ー九鬼本部ビルー
世界の九鬼と称されるほどの財閥。九鬼財閥。わずか一代で築き上げられ、世界に瞬く間に広まった。
九鬼 帝
九鬼家当主であり、世界に九鬼を知らしめた男。ここは日本にある九鬼の本部。そして九鬼一族が住む場所でもあった。
九鬼 局
帝の妻。多忙な夫を支え、帝が日本を留守の時、九鬼を仕切る女王。しかしそれは、火急的速やかに、事態の解決が望まれる場合の話であり、普段の些細な事態は九鬼家従者部隊がことに当たる。
現在の日本時刻の午後3時。局は1人、ティータイムを楽しんでいた。
そこに九鬼家従者部隊序列3位クラウディオ・ネエロが現れる。
「失礼致します。局様。お楽しみ中に申し訳ありません。」
「よい。要件はなんだ?クラウディオ。」
「はい。禪院家の八咫様より火急の文が届きました。」
そう言われて手紙を受け取る局。丁寧に開き内容を熟読。2分程度で読み終え、手紙を再び丁寧に閉じる。
「八咫様からは何と?」
「お爺さまが、禪院家当主が亡くなった。」
「!」
九鬼 局。 旧姓 禪院 局。
禪院家当主 禪院 重国の孫娘であり、伏黒甚爾の、年の離れた実の姉である。
「一昨日の夜、天寿を全うされたそうだ。」
そう言って静かに涙を流す局。クラウディオは何も言わずにハンカチを差し出す。
「すまんな。」
「いいえ。お気持ちお察しいたします。」
「クラウディオ、あの子の居場所はわかるか?」
「はい。一時期ドイツに居られたようですが、今は日本に戻ってきているようです。」
「そうか。ん?なんだ、まだ何か言いたそうな顔をしているな?」
「・・・日本に入った直後に、監視にあたった19位と28位が殺されました。監視に入った数十分後に。」
「・・・」
九鬼は、甚爾が日本に戻ってきた直後に監視を放ったが、放ってすぐに瞬殺され、甚爾が日本にいることは分かっているが、所在までは掴めていなかった。
「あの子の事だ、監視も不快だったから殺したのだろう。我の事もさぞ憎んでいるだろうな。あの子が辛い時にそばに居てやれなかった。愚かな姉の事を。」
「それは仕方のない事でございます。あの時は、九鬼も今ほど万全ではございませんでした。局様が気にやむ必要は...」
「それでも我は!あの子の姉なのだ!」
「主人に対し、差し出がましい口を失礼致しました。何なりと、罰をお与え下さい。」
局をフォローしたつもりが、彼女の感情に触れてしまった。従者としてあるまじき行為。クラウディオは自分を叱咤する。
「良いクラウディオ。・・・あの子を探せ。大至急だ。八咫の手紙ではあの子はこの事を知らないらしい。向こうも所在を掴めていない。よいな。」
「かしこまりました。」
そう言って静かに退室する。局は息を一つ吐き、すっかり冷めてしまった紅茶を飲み干す。
「甚爾」
曇天の空を見上げて、愛する弟のことを思うのだった。
曇天の空の中、雨が降り注ぐ。
ここは北海道の札幌市。秋口とは言えかなりの寒さ。加えて雨に濡れれば、体は冷えて動きは鈍る。しかし、そんな事は関係ないとばかりに、甚爾は向かって来る敵を殺す。今回の甚爾が受けた依頼は、とある商業企業の社長家族の抹殺。依頼主はこの会社のライバル会社。たかだか一般人の抹殺。つまらない仕事だと思っていたが、思わぬ敵がいた。
どうやら裏の世界と伝手があったようでヤクザが家族の護衛についていた。
「君すごいね。その若さで、だいぶイカれてるよ。」
この女。ヤクザ者はどうでもいい。この女はいい。壁越えに近い実力者。安い依頼料でつまらない依頼だと思っていたがまさに棚からぼた餅。
「いいな。楽しくなってきた。」
「こっちは楽しくないけどねっ!」
女が一気に距離を詰める。真正面からの正拳。
「(馬鹿が。俺の間合いに入るとか、張り合いがなさすぎる。)終わりだな。」
「君がね」
女は甚爾の懐にまでは入らず、数歩手前で急停止。そこから己が鍛え上げた、必殺技を放つ!
