隻腕の狼、続く主は道化師か   作:森本様

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 こっちのほう後繋ぎになりそうです。
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狼と狼

 

遥か昔。飢えた狼から未熟な狼へと成長しようとしていた折、狼は義父からとある事を教わった。

心の中で義父の言葉が思い出される。

 

義父は、強い口調で言う。

 

「よいか、狼よ。熟達の忍びともなれば、常に強者と戦っておる。修行の最中であっても、飯の最中であっても、床に就いている最中でさえも」

 

狼は困惑した。如何様にして飯の最中に、そして床に就いている最中に強者と戦うのだ、と。

そしてその疑問は、義父が次に口を開くとすぐに晴れた。

 

「…ここで戦うのよ」

 

義父は自分の頭にポンポンと人差し指を当てた。そして、その仕草のおかげで察することができたのだった。

 

――想像上で戦うのだと。

 

もう分かっただろう、と思ったのか、義父は全てを語らなかった。

小さき狼は義父の大きな背中を見上げ、義父はこちらを見ずにこう言った。

 

「忍びとは、耐え忍ぶもの。瞬刻とも落ち着く時間はないのだ。努々、忘れるでないぞ」

 

 

自室。

 

瞼の裏でそのようなことを思い出していた狼。

義父からの言葉は忘れず、何時如何なる時でも強者と死合うことを想定して、胸中で戦い続けてきた。

 

少し早く目が覚めたため、この時ばかりも胸中で戦う。

 

狼は目を閉じた。

瞼の裏に敵と風景が映る。

 

燃え盛る平田屋敷の主殿。背後には門、他三方には燃え崩れている最中の漆喰の塀があった。

そして、狼の正面には真っ黒の忍び装束で全身を覆い、肩からは紫色と黒色でシマ模様になっている合羽を羽織っている者が立っている。

 

―― 孤影衆(こえいしゅう)の者だ。

 

狼と相対する孤影衆からは殺気が滲み出ていた。

想像上での戦いとは言えど、その研鑽と長年の経験から、真の敵と戦っているかのような現実感が感じられる。故に、殺気を憶え、燃え盛る炎の熱をも感じるのだ。

 

孤影衆の者は徐に指を口に持っていき、指笛を吹いた。

すると、少しの間もなく忍犬が御出まし、狼に向かって大きく吠える。

 

対する狼も既に戦う準備はできている。刀は抜かれ、何が来ても対処できるように構えられている。

 

孤影衆が指示すること無く、忍犬は狼の首に噛み付こうと飛び込んで来る。

狼はその噛み付きを避け、忍犬を無視し、目にも止まらぬ速さで孤影衆に斬りかかった。しかし、向こうは内府お抱えの、それも熟達の忍び。狼の刀が孤影衆を捉える前に弾かれる。

孤影衆はすかさず反撃、その忍刀で袈裟に斬る。

 

しかし、その攻撃も狼に届く前に後ろに下がられてしまう。

 

両者の攻撃が当たることすら無いまま、二人はお互いに間合いを取り合った。

そんな中、再び忍犬の一匹が狼に噛みつきにかかる。が、忍犬が狼の懐に入り込もうとしたところで、その攻撃は弾かれる。

 

狼はすかさず、体勢を崩し土に臥せた忍犬を切り伏せ、とどめを刺した。

 

孤影衆はその隙を見逃すはずもなく、狼に向かって飛び込み足を繰り出す。が、それすらも弾く。なかなか勝負がつかないのに業を煮やしたのか、孤影衆は足技の連撃を狼に繰り出した。

 

狼はそれすらも弾く、弾く、弾く。

そして次の瞬間。狼は微かな殺気を感じとり、一歩下がった。

 

狼が予想した通り、孤影衆は狼にとどめを刺すべく足を槍のようにして突いてくる。だが、狼は既にその攻撃の間合いの外にいる。狼は無造作に突き出された足を踏みつけ、相手の体勢を崩した。

 

孤影衆は驚いたような表情と共に、何かを悟ったような表情をする。

その瞬間、狼は孤影衆の首に刀を突き刺し――それを引き抜いた。

 

