隻腕の狼、続く主は道化師か   作:森本様

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 本当の繋ぎです。短いです。ごめんなさい。

【ご報告】
 前回前々回と、独自キャラについて書きましたが好評で何よりでした。ありがとうございます。
 さて、毎度のことながらお気に入り登録、評価、感想など、大変励みになっております。感想なども適宜ご返答いたします故何卒。

 諄いようですが、Twitch配信においても現在目標フォロワーは30人なのに対し、28人の方がフォローしてくださっています。目標までもう少しなので、何卒ご慈悲を恵んでくだされ。本当に本当にお願いします。
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あと、最近コメントしてくださる方や見てくださる方が増えてきてか嬉しいです。ありがとうございます!

 毎度、誤字報告ありがとうございます!!世界七不思議!


変色

 

狼は、未だ未熟だった時のことを思い出す。

 

思い出すのは、いつも義父の言葉であった。

 

「飢えた狼よ、忍びが相手を殺める時、必ず忘れてはならないものがある。それは何か」

 

「………」

 

未熟な狼故、わからなかった。

 

義父は直ぐに口を開く。

 

「慈悲だ、飢えた狼よ。殺すのであれば苦しむ間もなく殺してやれ。ひと握りの慈悲だけは忘れてはならぬ、殺した瞬間に供養できるのは、殺した本人だけであるが故な」

 

だから。だから狼は義父を斬った時も祈った、育ての親の冥福を。

 

――ひと握りの慈悲だけは忘れてはならぬ。

 

その言葉は、今の狼も忘れてはない。忍びとは、死の美とは言わない。殺すことに美しさを求めていない。その行為は汚らわしい。正面から戦うことをせず、闇討ちや道具を使って殺すこともあった。だが、だからこそ、最期くらいは苦しむことなく殺し、冥福を祈り、慈悲をもって殺すのだ。たとえそれが邪道であっても。

 

ただ、助けられたはずの命が目の前でなくなるというのは、今も昔も狼には考えるところがあるのだ。

 

葦名にいた折も、助けられなかった命や、目の前で亡くなっていく命が幾つかあった。

 

しかし、そこで止まっては居られない。迷ってはいられなかった。

 

忍びの掟に従い、主に従い、主を守り、負けても復讐を誓い、必ず打ち勝った。

 

だが、此処には主はいない。仮の主であっても真の主ではない。だが役に立つことはできる。

 

狼はただ、そう思いながら服を着た。

 

蒼白の空間の中、ロキは羊皮紙に何かを映す。そして、アイズはそれをまじまじと覗いている。

 

「こら、アイズたん、オオカミのステイタスを覗き見ようとすな」

 

「…でも、気になる」

 

「気になってもアカンもんはアカン」

 

「………」

 

アイズは頬を膨らませて部屋を後にする。

 

「……何か分かったか」

 

狼はロキにそう問う。

 

「……ま、まぁちょっとは成長したんちゃう。つ、強くなってるで、確実に!」

 

語尾を強調してそういう。

 

「……そういうことではない」

 

「さ、次はアイズたんの番やから。散った散ったぁ」

 

ロキは強引に狼を部屋の外に追いやり、次はアイズを部屋に呼んだ。

 

アイズが来るまでの間、ロキはその羊皮紙を見て考え込んだ。

 

「……やっぱり真っ白、なるほどなぁ、ウチらの預かり知らん土地、世界ねぇ。やからオオカミはこっちの物差しでは測れへんっちゅうことかいな」

 

アイズがノックして入ってくる。

 

「…どうかしたの?」

 

「な、なんもあらへんよぉ!」

 

ロキはそう言い、狼のステイタスを映した羊皮紙をくちゃくちゃにしてポケットに突っ込んだ。

そうして、アイズのランクの昇華も、この晩に行われたことだったのだった。

 

そして次の日、狼はリヴェリアとミアハ・ファミリアの青の薬舗に向かった。

 

ミアハは狼とリヴェリアを招き入れた。

 

「昨日の今日で済まないが、また詳しい話を聴きたい」

 

ミアハがそういった時、この場には4人の者が集まっていた。

 

「ナァーザ・エリスイス。ヨシノの件、ミアハ様から聞いたよ。此処まで連れてきてくれてありがと」

 

そう淡泊に自己紹介した。

 

