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はじめました。
18階層、リヴィラの街。此処はならず者の街だ。
泥臭い街、汗臭い冒険者、貧乏臭い店主。良くも悪くも、そういった臭いのする街。木の板で乱雑に組み立てられた家、店、酒場。整備されていない道、誠実さのかけらも感じられない店主。どれをとっても地上とは対照的だった。
即席でできたパーティがここに到着したとき、さっそく皆はアイズの情報を巡って聞き込み調査を開始した。
狼は石畳の影もない、凸凹の泥の道を一人で歩く。だが、やはり匂う。泥の匂い、湿気の匂い、汗臭い匂いに交じる、騙す者の匂い。騙す者にも生活がある。騙される者にも生活がある。騙す者を嫌う者もいれば、騙される者を叱咤する者もいる。ただ、それもこの街の情緒なのだ。
狼はこの匂いをよく知っている。ここまで強烈な悪臭でないにしろ、半ば人を騙し、金をとり、それを元手に一山を当てようとした男の匂いだ。ただ、この悪臭を香しいと感じる者共がいる。それがこの街を形成しているのだ。
―此処は、ならず者の街だ。
レフィーヤやベートはアイズのことを聞き込みに行く。道具屋、換金所、常に開店しているような酒場。しかし、どいつもこいつも薄汚い笑みを浮かべ、なにか交渉する気で対価を要求する。本当のことを知っていても、知っていなくても。ベートが睨みを利かせると、店主は口を滑らせるが、出てくる情報はどれもこれも有用なものではない。有用な
ならず者の街と言えども、ならず者とならず者の協力関係は築かれている。とある武器屋で情報を聞くと、対価を要求し他の道具屋を紹介される。「あそこの道具屋の方が詳しいと思うぜ」と。そしてその道具屋で対価を払うと、また別の酒場を紹介される。そうたらい回しにされると、ならず者ひとりひとりの利益は少ないが、街全体としては潤う。そういう協力関係が築かれているのだ。
だからこそ、ベートは冒険者としての知名度と二つ名を武器に睨みを利かせた。
そうして得られた情報こそが、ローブを着込んだ集団と下層に向かったということだけ。総合的に見ればかなり全貌が見えてくる。アイズの伝言によると、とある依頼を受け、24階層に向かう、とのことだった。そして道具屋を脅して手に入れた情報では、ローブの集団と下層に向かったということ。つまり何者かの依頼を受け、ローブを着た集団と24階層に向かったということだ。そして、ロキから命じられたのは、24階層の調査及びアイズを連れ帰ること。
レフィーヤとベートは、一度情報を整理し、フィルヴィスと狼と合流しようと決めた。
「おい、そこの旦那」
ドスの利いた声。狼が声の主に視線をやると、その店の店主は胡散臭そうに笑う。
小太り、身長はそこそこ、頭は禿げており、目は垂れているが右目に眼帯を着けていた。見れば見るほど胡散臭い。狼はそういう印象を受けた。
「……なんだ」
狼が返すと、汚らしい店構えの中でカウンターに肘をついて店主が笑う。
「その佇まい、第一級の冒険者とみた。オレは目がいい、目が利く。この街で何人もの冒険者を見てきた。だが、あんたは格別だ。寄ってきな、安くするぜ」
垂れ下がった看板、狼には何と書いてあるかは理解できない。と、それ以前に胡散臭い。目がいいだの目が利くだの、この街の呼び込みの常套句だった。褒められた相手は悪い気はしない。その言葉が嘘であれ本当であれ、儲かればそれでよし。儲からないのであればまたほかの冒険者を呼び込むだけ。
狼は疑問に思う。汚らしい店に飾ってあるのは、武器や防具の類ではなく、ポーションの類でもない。湾曲した角や綺麗な毛皮、悪臭を放つ爪や何やら禍々しい雰囲気を放つ玉などが置いてある。
