真剣で甚爾に恋しなさい!   作:ハリボー

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大黒天

「何故、奴らを殺さなかった。伏黒甚爾、貴様ならできたはず」

 

「俺が受けた依頼はあくまでも誘拐。だから別に生かす気も、殺す気もなかったからなぁ。殺して追加報酬もらえんなら別だったが。」

 

「キサッ...うっ!」

 

「それ以上とーじにないか言うつもりなら、お前達の頭を潰す」

 

史文恭が狼牙棒をブルーの構成員に突き付ける。

 

「だが、史文恭殿!この男のせいで我々は同志を1人殺されているのです!」

 

「それはそちらの落ち度だろう。誤った情報を渡し危機に晒した。寧ろとーじに感謝しておけ、この場の全員殺されても文句は言えんぞ?」

 

「それでも!「やめろ」リーダー」

 

尚も食い下がろうとした構成員を止めたのは、ブルーのリーダーである女であった。

 

「失礼をしたな」

 

「なら殺して良いか?」

 

「それは勘弁してくれ」

 

歴戦の猛者と分かる雰囲気。このテロ組織、何処となく軍隊じみている。何処かの国の元軍隊だろうか?規律はしっかりしているし、保有する武器や資金もそれなりの物だ。

 

「君が猟犬達を引きつけてくれたおかげで、今回の我々の目的は達成できた。謝罪と感謝こそするが、これ以上は君と争いたくはない。君にかかれば我々など、そこらの雑草の如く刈り取られる。」

 

ボソッ「とーじ」

 

ボソッ「ああ、かなり場数踏んでるな。力量の差を見る目も指揮官には重要な要素の一つだ。こりゃ確定だな。」

 

2人はある予想をしていた。そしてそれが当たっていると確信する。

事前に屋敷内の内部構造を入手できる。武器や資金。規律の取れた動き。そして構成員の練度とリーダーであるこの女の力量。

 

「やっぱお前ら軍人か」

 

「元軍人だ。伏黒君」

 

このテロ組織ブルーは全員が元軍事であった。

 

「それも同じドイツ軍」

 

「お見それしたよ。なぜ分かった?」

 

「ドイツH&K社のHK417の16インチ銃身モデルに、7.62mm×51口径の短距離狙撃銃(SSchtzWa kRw)、他も含めてここらにある武器は全部お前らドイツ軍御用達の物ばかり。これでわからねえ方が間抜けだ。」

 

「お見事。そう、我々は元ドイツ軍だよ。ご褒美に熱い抱擁でもしてあげようか?」

 

「絞め殺すけど、いいか?」

 

「つれないね」

 

「さて、依頼は達成された。私達は引き上げる。後はそちらの問題だ。」

 

「ああ、今回の依頼を引き受けてくれたことに感謝する」

 

敬礼で見送られながら甚爾達は、ブルーのアジトを去った。

 

「リーダー」

 

「勘付かれるなよ」

 

リューベックの街まで戻ってきた甚爾達。まだまだ夜はこれからと言う時間。

 

「とーじ」

 

「・・・」

 

「少し付き合え」

 

「行くぞ」

 

史文恭が甚爾の腕を取り歩き出す。甚爾はただ引かれるがまま歩く。

そして一軒のBARに入った。

 

「私はそうだなチャイナブルーを甚爾はどうする?」

 

「・・・」

 

「コイツには何かいいのはあるか?」

 

「それでしたらドルトムンダーなどいかがでしょう?【ブロンド・ビール】とも称されていて、口当たりの軽いさっぱりとした味わいが楽しめます。」

 

「では、それを頼む」

 

「かしこまりました」

 

マスターは少し離れてカクテルとビールを用意する。30秒程でそれぞれの品が届き「ごゆっくり」と一言だけ言って離れて行く。2人の雰囲気を察しての事だろう。史文恭は感謝の意を込め少しチップを多く渡した。

 

「さぁ飲もう、とーじ」

 

「・・・」

 

甚爾は動かない。史文恭は自分のカクテルを持ち[カチィン]と甚爾のグラスと乾杯を交わす。

 

「ずっと機嫌が良くないな」

 