孤影衆の首からは夥しい量の赤黒い飛沫を吹き出され、地面に倒れる。しかし、未だ狼の耳に届くのは、主を殺されて残された忍犬二匹の遠吠えだった。

 

狼はそっと手を合わせ、現実の世界に戻ろうと瞼を閉じた。

 

 

現実の世界に帰ってきた時、集中して聞こえなかったのか、何やら外が騒がしかった。

少しの間に、もう太陽は昇っていたのだろうか。屋敷の内外問わず、活動の音が耳に入った。

 

「………」

 

狼は小さく唸る。空腹を感じ食堂に行くことにした。

 

ロキ・ファミリアはオラリオでトップを争う巨大な組織である。それ故に、所属している団員も多い。その胃袋を賄おうと思うと、自然と様々な生活を補う施設も大きくなるのだ。

食堂には、巨大なテーブルが並び、そのテーブルに付随して豪華な椅子がズラッと並べられている。他のファミリアでこの規模はなかなか見られないだろう。

 

狼がテーブルを見ると、そこには露出の多い姉妹と少し幼げな耳の長い少女、そして少し前に手合いをした女性が座っていた。

特段、聞き耳を立てているわけではないが、会話が自然と耳に入ってくる。

 

「へぇ~、アイズはダンジョンに行くんだ~」

 

「うん。武器の修理でお金が必要になった」

 

ティオナの問いかけに、アイズは静かに返す。

そしてそれに乗っかるように、幼げなエルフも乗っかる。

 

「わ、私もついていきます!」

 

「え、いいの?」

 

「アイズさんのお手伝いがしたいので…」

 

表情は変わらないが、アイズは嬉しそうな顔をする。

 

「ティオネはいかないの?」

 

「行くわけないでしょ。私は団長の傍にいるの」

 

ティオネの返答に、その妹は「ちぇ~」と舌打ちをして返す。

 

そんな会話をしている中、狼は運悪く見つかってしまう。

 

「あぁ!オオカミだ、オオカミはダンジョン行くよね?」

 

「………」

 

ティオナは椅子から飛び上り、狼に詰め寄る。しかし、狼は何処か困ったような表情で唸る。

 

「本当?オオカミ、来るの?」

 

アイズも問う。

 

しかし。

 

「こらこら、オオカミを困らせるな」

 

食堂の入り口からの声だ。皆がそちらを見ると、ロキ・ファミリアの団長であるフィンと副団長であるリヴェリアがいた。

そしてフィンは続ける。

 

「でも、面白そうだね。久々にダンジョン」

 

フィンがそういうと。

 

「そうですよね!行きましょう、ダンジョン‼」

 

ティオネが手首をクルリと回し、それまでの会話を聞いていた皆がジトっとした目でティオネを見る。

 

「で、結局狼はどうするの?」

 

ティオネが再び問う。

 

「……よしておく」

 

「そう、わかった」

 

狼は忍びであった。

 

一人、いや独りがいいのだ。

二人三人ならいざ知らず。五人も六人も人がいれば、自分の思うように戦えない。なにより、まだリヴェリアにパーティというものを教わってないのだ。

 

「そうか。それは残念だ。だが屋敷の中でできることもたくさんある。有意義に使ってくれ」

 

フィンはそういうと続けざまにこう言った。

 

「そうだ、ベートが休憩室で暇そうにしてたから、よかったら構ってやってくれ」

 

「……わかった」 

 

「団長、ベートは誘わないの?」

 

「ベートの事だ、来ないだろう」

 

「それもそうか」

 

ティオネはフィンの言うことに納得する。

 

そうこうしている間に、皆は食事をとり終わり、せっせとダンジョンに向かっていった。

 

狼は言われた通り、ベートに会いに行くことにした。

 

休憩室。

 

白を基調とした壁に金の装飾、インテリアには暇がないようにきれいな花の刺さった花瓶、部屋の真ん中にはローテーブルとソファなどがあり、壁には暖炉があり薪がパチパチと音を鳴らしていた。

名前の通りここは休憩室だった。

 

狼が部屋を見ていると、部屋の真ん中にあるソファ。そこにベートらしき者が鼾を立てて寝ていた。起こすのも申し訳ない。そう思い立った狼は、ローテーブルを挟んでもう一つ対角にあるソファに腰かけた。

