隕石降ったら大混乱、SF混ざってさあ大変 ~HSD×D異聞~   作:ファンリビおもろ~

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さて、本格的な話の始まりとなる、序章の第一話です。


序章 蒼紅邂逅編
第一話 青となる少年と、赤を宿す少年


 

 オッス! 俺イッセー!

 

 スケベと根性だけが取り柄な高校生から一変、堕天使に殺されたと思ったら悪魔に生まれ変わって、しかも伝説のドラゴンを宿しているとかいう、なんかすごいことになってる高校二年生!

 

 悪魔になってから人間の俺を殺した堕天使から、友達になったシスターのアーシアを助けるためにカチコミしたり、主であるリアス部長の望まぬ結婚を止めるためにいけ好かないライザーって奴をぶちのめしたり、結構色々頑張ってます!

 

 ……ちなみに。アーシアちゃんは俺ん家にホームステイを希望してくれたし、更にリアス部長も俺ん家にホームステイしてくれました!

 

 父さんも母さんも「俺が変態だから」と最初は反対したけど、なぜか「花嫁修業と思ったらどうか」っていわれたとたんに大喜び。今では家族同様に仲良く暮らせています! でも花嫁に行ったりしたらマジで泣きそうで、今から想像しただけでも悲しいです……。

 

 どうもお気に入りの弟分やお兄さんのように思われてるらしく、三人で一緒のベッドに寝たり、時々一緒にお風呂入ってるぜ。……ぐふふ、思い出しただけで鼻血が出そう。

 

 だけど、いろいろと大変なことも多い。

 

 俺に宿っている赤い龍ってのは、聖書の神様が作った神器(セイクリッド・ギア)ってのになってるからなんだけどさ? アーシアも神器を持ってるんだけど、それで悪魔を治しちゃった製で、聖女として扱われてたのに魔女扱いされて追放されたんだよ。しかも神器に目を付けた俺を殺した堕天使のせいで、一度死んでリアス部長に俺と同じように組成してもらった。

 

 同じ眷属のイケメン野郎に木場祐斗って奴もいるんだけど、教会で行われてた「人工的に聖剣を使える奴を創る」って計画の被検体で、しかも失敗作ってことで毒ガスで死にかけたところを、これまたリアス部長が悪魔として蘇生したらしい。

 

 ……悪魔は堕天使達の組織「神の子を見張る者(グリゴリ)」や、聖書の神や天使たちと仕えている教会と三つ巴で小競り合いとかしてるそうだけど、ぶっちゃけ堕天使にも教会にもいい印象が全くないんだけど。

 

 悪魔は悪魔でライザーとかイラってきたけど、リアス部長やお兄さんで魔王やってるサーゼクス様とか、いい人に出会ってるから悪い印象はあまりないんだよなぁ。

 

 で、そんなことが起きてたら、今とんでもないことになっちゃってるんだよ駒王町(ここ)が。

 

 聖書にしるされている超すごい堕天使で、さっき言った神の子を見張る者の幹部やってるコカビエルが、木場が使い手になるための人体実験受けてたエクスカリバーを奪って、この駒王町にやってきたっていうんだ。

 

 なんでもエクスカリバーは七本に割れて、教会は六本を確保してたんだってさ。で、カトリック・プロテスタント・正教会が二本ずつ持っていた内、一本ずつを奪ってこっちに入ってきたとか。

 

 なんで悪魔の縄張りに入るんだよ。自分のところにいとけよな!

 

 で、そのことを伝えに来た上「手出しすんな」とか言ってきたのが、そのエクスカリバーの使い手二人。

 

 しかも一人は俺が小さいときに近くに住んでた幼馴染。それも男だとばかり思ってたら、紫藤イリナってかわいい女の子になってたからもうびっくり。

 

 ……ただ、イリナはアーシアのことを魔女って言いやがるし、一緒にいたゼノヴィアって奴に至っちゃアーシアを殺そうとしてきやがった。

 

 前からその辺むかついてたから、俺もいろいろ言ってやったんだよ。「アーシアを傷つけるなら神様だってぶん殴る」って。

 

 まあ、ほんとに殴るかどうかは別だよ? それにたまってたことを言いたかっただけで、リアス部長が止めたらすぐにそれでやめるつもりだったし。

 

