とりあえずごめんなさいとだけ言わしてください。ちなみにまだ不定期です。
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3/3の午後14時頃からTwitchで皆で資料探しがてらSEKIROの修羅ルート以外攻略しようと思います。ぜひとも気軽に遊びに来てください。
以下のリンクから飛べると思います。
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蒼白とした空間の中で、狼は夢のような何かを見ていた。
その中で、野心のこもったような低い声が響く。
「久しいな、御子の忍びよ」
―――始まりの場所。
水手曲輪にある橋の下、その抜け道の先には
夜風に揺れる芒。力強い根を張り、神が宿り魔除けとして用いられるそれとは対照的にもう既に崩れ落ちた橋の親柱の横にその男はいた。
狼は主を幽閉から救い出し、城の外に逃がそうとした折、その男と衝突したのだった。
「………」
狼は唸る。
なぜ自分がこのようなところにいるのか。懐かしいという感情が胸懐に入り込む前に、狼はまずこの状況を訝しんだ。
「なにも今更死合おうなどとは思っておらぬ」
弦一郎はそう言う。
狼とて忍び、相手が殺意を持っていればそれを感じ取ることなど容易い。故に狼は、まんまるい月を眺めるその男の隣に立った。
「俺は葦名を守ろうとした…が、結局、何もできなかった」
「………」
狼は黙って聴いた。
「葦名のためなら、どんな異端の力でも従えようとした」
変若水、竜胤の力、もう一振りの不死斬り。言葉の通り、弦一郎は葦名のためならいかなる手段をも厭わなかった。
「なぁ、御子の忍びよ…。いや、狼。俺は貴様に敗れた」
そう、この場所は始まりの場所であり、決戦の場所。
「ずっと聞きたかったことがある。幾多の試練を乗り越えて見せた貴様に」
「……なんだ」
「いったい、何があそこまで貴様を支えたのだ」
狼は静かに、口を開いた。
「ふたつ、主は絶対。命を賭して守り、奪われたら必ず取り戻せ」
弦一郎は少し困惑したような顔をみせ、すぐに察した。
「なるほど、忍びの掟か…」
「………」
狼は小さく頷いた。
夜の風が二人を撫でるように流れていく。背後で芒が揺れ、軽い植物が擦れ合う音がし、それを丸い月が照らした。
弦一郎はすこし笑って続けた。
「フフ、そうか。もとより忍び衆は、そういう輩であったな」
そう考えれば、寄鷹衆も常に城を警戒していた。内府の忍びであっても、身内の仇討ちを為そうする輩もいた。
「忠義深く、義理堅い…。なるほどな」
弦一郎は納得したように目を伏した。
その忍びの中でも、狼は特に忠義深く義理堅かったのであろう。主のために、自分の命を賭し、腕を失っても城に潜入し、御子を弦一郎から解放した。その後も、山を駆け、谷を駆け、毒沼を駆け、数多の強敵を殺し、最後には弦一郎とその祖父をも殺し、不死斬りを果たしたのだった。
弦一郎は少し何かを含んだように言った。
「しかし狼よ。今はどうだ。為すべきことを為した後の貴様ですら、未だにその眉間の皴が剥がれぬと見える…迷っているのだろう」
「………」
図星。といわんばかりに、狼は小さく唸った。
「なぁ、狼よ。俺の
弦一郎の祖父とは、まさに剣聖 葦名一心その人であった。その葦名一心がよく言っていた言葉。その言葉は、深く、根強く、狼の心にも残っているものであった。
「―――迷えば、敗れる」
それは、葦名一心の人生そのものを現したその人の悟り、真理、人生そのものを現していた。国を盗り、その国を続けさせるためには、ただひたすらに敵を斬り捨て、我武者羅になるしかなかった。
故に―――迷っていられぬ。
敵を斬り捨てるために雑念を捨てる。死合う時の下段や突きの読み合い。斬るのか、守りに徹して相手の体制が崩れるのを待つのか、そのメリとハリ。