「……ここは」
「道具屋、といっちゃあ簡単だが、此処はモンスターのドロップ品を売買する場所だ、地上じゃ出回らねぇような珍しいのもあるが…。どうだ、安くしとくぜ」
「………」
胡散臭い、と、狼は小さく唸った。そうは思いつつも、狼の目に留まる物もあった。
「…これはなんだ」
狼は指をさす。すると、しめたとばかりに店主の声色が高くなり、胡麻をする様な仕草を見せる。
「おぉ旦那。これを見つけるとはお目が高い」
店主は高くなった声色のまま続ける。
「これは下層のモンスター、ミスティクロウが落とす羽だ。なんでも霧のように姿を隠す大型鳥類のモンスターらしいぜ。剣も魔法も当たったと思ったら羽を残して消え去っているんだとよ。あぁん、じゃあこの羽はどうやって見つけてきたかって、んなぁこたぁしらねぇよ。どうだ今ならこれくらいにしといてやる」
店主は下品な手つきで紙に数字を書き、狼に見せる。いくら文字の読めない狼とはいえ、リヴェリアから簡単な数字を学んでいた。だからこそ、その値段の大きさが衝撃的だった。いったい、いくつのはち切れそうな銭袋の紐をほどけばよいのだろうか。
今の狼には、とてもじゃないがそのような手持ちはない。せいぜいその羽の一片をもらえれば御の字といったところだろうか。しかし、リヴィアの街の店主はすっぽんのように客を放さない。値下げもないままいろいろな商品を芋づる方式に勧めてくる。この場に血の煙があったとしても逃げ切れるような雰囲気ではなかった。
そこに幼げなエルフの少女が現れる。
「オオカミさん、こんなところで何をしているんですか?」
怒号までとはいかないにしろ、少し怒りを孕んだ声、しかしそれ以上に狼を心配していた声だった。
「もう行きますよ」と、狼の袖を引っ張って店を離れる。離れ行く狼達を見て、店主は舌打ちをする。
そしてしばらく離れた所。
「まったく、気を付けてください。この街は地上とは違うんですから」
「……すまぬ」
レフィーヤはため息を吐き、狼をベートとフィルヴィスがいる集合場所へと連れて行った。
昼からダンジョンに出発し、かなりのハイペースでこの階層までやってきた。しかし第一級冒険者の集まりとは言えど、この階層に来るまでにはかなりの時間もかかる。いや、この階層に来るまでは簡単だったのだが、そこから情報を集めるのに時間をかけてしまったのだ。主にこの街の店主が情報を渋る所為で。
それ故、昼に来た時には明るかったこの街も今は暗くなり、この街を照らすのは魔石でできた街灯と、昼の内に光を溜めた輝く宝石と植物のみだった。なぜ地下であるのに昼のように明るく、また地上のように暗くなってしまうのか、狼はそんなことを疑問に思っていたが、そんなことを気にしているような場合ではなかった。
集合場所は街のはずれで人の気配もない。ただそんな場所にあるのは景色を見渡すことのできるテラスのような場所だった。そしてそこには、何やら熱くなって吠えているベートと、その罵詈雑言を聞き流しているエルフの姿が見えた。ひとしきりに言いたいことを言ったのか、ベートはイライラとした姿を見せながらまた別の場所に向かう。
そんな姿を見かねたのか、レフィーヤはフィルヴィスと何やら話し込んでいるのが見えた。
しかし、狼が介入する余地はない。介入する必要もない。次に狼が皆と対面したときには、この即席のパーティの雰囲気は、幾ばくかマシにはなっているのだろう。
即席でできたパーティは情報を整理した。
ロキに命じられたのは24階層の調査とアイズを連れ帰ること。この街で得られた情報はアイズはローブを着た集団と下層に向かったということだ。そしてアイズの伝言によると、24階層でのモンスターの大量発生を調査してほしいとの依頼があり、その事実を確認しに行くということだった。