「・・・」

 

「その怒りは、何の怒りだ?」

 

「・・・」

 

「とーじが我慢することはない、したいようにすれば良い。」

 

「・・・キョウ」

 

「ああ」

 

「お前から見て俺はどう写って見える?」

 

「私から見たお前か...」

 

カクテルを一口飲む。口を湿らせてから返答を返す。

 

「ツンデレ」

 

「・・・」

 

「そう睨むな、ちゃんと説明する。すまない今度はブランブルを頼む」

 

「かしこまりました」

 

「宝の一件でもそうだ。彼女が黒幕だと知り私達の前で推理した時、無自覚だったんだろう。お前はあの時、少し悲しそうだった。お前がどう思っていたのかは知らない。けどお前は、お前自身と...」

 

 

     誰かのために怒れるそんな男さ

 

「そのお前が、そこまで怒りを露にしている。ここにいる間に、余程いい出会いがあった。そうだな、その者にもお前が知らないお前を言い当てられでもしたか?なぁとーじ。君がウダウダ悩むのは合っていないよ。理性と本能はまるで違う。人だって生き物だ、いくら理性を得た生き物でも本能に逆らう理由にはならない。時には本能のまま進むのも必要だ。だから私は言ったんだ、したいようにすればいいと。」

 

「お待たせいたしました。ブランブルでございます。」

 

「ありがとう」

 

話の区切りの段階でカクテルを出す。史文恭が、わざわざ作るのに時間のかかるカクテルを注文した理由を察し、二人から離れ奥で作り区切りの段階で品を出す。本当にできるマスターだなと感心する。そしてまた話の聞こえない場所まで下がっていった。

 

沈黙が流れる。だが先ほどまでの暗い雰囲気ではなく、どこか雨上がりの夜空のような空気だった。

 

史文恭が席を立つ。見るとグラスは空であり代金が置いてあった。史文恭はそのまま扉に向かって歩く。

 

「長々と話したが、店に入る前よりいい顔になった。悩みは晴れたか?」

 

そして扉に手をかける。

 

「先に里に戻っているぞ。・・・その顔だとーじ。飄々としていながら瞳の奥では鋭い斬撃が敵を殺すために輝いている。」

 

扉を開け外に出る。

 

「キョウ」

 

外に出た史文恭が振り返ると、何かを投げ渡される。見ると先ほど自分が置いた代金と最初の代金まで投げ渡された。

 

「・・・ありがとよ」

 

()()()()()、お前の帰りを待つとするよ。」

 

外に出て史文恭は狼牙棒を肩に担ぐ。

 

「さぁ、ごみ掃除だ。青いごみ袋にまとめて入れてやろう」

 

 

 

パタンッと扉が閉まる。同時にマスターが戻ってくる。

 

「いい顔になられましたねお客様。この短時間でここまでにさせる、お連れ様はさぞ素敵な方なのですね。」

 

グラスを洗い水気をふきながらマスターが言う。そして甚爾は...。

 

    ガッ! ゴクッゴクッゴクッ  ダンッ!

 

目の前にあったビールを一気に飲み干した。

 

「俺には勿体ないほどのいい女さ」

 

そのまま席を立ち、店を出て行った。

 

「またのご来店をお待ちしております。」

 

閉まった扉に向けマスターは静かに一礼するのだった。

 

 

 

 

 

 

ーフリードリヒ邸ー

 

 

現在、会議室となっている部屋に猟犬部隊は集まって作戦会議を行っていた。しかし、皆一同暗い面持ちだ。数々の戦場を潜り抜けてきた彼女たち、だが一人の謎の襲撃者によって全滅させられ、クリスまで攫われる。静かに涙を流す者。怒りを抑えようと拳を握りすぎ血を流す者。嗚咽を漏らす者など様々。

 

「いい加減にしなさい!お前達!」

 

マルギッテが声を張り上げて言う。

 

「今この時、泣いている暇などありません。これは私達の失態!お嬢様を救出し...その後、皆で罪を償おう。」

 

静かに涙を流しながらマルギッテは言う言葉に、部隊の皆に先程までの陰りはない。それを見て一つ頷き会議の再開を告げた。

 

