最後の桜→最後の桜-表
(2023 3/23)
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Twitchの配信の方もフォロワー20人達成ありがとうございました!今度は25人目標にコツコツやっていきたいと思いますので応援の程よろしくお願いします。
独自設定のキャラ、独自設定の独自ストーリが展開されます。独自の毒々加減が苦手な方はお引き取りください。
斜陽の刻。
橙の空が街を同じ色に染め、黒い鳥がカァーカァーと五月蠅く叫んで飛び去る。
何やら懐かしい匂いと共に、香しい匂いが狼の鼻を刺激した。
当の狼はポツポツと輝きだす街灯を不思議そうな顔で眺めながら帰る。
狼の周りを歩くのは同業者だろうか。
疲れ切った顔でトボトボと歩く者、酒だ酒だと豪快に笑う者、何かを失ったのか、死んだような顔の者。
これが常の夕暮れ時であった。
終業終業と言わんばかりに店を閉め、冒険を止め、家に帰る者もいれば、これからが働き時だと明かりをつける居酒屋もある。
この刻はある意味その境界であるが、狼は前者であった。
朝には瞑想して鍛錬を行い、昼にはロキとベートと地下水道の調査を行った。その調査とやらが終わると、なにやら匂いや魔石をめぐって他の所に行くようであったが、狼はもう一人の狼に睨まれ、確認したいこともあったのでついていくのを止めた。
暇になった狼は一人目的地へと向かい、
狼はガレスから貰ったヴァリスを入れる袋とは別のポーチにその爆竹を入れた。商人の所にはまだまだ爆竹の在庫はあったようで、無くなればまた買いに行く予定だ。
正直言うと、爆竹を試したい。と狼は思っていた。葦名で使っていたものと同じ物か、破裂具合はどうなのか、など気にはなっていた。しかし、ただでさえ最近は心配をかけ、あの緑髪の耳の長い種族にお叱りを多々受けている。大人しく屋敷に帰った方がいいだろう。
屋敷に着いた頃、もう日は落ち切っていた。大きな庭を抜けて扉を開けると、そこにはレフィーヤとティオナがいた。足音も気配もなく入ってくる狼と目が合う。
「あ、オオカミ!」
「………」
ティオナは叫ぶようにして狼を指さす。
「今日はダンジョンに来なくてよかったね」
「…どういう意味だ」
「ホント大変だったんだからぁ! ね、レフィーヤ」
「…はい」
ティオナにそう振られるレフィーヤだったが、どこか元気が無さそうに感じられ、それは狼ですらも感じるほどの落ち込みようであった。
「…何かあったのか」
狼は静かに問うと、事の顛末を聞いた。
「…で、アイズとリヴェリアがまだ帰ってきてないってわけ」
「………」
狼は黙って頷いた。
「レフィーヤも安心しなって、リヴェリアがいるならアイズも大丈夫だからさ」
ティオナは狼に向けていた視線を、落ち込んだように座り込むレフィーヤに向ける。――そして
「…はい、わかってはいるんですけどどうしても心配で」
「もう!オオカミも何とか言ってやってよ!」
――もう、狼はいなかった。
「ありゃ…」
狼は先ほどまで歩いて来ていた道を引き返す。
狼は徐にポーチに手を伸ばし、中から爆竹を取り出した。そしてそれを左手の義手の溝にはめ込む。
幸運にも、前に扱っていた爆竹と同じ規格だったようで、あそびも生まれずにうまくはまった。あとは火を付け、遠心力を利用するように腕を横に力強く振れば、爆竹は前方に押し出され、タイミングよく破裂する仕組みだ。
狼自身、なぜダンジョンに赴くのかがわからなかった。アイズが心配ということはもちろんない。仲間という意識はあるが、だからといってダンジョンで簡単に死ぬような者ではないと、一定の信頼はあった。
そして爆竹を試したいからダンジョンに行きたいわけでもなかった。そんなことは次の日にでもできるし、何ならこちらの爆竹用に義手を微調整したかったはずだ。
ならば、なぜダンジョンに行くのか。狼はそれがわからなかった。
ダンジョンに着いた時、狼は既に違和感を覚えていた。
鉄臭い香りが鼻孔に入ってくる。狼は珍しく独り言を吐いた。
「……血か」
狼はダンジョン内を風のように駆け、下層へと向かう。
すると、そこにいたのだ。
いつぞやの祭りの時、果敢にも大猿に一人で挑んでいた小さき兎が。
しかし様子がおかしい。その兎は意識がないのか、ダンジョンの道の真ん中で倒れ伏している。
狼の嫌な予感はこれだったのだろうか。そこらじゅうの壁が盛り上がり、モンスターが出現する。小さい鬼、ゴブリンだった。簡単な相手。
――だが数が多い。