 ……ただ、そこで木場が乗り気になってさあ大変。結局模擬戦闘をするってことになったんだけど――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くそぉ。イリナの裸……見たかった……ごっふぅ!?」

 

「……そちらも一発ぐらいなら、踏んづけてもいいですよ?」

 

「え、あ、いいの? うん、イッセー君はいやらしさを捨てて悔い改めたらいいと思うの」

 

 俺が悔し涙を流していると、同じ眷属仲間で一年生のかわいいロリっ娘、塔城小猫ちゃんが盛大に踏んづけてきました。イリナにまで踏むこと勧めてくるよ。

 

 小猫ちゃんは、俺が悪魔になってから俺のツッコミ担当になってる気がする。いや、さっき事故で裸にしちゃったから小猫さまのお怒りもごもっともなんですけどね?

 

 転生悪魔はチェスの駒を模した悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を使って転生します。素質によっては駒をいくつも使う時があるとか。

 

 で、小猫ちゃんはパワーとディフェンスが高くなる戦車(ルーク)の駒を使ってるから、打撃がすっごく痛いです。

 

 くっそぉ。俺が一生懸命頑張って、子供未満とかいう低すぎる魔力を凝縮した必殺技、女の衣服を粉々にして裸にする洋服崩壊(ドレス・ブレイク)が火を噴くかと思ったのに。

 

 聖剣は悪魔にとって毒だけど、俺はライザーをぶちのめすために左腕をドラゴンにしたから、行けるかと思ったんだけどなぁ。

 

「くっそぉ……。あっちはどうなんだ?」

 

 俺はあきらめて、木場とゼノヴィアの闘いを見ることにする。

 

 木場は足がめっちゃ速くなる騎士(ナイト)の駒を使っている。そして思い描いた魔剣を創る魔剣創造(ソード・バース)で戦う、イケメンらしいスマートな奴だ。

 

 正直ちょっといけ好かないけど、それでもリアス部長の眷属だし、アーシアを助ける時の頑張ってくれた。ライザーの眷属と戦った時も、はっきり言って目で追えないぐらい速かった。

 

 だけど、そのイケメンが台無しってぐらいに木場は冷静じゃない。

 

 リアス部長が言うには、魔剣創造と同じように聖剣を創る神器もある。だけど本物の聖剣に比べるとどうしても弱いらしい。

 

 だけど木場は、真っ向からエクスカリバーをぶちのめそうとしてるせいか、ゼノヴィアの奴は余裕を持って対応できてる気がする。

 

「愚かな。たかが魔剣創造ごときで、この破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)に攻撃力で勝とうとはね」

 

「それがどうしたぁ! 僕は、お前たちを、エクスカリバーを……!」

 

 ……これは、ちょっとまずいな。

 

 俺でもわかるぐらい、ゼノヴィアの方が有利だ。

 

 七つになったエクスカリバーは、それぞれが能力を持ってるらしい。

 

 イリナが持ってるのは形状を自由に変えることができる擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)だそうだ。そしてゼノヴィアのは、なんかクレーターを作るぐらいでかい威力の破壊の聖剣。

 

 真っ向からのぶつかり合いだと、木場が不利なのは俺でもわかる。

 

 だけど、木場はとにかく全力でぶつかり合う方向で言ってやがる。

 

「なら……この全力でぇ!!」

 

「実におろかだね、先輩。それではエクスカリバーに選ばれないのもわかるというものだ」

 

 そして、バカでかい魔剣を作った木場と、エクスカリバーを構えたゼノヴィアが、一気にぶつかり合いそうになって――

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、悪いんだけどちょっとストップな?」

 

 

 

 

 

 

 

 ――その真っ向からのぶつかり合いを、間に割って入った男がいなしやがった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだと!?」

 

「……誰だ!!」

 

 ゼノヴィアは目をひん剥いて信じられないような顔になって、木場は唾をまき散らしながらそいつに怒鳴った。

 

 そしてそんなことをした奴は、黒い髪の俺と同じぐらいの男だった。

 

 ちょっと無造作な髪をしたそいつは、なんていうか幅広いけどちょっと短めの剣を両手に持って、二人の斬撃をなんていうか……そらした?

 

「……ちょ、ちょっと待って? あれってうそでしょ?」

 

「ん? どうしたんだよ、イリナ?」

 

 なんかイリナが、めちゃくちゃ動揺してる。

 

 え、なに?