つまり、ベートたちがすることは24階層で大量発生しているモンスターを謎のローブの集団と調査しに行ったアイズを連れ帰るということだった。情報を整理し、このパーティは下層に向かう。
特に何か起こることもなく、狼達は24階層に到着した。
すぐさま異変に気が付いたのはベートと狼だった。
モンスターがいない。それどころか、モンスターであっただろう魔石がボロボロと落ちていた。24階層は上層のような洞窟のような作りにはなっていない。開けていて一定の自然がある。そんな広々とした空間に集めれば山のようになるだろう魔石が落ちているのだ。
それに……。
「足跡だ、追うぞ」
冒険者の足跡。それを見つけたベートは追うことを提案する。狼達は無言で頷き、ベートについていく。
「…クソッ、
だが、その
ベートたちは意を決して中に入る。
「…なんなんでしょうか…此処?」
「知るか、黙って付いて来い」
レフィーヤは杖を胸の前で構え、常に臨戦態勢だ。それでも不安げに零した声に、ベートは興味無さそうに返す。
すると…。
―ゴゴゴゴッ
緑の洞窟を進む。そして奥に進むにつれ轟音のような何かが聞こえる。
洞窟が揺れる。壁や地面が振動し、何かが起こっていることが察せられた。
「………」
狼が鯉口を切る。
そしてフィルヴィスが口を開いた…。
「戦っているのか…」
「この壁の向こうから魔力を感じます」
フィルヴィスとレフィーヤは緑の壁に寄る。
この轟音は何かが何かと戦っている音だったのだ。
ベートがエルフ二人を肩で退かせる。
「オラぁぁ!」
ベートが植物らしき壁を思い切り蹴り破る。
そこにはこれまで進んできたような洞窟とは違う広い空間があった。
まず目に入ったのは、大きな怪しい光を放つ水晶に、巨大な植物のよう何かが巻き付いている光景。そして、
ベートはその空間にいる冒険者達を見て舌を打った。
「…チッ、ヘルメス・ファミリアの連中か。アイズはどうした?」
「剣姫とは逸れた、お前たちは?」
そう言った問答をして互いの状況を共有している。
そんな中、巨大な妖しい水晶に巻き付く植物、その葉の上から皆を嘲笑うかのように見下し、不快に笑う人物がいた。
後から合流した誰もが、コイツが黒幕かと察した。
不敵に笑う人物は、訳の分からない演説をしながら徐に仮面を取る。
レフィーヤが隣を見ると、そこには、肩を震わせているフィルヴィスの姿があった。
「オリヴァス・アクトッ!!」
悲鳴のような声がこの緑の空洞に劈く。
フィルヴィスは何も言わずに魔法を詠唱し始め、それを放つ。
魔法の閃光は闇を吸収しながらその波紋を広げ、オリヴァス・アクトと呼ばれた男に向かって迷いなく奔る。
しかし…。
「ッ!?」
その男は、魔法を片手で受け止め、あろうことか、それを魔法の放った本人に向かって反した。
オリヴァスに向かって奔ったはずの魔法は、須臾の間に来た道を戻り、フィルヴィスの近くの地面に着弾し、その衝撃が魔法を放った本人を襲う。
辺りに砂埃が舞い、魔力の波が徐々に消える。
駆け寄るレフィーヤにフィルヴィスは制止の手を向ける。
「私は大丈夫だ…それより…」
またもやオリヴァスが不敵な笑みを浮かべ、まるで指揮者の様に腕を掲げる。
「…ッ!?」
しかし、その瞬間、オリヴァスは苦悶の表情を浮かべる。
オリヴァスの首には、一閃の刃。ちょうど首の後ろから喉元に向かって一突き。
其の刃を突き立てたのは狼だった。
忍びは耐え忍ぶ者であると同様に、闇に忍ぶ者。慈悲を向けられた本人が自らが死んだと気が付くより早く、殺す。たとえ其の手段が、邪道であったとしても。
しかし、狼は異変を感じた。――手応えがない。
