは、他人も自分すらもどうでもいいと思って生きてきた。
他人も自分も尊ぶことをしないそんな生き方を俺は...」
「とーじ、私は嬉しかったよ。全力ではないにしろ、お前は本気を見せてくれようとした、それだけでも私は嬉しかった。」
「キョウ」
「しかし、それでは納得はしないのだろう?お前には罰を受けてもらう。覚悟はいいな?」
「ああ」
その言葉を聞き、史文恭は甚爾の腕を掴みベッドの中に引き摺り込んだ。抵抗も何もする気もなかった甚爾は、いきなり引き摺り込まれ困惑する。
「キョウ?」
「罰は朝まで私の抱き枕でいろ、いいな?」
罰を受け入れると言ったのは自分だ。ならば甘んじて受けようそう思って無言で肯定の意を示す。
「ふふ、実を言うと昔は弟が欲しかったんだ。もっと言えば甘やかす対象だな。こうして一緒のベットで抱きしめ頭を撫でながら眠る、悪くない!」
「おいおい」
少し呆れてしまう。こんな可愛げのある奴だったか?と思い返してしまう。
「とーじ」
「あ?」
「私は強くなるぞ、そしていつの日かお前と並び立つ!その時は、もう一度戦ってくれるか?」
「また這いつくばらせてやる」
「ふふふ」
「ははは」
いつの日かの再戦を約束し眠りにつく、互いの絆は確かなものとなっていた。
朝日が少し登ったあたりの時間、史文恭は己の腕の中で眠る男の寝顔を堪能していた。口元の傷を少し撫でると、モニョモニョと唇を動かし少しくすぐったそうな表情をする。髪は黒く艶があり、女の自分から見ても綺麗だと思ってしまう。そしてその強さは己が知る中で最強だ。現在、はたまた未来においてもこいつに勝てるものは、出てくるのだろうか?だが、そんな強さを持つ者も今自身の腕の中で眠り、見せる表情は年相応か少し幼いくらい。
「(こいつ・・・絶対に年上に好かれる!そんな気がする!)」
女の感がそう予言していた。
「(今、この時だけは)」
甚爾が目を覚ます時まで、史文恭の密かな楽しみの時間は続く。
「ふー」
呼吸を一つ吐き游雲をまるで槍のように構える。
そこからの本来の三節棍の使い方にシフトし木々を薙ぎ倒していく。
「シッ!」
ドンッガンッガンッバキッ
己の膂力のまま振るい破壊する!
そして大きく跳躍し、落ちる時の重力と空中で体を捻った遠心力も利用して...
<ドカーーーーーーーンッ>
地面に直径にして約6メートルのクレーターを作る。
現在は13時を少し過ぎたところ、甚爾は森の中で游雲を使い鍛錬に勤しんでいた。クロは甚爾の体に巻き付いている。初めは動きのスピードで振り落とされないかと思っていたが、そんな事はなくジッと甚爾に巻き付いたままである。そして時々、武器を入れ替えようと思っていると先読みして、口を開き出し入れを同時に行ったりしてくれる。
「(こいつマジで優秀だな)」
滅多に他人を褒めない甚爾が素直にこの龍に賛辞を心の中で送った。
曹一族の里に来て一ヶ月が経とうとしている。
滞在させてもらう代わりに、時折仕事を請け負ったり、里の者達の手伝いや史文恭と一緒に鍛錬を見てやるなどして過ごしていた。
また、甚爾に関わるちょっとしたトラブル?もあったが、それはまたの機会にしよう。
そして今は、今後の動きについて考えていた。
「(1ヶ月か意外と長くいたもんだ、だけどこのままってわけにも行かないよな、そろそろ次の進路決めねぇと)」
などと考えを巡らせていると背後に気配を感じる
ブウォンッ
勢い良く己の首を落とそうと、振り下ろされた
「!・・・お見事です、参りました師父!」
「師父はやめろって言ったろ」
「そんな!我々は師父その武に惚れたのです!師範と同じく尊敬して然るべきお方だと!」
そう甚爾は里の者に手ほどきをしてやっているうちに、いつしか師父と崇められら様になっていた、史文恭はどうせならここで私とこいつらを鍛えるか?それも悪くない、などと本当か冗談かもわからないことを言い出す始末だった。
「で?何かようか?」
「はっ!当主様がお呼びです!」
「ふ〜ん、当主がね、なんか仕事かね。お前は少し休んでから戻れ」
「お気遣い感謝致します、師父!」
そう言い残し甚爾は、持ち前の脚力を生かし姿を消した。
それを見た門下は改めて尊敬の意を抱くのであった。
「来たか、とーじ」
そこには史文恭もいた。
「そろったな」
「当主、私達を招集するほどの問題でも起きたのか?」
「ああ、依頼が来た」
「内容は?」
甚爾が早く聞かせろと催促する。
「主にドイツでテロ活動をしている組織からの依頼でな、戦力が欲しいそうだ。相手はドイツの猟犬部隊」
「最近、いろいろと有名になってきている部隊だな」
「ふ~ん」
「向こうは少数精鋭を希望しているゆえに」
「諜報も戦闘も高水準かつ、悟られぬようドイツ入りを果たすには、私達二人が適任というわけか」
「なるほどね」
戦闘面に関しては二人とも条件など軽く飛び越え、諜報に至っては気を感知されず動ける甚爾がいる。
まさに適任の人選であった。
「しかし、甚爾よお主はこの依頼を降りても構わんぞ」
「は?」
「そろそろ里を出ることを考えていたのではないか?」
「・・・」
「とーじ...」
「いや、やるさ。この任務を最後にこの里を出る」
「そうか、すまんな」
こうして二人のドイツ入りが決まった。
テロ組織[ブルー]との合流は二日後とのこと、二人は相談して別々にドイツに向かうことにした。
史文恭の顔は裏世界では知るものも多い、猟犬達のリストにも入っている可能性が高く、一緒に行動していれば甚爾が諜報活動をできなくなる可能性がある為だ。
「では甚爾、二日後にドイツのリューベックで会おう」
「ああ、じゃ二日後に」
こうして二人はそれぞれドイツに向け里を発った。
ードイツー
「お呼びでしょうか、フランク中将」
「ああ、休暇中に呼び出してすまなかったねマルギッテ」
「いえ、お呼びとあればいつでも」
「ふふ、優秀な部下をもって私は幸せ者だ。さて、マルギッテ今しがた情報が入ってね、奴ら曹一族を雇ったそうだ」
「曹一族を!」
「ああ、曹一族の切り札でもある史文恭がドイツに入ったことも確認された」
「クッ奴ら!」
「マルギッテ、事は動き出した猟犬部隊に出撃命令を下す、作戦難度S殲滅戦だ、心して懸かれ!」
「はっ!」
まるで見本のような美しい敬礼をしてマルギッテは執務室を出ていく
「覚悟するがいい」
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