 

 確かにすごいことしたけど、それが何か?

 

「だってイッセー君! あの人が使ってるの、魔剣創造(ソード・バース)よ?」

 

「はぁ!?」

 

 え、ちょっとまじかよ!

 

 木場が両手で魔剣を使ってもいなしたゼノヴィアの、破壊の聖剣を魔剣創造でいなしたのかよ!?

 

 それも、両手で構えた威力重視の木場の魔剣と、さっきまでの魔剣を砕きまくったゼノヴィアのエクスカリバーをそれぞれ片手で!?

 

 ……はっ! まさかあれも禁手(バランス・ブレイカー)って奴か!?

 

 確かにそれなら納得だ。俺が左腕をドラゴンにした時も、禁手の鎧は上級悪魔のライザーと真っ向からぶつかり合えた。

 

 な、ならできても不思議じゃない……のか?

 

「……まさか、こんなところで禁手に至った神器を見ることになるとはね」

 

「それも魔剣創造とは、複数あるとはいえ、同じところの二つの魔剣創造がそろうだなんて……」

 

 リアス部長も、女王(クイーン)の駒を使った三年生の姫島朱乃さんも、真剣に驚いてる。

 

 そんな俺たちの視線を受けて―

 

「……え? 禁手? どこに?」

 

 ―男は目をひん剥いて周りを見渡してた。

 

 いや、あんたが驚くな!

 

 俺もなんていうかガクってきたよ。文句言ってやろ。

 

「お前のことだろ!?」

 

「……は? いや、俺は禁手になってなんかないけど?」

 

 え、違うの?

 

 なんかマジ顔で言ってるし、嘘じゃないっぽいなこれ。

 

 え、でも、木場でも無理だった真似をなんかすっごくやってのけてるのはマジだしなぁ。

 

「じゃあなんで、木場の全力と破壊の聖剣を片手で同時にいなせるんだよ?」

 

「……何言ってんだおまえ? いなすのに重要なのは、角度とタイミングだぞ? そりゃ強度はある程度必要だけど、強度が相手のより弱かったらその時点でできないとか、そんなわけないだろ?」

 

 そ、そうなのか。

 

 つまり、いなしたのは技術……ってことか。

 

 いや、それでもすごいだろ!?

 

 俺がどう突っ込んだらいいかと思ってると、木場が目を血走らせて魔剣を再び作り出した。

 

「邪魔を……するなぁ!!」

 

 っておい! なんかよくわからないけど、いきなりそいつに切りかかるのは―

 

「っと。ちょっと落ち着きなさい」

 

 ―と思ったら、女の人が木場の肩に手を置いてそれをなだめた。

 

 出るところがしっかり出てるナイスバディ! 身長も結構あるし、い、いいおっぱいをお持ちで……じゃない!

 

 気づいたら、俺たちの周りを包囲するように、なんか黒い泥みたいなものでできた犬が何匹もいる。

 

 今度は何なんだよ。まさかコカビエルって奴の部下か?

 

 そう思ったら、今度は白髪交じりの女の子が、慌てて走ってきた。

 

「戦士イリナに戦士ゼノヴィア! これは一体どういうことですか!?」

 

 そしてその子は、イリナ達のことを怒鳴る。

 

「……ほぅ。君が戦士ハリサか」

 

「……ああ、藤納戸さんの娘さんの。って、なんで怒ってるの?」

 

 イリナがポンと手を打って、俺もふと思い出したことがある。

 

 そういえば、イリナに誘われて教会に行ったことが何度かあるけど、その時たまに、結構な人数の俺たちと同じぐらいの子供たちのグループがいたっけ。

 

 人数は、男女八人ずつぐらいだったなぁ。そういえば、その中でもイリナとよく話してた子に雰囲気が似てる。

 

 ………ん?

 

 そういえば、あの黒髪の奴も………。

 

「なあイリナ。そっちの黒髪って、藤納戸……って人と一緒にイリナとあってなかったっけか?」

 

「え? ああ、そういえば藤納戸さん、友達多かったわね。あれ? そういえばローズマダー班の人もそうだったし、もしかして彼も?」

 

 イリナが何か思い出した風に言ってるけど、そのローズマダーって奴もいるのかよ。

 

 そういえば、藤納戸さんたちと一緒にいたのは、外国人もいたな。でも、こいつはそうじゃない感じなんだけど?

