自分の作った小説の主人公に転生   作:ロイ1世

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証言

 夜の埠頭、涼しいと感じるか肌寒いと感じるかの微妙なラインの風を浴びながら、俺は待っていた。

 

 証言者を待っていた。

 

 

 

 江風から聞き出した盗聴器の位置から聞かれない場所、聞き取りにくい場所を探し出し何人かの艦娘にここで話したいと言った。そして待つこと30分、漸くそいつは来た。

 

「僕は時雨。監査官さんとは色々と話したいことがあったから来たよ」

 

 おおっと少しまずいかもしれません。白露型駆逐艦時雨。佐世保の時雨、である。それが今、明らかに敵意を持って俺の前に立っていた。

 

「約束の時間は10分前だ。作戦なら失敗だぞ」

「ここに来るのに皆が色々としてくれた。カメラとマイクを誤魔化すのは大変なんだよ、監査官さん」

 

 近付こうとしていたので一歩を踏み出される前に銃を構える。江風にも向けたサプレッサー付きのハンドガンだ。

 

「ふーん、そうか。そうやってやったんだね」

「何を」

「江風。僕の妹を君は…」

 

 ああ?…ああ。そうか。死んだことになってても可笑しくはないか。

 

「すまない、誤解だ。江風は今こちらで預かっている。重要参考人だ」

「駐車場近くの茂みに空薬莢が二つ。壁には銃痕が二つ。江風は生きているのかな?」

「生きてるよ」

 

 失敬な、俺が艦娘を殺せるわけないだろ、提督だぞ。…いや、憲兵だわ。

 

「証拠がないから何ともだが、信じてくれ」

「悪いけど信じられないよ。このここにいる人間は皆」

「俺は外来なんだけどな」

「そうだったね」

 

 時雨から銃口を外すことができない。艦娘というよりは深海棲艦と戦うときに似た感覚だ。外したら確実に攻撃される。反撃することを提督としてのポリシーが許さない。

 

「…これ以上、お互い臨戦態勢を続けるのは無意味だ。互いの目的を果たそう」

「分かったよ。だから銃を下ろしてくれないかな?」

「分かった」

 

 銃を徐々に下ろす。完全に外したら何かが来るのは分かっている。だとしても…こちらも限界だ。

 

「グゥッ!!」

「江風の恨みだよ!!」

 

 強烈な一撃が腹部に入る。無警戒…いや、ノーガードだったことと時雨が艤装…艦船のパワーで殴ったことで後ろに転がってしまう。海に落ちなくてよかった。

 

「江風は死んだと聞かされた時、僕がどんな思いだったか分かる!?今まで苦楽を共にしてきた仲間は戦場で散ることすら叶わず売られて…編入してきた白露姉さんはすぐに転属にさせられて…唯一の妹は君に殺された!!この思い…どうすればいいのさ」

 

 立ち上がりながら銃を構える。別人とはいえ嫁艦に銃を向けるのはこれが最後だと願いたい。

 

「その苦しみ…終わらせてやる」

「なっ!!」

 

 どう足掻いても当たらないように2回発砲する。銃声はない。ただ甲高い空薬莢の落ちる音が響くだけだ。

 

「君の発言からこの鎮守府での艦娘売買の疑いが深まった。詳しい話を拠点で聞かせてもらおうか」

 

 時雨を気絶させ、持ってきていた段ボール箱に入れて取り敢えずは艦娘寮まで行く。そこで長門にチラリと箱の中を見せて車に詰め込み、発進する。

 

 長門には俺が江風のみならず時雨も殺したという謂れのない罪を付けられないように見せた。そして憲兵にも重要な監査資料と言って通す。嘘は言っていない。重要な証拠だ。

――

 大きめの一般住宅…という名の拠点に今日も帰ってきた。鍵は自分で持っている。左腕で鍵を使っている間は右足で時雨の入った段ボール箱を支える。人が…艦娘が入っているとは思えないほど軽い。

 

「あっ、お帰りロイ。何か分かった?」

「ああ。それよりもあいつは?」

「江風と一緒に監視カメラの録画を見てるよ。それよりもその箱は?」

「重要参考人が入っている。懐柔を任せたぞ」

 

