自分の作った小説の主人公に転生   作:ロイ1世

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新年、あけましておめでとうございます。今年もやや失踪気味の作者をよろしくお願いします。


監査

 外車に乗って監査先の横七に行く。道中はかなりの山道で、横須賀とは名ばかりの辺境鎮守府ではないかと思ってしまった。

 

 横七に着く。ゲートには歩哨が二人。武器は…古いな。供給品ではない。

 

「止まれ、免許証と身分証を見せてもらおうか」

「これだ。監査のため大本営から来た」

「少しお待ちください…確認できました、どうぞ」

「ありがとう」

 

 免許証と身分証を返してもらうために手を伸ばした瞬間に盗聴器を中に投げ入れる。暇な歩哨は何か口を滑らすのではないかという意見が白露から出たからだ。

 

 車を止め、中に入ると中尉の階級章をつけた男が待っていた。

 

「私、横須賀第七鎮守府の憲兵を束ねています、宮本です」

「大本営で監査官をやっている、ロイ中佐だ」

「執務室まで案内します」

 

 監視役か。憲兵隊長なら色々知っているだろうし聞いてみるか。

 

「提督…義明提督とは親しい間柄ですか?」

「いえ、私も彼もここが初の赴任地ですし、着任してから日も浅いですから」

「憲兵隊として、この鎮守府の艦娘と提督はうまくやっていると思いますか?」

「ええ。まだ浅いですがそれでも信頼関係はあると思います」

 

 この辺が引き時かな、取り敢えず盗聴器を服に仕込んで以降は何も言わない。

 

「ここが執務室です」

「案内感謝する」

「いえいえ」

 

 扉を開けると中には義明がいた。

 

「君が監査官かね?わしが横須賀第七鎮守府提督、義明英朗だ」

「義明提督、数日間よろしくお願いします」

 

 執務室をぐるっと見回す。

 

 肖像画、無駄に高そうな机、雰囲気が浮いているシャンデリア風の照明…着任からまだ日が浅いことを考えればこれだけ裕福なのは私費を投じていなければおかしい。

 

「どうした?そんなに見回して」

「いえ、私が監査した鎮守府の中で一番華美でしたので」

 

 ONLY ONE で NUMBER ONE だぞ。喜べ。

 

「な~に、これくらい普通だよ普通」

「そうですか。ちなみにこの照明はどこの?」

「フランスの大手からだよ。オーダーメイドで輸入したからね、ざっと2億はしたね」

「ほお」

 

 はい黒。絶対艦娘売り飛ばしたよね?君の生まれの家は富裕層でないし戦果も芳しくないから給与も高級家具をバンバン買える程でない。

 

「取り敢えず艦隊運営に関する資料一式を頂けますか?」

「ああ構わないよ。確かここに」

 

 義明は机の引き出しから書類の山を出してくる。

 

「これでいいかね?」

「ありがとうございます」

 

 それを貰ったら部屋から出ていく。そしたら鎮守府内をうろつく。

 

 監査官の仕事の一つ、艦娘の様子を見る。艦娘は提督の仕事ぶりを見る良い指標と言われている。

 

 優秀であれば明るく笑い、普通…指揮が悪くても人望があれば四苦八苦しながらも必死に訓練し、何もかもが悪ければ絶望している。

 

 そして艦娘が多くいる場所と言えば艦娘寮である。外観は普通だが補修がされていない。入り口には憲兵が3人。

 

「止まれ、この先は艦娘寮だ。通行証はあるか」

「監査官」

「ッ、確認しました。どうぞ」

 

 憲兵は俺が中に入ったのを見ると何処かに連絡している。

 

「提督、監査官が艦娘寮に。…はい、分かりました。車の事故ですね、連絡します」

 

 おおっと、穏やかじゃないですねぇ。

 

「待て、立ち入り禁止だ」

 

 穏やかじゃないですねぇ…。

 

「監査の為大本営から来た、ロイ中佐だ」

「…監査官か。失礼した」

「いや、気にすることはないよ、長門君」

 

 戦艦長門、BIG7の一角。この鎮守府でもリーダーポジションか。

 

「幾つか君達艦娘にも質問したいことがあるんだ。いいかい?」

「構わない…」

「そうだね、取り敢えず食堂に案内してもらおうか。時間も良いしね」

 

 食堂なら艦娘が多くいるので質問相手に困らないし盗聴器を仕掛けられていたとしても音が多ければ聞き取れないだろう。

 

「分かった。案内しよう」

 

 通された食堂は割と普通だった。中には艦娘が多くいたが食器には普通の食事が載っていた。

 

 入ったときに視線が一斉に集まるがすぐに外れる。

 

「この席に」

 

 長門に席を指定される。机に盗聴器を仕掛けることはしない。どうせ探されたときにバレては意味がない。

 

「まずは私が話そう」

 

 一番手には案内をしてくれた長門。

 

