「そんなに海底が好きなら、底でくたばれ!」
「大黒天」
海上に突如として黒い星が飛来する。海面に激突したそれは、直後に大きな暴発を引き起こし、海震を引き起こす。大きな揺れは、海だけに留まらず大地に、空に、世界に、黒く歪な、ヒビが入った。それを見た者たちは、誰もが思った。世界が砕ける。
ー狩猟部隊 sideー
「なんだあれは!」
「考えてる暇はない!皆何かにつかまれ!振り落とされるな!」
迫りくる大きな津波。それは軍艦であろうとも、転覆してしまう可能性があるほどだった。
「空に黒い歪み?」
「一体何なんだよあれは!」
「あれを人、一人が引起こしてるですって?ありえないでしょ!」
「化け物」
かつてない経験に猟犬部隊の精鋭たちであってもパニックに陥る。それと真逆にマルギッテは、世界に走る黒い歪みを見てあることを思い出していた。それは数か月前、突如として世界を駆け抜けた、何もかもを消し去ってしまうような、殺気と気の衝突。あの時は、世界のどこかで壁越えクラスの者同士が引き起こしたものだと思っていた。だが今、確信する。ヤツだ。甚爾だ。
「(間違いありません。これほどの、何もかもを歪ませてしまう気の衝突。貴方でしたか伏黒甚爾。いくら壁越えの者達の、最新の対戦情報を集めても分からないはずです。なにせ...気を一切持ちえない者に、こんな天変地異を引き起こせると考えますか。しかもこれは!以前感じたものよりもデカい!!・・・フフッ。この私が恐怖している。伏黒甚爾。少し惹かれてしまいますね。)」
やがて黒い歪みは消えて空が戻る。だが、大黒天がもたらした爪痕はまさに天災。
「海が蒸発した」
「底が見えてる」
「おい.ブルーの艦隊は?」
「そんなことを言っている場合ではない!急げ!この海域を離脱する!」
「副長?」
「この広大な海に大穴が一つ開いた。ならば、その穴を修正するため水はその穴に流れる。」
このままだと水流で海底に引き摺り込まれるぞ!
この直後海上が揺れ、軍艦が後方に流され始める。
「全速力で離脱しなさい!」
だが軍艦は一向に前には進まず、徐々に大穴に向かう。このままでは落ちる。
パチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャ!
「とうじちゃん!」
そこに海面を駆け甚爾が軍艦後方に回った。
「軍艦は確実に壊れるが、弁償はするつもりはないんでな。先に謝っとくぜ!」
「とうじちゃん!」
「クロ!」
カパッ、口を開け吐き出したのは金砕棒【鬼木】をつかみ軍艦を打った。
「ホームランってな」
約12万トン以上もある軍艦を、プロ野球選手顔負けのスイングで陸側に向けて打った。うなる轟音。そしてそのまま港に直撃した。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォンッ
皆とは騒然とする。突如として空に黒い歪み、それが消えたら今度は軍艦が降ってきた。神の怒りだ。世界の終わりだと騒ぎだす。だがそんなこと彼女達には関係ない。
バコンッ!軍艦の装甲を破り出てきた狩猟部隊。皆一様に、なぜ助かったのか分からないという表情だった。
「皆無事ですね?」
「はい!隊長」
「絶対に甚爾だろ!こんな馬鹿げたことが出来んの!」
「りっちゃんの言う通りだよ」
「やっぱり!」
「今のフワッてなって面白かった!コジマもう一回やりたい!」
「テル、何うずくまってんだ?」
「鎧の中で転げまわって気持ち悪い」
「ドンマイ」
ぞろぞろとマルギッテに続いて出てくる。皆ケガのほどは軽症のようで大事には至らなかった。
「隊長!とうじちゃんが私達を助けるために!」
「分かっている。すぐに別の軍艦とヘリの用意。すぐに創作隊を編成します。」
自分達を助けるために残った甚爾を捜索すべく動き出す。すぐに要請を受けた、駐屯地から軍艦とヘリが回された。