そしてなにより血が出ない。
狼の行動は早かった。自分と相対している者が敵であると知れば、聞くに堪えない演説をしている間に後ろから忍び寄り、刃を突き立てた。
しかし不穏を感じ取り、離脱しようとした時、その刀を引き抜こうとする。
「……っ」
だが、オリヴァスは原理のわからない方法で自分の首の筋繊維を締め、狼は刀を引き抜けない。
たった数瞬。たった数瞬だったのだ。
狼はすぐさま刀からその手を放し、その場から離脱しようとする。
しかし、相手は血すら出さない人ならざる者。首を突いて死なない、手応えがない。この感覚を狼は知っている。だがそれそのものではない。まだ決めつけるには早い。
そんなことを考えている間などなかった。
狼の体に衝撃が走る。気が付けば、狼は大量の血を吐きながら壁に叩きつけられていた。それも…、並の冒険者なら絶命するほどの。
――狼の鼓動は…次第に小さくなっていく。
「オ、オオカミさん!!」
レフィーヤは叫ぶ。
狼が叩きつけられたところはちょうどレフィーア達が陣形を組んでいる正反対の所だった。
行きようがない。
「畜生が!」
ベートが汚く吠える。
しかし、オリヴァスはまた壮大な身振り手振りと共に指揮者を演じる。
「…ただの人間如き…無駄だ」
首に刺さった刀を引き抜き、倒れる狼に向けて投げ棄てる、そしてほぼ同時にまたもや地面が揺れる。
オリヴァスは言葉を紡ぐ。
「これがあの方からいただいた力だ。その身に刻むがいい!」
轟音。地面が揺れる。それも先ほどの比ではない。
「来るぞ!」
ヘルメス・ファミリアの誰かがそう叫んだ。
地面からあの食人花が大量に生えてくる。
「陣形を崩すな」
これまでの比ではない量の食人花。それが四方八方から攻撃を仕掛けてくる。
ヘルメス・ファミリアの人間が大盾でその攻撃を防ぎ、犬人が短剣で食人花の蔓を切り裂く。団長であるアスフィは団員に指示を出しながら戦う。
フィルヴィス、レフィーヤは魔法で援護をし、ベートは個の力で食人花を蹂躙する。
――しかし。
全くといっていいほど先が見えない。皆の視界が緑一色で埋まる。それほどの密度で食人花が増え続けている。
一体倒すごとに三体増えているような、そんな先の見えない戦いだった。この緑の壁がある限り、オリヴァスに到達することは不可能だ。
増え続ける一方の食人花とその攻撃。ヘルメス・ファミリアの団員には脱落者が出始める。
一人戦力が無くなればそれだけで陣形は崩れ、そこから陣形そのものの崩壊へとつながる。先ほどまで後ろを守ってくれていた団員がいなくなれば、それだけ正面に対する注意が削がれてやられてしまう。負の連鎖だった。
ヘルメス・ファミリアの団長、アスフィも早い段階で時間の問題だろうと気が付いていた。いや、気が付いてしまったのだ。いくらロキ・ファミリアが合流しているとはいえ、謎の空間、謎のモンスターそしてそれを操る謎の力を有した、闇派閥の一人。地の利は完全に向こう側のものだった。
何か逆転の一手がなければ…最悪の事態は免れない。
――トクン
鼓動の音がする。
優しい鼓動だ。
―狼よ、我が血と共に生きてくれ…
この御力は、竜の御子の御力ぞ。
野望高き者なら誰もが欲しがった、人ならざる者の、人の道を外れる御力。
――トクン
辺り一面に桜が舞う。
高い密度で蠢く食人花、その緑をさらに覆いつくす桜色。
誰もが見惚れる桜の吹雪。
「……綺麗」
戦いの最中、レフィーヤはそう呟く。
フィルヴィスも、アスフィも、皆目を見開いてその景色を見た。誰もが異常だと思ったが、誰もがその異常に心を奪われる。
ただ二人、そんな異常の中でも戦火の緋色を絶やさない者達がいた。
―ピンチになったら使うてや。