「遠当て!」
「!!」
拳を素早く突き出し衝撃波を生み出す。しかし、それだけでは終わらなかった。
「一発だけじゃないよ。ハァァァァァッ!」
なんと女は連発で放って来た。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドォンッ!
衝撃波は、周りの建物も巻き込む。土埃が舞うがこの雨ならすぐに晴れるだろう。この技で倒せなかった敵はいない。油断はしないがこれで終わり。
そう思っていた...。
「終わりか?」
「え!?」
そこには無傷の甚爾が立っていた。
即座に構え直し、もう一度技を放つ。
「「遠当て!」」
女が放った技を全く同じ技で相殺する甚爾。その事実に驚愕を隠せない。
「嘘でしょ。私の遠当てを見ただけで真似たっていうの?」
「要は、ただ早く拳を突き出して衝撃波を相手に飛ばす技。連発はできるが、その分の攻撃力は落ちる。ブラフを貼るには、ちょうど良いだろうが、あんま俺には必要ねえな。」
己が25年かけて磨いた技は、自分の娘と同年代、ひょっとしたら下かもしれない少年に、アッサリと真似をされ相殺される。その事実に分かってはいたが、自身と甚爾の彼我の差を思い知らされた。
「はぁ。ここまでか。良いよ、一思いにお願いね?苦しむの嫌だし。」
「注文が多いお姉さんだな」
「あら嬉しい。これでも貴方のお母さん世代よ私。娘いるし。多分あなたと同年代。君はいくつ?」
「15。今年16になる。」
「あら。じゃあ娘の一個下ね。そっか世界は広いね。」
「もういいか?」
「うん」
こうして女の意識は闇へと沈んで行く。
眩い光に目が覚める。意識がボゥっとする。私は何をしていたんだっけ?そうだ。護衛の依頼を受けて、娘の一個下の歳の子と勝負して負けて殺...?
「殺されてない!?」
「朝っぱらからウルセェな。」
「あっごめん」
隣で眠る甚爾からのクレームに少し冷静になる。部屋を見渡すと、何とも豪華な内装をしている。恐らくとてもグレードの高い部屋なのだろう。しかもこのベッド。とんでもなくフカフカで、自分と甚爾の二人で寝ても、まだスペースがある。
「…ん?二人?」
もう一度横を見る。そこにはふかふかのベッドに身を沈め、未だまどろみの中をさまよう甚爾がいた。
「なんで一緒のベッドで寝てるのぉぉぉぉぉぉぉ!」
「だから!朝からうるせえ!」
ーホテル内 レストランー
「…」
もぐもぐもぐ
「…」
「なぁ。」
「…何かしら?」
「いつまでその鬱陶しい雰囲気でいるつもりだ?」
「だって!」
バンッ!テーブルに手をつき立ち上がる。しかし、あまりの大きな音で回りの視線が集中してしまう。それに気が付き、再び座り直し、今度は甚爾に顔を近づけ小声で話す。
「だって…2回りも下の子と一緒に寝たなんて、しかも裸見られるとか。」
「じゃあ手当てしない方がよかったか」
「それは…ありがとう。でも〜」
そう甚爾は目の前の女を治療する為、衣服を全て脱がし手当てしたのだ。
「チッ。別に変なことなんざ、何一つしてねぇよ。それで納得しとけ。てめぇも女なら傷痕、残したくはねぇだろ。」
ぶっきらぼうな発言だが、その中に含まれる甚爾の優しさが垣間見えた。思わず年甲斐もなく心が揺れる。
「…本当に何もしてない?」
「よし、殺す」
そんな殺伐?とした話をしながらホテルの朝食を食べ進める。女の方はバランスを意識したもの。対して甚爾は肉・肉・肉となぜかモツ鍋。
「待って」