須臾の間に囲まれる。数を数えるのも馬鹿らしい。狼は小さき兎を庇うようにして真ん中に立ち、刀を抜いた。
ゴブリンに囲まれた状態。いくら熟達の忍びと言っても、独りでこの数を同時に相手にするのは厳しいものがある。
だからこそ狼は左手の義手を頼った。
すでに火の付けられている爆竹の導火線は、まさしく狼達の周りにいるゴブリンの余命。
導火線の火が今にも爆竹に移り、破裂するという時。狼は体を回転させるようにして遠心力を利用し、爆竹を自分の周りに打ち出した。
その刹那。ゴブリンたちは何が起こったのかもわからなかっただろう。目の前には閃光、そして耳を劈く破裂音。ゴブリンたちは小さな手で耳を抑え、目をつむる。
そして、忍びはその隙を見逃しはしない。
流れるようにゴブリンたちの首を刎ね、一瞬にして周りの小鬼たちは黒い霧となった。
コトコトっと小さな魔石が落ちる。狼はリヴェリアに習ったようにして、ダンジョンの壁に傷を付け、兎に寄る。
しかし違和感がある。狼の鼻には未だ血の匂いはするものの、この兎は血を流している様子はない。何故倒れているのかというのも気になるところだが、血の所以をたどるには、この兎を置いて行くしかない。
だが置いて行くとなると、再びモンスターが出現した時に守る者がいなくなってしまう。
そんな時、タイミングよく奥から走ってくる者たちが二人いた。リヴェリアとアイズだった。
「…狼。大きな音がしたと思ったら…。こんなところで何をしている」
「あ、その子」
「ん、知り合いか」
アイズはリヴェリアにそう問われ、そこに倒れている兎こそが、ミノタウロスに襲われていた時、自分が助けた子だと説明する。
その説明を受け、リヴェリアも兎に寄った。
「…どうやらマインドダウンのようだ。後先考えずに魔法を使い続けたんだろうな」
リヴェリアがそこまで説明した時。
「……任せる」
そう言って狼は走り出す。ちょうどリヴェリアたちが来た方向だ。
そして走り出した狼を見て、放っておけないとばかりにリヴェリアもその後を追いかけた。
「おい!どこに行くオオカミ。その先はお前にも教えていない階層だぞ」
「………」
狼はリヴェリアの言葉を受けてもなお駆けた。
リヴェリアは舌打ち交じりに言った。
「アイズ、ポーションはお前に預ける。私はオオカミの様子を見てくる。なにか起きているようだ」
「…わかった」
アイズは了承し、小さな兎が起きるまで面倒を見ることにした。
一方走り出した狼、そしてそのずいぶんと後ろにリヴェリアがいる。
急に走り出した狼にリヴェリアは問う。
「オオカミ、何が起きている。説明しろ」
「……血の匂いだ」
「…まさか!?」
忍びは鼻が利くのだ。
リヴェリアは察した。さっきのマインドダウン状態だった冒険者の他にも、どこかでモンスターにやられている者がいる。
しかもこの道は自分がアイズと帰ってきた道。何故気づけなかったと自責の念に駆られる。
そうして狼の後に続いて8階層に到達したとき。リヴェリアの嫌な予感というモノが的中する。
多くの冒険者が通る道を逸れた所、そこに血の匂いの元であろう冒険者が倒れていた。
ゴブリン、コボルトから嬲られるようにして囲まれ、その体は力なく地面に倒れ伏し、目の輝きは失われていた。
狼は構えた。
距離十数メドルはあろうかというところをコンマ数秒で到達する。
狼らしからぬ不自然な構えから発せられたのは、高速の突きだった。レベル6のリヴェリアから見てもその切っ先は捉えられない。
気が付けば、その切っ先はゴブリンの喉元を貫いていた。しかし狼の攻撃はまだ終わったわけではない。まだ狼の周りには他のゴブリンやコボルトがいたからだ。
狼は貫いたそのゴブリンを踏み台にし、さらに大きく飛び上がる。そして倒れ伏している冒険者にしか届かないであろう声でこう囁いた。
「――秘伝、桜舞い」
その刹那。狼は舞うように回転し、その回転に任せて刀を薙ぐ。刀の軌道上にいたモンスターは黒く霧散し、瞬く間に倒れた冒険者の周りにいたモンスターは消えてしまった。
狼が地面に着地する時、遅れて桜の花弁も舞い落ちる。
そしてそれがきっかけとなったのか、倒れている冒険者の目に輝きが取り戻され、意味もなく、血だらけの手を虚空に向かって伸ばしていた。狼の囁いたその技の名前に呼応するように、最後の力を振り絞るようにしてこう言った。
「……綺麗」
倒れた冒険者、狼の技、動揺することが多かったが、リヴェリアは我に返ったようにして倒れた冒険者に寄る。
「…だ、大丈夫か!」
少女の伸ばした手は力なく地に落ちる。
既に血で赤黒く染まったローブを脱がせると、真白いフードの中からは、もう既に息絶えた少女の顔が見えた。