 

 

 

ーブルーアジトー

 

 

「リーダー」

 

「どうした?」

 

「伏黒甚爾と史文恭を追っていた者たちから、連絡が途絶えました。恐らく...。」

 

「そうか、やはり」

 

「再度追っ手を放ちますか?」

 

「いや、いい。それよりも人質は?」

 

「今は薬で眠っています」

 

「そうか、では準備に取り掛かれ革命の時は来た!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甚爾は、以前に半日以上座っていたベンチに腰掛けていた。あの時のようにただ座ってはおらず、何かを待っている。そして瞳は標的を定めた獣のような瞳をしていた。

 

 

「挨拶もなしに人の体に糸巻き付けてんじゃねえよ、リザ」

 

「そこはリザお姉さんだろう。せめてさん付け」

 

「動くな伏黒甚爾!」

 

テルマとコジマが甚爾にメイスと拳を向ける。

 

「まさか、まだドイツにいるとは思いませんでしたよ少年」

 

マルギッテが副官のフィーネを伴い歩いてくる。

 

「よう。意外と早かったな。」

 

「その様子では、認めるということですね。」

 

「ちなみに聞いていいか?俺が襲撃者だとわかった要因は?」

 

「以前食事をした際に、貴方から一切気を感じ取ることが出来ませんでした。普段の私生活ならば気を抑え生活保護をする者もいる。ですが戦闘時においてまで抑える者はいない。」

 

「なるほどね」

 

「私達だけではなく、狙撃手や後方部隊もお前を包囲している。おとなしく観念しろ!」

 

「で?」

 

「なにっ!」

 

気が付けば糸を抜け出しマルギッテの横に並ぶ甚爾。

 

「噂通りか、フィーネ」

 

「はい。伏黒甚爾、貴方について少し調べさせてもらった。まあ正確にはリザが」

 

「イエイ!」

 

「伏黒甚爾、裏の世界では武闘家殺しの異名で知られる。戦闘方法はさまざまでまさに変幻自在。奇襲・暗殺を主としながらも戦闘能力は壁越えクラス。過去には一個師団を鏖殺。」

 

「懐かしいな。確かそれ三年前にスペインに行った時だっけか?相手の師団長が壁越えでよ、一歩手前の奴も何人かいたなぁ。」

 

「・・・」

 

「化け物」

 

「お前はこの話を聞いてどう思う?」

 

視線を向けた先にはジークがいた。甚爾はジークの前まで移動して顔をなでる。

 

「よかった。腫れちゃいないな。」

 

「うん。とーじちゃんが手加減してくれたから、私は何ともないよ。」

 

頬をなでる甚爾の手に自分の手を重ねる。決して離すまいというかのように。

 

「話は聞いただろ、それでもお前は...」

 

「私は!私は...とーじちゃんにこれ以上その力を使ってほしくない。とーじちゃんに他の人も、とーじちゃん自身にも傷ついて欲しくない!」

 

涙を流しながら言葉が続く。

 

「でも、それは無理なんだって本当は分かってるの。私達を攻撃してきた時も、とーじちゃんからは悲しい感じがした。本当ならあの時あの時、私達を皆殺しにだってできた。でもそれをしなかった。皆ケガはしたけど、私が治療して直ぐに動ける程度のけがだった。」

 

「・・・」

 

「わざと派手に動いて、私らに印象付けをしたんだろう?」

 

リザが続ける

 

「それにお前が受けた依頼、確かに殺しもあるけどそれは依頼した側の敵討ちや救出の為にだ。私が調べた限りだけど」

 

「普通に殺しの依頼も受けたことあるぞ。西洋忍者の名が泣くな」

 

ガーンという効果音が聞こえてきそうなほど、落ち込み膝をつき項垂れてしまうリザ。

 

「ジークお前は、これでもまだ俺が優しいとか言うつもりか?」

 

返答はない。しかし

 

「…んッ///」

 

「「「「「キャ~♡♡♡!!」」」」」

 

返されたのは口づけだった。

 

「ぷはぁ・・はぁはぁ・・・これが私の答え///」

 