狼もまた、その言葉に大きく影響を受けた人物であった。
が、しかし…。
「数多の強者を倒し、数多の試練を乗り越え、為すべきことを為した貴様ですら、今はこの言葉を忘れている」
「………」
「フフ、また井戸底で腑抜けていた時に戻っているようだな。今の貴様なら、或いは…」
弦一郎はニヤリと笑い、鯉口に手を掛ける。その仕草を目にした狼は、ピクリとも動かなかった。この状況で、真に死合おうと思っていないことなど、熟達の忍びからすればわかることであった。
狼の察した通り、弦一郎は刀から手を放す。
「一度は貴様に勝利したが、あらゆる手を施して二度負けた。今更貴様に勝利したところで、恥にしかならぬか…」
「………」
月明かりが照らす中、言うべきことは言ったと言わんばかりに、弦一郎は口を開いた。
「さて、そろそろか」
弦一郎はそう言った。この空間が何で、この時間は一体何だったのか。これは現実なのか、それとも夢なのか。多分起きてしまえばそれもすべて曖昧な霧となる。
鬼仏に祈っているときのような蒼白とした空間が眼前に広がる。
そして消えかかっている空間の中、おぼろげな男がこういうのだった。
「狼よ。―――迷えば、敗れる。努々忘れるでないぞ」
一心からの受け売り。それでも、弦一郎からのその言葉は狼によく届いた。
「……
<><><><><><><><><><><>
―――迷えば、敗れる。
目覚めてみれば、存外にもよく覚えているものであった。
目の前にあるのは鬼の顔を形した仏、三体のそれが一つの蒼い炎を持ち上げている。異様な仏。
昨夜、らっぱ衆にも似た、それでいて体についている筋肉が桁違いの男、ガレスにこれを運んでもらった。狼からすれば、鬼仏とはそこにある物であり、まさか持ち運ぼうとは考えていなかったが、それはガレスからすれば特に重たいものではなく、今ではその仏は狼の部屋に設置されていた。
そして葦名の地でそうしていたように、此処でもそうして鬼仏の前に座していた。その末にみた夢がアレであったというわけだ。
狼の部屋にわずかな朝日が差し込んでくる。狼は立ち上り、部屋をでた。
<><><><><><><><><><><>
昨夜は大変であった。
勝手にダンジョンに行ったこと、変な像を持ち帰ってきたこと。すべて込々で、狼は耳の長い人物からずいぶんとお叱りを受けた。
今まで狼をこのように叱り付ける者はいなかった。
義父は森に自分を置いて行き、まぼろしに負ければそれまで、打ち勝てばまだ息子でいられる。そうやって親子を続けてきたが故に、叱られるという教育を受けてこなかった。狼にとって、ある意味それは新鮮な物であったが、幾分慣れているものではなかったため、困惑もした。
昨夜のお叱りを思い出し、反省しようと思いながら歩いている最中であった。狼の目の前には金色の長い髪を携え、眠たそうな顔で何やらこちらを見ている者がいた。目線に気が付いた狼はその視線の方に目をやる。
「………」
「………」
どこか無気力で眠たげな金色の目、しかして何かを訴えかけ、何かを渇望している眼差しであった。瞳の奥に、したたかに燃やし続ける炎がある。そしてその目は、狼がどこかで見たことのある目であった。しかし、向こう側から何かを話しかけてくる様子はない。
狼は視線を気にしながらも、彼女の横を通り過ぎようとする。
すると。
「…待って」
「………」
狼は立ち止まる。
「…なんだ」
「聞きたいことがある」
静かな声、落ち着きのある声であった。エマのように大人びた落ち着きのある声とはまた別。
聞きたいこととは何のかと、狼は耳を傾ける。
「昨日ガレスから聞いた。ミノタウロスを倒したって…。どうやったの」
ついこの前冒険者になったばかりの人間が、たった数日でミノタウロスを討伐する。そんなことは不可能に近い。だからこそ、アイズは狼に聞かなければならなかった。
どうやって倒したのか、何を使ったのか、どうしてそこまで強いのか。