 

「いえ、その、それが……」

 

 なんか、めっちゃ藤納戸さんが言いよどんでる。

 

 あのぉ~、めっちゃくちゃ面倒ごとな予感がするんだけど………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それについては、こちらから説明するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 そして、今度はさらに一人、女の人が現れた。

 

 黒髪の人ほどは出てないけど、スレンダーなモデル体型な、青みがかった髪を後ろでまとめた、宝塚で男役してそうな雰囲気のお姉さん。

 

 なんか俺たちを見て苦笑を浮かべながら、その人は黒髪の男と女が近くについてから、肩をすくめた。

 

「コカビエル様の追撃任務を受け先遣隊として派遣された、神器研究実験部隊「コートショップ」。僕はリーダーのアズィール・ヴォディガンだ」

 

 そうお姉さんが言ったのに合わせて、今度は魔剣を使った男が片手を上げる。

 

「ども。コートショップのメンバーやってる、蒼生(そうせい)基弥(もとや)です」

 

「同じく、コートショップのメンバーの星崎(ほしさき)碧唯(あおい)よ。私と基弥は人間だけど、アズィールはハーフ堕天使ね」

 

 あ、それはどうもご丁寧に。

 

 ………じゃない!

 

 え、ちょっと待ってどういうこと?

 

 堕天使ってことは神の子を見張る者の連中なのか?

 

 いやいやいやいや、それ以上に今なんて言った!?

 

 コカビエルの、追撃ぃ!?

 

 あいつ、神の子を見張る者の幹部じゃなかったのかよぉ!?

 

 も、もうどういうことかさっぱりわからない。

 

 え、え、どういうこと―

 

 

 

 

 

 

 

「―――これはどういうことだ、戦士ゼノヴィアに戦士イリナ」

 

 

 

 

 

 

 ―その瞬間、俺達の近くの地面が、盛大に吹っ飛んだ。

 

 なんだ!? ゼノヴィアの破壊の聖剣って程じゃないけど、それでも直径20センチ近い穴ができたぞ!?

 

「……む、誰かと思えば星辰十字軍団か」

 

「あれ? でも、私たちが話を終えるまで、シトリー眷属の方を警戒してるんじゃなかったかしら?」

 

 ゼノヴィアとイリナがそう首をかしげる中、藤納戸は苦虫をかみつぶしたかのような顔つきになってる。

 

 というより、声をした方に振り向いたら、悪魔祓いと思わしき連中が九人ぐらいいるんだけど。

 

 しかも全員、悪魔祓いが使う光の剣を、持ち手だけの状態にして左手に持ってる。そして手の甲で支える形で、右手のでかい拳銃をこっちに向けてやがる。

 

 光の剣と銃が悪魔祓いの基本装備だけど、あんなに銃はでかくなかった気がするんだけど。あ、堕天使についたはぐれ悪魔祓いだから違うのか?

 

 それにしても、すごい嫌な目つきだ。

 

 はぐれ悪魔祓いのフリード以上に、俺達に敵意を向けてることを隠してない。

 

 そしてその一人、三十になるかならないかぐらいの男が、眉間にしわを寄せながら、いやそうな目をゼノヴィア達に向けてきた。

 

「戦士ゼノヴィア。我ら悪魔祓い(エクソシスト)の武技は、人々を堕落に導く害獣共や、そして正しき光から引き離そうとする異教の物に向けられるものだ。上が「悪魔相手に手出し無用」としている以上、人類社会の病原菌に武威を見せるのは研究材料を与えてしまうから控えてくれないか?」

 

 ……敵意満々だよ、こいつら。

 

 こっちのことを害獣とか病原菌とか、めっちゃくちゃ言ってきやがる。

 

 しかも、「手出し無用」っていったときにすっごく嫌そうな顔をしてたし、殺せるなら今すぐにでも殺したいって言ってるようなもんだなオイ。

 

「……言ってくれるわね。私たちを殺せなくてつまらないのかしら?」

 

 リアス部長もいらってきたのかそういうけど、なんかあきれたような視線を隊長格が向けてきやがった。

 

「……ゴキブリに殺虫剤をかけることを楽しめる人間など、どう考えても珍しい手合いだと思うのだが? 我らの行いは人を汚す者への怒りによって行われる責務であり、やりがいを感じることはあっても楽しみにできる余地がはないはずだが?」

 

 ………こ、の、野郎………っ!