「ジーク貴方はここに残りなさい」
「そんな!私も行きます!」
「ジーク貴方にはここで近隣住民のケアと、軍艦の衝突でケガをした住民、それに漁師たちのけがの手当てをお願いします。」
「・・・」
「必ず見つけて戻ります。」
「はい!」
マルギッテも軍艦に乗り込み、再び海に出た。
「とうじちゃん、お願い。無事でいて。」
「なんだ、マルギッテ達はブルーの奴らの残骸でも探しに行ったのか?」
「ううん。皆、とうじちゃんの捜索に。私はお留守番させられちゃった。」ポロポロ
「なんで泣くんだよ。」
「もし、とうじちゃんが死んじゃったらどうしよう。嫌だ。嫌だよう、とうじちゃん。」ポロポロ
ギュッ、力ずよく後ろから抱きしめられる。
「心配するなって言わなかったか?俺は?」
「言った。言ったけど不安だったの」ポロポロ
チュッ、流した涙をこぼさぬようキスで掬い取る。少しくすぐったいのか、ジークは身動ぎをして甚爾と向かい合い、抱きしめ号泣する。
「うわーん!と~じちゃ~ん。なんでここにいるの~~~~~~~~~~~~~」
「いやな、軍艦吹っ飛ばす時に一緒についてきたんだよ」
甚爾は軍艦を打つ直前、糸を軍艦の落下防止用の柵に括り付け、一緒に飛んできたのだった。
「うう、なんですぐ出てこなかったの」
「振り子の原理と一緒だ。そのままもっと街中の方まで飛ばされたんだよ。戻ってきたのは、お前とマルギッテが話してる時だ」
「隊長と」
「どうやら、報酬の事ちゃんと覚えてたみたいだな」
「あ!」///
マルギッテは、甚爾がこの場いるのを知っていながら捜索の為に軍艦を出したのは、依頼をしたときに甚爾が、報酬はジークとの時間を要求したためだった。
「どうだ?約束通り、無事に戻ったぞ?」
「おかえり」
「おう」
2人の影だけがただ、静かに重なった。
後日、ブルーの捜索が開始されることはなかった。ブルーを攻撃し一時的に天変地異を引き起こした張本人はこう語る。
「は?生き残ってるわけねーだろ。
この証言により、一度確認のため航行して終息した。誘拐されたクリスだが、ずっと眠っていたらしく自分が誘拐されたことを知った時、なぜその状況で眠っていたのかと酷く落ち込み、復活させるまでマルギッテが頑張ったそうだ。そして現在、甚爾はまだドイツに留まっていた。
ピピピピピピピピピピピピピピピ カチッ
「うう~ん。...あれっ!」
朝、目覚ましの音と共に目を覚ますジーク。起きて早々何かを探す。昨日の夜、確かに一緒だったはずの者がいない。夢なはずがない。なぜならば絶対に忘れられない日となったから。キョロキョロと辺りを見回すがいない。ベットの下もいない。すると寝室の扉が開き、目的の人物がいた。
「起きたか」
「とうじちゃん・・・・んちゅっ」
起き抜けにキスを交わす。改めて甚爾の格好を見ると、すでに着替えておりキッチンの方からはいいにおいが漂う。朝食の準備をしてくれていたのだろう。しかし、ジークとしては一緒に起き、一緒に朝食を作りたかったため、少し不満気だ。
「むー」
「むくれてるけど、お前立つのきつくねえの?」
「うっ、チョットだけ」
「だから一緒にやるのは今度だ」
「約束!約束だからね!」
「へいへい。さっさと食うぞ。今日フランク中将から呼び出しの日なんだろ?」
「そうだった。・・・ねぇ、とうじちゃん」
「あ?」
ジークはこちらに両腕を伸ばし
「///だっこ///」
「・・・」
しばし硬直していたが、復活しジークに近づく。そしてお望みのお姫様抱っこ。腕の中のプリンセスは実にご満悦だ。そしてそのままリビングに移動。しかし通り過ぎる。ココで降ロしてもらえると思っていたため、疑問に思うジーク。甚爾は止まることなく進み止まる。そしてジークを、お湯の張ったお風呂に投げ入れた。
ドパーンッ!!