「・・・そうかよ」

 

お返しとばかりに、今度は甚爾からジークにキスをする。先ほどのような触れるだけのキスではなく、深い深いキス。

 

「んんっ、んじゅる、ちゅくちゅくちゅく・・・んンん、とーじちゃ・・・んン、ちゅるくちゅぬちゅ、じゅる・・・ぷはっ・・まっんんっ・・じゅるるるぅ」

 

「ゴクリッ」

 

皆の生唾を飲み込み二人のキスを見守る。

 

「んちゅっ、れるれろれるれろ、・・ちゅう、ちゅっ・・・はぁはぁはぁ」

 

甚爾が唇を話すと腰が抜けたのか、ジークはぐったりと甚爾の塗値に寄り掛かる。

 

「・・・んっ」

 

ジークと自身の口周りに付いた唾液を、親指で拭う。

 

「ごちそーさん」

 

「ううッ///」

 

羞恥で顔が赤くなり見られたくないのか、甚爾の胸に顔を押し付け隠す。

 

「コ、コジマすごいものを見てしまった。」

 

「は、破廉恥な!」

 

「スッゲェェ」

 

「///」

 

「少年、時と場所を考えなさい。…その2人がそういう関係だったとしても、今は違うでしょう。」

 

「先にキスしてきたの、こいつだけど?」

 

先程までのシリアスな空気はどこへやら、二人のキスシーンを見せられて皆ゆでだこのように顔を赤くしてしまう。

 

「なぁ、マルギッテ」

 

「何でしょう。」

 

「俺はこいつに借りが出来ちまった。」

 

「そのようですね」

 

「取引しねえか?」

 

「取引ですか。」

 

「俺がお前らの姫さんを連れ戻す。そのあと俺を煮るなり焼くなり好きにしろ。その代わりジークは許してやってくれ。頼む。」

 

甚爾が頭を下げて頼み込む。

 

「なぜ取引をする必要が?今あなたを捕らえ尋問し聞き出してもいいのですよ。」

 

「俺の事、調べたんだろ?なら分かってるはずだ。」

 

「天与呪縛ですか。まさかそのようなものがあるとは、思いもしませんでした。」

 

渋るかと思われたが即座に返答が来る。

 

「分かりました。」

 

「悪いな」

 

「いいえ。私も可愛い部下を罰したくありませんから。それに、もともとあなたに協力を仰ぐために、ここに来たのですよ。」

 

 

ーリューベック邸ー  数時間前

 

 

 

「襲撃者はまず間違いなく、伏黒甚爾でしょう。」

 

 

「天与呪縛。その様なものがあるとは、異能とは違うのか?」

 

「天与呪縛は代償に、甚爾の場合は気を一切持ちえない代わりに、驚異的な身体能力を得たんだ。その点、異能は代償がない。まぁエネルギー消費が激しいとかはあるけど。」

 

「それだと異能持ちのほうが強いな」

 

「あんたバカ?代償が有ると無しとじゃ全然違うでしょうが。カードゲームにたとえてみなさい。ポーカーで例えると異能がフルハウス。天与呪縛がロイヤルストレートフラッシュ。どっちの役のほうが強い?」

 

「そりゃ、ロイヤルストレートフラッシュだろ?」

 

「ええそうよ。じゃあ揃いやすい役はどちらかしら?」

 

「フルハウス」

 

ポーカーにおいて、フルハウスが成立する組み合わせは52通り。それに72をかけると3,744。そしてそれを全ての組み合わせで割り、最後にかける100をする。

 

3,744÷2,598,960×100≒0.144%

 

対してロイヤルストレートフラッシュが成立するのは4通りしか存在しない。

 

4÷2,598,960×100≒0.00015%

 

 

「これだけ言えばわかるでしょ?」

 

「私も伏黒甚爾の実力の一端を垣間見ている。」

 

「隊長」

 

「何ですかジーク」

 

「私がとうじちゃんにお願いしてみます。お嬢様を返してもらえるよう。だから!」

 

「ジーク」

 

「だから、とうじちゃんに刑罰を与えるのはやめてください。お願いします。」

 