 

 敵意を全く隠してないな、オイ!

 

「戦士ゼノヴィア。我々はてっきり「交渉が決裂したから排除する」という流れかと思いました。これで人の世界でありながら自分達の縄張りなどと抜かす害獣を処分できるとほっとした者なのですがね」

 

「いや、私はできればコカビエルに注力したいんだけどね。ただ、悪魔になっても信仰を捨てきれない転生悪魔がいたので、せめて楽にしてやろうかと思ったんだが」

 

 ゼノヴィアのその言い分に、連中はこっちをめちゃくちゃいやそうな目で見てくる。

 

 本当に俺達をいやなものとしか扱ってないんだな、こいつら……っ。

 

「……魔女、アーシア・アルジェントか。のこのこと教会に入ってきた忌々しき悪魔を癒すなどという、優しさと甘さをはき違えた女か」

 

「……てめえ、今なんつった!?」

 

 さすがに我慢できなくて、俺は無理やり立ち上がってにらみつける。

 

「汚した奴をほっとけないっていう、人として当然の優しさを見せたアーシアを、魔女とかはき違えたとか言ってんじゃねえぞ!」

 

 ゼノヴィアとイリナの態度もむかついたけど、こいつらはそんなもんじゃ断じてねえ!

 

 ここまで行ってくるとか、本気の殺し合いもしてやろうか、オイ!

 

 俺が本気で怒鳴ってにらみつけると、男の近くにいた俺と同じぐらいの男が、一歩前に出て俺に向き合った。

 

「……害獣に落ちた人類の背信者が、人の倫理を語れるとでも思っているのか?」

 

「あぁ!?」

 

 俺が殴り掛かりたくなってると、そいつは吐きそうな表情で、盛大にため息をつきやがった。

 

「人生とはすなわち、天の国に住まう価値を得るべく、より正しくあらんとする試練の時。そしてその人の人生にて欲望を刺激し、堕落し腐敗させる病原菌の塊こそがお前たち悪魔だろう。人であることを捨ててまで生きることに拘泥する貴様らが、人の正しさを語ろうとすることが愚かと知れ」

 

 こっちに銃口まで向けながら、そいつは吐き捨てるように言った。

 

「まして教会という我らが守るべき土地に、のうのうと入ってきた悪魔を捕まえもせずに手当てし、こちらの者を負傷させての逃亡など論外だ。戦争中の敵兵士にそんな利敵行為と行い味方を傷つければ厳罰は当然。まして我らの間に戦時条約などというものはないのだからな」

 

「……ふざけんなよ。アーシアの優しさを馬鹿にするってんなら、そんな神様なんか誰が信仰するか!」

 

 こいつら、本っ当にとんでもないな。

 

 俺は、ゼノヴィアにも言ったことをはっきりといってやる。

 

「言っとくが! アーシアを馬鹿にしたって時点でこっちは本気でむかついてんだ! しかも殺すっていうなら、たとえ相手が神様だろうとぶっ倒す!」

 

 そして、俺は左腕の籠手を突き出した。

 

「文句があるならかかってきやがれ! リアス・グレモリーの兵士(ポーン)である、この赤龍帝の兵藤一誠が相手になってやる!!」

 

 ああ、はっきり言ってやる。

 

 俺はこいつらが大嫌いだ。アーシアを傷つけるってなら、神様が来たってぶん殴って―

 

「馬鹿伏せろ!」

 

 ―その瞬間、足に何かが巻き付いて俺はひっくり返り―

 

「「「「「「「「「ならば死ね」」」」」」」」」

 

 ―同時に、九発ぐらい緑色の光の玉が俺の頭の一を通り過ぎた。

 

 ………って、ちょっと。

 

「いきなり撃つか!?」

 

 まさかいきなり殺しに来るとか、ちょっと想定外なんだけどぉ!?