 幾つか質問をしたが問題無いの一点張り。質問相手を何度も変えたがそれは変わらなかった。

――

 艦娘からの何かしらの証言は得られなかった。頼りになるのは執務室を始めとする様々な場所に着けた盗聴器や隠しカメラしかない。そう思って車に戻るとそいつはいた。

 

「…」

 

 そいつは車の下に潜って熱心に何か作業をしていた。

 

「おいお前、車出すからどけ」

「ヒッ!!」

 

 そいつは車の下から這い出て立ち上がろうとするがうまくいかず、転ぶ。その後は腰が抜けたのか尻もちをついたまま後退りするだけだった。

 

「大本営からの車に細工するのは反逆に等しい」

 

 言いながら追い詰める。距離は常に保ち、茂みの方へと。

 

「それをこの私が許すと思うなよ」

 

 塀に背中がぶつかり、これ以上は逃げれなくなる。そいつはこちらを怯えた目で見てくる。

 

「反逆は重罪、故に…極刑」

 

 サプレッサー付きのハンドガンを懐から出し眉間に合わせる。そいつは銃口に目がより、声なく泣く。

 

 静かに銃声が二度、波打つ。

 

 壁には二つの穴。そいつ…江風は何が起きたか分からない顔でこっちを見てくる。

 

「死体を処理しなきゃな。取り敢えず車まで運ぶか」

 

 返事はない。ただ見つめてくるだけだ。江風を肩で担いで車のトランクに入れて鎮守府を出る。車内に盗聴器類の物はない。

 

 鎮守府から離れたので車を一度路肩に止め、トランクを開ける。江風はようやく喋った。

 

「あ、あたしはどうなるの」

「こちらの拠点にしばらく居てもらう」

 

 江風はそれを聞いてもう一度トランクの中で横になる。

 

「…後部座席に座らないのか」

「あっ…」

 

 そこで自分の現状を把握できたのか、立ち上がり後部座席に移る。だが不安な表情で、視線の先は安定していない。

 

 車を再び出す。道中での会話は無く、すぐに拠点の車庫にいた。

 

「拠点での生活はかなり不自由だと思う。外出は勿論、外部との連絡ができる全ての行動は禁止だ。監視もつけさせてもらう」

 

 車から降りながら色々と説明する。車内でサボった分、幾つか話を聞かなければならないだろう。

 

 玄関に立ち、鍵を差し込む。

 

「まあ取り敢えず、ようこそ…」

「お帰りロイ!!」

「タイミング…」

 

 回す前にドアは開かれた。白露だ。エプロン姿で手にはお玉を持っている。

 

「ご飯にする?お風呂にする?それとも…」

 

 視線が俺から江風に移る。江風はポカンと白露のことを見つめていた。

 

「これって浮気?」

「そんなもんじゃない。取り敢えずお前は江風を風呂に入れてくれ。…あいつは帰ってるか?」

「えっ、うん。分かったー。江風、こっち!!」

「わ、分かった…」

 

 白露は江風を連れてお風呂に向った。俺はその反対…小型カメラの映像が何十もの画面に映されている部屋に入る。

 

「…怪しい動きはなし。工廠もそれは同じ。盗聴器も…静かだ」

 

 クロ要素が今のところ江風しかないが、疑惑は幾らでもある。不安な感情は押し殺せ。奴はそういう運命だ。

 

「提督」

 

 妖精が部屋に入る。その表情から、工場はかなり良かったと分かる。

 

「かなり良い場所でした。さて、何を作りましょう」

「…兵士」

 

 兵士。将来的にも今の内に確保しておきたい存在だ。

 

「…あれですね。分かりました。三日あれば形になると思います」

「頼んだ」

 

 兵士、というがクローンや人造人間の類ではない。機械に人工皮膚を纏わせたロボットだ。

 

 というのもまず現状、南方進出がされるなら陸上型の深海棲艦もいるので陸上戦力がいる。だが現在、日本陸軍はほぼ解散し特殊作戦群のようなのしかいない。つまり頭数が足りていない。そのため機械兵士を大量に確保して展開しないとHALOのコブナント、詰まる所海は制しているが陸が制せない状態になってしまう。

 

 それにいつか来る決戦の為、戦力は艦娘以外も欲しい。

 

「武器とか…」

「前と同じものを。ただ銃は普通のカートリッジ式で」

 

 装備一式…中華包丁みたいな剣だが銃としても使える某ゲーム作品のバンダナキャラに憧れて作った長物とリボルバーだ。尤もリボルバーは向いていないから普通のハンドガンに変更だが。

 

「始まりましたね」

「そうだな」

 

 ロマンだけでできた想像の域を出なかった軍隊が、こうして妖精の超技術によって出来る。こんな地獄の運命だがこれと艦娘だけが良い所だ。

 

「さて、飯でも食べ…いや、白露を待とう」

 

 この部屋に来る前にちらりと見たサランラップの掛けてあった食事を見て、もう少し映像を監視するのだった。

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