低反発で沈みゆく腰に不思議な感覚を覚えながらも、音を殺して瞑想を始めた。

 

狼は熟達の忍びである。対し、ベートも熟達の冒険者である。故に、ベートは狼が休憩室に入ってきた時点で、その気配に気づいていた。いくら音を殺していたとしても、ベートには鼻があるのだ。だが、眼中にもないため無視して眠る。

 

休憩室にベートの鼾だけが響く。

 

少し時間がたった頃だろうか。一人は眠り、一人は瞑想をしている状態。

だが、とある瞬間二人の目が開く。

 

しばらくすると、休憩室のドアが力いっぱいにガチャンと開く。入ってきたのは糸のように細い目と緋色の髪を携えた神だった。

 

「おぅベート、オオカミ、なんや二人共ダンジョン行ってへんのかいな」

 

ベートは無視する。

 

「わかったで~、二人共除け者にされたんやな」

 

ロキがそういうと、ベートは立ち上がって抗議する。

 

「ちげーよバカ、興味がねぇだけだ」

 

すると、しめたとばかりにロキは言う。

 

「ほなちょうどええ、ベート、オオカミ、ちょっと手伝うてくれへん?」

 

狼は「…うむ」と頷く。

 

もうしばらくベートは文句を垂れていたが、結局ベートと狼はロキを手伝うことになり、ロキが言うとある場所に行くことになった。

 

 

 

 

「それで、こんなトコでなにすんだ?」

 

ベートがロキに問う。

それもそのはず、女神がなにか手伝ってほしいといったところ、ついて行けばそこにあったのは古くからあるオラリオの地下水道だった。

 

「ま、ちょっとした調査や」

 

ロキの声が地下水道に響く。

 

「………」

 

狼は、地下水路を進み続けるベートとロキに黙ってついていく。

 

すると、ベートは狼に喧嘩を吹っ掛けるようにして文句を垂れる。

 

「まぁ、百歩譲ってココを調査するのはいいとして、オレぁ、コイツ(オオカミ)っといっしょってのが気にくわねぇ」

 

ベートはポケットに手を突っ込み、猫背のような姿勢で狼を睨む。

それに対し、うんともすんとも言わない狼にさらに腹を立てる。

 

「こんな雑魚になにができるってんだ」

 

舌打ち交じりに吐き捨てる。

 

「ま、これは飽くまでも調査やし、オオカミは目もええようやから。人は多い方がええやろ、な?」

 

ロキはそう返すが、ベートはまだ気に食わないらしい。一人先頭に立って文句を言いながら歩いている。

そうした雰囲気も悪くはないが、ロキは話題を変えるようにして別の話を始めた。

 

「どうや、ベート、オオカミ、なんか変わったところはあるか?」

 

地下水路。水がぴちゃぴちゃと音を立てている最中、真っ暗な水路の道を、ベートの持つ松明のみで進む。

 

幸いというか、ロキの采配というか。二人は何かを調査したり探し出したりするにはうってつけの人材だった。ベートと狼、どちらも目も鼻も利くし、いざとなれば戦闘だって何不自由なく行える。

そうして、二匹の狼はとあることに気が付く。

 

「おいロキ、匂うぞ、人間の匂いだ。だがかなり薄れている」

 

「よしキタ。それを追いかけるで」

 

ロキがベートにそう返した直後、もう一匹の狼が口が開く。

 

「……来る」

 

狼がそう言ったとたん、地下水道の水が振動を立てる。そして間もなく地面が揺れ始め、ソレが現れた。

 

――食人花のモンスターだ。

 

どこに潜んでいたのだろうか。水面を揺らし、地面を揺らし、水道を支える柱から三体もの食人花型のモンスターが顔を出した。そのモンスターは花の真ん中にある口を大きく開け、狼達が何もなく進んでいれば既に到着しているであろう箇所に突進していた。

 

狼が気づかなければ、もしかすると今の攻撃のいい餌食になっていたかもしれない。

 

「ひえぇ」

 

ロキは「おぉ怖い怖い」と冗談交じりにニヤニヤとしながらそう言った。ロキのこの余裕は、自分の前には頼りになる者が二人もいるという余裕の表れだろうか。

 