 

「イッセー!? あなたたち、何を―」

 

「さえずるなよ、害獣が」

 

 その瞬間、リアス部長に隊長格が銃口を突きつける。

 

「我らが前で悪魔に落ちた元人間が主に仇名すといったのだ。宣戦布告をされたのだから殺すだろう。……さえずるなよ、我らは主の怒りと裁きの代行者として、その愚かさに嘆きを持って相対している」

 

「……まあ、言いたいことはわかりますが落ち着いていただきたいですね」

 

 その銃口の前に、藤納戸が割って入った。

 

「言っておきますが、上層部は悪魔まで同時に敵に回すことを良しとしてません。ここでリアス・グレモリーの眷属と殺しあうのは問題行動では?」

 

「確かにそうだが、偉大なる主の御業である神器を手にしておきながら、悪魔に落ちぶれ主に仇なす者を見逃せと?」

 

 な、なんか知らないけど、藤納戸が俺をかばってくれてるのか?

 

 俺が目をぱちくりしてると、藤納戸は懐から一枚の紙を取り出して広げて見せた。

 

 ……あれ? 男たちどころか、イリナやゼノヴィアも目を丸くしてるぞ?

 

 っていうか、リアス部長達やアズィールさんたちコートショップの人も目を丸くしてるっぽい。

 

「……見ての通り、私は今回「枢機卿の代行」として派遣されています。暫定的なものですが、この作戦の指揮権は私にあるということです」

 

「………了解した。それで、堕天使どもの戯言を聞くということかね?」

 

 その言葉に、藤納戸は素直にうなづいた。

 

「まあ、釈明や弁明の機会はきちんとあるべきでしょう。その上で悪魔側の対応も見たうえで判断しますので、余計な刺激を与えたくないから仮説拠点で待機をお願いします」

 

 その言葉に、男たちは少しいやそうにしながら即座にうなづいた。

 

「ああ! たとえ暗部であろうと、それにふさわしいというのならば猊下たちが言葉添えをなすなんて! これもまた、真の信仰を持つ者への慈悲! 主よ、猊下たちに祝福を!!」

 

「……ふむ。まあ、こちらとしてもまずコカビエルを優先するのは当然か。私たちがいればそこの先輩が落ち着かないだろうし、こちらは構わないよ」

 

 そう言いながら、イリナとゼノヴィアも帰り始める。

 

 男たちもてきぱきと武器を収めて帰っていくけど、そこに、俺に対して真っ向から反論してきた奴が、藤納戸に振り返った。

 

「……我らが主の体現である、怒りと裁きを怠るのはどうかと思うんだがな、ハリサ」

 

「……主が体現するのは、慈愛と許しですよ。それを忘れないでください、ビセンテ」

 

 え、お知り合い?

 

 あ、そういえば、イリナに連れられた教会であった藤納戸たちの中に、こんな感じのがいたような気もする。

 

 俺が記憶を探っていると、ビセンテと呼ばれた奴は、今度はコートショップの蒼生とか言ったのに目を向ける。

 

 よく見たら、なんか右手の手甲みたいなのをつけて、しかもそこから俺の足に向かってワイヤーが伸びてる。

 

 俺を転ばして助けたのは蒼生か。あとでお礼言っとかないとな。

 

「見損なったぞ蒼生。お前は、あの尊き犠牲から何を学んだんだ」

 

「……ビセンテ。俺があいつの死で学んだのは、無残な死別なんて重荷は御免ってことだけだよ」

 

 ………えっと、なんか、重いお話?

 




 ちなみに本作では、悪魔にしろ教会にしろ、どの勢力でも敵対派閥の発言力や戦力が程度はともかく上がっている設定です。原因はもちろんディザスター・レメゲトン。

 ハト派よりは自勢力に混乱が波及しないよう、もしくは混乱状態の人間世界を落ち着かせることに注力。しかし相手を出し抜きたいタカ派はアステニュウムを「情勢打破のカンフル剤」とみなした結果、こぞって集めた結果マセイナ関連技術で力を増している感じです。







 あと感想でご指摘在りましたが、マセイナにおいては換装の通りのそれに、もう一つのある創作物シリーズを混ぜ込む形で組み立てました。

 ガチのクロスオーバーではなく混ぜ込んだ独自設定にすることによって、ある程度の整理を測ったりしています。

 またディザスター・レメゲトンの存在は「原作にない影響の説得力」が多分にあります。

 創作物において、「説得力」とは「リアリティ」と書くとどこかで読みましたが、まさにその通り。どんな創作物でも「AはBだからCである」を納得させることができるかどうかは、作品の完成度に大きく作用します。

 なのでオリジナル要素を入れるのならば、その基点となる何かがあるべき。結果として、本作では原作がゆがむ要因としてディザスター・レメゲトンという設定を作り上げました。
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