石竹色の髪は短く切られており、フードのおかげか血や汚れが一切ない。寧ろひどく損傷していたのはその小柄な体の方だった。脇腹や首元にはコボルトの爪痕が残っており、防御をする間もなく一閃されたのだろうと見受けられた。
残心、納刀した狼も足早に駆けり寄る。
「……大事は」
リヴェリアは目を閉じ、悲しげに首を横に振った。
「我々の落ち度だ。この道を通ったにも関わらず、この少女に気づいてやることすらできなかった…」
「…連れてかえる」
「……あぁ」
そう言って狼は少女を抱え、来た道を戻ることにした。
兎が倒れていた場所に戻った時、既に本人とアイズはいなかった。恐らく、どちらもダンジョンを後にしたのだろう。
狼はもう既に息のない少女を抱え、ダンジョンを出た。
真っ暗な中、魔石で輝く街灯のみが、狼とリヴェリアと息絶えた少女を照らす。
明かりの下に出たことで、色々分かったことがあった。
「このローブについているエンブレムは…」
リヴェリアはそう呟く。
「…何かわかるのか」
「あぁ、このエンブレムはミアハ・ファミリアのものだ」
「…ミアハ」
「青の薬舗という店で回復薬を主とした小さい道具店を営んでいる」
「………」
リヴェリアと狼は、青の薬舗に向かって歩き始めた。
日が沈んでかなりの時間が経った。もしかしたらミアハ・ファミリアの者もこの少女を心配して捜索しているかもしれない。
案の定、青の薬舗の明かりはまだ付いていた。
寂れた木のドアをノックすると中から青年と思しき声が返事する。
木のドアが勢いよく開かれ…
「遅かったじゃないか、いったいどこに…」
青色の髪、美麗な顔立ち。しかし、その整った顔が歪む。
「……ヨシノ」
その掠れたような悲痛な声を聴いて、リヴェリアはいてもたってもいられなくなる。
「すまない。助けが遅くなってしまった。我々が見つけた時には…もう」
「ロキ・ファミリアの……と、とにかく中に入ってくれ」
中に入った狼は、神ミアハの指示した場所に、もう冷たくなってしまった少女を安置する。
「…話を聞かせてくれ」
ミアハのその言葉に、リヴェリアは事細かにそのときの状況を話した。
すると、ミアハは安心したように言葉を零した。
「…そうか」
ミアハは続ける。
「こちらこそすまない。今朝から姿が見えなかったうちの団員を見つけてくれて。君たちの
そう言いながら、ミアハはヨシノと呼ばれた少女に白い布を被せる。
「我々がもう少し早く気づいていれば、彼女は助かった。我々の落ち度だ」
「君たちは優しいな。だが過ぎた時間は取り戻すことはできない。それを一番よく理解しているのは…我々神だ。だからそう言ってくれるな…」
「………」
リヴェリアは黙ってしまう。
そして気を使ってかミアハはこう言う。
「今日はもう遅い。詳しい話はまた明日にしよう。今日は帰ると良い…」
優しさは感じられるものの、感情の籠り切っていないその声に、リヴェリアと狼はただただ従うことしかできず、青の薬舗を後にした。
誰もいなくなった青の薬舗。
ミアハは顔を歪め、安置されているその少女に寄り添う。
「いったい、どうして…」
その声は虚無に消えていく。
このままでは彼女には申し訳ない。せめて体だけでも綺麗にしてやろうと思い。ミアハは立ち上がる。
綺麗な布を濡らし、少女の血を拭き取ってやる。
そうして少女の手のひらを広げた瞬間。もう既に力のないその手のひらからは、桜の花びらがヒラリと舞って落ちた。
「…――そうか」
何かを悟ったミアハは、桜の花弁を床から掬い上げ、綺麗にした少女の手のひらに戻してやった。
続きます。あと誤字ってたら申し訳ありません!
ここまで読んでくださってありがとうございます。現在自分のTwitchでは、フォロワー25人を目標に、現在21人の方がフォローしてくださっています。配信では、雑談メインにゲームをしたり、ギターを弾いたりしています。リクエストがあればそちらも…。もしよろしければ何卒何卒フォローだけでもしていってください。そして本当にもしよろしければ、配信に遊びに来ていただいて一緒に遊んでください!一応、フォロワーが増えれば更新速度バフが付きます笑
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一応、参考程度に配信の切り抜きを載せておきます1分程度ですのでよろしければ見てやってください。
切り抜き→https://youtube.com/shorts/L4lQIw9m7Qs?feature=share