食事花は大きな口を開けてこちらを方を睨んでいる。

 

ロキは何やらニヤッとした。

 

「ベート、さっきは狼の文句いっとったな」

 

「あァん?」

 

「ええやろ。オオカミのお手並み拝見といこうやないか、な?」

 

「いいだろう。オレとそっちの雑魚、どっちが()()()()か、勝負といこうじゃねぇか!」

 

「………」

 

ロキの煽りにベートも乗っかる。

 

そうして戦闘が始まる。

 

先に攻撃を仕掛けたのは食人花の一匹だった。ベートに向かって口を開けて突進する。轟と音を立て、水面が波を立てるほどの勢いだったが、ベートは足でその攻撃を反らす。

すかさず反撃とばかりに、目にも止まらぬ速さで蹴りを入れる。

 

――しかし。

 

「チッ!か、硬ぇ」

 

ベートはそう言って舌を打つ。

 

対する狼は、食人花が攻撃を仕掛ける前に攻撃を仕掛けていた。正面から切り込むのではなく、この地下水道の環境を存分に活用していたのだ。

 

暗闇に紛れ、飛沫を上げる水に隠れ、地下水道という大きな空洞を支えるための柱に姿をくらましながら、ここぞという機会を伺う。

果たしてそれが意味のある行動だったのか、食人花には目がなく、音や温度、如何にして狼の姿を探しているのかはわからなかった。

 

しかし、確かに一瞬。狼の姿を見失い、首を左右に振っている隙があった。

 

そして、熟達の忍びはそのような隙を見逃さない。

 

狼は食人花の核であるらしきところに刃を突き立てた。

 

そんな姿を横目で見ていたベートはこう吐いた。

 

「バカ野郎がッ、そんな鈍らじゃソイツには…ッ!?」

 

ベートはそう吐いた。しかし。

 

食人花の顔には確かに狼の刃が突き刺さっていた。そして間もなく、食人花のようなモンスターは硬直し、黒い霧となって霧散した。

 

「……チッ!」

 

食人花を花で例えるとするのなら、その茎は固いかもしれない。しかし、花弁の付け根であるところは狼の刀でも刃が通るくらいの硬度であったのだ。

そして狼はそれを観察し、見事有効に利用して見せた。

 

狼がチラっとベートを見やると、ベートの方もその性質を利用し、足を槍の様に突き立て、食人花の顔らしきところに突き立てていた。同様に、硬直し、黒い霧となって霧散する。

 

――あともう一匹。

 

そうしたところで、ベートは狼の方を睨む。

 

「いいだろう。やってやるよ」

 

ベートは牙を尖らせてニヤッと笑う。徐にポケットに手を伸ばすと、ベートの手には何やら炎の燃え盛る短剣が握られていた。その手はブーツに運ばれる。するとその瞬間。ブーツが赤く輝き、轟轟と燃え盛り始めた。

 

「ラスト一匹、コイツをぶっ殺した方が勝者だ」

 

「………」

 

狼は黙って頷く。特段、勝負事を真に受けているわけではないが、ベートがそういうなら仕方のないことであった。

 

初めに動き始めたのは相手の方だ。何も考えていないのか、と思わせるほど単純な攻撃だった。ベートと狼にむかって突進してきたのだった。しかし、狼はとある違和感を覚えた。

 

そうして、その攻撃と正面からやりあおうとしているベートの目の端にもう一つの緑の蔓のようなものが見えた。

 

「――ッ、なにッ!?」

 

そうだ、本体の突進攻撃は飽くまでも囮であり、地下水道の柱や水中にあらかじめ隠していた蔓からの攻撃が本命だったのだ。

 

不覚。相手はモンスターと言えども原型は植物。植物とは根を張り、蔓を伸ばし、葉と花を開くものなのだ。しかし所詮はただの蔓、ベートは軽傷を覚悟した。

 

本体と蔓の攻撃がベートを襲うのはほぼ同時だった。もとより本体の攻撃は予想していたものであり、難なくその燃え盛る足で弾き反らす。しかし、今の体勢ではどうしても蔓の攻撃は受けきれない。

 

その攻撃が今ベートの眼前まで来ている。だがその瞬間。

 