 玄関に箱を置いて自分も録画を見にいく。江風と妖精がそれぞれ4つのモニターを使って録画データを見ていた。

 

「どうだ?」

「戦果は十分ですよ提督。明らかに鎮守府所属の憲兵が民家に押し入り家財を運んでいる様子が幾つものカメラが見ていました。窃盗だけですが、ガサ入れを要請する十分な理由です」

「いやー、執務室とかに会った高級家具、どっから来たのかと思ったら、こんなところからね」

「他にもある。時雨と話したところ艦娘売買を行っている可能性がある。参考人として連れてきた」

「時雨が!!今下にいるのか!?」

「ああ、行ってきてやれ。喜ぶと思うぞ」

「ありがとうなロイ。それじゃあ行ってくるぜ!!」

 

 勢いよく江風が飛び出す。

 

「扉位閉めてけ」

 

 自然と扉が閉まる。江風の座っていた椅子に座る。

 

「時雨の証言次第で明日にも突入を提言する。そっちの準備は大丈夫か?」

「録画データの回収は30分で終りましたし確認は二人がやってくれていましたので、今日も工場の方に行ってました。仲間を呼んで作業したので、既に戦闘用人造人間…提督が言うところの海兵隊員の製造が始まりました。スパルタンの方はアーマーがまだ設計できていないので」

「大まかな趣旨で海兵隊員を作るのか…やべえな」

 

 ビックリドッキリメカも心臓を潰す超技術。まさに横七である。これでいい。戦う為には必要なのだ。

――

「それでは早速聞かせてもらうよ。義明英朗は艦娘売買を行っている、そうなのか?」

「正確には憲兵隊長の宮本。あいつが艦娘を、皆を売り捌いてる」

「提督はそれを知っているのか?」

「ううん。提督は宮本が艦娘を使って何か商売をしているのは知ってるけど水商売とか風俗とか…そんなものに使ってると思ってる。けど宮本から相当なお金を貰ってるし、売却先の人と何度も会ってる」

 

 宮本…ああ、あの道案内した男か。本編にいなかったから忘れていた。あれが艦娘売買の犯人か。

 

「一応聞くが…宮本を中心とした憲兵隊の逮捕は確定として提督を逮捕するとしたら…君は反対するかい?」

「そんなの…聞かないでよ」

「…」

「僕はあの鎮守府にいる全ての人間が嫌いだよ。整備員、憲兵、補給隊、事務方、総務…全員艦娘売買を知ってる。全員が僕たちを奴隷として見てる。…全員捕まえて。全員罰して!!」

――

「元帥に報告をした。明日の昼に大本営の憲兵隊が突入する。それまでに俺は鎮守府に突入、義明と宮本を確保、艦娘寮を防衛する」

「了解…ですが、他に援軍はいませんよ、提督」

「単騎か」

 

 盃の鎮守府のときは他の部隊が艦娘寮を押さえて人質や道連れを防いだ。だが今回は提督の義明と艦娘売買の中心と考えられる宮本を先に確保して逃亡を阻止したい。そうなると突入は確保後になる。そうなると艦娘寮は囲まれていると考えていい。前回のように俺が陽動になれないし…。

 

「潜入で先に拘束、突入前に艦娘寮に行ければ…」

「艦娘たちに武装させます?」

「馬鹿言っちゃいけない。彼女達は対深海棲艦に長けてても対人戦はできない。憲兵は腐ってても訓練は受けている。勿論、艦娘が蜂起した時の対処法も」

 

 事実、陸戦隊だったので多くの訓練は免除だったが艦娘の鎮圧術などは免除とならなかった。おかげで時雨を気絶させるのに手間取らなかった。

 

「海兵隊員は今日中に10人生産できます。訓練も最低限は出来るでしょう」

「よし、計画はこうだ

 

 俺は10時頃に鎮守府に潜入。義明と宮本を拘束し艦娘寮の防衛を行う。海兵隊は可能な限り隠密を行い、艦娘寮を目指し防衛を行う。戦闘は発見されるか憲兵隊が突入するまで控える」

 

 さぁ、何か忘れていることが多い気がするが本編が始まる。努力は惜しまない、卑怯な手も使う、だが必ず生き残る。

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