ナァーザは未だに目が赤い。リヴェリアや狼がどうこう言うことのできることではないが、泣き腫らしたのだろう。

 

ミアハが辛そうにしていることや、ナァーザが目を腫らしていることから、狼やリヴェリアが連れ帰った少女は、ここでよく愛されていたことがよくわかる。

 

「…済まなかった。もう少し早く気づくことができれば、彼女を助けることができたかもしれない」

 

リヴェリアは俯きながらそう言う。

 

しかし。

 

「や、やめてくれ。彼女を連れ帰ってきたことだけでも感謝しているんだ。それに、もう過ぎてしまったことは仕方がない」

 

ミアハはそう言う。

 

「そうだ、君たちロキ・ファミリアの人達が気づかなければ、私はこうして泣くことも許されていなかったかもしれない。だから、彼女のためにも、謝らないで」

 

ナァーザも静かにそう言った。

 

そうして、当時の状況、彼女がどうなっていたかを、今一度事細かに伝えた。

 

「……ごめん、ちょっと席を外す」

 

ナァーザは生生しい話と、自分の過去からか、この場にいることができなくなっていた。

 

「君たちにも、彼女の事を知っておいてほしい」

 

そう語り始めたミアハは、ソメイ・吉野と呼ばれる小柄で綺麗なピンク色の髪をした人間(ヒューマン)の事を話し出した。

 

ミアハが知る限りの彼女の過去、性格、好きな物。ナァーザとの関係、ミアハとの関係。

 

「そうか、花が好き…だったのか」

 

リヴェリアは頷く。

 

「…そうだ、ヨシノが握っていたこの花。君たちは何か知っているか」

 

ミアハは、もう既に黒く変色してしまっている桜の花弁を狼達に見せる。

 

「……桜」

 

狼はそっと呟く。

 

「そう、ヨシノは桜が特に好きでな。実物を見てみたいといつも言っていた。どういうわけか彼女はこれを握り締めていた」

 

「………」

 

狼は黙ってミアハの話を聴く。

 

「…だからなのか、この花弁を握っているヨシノは、どこか幸せそうだった。モンスターに嬲り殺しにされても、ヨシノは、最期は笑っていたんだと思う」

 

涙声で、ミアハはそう言った。

 

「ありがとう、詳しい話を聴けて良かったよ。少し遅れたけど、この件をギルドに報告して葬儀を行うことにした」

 

「そうですか…ご冥福お祈りします」

 

リヴェリアはそう言うと、席を立つ。

 

「本当にありがとう。君たちの事は感謝してもしきれない」

 

リヴェリア達は青の薬舗を後にしようとする。するとミアハは。

 

「少し待ってくれ、こんなものしか用意できないけど、君たちは恩人だ」

 

そう言ってポーションを渡そうとする。

 

「ちょっとまってくれ、これは頂けない!」

 

リヴェリアは困ったようにしてそれを拒む。

 

「それなら、何なら受け取ってくれるんだ、俺の気が収まらない」

 

狼は、青の薬舗の薬の調合場所を見る。すると。

 

「…あれはなんだ」

 

狼は、紙切れのような物を指さす。

 

「…これはもう使ってしまったただの紙だ。少し新しい薬品を開発している関係でな、その薬品を濾したりして使った紙だ」

 

「………」

 

狼は黙って頷く。

 

「白檀や金木犀なんかを使っている薬品だ。ほら、匂いが強い植物だろ。だから怨霊などに効く薬品を開発しようと思ってな。ただ薬品は未完成、こうして薬品の浸った紙だけが残ってしまう」

 

「…これをもらおう」

 

狼はそう言う。

 

「…なるほど、君たちは優しいな。分かった。何も聞かずにこれを渡そう。本当にありがとう」

 

礼を受け取ると、今度こそ本当にミアハの店を後にした。

 

外に出るとリヴェリアは言う。

 

「その紙を何に使うんだ、オオカミ?」

 

「………」

 

狼は黙ってその紙を爆竹の入っているポーチに入れた。

 

 

館に帰ると、狼は直ぐにレフィーヤに呼ばれることになるが、それはまた先の話。

 

 




ここまで読んでくださってありがとうございます。この話は前回前々回の話の後日談兼次への繋ぎです。短いですがよろしくお願いします。全然関係ないですが、桜の花は変色すると白くなったり黒くなったりしますよね!

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あと誤字ってたらごめんなさい。
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