「わっぷ!」
「さっさと流して来い。他の奴に匂いとかでバレたくないだろ。」
「はーい」
足音は去っていく。自分の為にしてくれたことに、ジークは朝から幸せオーラ全開で、フリードリヒ邸に向かうのだった。
ーフリードリヒ邸ー
「みんな朝早くにすまないね」
「いえ。中将お詫びをしなくてはならないのは我々の方です。中将の留守を守れず、誘拐まで許すとは」
「マルギッテ。その話は、散々したはずだ。伏黒甚爾君を含め話はついただろう。」
「しかし」
「俺も納得がいってねぇ」
「君もか。伏黒君」
「なぜ俺を罰しない。処刑でも俺は受け入れるつもりでいるんだが」
「とうじちゃん」
「フム。確かに最初は私も君を刑にかけるつもりだった。しかし、娘に止められてね。」
皆一同疑問を浮かべる。
「『彼は依頼を受け敵側にいたに過ぎない。それに、最後は私を助けてくれた。彼を罰するのは間違っている』とね。」
「・・・」
「お嬢様、ご立派です。」
「そういうわけで、伏黒甚爾君。君の罪は水に流そう。」
「感謝する。」
「礼は娘とジーク君に言うといい」
「そうだな」
こうして本当の意味でこの事件は終わったのだった。
「それでは中将。今回の招集は」
「ああ、来年のクリスが日本の川神学園に留学することは皆が知ってるだろう。その護衛を発表する。マルギッテ、君に頼みたい。」
「はっ!了解いたしました!」
「これにより一時的にだが、隊長が不在になる。フィーネ君。その間の部隊の指揮を頼むよ。」
「はっ!」
「そしてここからが今回の本題だ。これから狩猟部隊にはイタリアのフィレンツェに向かってもらいたい。」
「イタリア…なぜ突然?」
「・・・あっ!式典!」
「その通り。この度イタリアのフィレンツェで行われる、式典に首相が参加成される。しかし、その式典を爆破すると予告が入った。」
「爆破予告が!」
「狩猟部隊には先に現地に入り、爆発物の処理と警護に当たってもらう。」
「了解しました。任務を遂行します。」
「出発は午後だ。それまでに準備しておきなさい。」
「はっ!」
そのまま解散し、各自準備に入る。準備が終われば出発時間までは自由だ。甚爾とジークは、その時間を他愛無い話で潰していた。そこにマルギッテ達がやってくる。
「あっ、隊長〜」
「今日はずっと機嫌がいいですねジーク」
「えへへ、そうかなぁ?」
「隠すなよジーク。要はアレだろ?どうだったんだよ、甚爾のアレは!」
まだ真昼間だと言うのに、下世話な話をし出すリザ。少し懲らしめてやろうと思い、ついでに疑問も解消すべく質問する。
「おい」
「んー?」
「お前、あの時、なんでキスしてきたんだ?」
「ちょっ、おま!」
ガシッ!
「ひっ!」
「リザ・・・キスってどういう事?」
突如として、リザの体に包帯が巻き付き、身動きが封じられる。
振り向くと、笑顔とは裏腹に、見たこともないオーラを発するジークがいた。
「ちょっと向こうでお話・・・しようか?」
「え、ちょっと待ってジーク。違う誤解!確かにキスしたけど誤解!」
「5回も!」
「ちがーう!」
そのまま連れていかれてしまうリザ。断末魔のような声が聞こえるが、皆気にしないことにするのだった。
「甚爾」
「何だマルギッテ」
「私達が任務に赴いた後、貴方はどうするのですか?」
「一度、戻ろうと思ってる。」
「そのことをジークは。」
「昨日言った。」
「そうですか。貴方たちの間で話が付いているのならば、何も言いません。余計なお世話でしたね。謝罪します。」
「別にいい。」
「もしまた、ドイツに来ることがあれば寄りなさい。歓迎します。」
「戻りました」
物言わぬ屍?となったリザを引きずったジーク。
「生きてんのか?これ?」
「ちょっと眠くなっちゃったみたいなの。」
嘘つけ
誰もが心の中で叫ぶ。
「でもジーク。本当にあなたはいいの?」
「テルちゃん。本当は嫌だけど、とうじちゃんを縛る権利は私にはない。でもいつか絶対にとうじちゃんの隣にいる!」
「コジマも応援する!」
「ありがとう。コジちゃん。そうだ!クーちゃん。」
クーちゃん?それは誰だと思っていると、反応を示したのは甚爾に巻き付いていたクロだった。ジークは初めてクロを見た時、怖がりもせず寧ろ、可愛がり、撫でまわしていた。クロも嫌ではないようで、ジークのされるがままだった。
「クーちゃん。私がそばにいられない間、とうじちゃんをよろしくね。」
「♪」
撫でられて機嫌よくジークの周りを飛ぶクロを見て、主の自分より懐いてないかと思ってしまう甚爾。
「
「?」
言葉の意味が分からないのだろう。小首をかしげる姿も愛らしいクロ。和気あいあいとした、この時間も終わりが迫る。
「さあ、名残惜しいですがそろそろ時間です。どうしますか?空港まで送りますよ。」
「いい。迎えが来る。」
「そうですか。では、また会いましょう。」
互いに思うところはあれど、一時の別れにすぎない。それがわかっているから、これ以上の言葉は必要ない。
互いに背を向け、それぞれの方向へ歩き出す。
「待たせたな。」
「師父、お待ちしておりました。準備は整っております。」