「あ?今度は何だ?」
「うん。百歩譲ってお肉オンリーなのは分かるわ。うん。男の子だもの、朝からそれくらい食べないと力付かないものね。けどね。お姉さんそれはどうみても違うって分かるわ。…なんでモツ鍋ッ!てかどこにあったの!」
「リクエストがあったらなんでも言えって、あそこのシェフが言ってたぜ。だから試しに言ったら出てきた。」
「ありえへんやろ」
どこまで、お客のリクエストに答えるプロ根性を発揮しているんだあのシェフ。そう思ってしまうのは仕方がないだろう。
「そう言えば、君の名前まだ聞いてなかったわね。ね、ぼーやお姉さんに教えて。」
「年考えて言葉選べ」
「殺されはりたいんどすな?小僧」
「(京都弁。この女、西の出か)」
「まぁ、君みたいなお子様に?大人の魅力を、理解しなさいって方が無理な話かな?」
「アンタなら、二十代でも通るだろう。肌もそんだけ白いんだ。色と形、張も悪くなかったぜ。」
「なーに?煽てて何考えてんのかな?…まって、悪くなかったってどこの話よ!」
「伏黒甚爾」
「この流れで言う?というか、君があの武闘家殺しとはね。」
「あんたは?」
「おっと、そうね。私の名前は松永 ミサゴ。よろしくね。」
そう言って、妖艶な笑みを浮かべるミサゴ。まためんどくさそうな女と、知り合いになってしまった。内心ため息をつく甚爾だった。
自己紹介を済ませ、朝食を食べ終えた二人は食後の珈琲を堪能していた。
「そういえば、とう君。」
「おい」
「私が護衛してた家族はどうなったの?」
「その前に、とう君ってなんだ!」
「やっぱ、とう君が殺しちゃったの?」
「…ああ。あんたを気絶させてから、あいつらが逃走用に使ってた車ごと潰した。」
「そっか…」
「あと、とう君止めろ。」
「えー、なんで?いいじゃない別に!」
周りに人は、あまりいなくなっていたので、構わず普通の声量で言い合いをする二人。その2人に近づいてくる気配がある。2人は言い合いを止めて、一人は警戒を、もう一人は殺意をもって気配のほうを見る。
「そう警戒をなさらずとも結構ですよ。初めまして松永ミサゴ殿。我は九鬼局と申します。」
「私の事をご存じで?」
「ええ」
「それは光栄ですね。では改めて松永ミサゴです。初めまして。局さん。」
互いに余裕のある挨拶を交わす。次に局は甚爾の方を振り向き、少し悲しげな表情で話しかける。
「久しぶりね甚爾。大きくなったわね。息災だったかしら?」
声をかけても返答はない。
「実はね、今日はあなたに用事があってきたの。日本に帰ってきているのは知っていたんだけど、貴方の所在がつかめなくて、いろんなところを探したのよ?」
ただ、黙ったまま局を見る。
「立ち話もあれだから、何か頼んでから話しましょうか。ミサゴさん。貴方もよかっ「何しにきやがった。」たら...」
ここでようやく、甚爾が口を開く。
「ここに何をしに来やがったんだテメェ。俺に殺されにでも来たか?そうじゃねえなら消えろ。」
その目を見た二人は確信する。本気だと。甚爾は本気で局を殺す気だ。
「ちょっと、とう君!一回落ち着こう、ね?いい子だからさ!?」
聞こえていないのか、反応するそぶりも見せない。そして局に近づき片手で首を締め上げる。
「・・・ッ!」
「とう君!」
カゴメがやめさせようと近づく。しかし、近づいてきたカゴメをも締め上げる。
「ガッ・・・!」
力は徐々にゆっくりと強くなる。意識が朦朧とする。息が出来ず力が入らない。死ぬ!