皆黙り込み、マルギッテのほうを見る。連れ去った相手に返してくれと頼む?そんなことはできない、とだれもが思う。

 

「正直に言いましょう。私でも彼には敵わなかった。」

 

「しかし、それは不意を食らって、それに情報もありませんでした。」

 

「黙りなさい。言い訳などしません。私は、猟犬部隊は彼に負けたそれが事実です。」

 

「それに、敵のアジトすらも掴めていない子の状況で唯一の糸口は彼です。私はお嬢様を助けたい。たとえ恥ずべきことであったとしても、お嬢様の命には代えられません。」

 

「「「「「「「「・・・」」」」」」」」

 

「そうだな、隊長」

 

「フッ、仕方あるまい」

 

「リザ。フィーネ。」

 

同期の二人が賛成の意思を見せる。

 

「隊長がそう仰せられるのならば異論ありません。」

 

「コジマもクリスたんを助けたい。それにトウジは悪い人じゃないと思う。」

 

「テルちゃん。コジちゃん。」

 

そしてほかの人達も、次々に賛成していく。

 

「ジークそういうことです。」

 

「ううっ。隊長~]

 

「では猟犬部隊の総意として依頼します。」

 

 

 

ー現在ー

 

 

「ということです」

 

甚爾は話を聞くと、いつの間にか寄りかかりから抱きつきにシフトしていたジークを、抱きしめ返す。

 

「少年、返答は」

 

「決まってる。受けるぜ、その依頼。」

 

「感謝します。報酬は...」

 

「なら・・・ことが終わった後、少しこいつと話をさせてくれ。」

 

話がまとまり、早速クリス救出が開始されることとなった。

 

 

甚爾達は車に乗り込みバルト海を目指していた。

 

「潜水艦!」

 

「ああ、あいつらのアジトは潜水艦。六艦あってそのうちのどれかにいる。」

 

「潜水艦に元ドイツ軍...そうか、ブルータイガー!」

 

「隊長それって確か。ナチス志向が強すぎて、消された部隊じゃ」

 

「ええ。かつて我々が殲滅した。違いますね、したと思っていた。」

 

「なるほどね。やっと話が読めたぜ。」

 

元々ブルーは狩猟部隊とタメを張るほどの部隊であったが、世界大戦時代のナチス志向が強く、国と軍上層部から極秘任務を受けた狩猟部隊が殲滅したのだった。

 

「海底にいる奴らをどうしろってんだ?」

 

「手はあるぜ。リザ...さん」

 

「惜しい」

 

「その作戦は?」

 

「史文教から聞いたが、奴らは週に一回海上に出て食料やらの備蓄や必要なものを補充するらしい。前に補充したのが一週間前。」

 

「つまり今日奴らは会場に上がると」

 

甚爾は頷く。

 

「それとこれ使え」

 

「これは?」

 

「あの嬢ちゃんに取り付けた発信機の端末。史文教があの嬢ちゃんに付けた」

 

「(キョウの奴、俺がこうすることを分かって...本当にいい女だ。)」

 

「よし!では作戦を伝えます。奴らの潜水艦を発見次第に潜入し、お嬢様の救出。」

 

「おう!任せときな。」

 

「他の者はバックアップ。」

 

「「「了解」」」

 

「そして少年は」

 

「奴らを潰す」

 

「頼みます」

 

「とうじちゃん」

 

ギュッ、心配なのだろう、不安の表情を浮かべるジークに対し甚爾は、肩に抱き寄せ頭をやさしくなでる。

 

「心配ねぇ」

 

「うん」

 

「ヒューヒューお熱いねぇ」

 

「リザお姉さんにもやってやろうか?うん?足腰立たなくなるまで貪ってやろうか?」

 

「ごめんごめん」

 

「各自準備を怠るな!」

 

 

 

 

 

ーバルト海ー

 

 

 

猟犬部隊と甚爾は手配した軍艦で、発信機の反応を頼りに海上からブルーの潜水艦隊を探していた。

 

「いました全六艦」

 

「よし!リザ頼みます!」

 

「了解!」

 

これより救出作戦が開始!!