「………」

 

ベートにその攻撃が届くことは無かった。

 

早くにも違和感に気が付いた狼はその攻撃を切り伏せて見せた。緑の蔓はベートに届くことは無く、切られたトカゲのしっぽのようにピクピクと蠢きながら水路に沈む。

 

「…凶狼殿」

 

狼のその声にベートは我に返る。

 

「――ッ、認めたわけじゃねぇッ!」

 

その瞬間。ベートのブーツは激しく燃え盛り、ベートの周囲が炎の海と化す。そして炎のカーテンからベートが姿を出し、力任せに食人花を蹴った時、その炎は食人花をも燃やし尽くしたのだった。

 

確かな手応えを感じたベートはそのブーツから魔力を遮断し、炎を消す。

また狼も残心し、刀を鞘に納めた。

 

その後ろで、ロキはニヤッとして何やらボソボソと言っていた。

 

「…なるほど、力とスピードで押し切る凶暴で傲慢な狼と、冷静沈着で技と道具でねじ伏せる狼。ベートとオオカミ、これはイけるなぁ」

 

ベートは耳をぴくぴくとさせ、聞こえてはいるが聞こえないふりをした。

 

ロキは安全を確認した後、ゴトッと音を立てて落ちた歪な魔石を拾い上げると、この場所から退散することを指示した。

 

この魔石、そして水路で匂っていた香りをめぐり、地上で他の神との問答もあるが、それは狼にとっては知らぬ話で合った。

 

 

 

 

 

ベートとロキは他の神との話があるということで、同席しても良かったのだが狼はそうしなかった。少し気になっていることがあったからだ。

 

狼はまっすぐその場所に向かう。

 

すると、そこにいたのだ。胡坐をかきながら、汚い歯をむき出しにし、大層な身振り手振りで何やら商品のようなものをオラリオの子どもに売り込んでいる商人が。そこに狼が顔を出すと。

 

「…お、いつかの旦那じゃねぇですかい、どうでした、怪物祭(モンスターフィリア)は」

 

商人に相手をされなくなった子どもたちは、その商人から買ったものを片手に散っていく。その場に残ったののは、狼と商人だけだった。

 

「何やら物騒な事件が起こったらしいですが、大事ありやせんでしたか?」

 

「………」

 

狼は黙って頷く。物騒な事件とは、恐らくモンスターが逃げ出した事件のことであろう。狼も巻き込まれはしたが、大事なかったかと問われれば、大事ないと答える程度であった。

 

「あっしも旦那の恵んでくれたヴァリスを元手に、こんな商品を仕入れて来やした」

 

その者が胡坐を組んでいる手前を見ると、何やら子どもが遊んで楽しそうなイタズラグッズのようなものが並べられていた。

 

「すいやせんね、まだヴァリスが心もとなくて、こんなもんしか仕入れてこれねぇもんで。せっかく投資してくれた旦那にはもうしわけねぇが、今はこれが精いっぱいでさぁ」

 

ヴァリスが少なく、こういう子どもに向けた商品しか仕入れて来れないようだ。しかし、そんな商品の中でも狼のお眼鏡にかなうものはある。狼が気になったのは、葦名でもたまたま見かけた破裂する赤い紙巻が連なった物――爆竹だった。

 

「……これをもらおう」

 

狼はそう言ってヴァリスを手渡す。

 

「…旦那、いいんですかい?」

 

「………」

 

狼は頷く。

 

「ありがとうございやす。今後とも御贔屓に!」

 

そう言って商人は、過ぎ去る狼の背中を視界から消えるまで見送った。

 

寂れた通り、汚らしい店構えに汚らしい店主。客足は全くと言っていいほどなく、集まるのは貧相な子どもばかり、だが、だからこそ生まれる輪も存在した。

 

店主は品のない声とお辞儀で狼を見送ると、またどこからともなく集まってくる子ども相手に商売をはじめた。

 




確認はしていますが多分誤字はあります。申し訳ありません。

狼と狼、いいですね。

皆さんは狼とどのキャラの絡みが気になりますか。もしかしたら参考にさせていただくかもしれません。

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 誤字報告ありがとうございました。意外と気づかないもんですね!アハっ!
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