「とう・・じ。・おじ・・・さまが・・な・・くな・た」
「…あ?」
ドサッ!いきなり甚爾の力が抜け、二人は解放される。しかし、うまく呼吸が出来ず息が整うまで時間を要した。
「はぁはぁはぁ」
「ゲホッゴホッ」
そんなことは知らないとばかりに、局に再度聞く。
「おい。今なんて言った。」
「お爺様が、先代禪院家当主がなくなった。」
「じじいが…死んだ?おい、新手のジョークか?あのジジイが、そう簡単にくたばるわけねぇだろ。」
「コレを」
局が渡して来たのは、局に届いた手紙。甚爾は手紙を開き読み始める。
「これで分かったであろう。お爺様が亡くなったのは紛れも無い事実。」
「で?俺にどうしろって?」
「我と共に葬儀に出よ。お前が、あの家のことをよく思っていないことは、重々承知している。しかし、お爺様はお前を常に気に掛けておられた。お前とて分かっているはずだ。」
「だがあの家には」
「奴等がいる事は分かっている。」
「とう君」
ここで今まで口を挟まなかったミサゴが甚爾に声をかける。
「部外者の私が、口を挟むべきではないことは分かってる。でもね、貴方の顔。今とても寂しそうよ。最後に会っておくべきだわ。後悔しないようにね。」
言われて初めて気がつく。自分が泣きそうな顔になっていることに。
「甚爾。」
「分かった。」
「すまぬな。」
こうして甚爾は、一度自分の生家に戻る事に決めた。
次の日、車に揺られながら窓の外を眺める。隣には局。そしてこの車を運転しているのは。
「東京も郊外に来ると意外とフツーね。」
「なんでテメェが運転してんだよ。」
そう松永ミサゴが運転していた。
「それは我が依頼したからだ。」
局が詳細を話す。
「我がミサゴに依頼したのだ。帰省の間の護衛役をな。」
「あの従者どもは。」
「いくら実家に戻るとは言え、九鬼より歴史は遥かに長く、暗い話も多い。故に連れてくる事は、最初から選択肢にはない。ミサゴならばその点で言えば、ボディーガードとして守秘義務等の事はきっちりこなすと判断した。」
名家ならではの理由だった。確かに他家の従者を連れて来たら、何かを探ろうとしている、と勘違いされてもおかしくはない。九鬼は、九鬼帝が一代で築き上げた。故に歴史で言えば浅すぎる。比べて禪院家は約1000年以上続く。
ー3時間後ー
「うわ〜立派な御屋敷。」
着いたのは純日本家屋のお屋敷であった。規模にして東京ドーム2つ分と言えば分かりやすいだろう。すると、門の前にズラッと人が並び出す。
「なになに!」
「お帰りなさいませ、局様、若様。」
黒く艶やかな黒髪。喪中の為、黒い着物を着ている。後ろに並んでいるのはこの家に使える者達だろう。ではこの女は?