 

 

 

 

ー潜水艦-

 

 

「潜入成功」

 

「反応は近いな」

 

「ああ、これなら・・・」

 

「あ?どした?」

 

リザは本来ならば、作戦上いないはずの甚爾を見て驚く。驚愕し、声を上げなかっただけ賞賛に値するだろう。流石は西洋ニンジャ。

 

「甚爾!お前何してんだ!」

 

「ちょいとブルーのリーダーさんに用があるのを思い出してな。」

 

「用ってお前」

 

「リザは作戦通り救出したら脱出しろ。騒ぎ起こして引き付ける。」

 

「死ぬなよ」

 

チュッ、甚爾の頬にキスをして救出に向かうリザ。

 

「どうせなら口にしてけよ」

 

さぁ、ちょいとお話しようぜ。テロ組織のリーダーさん。

 

 

 

「もうすぐだ。憎き狩猟部隊と我々を貶めたこの国に復讐を」

 

リーダーである。女は、もうすぐ自分達の悲願が叶うと確信し、これまでの道なりを振り返っていた。

 

コンッコンッ

 

すると扉をノックする音が聞こえる。補給に出た者たちが戻ったのだろう。そう思い入る許可を出す。

 

「入れ」

 

「よお」

 

「伏黒甚爾!」

 

ここにいるはずのない人物の登場に戸惑う。しかし、それも一瞬のことで即座に机の裏の緊急ボタンを押して、侵入者がいることを知らせる。同時に隠ししてあった拳銃も手に取る。

 

「どうしてここにいるのかな?」

 

「人質返してもらおうと思って」

 

「どういうことかな?」

 

「同族嫌悪ってやつかな。まぁこれは、あんたらには関係ねえか。」

 

「話は分からないけど、早い話が猟犬部隊に雇われて来たということでいいかしら?」

 

「後は、お前らのやり方が気に食わねぇ。」

 

「何ですって。」

 

チャキッ、拳銃を向けられようとも、甚爾の飄々とした態度は変わらない。

 

「以前に依頼で復讐を成した女がいた。そいつは誰の手をも借りず、誰を使うことなく、自分自身を人質に復讐を成した。約三十年かかった復讐だ。柄にもなくスゲーと思ったよ。だが、お前らは違う。お前らはただ、駄々をこねるガキと一緒だ。」

 

「黙れ!」

 

言葉と共に、構成員達がなだれ込んでくる。瞬く間に甚爾は包囲された。

 

「お前みたいなガキに、何がわかる!我々は忠誠を誓った国に裏切られた。今の軍は腑抜けている。我々は、正しい在り方に戻そうとしただけだ。上の者たちは恐れをなし、我々を裏切った。何もかも地に落とされた。猟犬部隊、奴らがいなければ!ここからだ!ここから我々の時代を作る。そのために、死ね。伏黒甚爾。撃てぇ。」

 

「力説どうも。けど、ちゃんと回り見てから指示だしな。一応指揮官だろ?」

 

辺りを見渡し絶句する。先程まで包囲していた構成員は皆、苦悶の表情を浮かべ死んでいた。

 

「どういうことだ!なんで!」

 

「いくら電気がついてるといっても、この部屋暗すぎ」

 

 

         ピンッ

 

甚爾が腕をひくと首が落ちた。

 

 

「糸か!一体いつ!」

 

「この部屋に入った直後」

 

そう甚爾は部屋に入るなり、糸を部屋中に張り巡らせていた。

 

 

 

 

 

    ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

 

 

 

突如警報が鳴り響く。机の裏にあった警報ボタンは、リーダーの部屋のみに危機が迫っていると、構成員を待機させている部屋に伝えるものだったが、今回のは艦全体に響いている。

 

〈全構成員に通達!侵入者アリ!人質が奪われた!繰り返す...〉

 

リザがうまくやったようだ。その考えに至り、甚爾も即座に脱出することにした。

 

「ハハッ、さて俺もおさらばするか」

 

「まて!」

 

即座に駆け出し、視界から消える。そのまま入ってきた場所を目指し走る。数秒で着き脱出。すると目の前にクリスを抱えたリザがいた。

 

「お前まだこんなとこにいたのか」

 

「甚爾!ナイスタイミング!ヘルプ!」

 

「ちっ、舌噛むなよ」

 

「へ?」

 

ガシッ、二人を抱えそのまま潜水艦から飛び降りる。

 

「ギャャャャャャャャャャャャ!」

 

「うるせえ!」

 

「とと、とお、うううう、うみ、うえ!」

 

パチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャ!