「キョウは?」
「里にてお待ちです。
「何だ来てねえのかよ。…帰るぞ。」
陰に潜んでいた、曹一族の迎えと共に甚爾はドイツを後にした。
「♪~」
「鼻歌なんてご機嫌だな。」
「リザ」
「それなんだ?」
「私ととうじちゃんを引き合わせてくれる架け橋」
「?…ッ!」
ジークが持っていたのは、史文教がクリスに仕掛けた発信機の端末だった。
「
「とうじちゃん。傍にはいられないけど...」
ずっと見守っててあげるからね///
ーとある屋敷ー
「若様に手紙を送り、すぐにお知らせするのだ。このままでは、禪院家は終わる。」
「はっ!直ちに!」
「それと一応、九鬼にもだ。」
「かしこまりました。」
事はすぐそこまで迫っていた。
ー曹一族の隠れ里ー
「師父、長期の任務。お疲れ様でございました。師匠と当主がお待ちです。」
「ああ、凛か」
里に戻って早々、当主の家に向かう。
「遅かったな。」
「悪かったな。だが、蹴りはついた。」
「ならばよい。で?いつ里を発つつもりだ?」
「明日」
これはもともと、今回の依頼を受ける前に言っている。その時は何も言わなかったが、なぜか今回は違った。
「甚爾、史文恭を娶る気はないか?」
甚爾は真顔のまま硬直する。ついてきていた凛は顔を真っ赤にし、手で口を覆う。
「お前たちが一緒になってくれれば、曹一族もさらに強固になる。」
「最初に言った通り、俺は今回の任務が終わったら里を出る。その考えは変わらねえ。」
初めから答えは決まっていた。その提案がたとえ、魅力的であろうとも。
「そうか。無理強いはしない。戻って早々悪かったな。今日はゆっくり休め。明日の船は手配しておこう。」
踵を返し外に向かう、途中で片手を振り挨拶をしてから外に出た。
甚爾はそのまま史文恭の家へと向かう。久しぶりの再会に、自分らしくないと思いながらも、気分が浮足立つ。
「ッ!」
突如として背後からの一撃を、振り返らずに受け止める。そのまま武器をつかみ取りお返しとばかりに背負い投げる。相手も動きを読んで受け身をとり、再度仕掛ける。今度は正面。地面をえぐりながら下からの攻撃。
「狼突」
舞った地面を目隠しに使い無数の突き。それら全て紙一重でかわす。このとき相手は一つミスを犯した。甚爾相手に視界を塞ぐのは、同時に自分の視界から甚爾を隠すということ。
「ホラよ」
「!」
気が付けば背後をとられ、腕をひねり上げられる。武器を落とし、そのまま押し倒され。
「んっ」
「んんっ!ちゅぅ」
押し倒され唇を奪われる。徐々に力が抜け、抵抗する気もなくなったのか、そのまま受け入れる。
「んちゅっ、ピチャ、チュッパ・・・んっ」」
「んっ・・・・はぁ。久しぶりだな、キョウ。
「ああ。久しぶりとーじ。まさかキスをされるとは思はなかったぞ。」
相手は史文恭。最初から気配で分かっていたとはいえ、久々の再会がどちらも、別々の意味で過激であった。
「腹減った。飯は?」
「準備してある。だが、もう少し余韻に浸らせろ。」
「浸るなら一人でどうぞ。俺は飯を食う。」
「つれない奴だ。」
互いに言い合いながらも、腕を組み家の中に入るのだった。
夜。ベットの上には、二人が一糸纏わぬ状態で寝ていた。心地よい疲れに身を任せ互いに身を寄せ合う。
「またしばらく、お前とは会えなくなるな。」
「そのうち会いに来るさ。」
「そうか。ではこちらからも時間が出来れば会いに行くとしよう。」
「「んっ」」
再会の約束。静かにキスをして二人は眠りについた。
準備を済ませ船に乗り込む。最後に忘れ物はないかと確認していると、当主がやってきた
「甚爾これを持っていけ。」
そう言って渡されたのは、片方はこ黒く、もう片方は白い、双剣だった。
「【干将・莫耶】わしがまだ現役の頃使っていたものだ。お前にやろう。」
甚爾は持った瞬間に理解する。これは游雲と同じ気を宿す武器。だがそれだけではない。
「多少癖はあるだろうが、お前ならばすぐに使いこなせる。」
「ならありがたく貰うわ」
「では後は若い二人に任せる。」
「とーじ」
「じゃあな、キョウ。また来るぜ」
「ああ、その時はまた可愛がってやろう。」
「ハッ、そりゃ逆だろ。」
船はゆっくりと動き出す。甚爾と史文恭は、互いの姿が見えなくなるまで、目を離すことはなかった。
そして甚爾は、半年後の依頼までにどう過ごそうか。中国から日本行きの飛行機の中で考えながら眠りにつく。
干将・莫耶出してみました。
ヒロイン本気でどうしよう。最終的に原作じゃ結婚してるから、一人にしようとか考えてたけど、迷うな。
今回、短くなってしまったことは申し訳ありません。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
感想お待ちしてます。
呪術廻戦二期 伏黒甚爾登場! マジで甚爾に恋しなさい!再連載始めるか?
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再連載!
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