「久しいな八咫。出迎えご苦労。」
「勿体なきお言葉」
局に頭を下げて言葉を紡ぐ。そして甚爾に向き直る。
「お帰りをお待ちしておりました、若様。」
「チッ」
「…」
「えっと〜」
「松永ミサゴ様ですね。ようこそ当家へ。局様より当家にいる間の護衛をなさると伺っております。」
事前に局が連絡を取っていたらしく、どうやらミサゴもそこまで警戒はされていないらしい。
「こちらへ、重国様がお待ちです。」
「うむ」
八咫に案内され着いた部屋に入る。
そこには八咫以外の禪院家に使えるものたちがいた。
誰もが甚爾を見て目を見開く。
「若!」
「若様!」
「おお!若様がお帰りになられた」
誰もが甚爾が戻って来たことに驚愕している。するとこちらに近づく者がいた。
「若様、お久しぶりでございます。」
「夜蛾か」
「奥へ。護衛の方には申し訳ないが、ここで待ってもらおう。」
「初めからそのつもり。」
ミサゴはこの場に留まり、局と甚爾の2人で奥に進む。
襖を開け中に入るとそこには重国が眠るように横たわる。
「お爺様、お久しぶりでございます。局と甚爾が今帰りました。」
「じじい。」
「若様、実は「ええい!退かんか!」あの女!」
突然、外から喚き散らす声が聞こえてきた。すると襖が開き一人の女が入ってくる。その女は喪中だというのに、煌びやかな着物を身にまとい、おまけに化粧までしている。
「お待ちください、要様」
「黙れ八咫。私を誰と心得る。禪院家の時期当主の母であるぞ。」
「要様。ここは重国様が眠っておられるお部屋です。今は若様と局様が面会をなさっておいでです。しばらく待っていただきたい。」
「夜蛾。主もいつからこの私にそのような口を利けるほど偉くなったつもりだ?」
「夜蛾。よい下がれ。」
「局様。…はい。」
局に下がるように言われ、夜蛾は大人しく下がり甚爾の横に待機する。
それを見届け、局は入ってきた女に向き直る。
「お久しぶりでございます。継母上《ははうえ》。」
「ふん。あのわけも分からぬ男に惚れ、家を出た売女がよう帰ってこれたのう。」
「…継母上も、お変わりないようで何よりでございます。」
「白々しい。この家の金でも目当てで帰ってきたか?それとも地下蔵に眠る、気を宿した武具を取りにでも?噂には聞いておるぞ?九鬼は、クローンの実験に手を出しておると。ならば、あのような武器も研究したかろうて。どうだ?当たってあるだろう。」
ニヤニヤと、下劣な笑みを浮かべ喋る女。八咫も夜蛾も怒りを必死に抑える。局と甚爾が、怒りを露わにしていないのに、自分達がことを起こすわけには行かない。
「いいえ。今回は、お爺様を最後まで見届ける為に、弟と共に帰ってきた次第でございます。」
その言葉を聞き、女は甚爾の方を向くと鼻を摘む。
「おお。通りで獣臭がすると思ったら、ここに猿があるではないか。これはお前のペットか?」
「「「!!」」」
その言葉に皆が驚愕し、我慢して顔色も変えず耐えていた八咫が声を上げる。
「要様!その御言葉は無礼に当たります。そしてこの場は、重国様がお休みになっておられるのです。そのような格好で、本来ならば立ち入ることなど許されません。即刻が退室を!」
「貴様!よくも私にそのような口を聞いたな。許さぬ!」
その時
「どうしたの?ママ」
突如として甚時より3〜4歳程年上であろう男が入って来た。この男も要と同様に、煌びやかな格好をしてピアスまで付けている。
「綺羅か。どうかしたかえ?」
「部屋の前を通りかかったら、ママの怒鳴り声がしたからさ、何事かと思ってね。なるほどその猿のせいだね。よくも人様の家に入ってこれたな。猿が!」
バファ
そう言って男は、甚爾にその場にあった、線香の灰をぶちまけた!