ロキの言葉が思い出される。
ベートは舌を大きく打つ。そしてそれがこの時だと確信した。
「チッ!喰らいやがれ!」
ベートが胸から取り出したのは緋色に輝く魔剣、炎が轟轟を燃え盛るのを、そのまま宝石の中に閉じ込めたような一品。
オリヴァスは嘲る。食人花をすり抜けて投擲される魔剣はオリヴァスを捉えるどころか、魔法も発生させないまま明後日の方向に飛んで行ってしまう。
「…バカな者たちだ」
「バカはお前だ」
ベートはニヤリと笑う。これまでオリヴァスに嘲られた分をそっくりそのまま返すように。
魔剣は魔法を発生させる間もなく、誰かの手に渡る。そして唯一その方向にいる者が在る。
―狼だった。
「………」
狼は良く見ていた。地下水道でのベートを。そしてそこで食人花に向けて放ったあの炎を…。
だからこそ、その使い方は良く理解していた。
狼は力を込めて、それをオリヴァスに投擲して走り込む。
すると、魔剣は瞬く間に弾け、中に封印していた魔法が発動される。
轟と燃え盛る炎はあたりを火の海へと変える。
だが、オリヴァスはそれでも嗤っていた。
「何度言えばわかる。このようなもの!」
フィルヴィスの魔法を跳ね返したように、オリヴァスは自分の周りで燃え盛る炎を狼に返す。
「今度こそ死ね」
そう静かに言い放つ。
―だが。
「…なにッ!?」
反したはずの炎は狼を襲うことはなく、その者が持つ刀に吸われていく。
気が付けば狼の刀は――炎を纏っていた。
葦名の土壌で培った力。
それは炎を炎のまま、瑠璃の炎を瑠璃の炎のまま終わらせない力。
炎を放ち、その余韻を刀に纏い相手を斬る業。
「…嘘、ベートさんみたいに…」
レフィーヤが驚嘆する。
炎の壁を炎の刀が一閃する。急な出来事でオリヴァスも反応できていない。
――三つ、恐怖は絶対。一時の敗北はよい。だが手段を選ばず、必ず復讐せよ
狼の目には、復讐という名の緋色が灯っていた。
炎を纏いしその姿は――まるで修羅。
舞い散る桜は総て燃え上がって灰となり、それまで舞っていた桜吹雪は灰の霧雪となる。
「うッ!?――――」
オリヴァスは気が付かなかった。自分が切られていることに。
ダメージを受け過ぎたのか、膝をついて回復に専念する。しかし、斯様な隙を誰が見逃すだろうか。
狼がその切っ先をオリヴァスに向けようとした時。
またもや轟音と共にこの空間に放り出されたものが二人。
先に入ってきた。いや、押し出されたかのようにはじき出されてきたのは、怪しげな雰囲気を纏った赤毛の女だった。
そしてその次に現れたのはアイズだった。
赤毛の女はアイズを睨みながら、オリヴァスへと向かう。
オリヴァスは援軍が来たとばかりにクツクツと笑った。
「ククク、手を貸せレヴィス、こいつらにあのお方の力を示すのだ」
天を仰ぐ様な仕草を見せる。しかし、レヴィスと呼ばれた赤毛の女は氷のような目でオリヴァスを見る。
「…お前はあれが女神か何かだと思っているのか?」
「……何?」
オリヴァスは疑いの目をレヴィスに向ける。
――その瞬間。
「…うぐッ…ぁぅ」
レヴィスは手を槍の様にし、疲弊したオリヴァスの胸の真ん中を貫く。
かと思えば、そこから抜き取られた手にはオリヴァスの胸に埋まっていたであろう魔石のようなものを取り出し、それを自分の口へと運んだ。
皆がその行動に驚いている内、レヴィスは
「しばらくは力を蓄えるとしよう…。アリア、59階層に来い」
「………」
アイズは戦いの表情の中、少し困惑と決意が固まったような表情を見せる。
そして誰かが叫んだ。
「た、退避!」
皆早々と出口に向かう中、アイズは最後まで瓦礫に埋もれ行くレヴィスを眺めていた。
いったい、59階層に何が待っているのだろうか。
この地でも、竜の桜が舞った。