 

「ありえない」

 

リザはテンパリ、構成員たちも唖然とする。甚爾はクリスとリザの二人を抱え海面を走っていた。速度が落ちることはなく、むしろ上がり続け、あっという間に猟犬部隊の待つ軍艦にたどり着く。

 

「ホラよ」

 

「アババババババ」

 

「もう食べれない~」

 

「マジかこの女、寝てやがる」

 

リザは混乱、クリスは眠り、甚爾は呆れ顔。猟犬部隊も絶句する。

 

「本当に人間ですか?貴方は?」

 

「そんなことはいいから。さっさと海域を離脱しろ。」

 

「何を言っているのですか貴方は!」

 

「巻き込まれたいか?」

 

「必ず戻りなさい。待っている者たちもいるのです。」

 

「隊長!」

 

「ああ」

 

甚爾はまた海面をかけだし、潜水艦に戻っていく。

 

「聞こえましたね。直ちにこの海域を離脱します。」

 

マルギッテの指示に従い、軍艦は即座に離脱を図った。

 

潜水艦に戻ってきた甚爾は、甲板に上がってきていたリーダーにこれでもかと、嫌み全開の顔を向けていた。

 

「伏黒甚爾!」

 

「うるせえな聞こえてるよ」

 

「貴様はここで、絶対に殺す!」

 

「いいや、俺は死なねぇ。ちょいとお前らには付き合ってもらおうか」

 

そう言うと腹の中からクロを吐き出し、体に巻き付ける。そしてクロの口から游雲を取り出す。

 

「龍だと!」

 

「こいつの能力は格納。何でもかんでも格納できんだよ。大きさや形に制限はない。生物なんかもな。だから、こうして普段はこいつに武器を入れて、俺の腹の中に入れてんだ。でよ、こいつはあるものですら格納できる。何だかわかるか?ヒントをやろう、俺が唯一持っていないものだ。」

 

「・・・まさか!」

 

嘘だと信じたい。答えに行きついたリーダーは願う。しかし、真実は残酷だ。

 

クロの口から膨大な量の気が吐き出される。それは可視化できる程の密度。気の総量は依然増え続ける。

 

「こいつには、普段から自然に発生する気を格納させてる。戦ってる相手のを食わせたりもするけど。要は今、こいつに格納させてる分全部をこの游雲に込める。」

 

とてつもない気を全て注ぎ込まれた游雲。

 

「さて、仕上げだ。俺が天与呪縛だってことは知ってるよな。気と引き換えに人智を超えた身体能力。これも知ってるだろ?情報の開示。自分の情報を、相手に晒すという縛りが俺の身体能力を底上げする。その力で、さっきの気を取り込んだ游雲を振るえばどうなるかな。」

 

「全員!艦内へ!急いで海底に!」

 

即座に潜水を開始する。

 

潜水に合わせ甚爾は上に全力で跳ぶ。

 

「(情報の開示も済んだ。後は全力で振るう)」

 

「急げ!もっと深く!」

 

「いくぞ」

 

「海底へ!もっともっともっと深く!」

 

 

「海の藻屑となって死ね」

 

ただでさえ強力な気を宿す游雲。それを甚爾が振るえば大惨事だ。しかし、それが今は極大の気を取り込んだ游雲。そして情報の開示を済ませた、正真正銘の全力で甚爾が振るう。起こるそれはまさに...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          天変地異

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         【大黒天】




いつも読んでいただきありがとうございます!
ハリボーです。
今回オリジナルの技を入れてみました!
楽しんで頂けたらと思います。
では、また次回のお話で!

呪術廻戦二期 伏黒甚爾登場! マジで甚爾に恋しなさい!再連載始めるか?

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