「これで多少はマシ…にはなんないねぇ。クサッ。さぁママ。こんな部屋さっさと出て、僕の当主の継承の準備をしなくちゃ!」
「そうね!さぁ行きましょう!」
そう言って親子は去っていく。去った後にすぐさま皆が甚爾に駆け寄る。
「「若様!!」」
「甚爾!」
「とう君」
局が甚爾についた灰を払い落とす。
「ミサゴ。アンタいつからいたんだ?」
「あの女が入ってきた時からよ。文句言ってやりたかったけど我慢してたの!」
どうやら要が来た時かららしく、誰もが我慢しているのと部外者の自分が、言葉を挟むのは筋違いだと思い、必死に我慢していたのだった。
「なんなのアイツらは?親子だってのはわかったけど。」
「禪院要とその実の息子、禪院綺羅。私達の継母であり、義兄弟です。」
禪院要。2人の父、先代当主の禪院重国の息子である、禪院健の再婚相手である。元々は分家に嫁いで来た身であったが、突如その夫が死亡。実家は、禪院家に貸しを作りたいがため、他の分家と結託し、当主の直系の健と再婚することになる。その時に、分家に来た時より連れていた、綺羅も家に入る事となる。だがその年、甚爾の母と健は甚爾を産んで、すぐに流行り病でなくなった。このことで問題になったのが、次期当主問題。この時にはすでに、揚羽を生み、家を出て英雄を身ごもっていた局はおらず、甚爾はまだ赤子。加えての天与呪縛により今日が一切ない。要はそれらを理由に、万が一にも甚爾に当主の座が渡らぬよう、裏工作に動き出す。分家の当主たちに、綺羅を当主に押すよう根回し。使用人には甚爾を徹底的に虐める様、脅した。そんなことを知らない甚爾は、いつも殴る蹴るの暴行。さらに、食事に毒を混ぜられるなど、日常茶飯事であった。
「しかし、使用人達とて本心ではそんなことはしたくなかった。そこで、既に引退し外で暮らしていた夫婦に甚爾を託したのです。」
「それが、今のとう君の苗字である、伏黒家。というわけですね。」
局も八咫に夜蛾、その場にいた使用人たちも顔を俯かせる。ミサゴは立ち上がり甚爾に近づくと、甚爾の頭を勢いよく自分の胸に抱え込み抱きしめた。
「「「「「「「「「!」」」」」」」」」
「もうっ!なんでそういう大事な事お姉さんに言わないの!さあ行くわよ、とう君。お姉さんがその灰まみれを、綺麗に洗ってあげるわ!そしてそのまま、100数えるまで一緒にちゃ~んとお風呂に浸かりましょうね~。」
「「ちょっと待てゴラッ」」
ガシッとミサゴの両肩をつかみ止める。
「ミサゴ殿は我の護衛であるはず。そのような事をする必要はありません。ここは、実の姉である我がするので見張りをお願いするとしましょう。」
「局様もミサゴ様もどうぞここは、家臣である私が主である若様を隅々まで綺麗にいたしますゆえ、ごゆるりとおくつろぎください。」
「夜蛾。風呂の場所はかわってねえか?」
「はい。替えの着物とタオルです。どうぞごゆっくり。若様。」
未だに後ろで誰が甚爾と風呂に入るか、笑顔を浮かべながら互いを威嚇しあっている三人を放って風呂に向かった。
長い廊下を歩き、禪院家の者にしか入れない風呂場に着く。昔のように八咫や銀とあの場にいた家臣たちを除く、使用人には未だ要の脅しがあるのだろう。まるでなぜ戻ってきてしまったのか。といった表情だった。
考えに浸ってもしょうがない。そう思い風呂に入ろうとすると声をかけられた。
「もしや、禪院甚爾様ですか!」
「今は伏黒だ。誰だおまえ?」
「覚えておられませんか。うちの事。」
女は喪服であるにも関わらず着こなし、それに加え、艶やかで長い髪。そしてデカイ。推定Gカップはありそうな胸。腰はくびれており、尻もいい。まさにボンキュッボン。といったスタイル。こんな女に出会っていたのなら、忘れるはずもないのだが、と思っていると突然、女が笑い出す。
「アッハハハ」
「あ?」
「申し訳ありません。他の方々はうちの体をチラ見するか、舐め回すように見るので。正直、真正面からジーっとガン見されるとは思いませんでした。笑ってしまった無礼をお許しください。」
「???」
本当に何だこの女は?会った記憶もない。要からの刺客かと思い少し警戒すると、それを察したのか自身の正体をさらした。
「どうやら。本当にうちの事は覚えておられないご様子。では改めて自己紹介をさせてもらいます。今度はちゃんと覚えてくださいね。
禪院家 二十八家が一つ 香本家が長女
香本 涼音《こうもとすずね》
これからよろしくお願いしますね。旦那様♡
しばらく体調を崩しダウンしてました。
申し訳ありません。まだ万全ではないのできおつけていきたいと思います。
呪術廻戦二期 伏黒甚爾登場! マジで甚爾に恋しなさい!再連載始めるか?
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