狼は困惑交じりに唸る。
「………」
葦名の猛者、獅子のような猿、死なない僧、大忍びである義父、剣聖。様々な強者と死合った狼にとって、筋肉だけが取り柄のようなあれは、油断さえしなければ簡単にいなせるようなものであった。葦名の地でいうならば、それこそ赤鬼と酷似していた。
そのため、狼はなにも特別なことはしていない。しいて言うなら義手忍具から魔石というものを放出し、目つぶしには使ったがその程度であり、あとは己の体と技で殺した。
「どうやって倒したの…。レベルもステイタスもまだまだ低いはず…」
レベル、ステイタス。狼はこれらについては全く理解ができない。
「……わからぬ。一撃を避け、首を刎ねた。それだけだ」
「………」
アイズは数秒の内、ただ唖然としていた。ちょうどポカンという擬音が似合うように。
これでは何の参考にもならない、アイズはただ強さを求めていた。特に、最近は伸び悩んでいる。著しく成長するスピードが落ちているという自覚があった。なればこそのアドバイスだと思っていたのだ。
しかし、相対しているのは自分よりも無口な人だ。
だからこそ、アイズは真剣に知りたいと願った。
「…ついて来てほしい」
アイズにそう言われると、狼は黙ってついていく。
到着すると、そこは狼のよく知るところであった。狼自身が冒険者となった折、自分の力を見図るべく別の人間と勝負したところであった。
アイズは既に狼と相対する形で剣に手を掛けている。
「…加減の仕方は分からないけど、あなたの強さを少しでも知りたい。私も強くなりたいから…」
そういうと、アイズは鞘から剣を抜いた。刀身の細い剣だった。
対する狼も気が付けば刀を抜いていた。
勝負は刹那であった。
「…
そう聞こえた瞬間、狼の相対している相手は風を纏った。そして目にもとまらぬ速さで狼を突きにかかった。
ただの勝負とはいえ、狼はアイズから滲み出る殺気を感じ取った。狼はその目にもとまらぬ早さの突きを身を横にして避け、刀身を踏みつける。
アイズはバランスを崩し、ヒヤリとした感触を首筋に覚えた。
「…うそ」
しかし、まだ勝負はついていない。驚異的なスピードで以て力任せに後ろに下がった。仕切り直し、そういわんばかりに間合いをはかりあう。
狼はただ柳のように刀を構える。
アイズは首筋に冷や汗が流れているのを感じた。自分は既に、もう死んでいる。どれだけそのことを忘れようとしても、自分の首筋があの冷えた殺気、一種の慈悲とも受け取れるあの刃を忘れてくれない。
次第に、足が動かないことに気が付いた。
次はどうする。もう一度突きにかかるか。いや、一度目でダメだったのだ、二度と通用するような相手ではない。どのようなパターンで突くにしろ、斬りかかるにしろ、見えるのは己の勝利ではなく、明確に殺されているヴィジョン。
「………」
「……私の、負け」
そう声に出すのが精いっぱいだった。
狼は残心しつつ刀を収める。
「…驚いた」
アイズは正直に自分の感想を述べた。
自分が降参したことにも、だれにも崩されることのなかった最速の一突きを見切られたことにも、自分の首筋に刀を立てられたことにも。
「………」
狼は何も言わなかった、何も言わずアイズに背を向け、館の中に戻ろうとした。
「…待って。少しでも教えてほしい、あなたの強さの秘訣を」
狼は立ち止まった。橙の外套と白妙の首巻が風で揺れ、ただ一言。
「―――迷えば、敗れる」
それは、とある人物の受け売りであった。しかし、伝えるには十分すぎる真理であり、数多と死合ったうえで培った悟りである。
実際、アイズはこの言葉がひどく胸に突き刺さった。
一度見切られた突き、もう一度するか、しないか、普通に斬りかかるか、そうでないか。迷った末、勝てるヴィジョンが見えずに、降参した。負けず嫌いな自分自身がなにもできずに降参した。
アイズはもう見えなくなりつつある狼の橙の背中を見ながら復唱した。
「迷えば…敗れる……」