自分の作った小説の主人公に転生   作:ロイ1世

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演者

「先の軍法会議で義明中佐は禁固50年。宮本大尉は極刑が決定した」

 

 これが、新しい任務があると伝えられて元帥室に出向いてすぐに言われたことだった。

 

「宮本は今日、尋問が予定されている。既に情報は持っているが新しいものが無いかの確認だ。そして義明は自鎮守府内の把握すらまともに出来ていなかった。それに加え作戦計画書を宮本を通じて一部流出させていた。少なくとも終戦まで、奴は試される大地から一歩も出さん」

 

 当然の報いだ。宮本にも義明にもそう思える。だが、同時に義明には可哀想とも思えてしまう。奴は本当に知らなかった。ただ無能なだけだった。そう考えて、無能で信頼のないのに提督になったことが罪なのだ、この結論に至る。

 

「義明は父が大本営に勤務していると聞きましたが」

「義明正蔵大将のことか?あいつもこれに同意していた。むしろ極刑じゃないのを不思議がっていたぞ」

「…素直に褒めれませんね」

「俺もそう思う」

 

 義明英朗の父親の義明正蔵は10数年前から将軍だった。だから俺はてっきり正蔵大将が中佐まで昇進させたと思っていたが、どうやら周りが勝手にさせてたようだ。

 

「そ、それで…新しい任務は?陸上で活動する深海棲艦が目撃されたと聞きましたから、やはり南方?」

 

 現在作戦が展開されている南方海域で陸上型深海棲艦が発見されたという報告を大本営は受けていた。艦娘たちの攻撃では有効打が与えられず、航空隊も星がタコ焼きにやられて全滅するという太刀打ちできていない状況だった。

 

 あの五人も装備の関係、大発や内火艇、三式弾がない現状ではどうしようも出来ない。つまり、陸上で深海棲艦と戦える存在が必要だ。そうなると必然的に俺は南方に行くことになる。…と、思っていた。

 

「いや、陸上型の出現は以前から予測されていた。今回は特殊訓練を受けた精鋭憲兵隊…陸戦隊の試験運用も兼ねて彼らが南方に行く」

「では私は?」

「これを」

 

 マル秘と書かれた資料を受け取り、読む。

 

「横須賀第七鎮守府の艦娘売買に関する詳細な販売先」

「ああ。と言っても一つだがな」

 

 宮本が誰をどこにいつどれ位の値でどうやって売り、どうやって金と艦娘を交換していたか。その全てが詳細に書かれたものが今、手中にあった。

 

「どうしてこれが」

「大淀君が義明中佐から処分を命令されていたが隠していた。ファインプレーだ」

「売られた艦娘は輸送コストと隠蔽のため全てを一度に運ぶ」

「そうだ。運ばれたのは君が出向く10日前。これに関しては運がなかった」

「売った先は…オークション会場?」

 

 場所は郊外の空襲で破壊された劇場だ。

 

「日時はまだ余裕がある。君にはここを襲撃。艦娘の保護と訪れた連中と運営している連中を逮捕してほしい」

「了。こちらの戦力は?」

「君と妖精…アイと名付けたんだったか。必要なら白露君もつけるが…」

「結構です」

「分かった。君とアイ君で行いたまえ」

「ふ、二人だけですか?」

「そうだ。君と、アイ君。大丈夫だ。君達の英知の結晶でもってすれば、問題ない」

「…分かりました」

 

 英知の結晶…つまり海兵隊の投入が許可された。白露もいないし落ち着ける。

 

「白露君には昨日北方から到着したあの五人に南方へ連れて行ってもらう。そこで勘を取り戻してもらいたい」

「確かに…ここ一週間は艤装を着けてませんからね」

 

 白露は艦娘、海が主戦場であって盗聴器の録音を聞いたり録画データを確認するのが仕事ではない。当然の出陣だ。

 

「この後から準備に入ります」

「そうか…待て。これから宮本の尋問だ。見ていくか?」

「気乗りしませんが、監査を行った身として最後まで付き合いたいです」

「よし、付いてこい」

――

「あれが宮本か。思ったよりも痩せてないな」

「いえ、筋肉が無くなっています。この場合、元から痩せていたので分からないだけです」

 

 椅子に括りつけられた宮本はこの前の清潔感がある生真面目な好青年から一変して腐敗していそうな中年になっていた。これが本来の姿なのだろう。憲兵長として疑われないよう最善を尽くした結果があの好青年であり、本質はこれなのだろう。

 

「俺は…死刑か?」

「ああ。艦娘売買、情報漏洩、物資の横流し…極刑だ」

「そうか…」

 

 喋る為に上げた頭を再び下げケケケと力なく笑う。だがその雰囲気に、諦めの色は無かった。

 

「中佐、それに元帥。取引をしないか?」

「取引だと?」

「ああそうだ。お前らは売られた連中を取り戻したいだろ?」

「当然。そもそもとして憲兵は鎮守府を守る為に創設された。艦娘の保護も管轄だ」

「そうだよな中佐。だが…お前は売った先を分かっているのか?」

「なに?」

「売った艦娘の数は両の手では足りない。勿論、売った先もな。そしてその情報は俺の頭の中にしかない。お前らは売られた艦娘の数と名前は分かっても取り戻せない。そうだろ?」

 

 再びケケケと笑う。だが今度は高笑いだ。

 

「俺はお前たちに情報を渡す。だからお前らは俺の罪を失くせ」

「馬鹿なことを言うな!!」

「待て中佐。…宮本大尉。その提案、乗ろう」

「元帥!?」

「いいねぇ!!」

「ただし!!嘘偽りや既に得ている情報であれば減刑はしない!!」

「分かるよ。俺も艦娘の名前と金額しか言わなかったらキレてる。その条件でいこう」

 

 尋問が録音されていることを知っている宮本は、確実な言質を得たことに喜びながら全ての情報を洗い浚い吐いてくれた。人数、名前、売り先、金額、売った先のこと、時間、場所、運び方…全てを言った。

 

「さあ元帥、この錠を外せ!!」

「宮本大尉、君の最終的な処罰を言い与える」

 

 全員が立ち上がり、俺は宮本の前に立つ。

 

「君は極刑だ」

 

 銃を抜き、額に銃口を押し付ける。

 

「ちょっと待てよ!!俺は情報を全て…」

「そうだ。君は全ての情報を吐いた。義明中佐にも同様にね」

「なっ…」

「我々は君が義明中佐に提出した報告書を入手している。つまり、君が話した情報は既出だ」

 

 元帥が提案した、何も知らないことを装い、減刑と情報の取引にのることで情報の抜けがないことを確認する作戦は完全に大成功を収めた。

 

「そんな馬鹿な…あれは焼き捨てろと」

「相手が悪かったな。義明中佐の能力を信じ、そして俺達を敵に回した。それが君の失敗だ。中佐!!」

「ま、まっt…」

「了!!」

 

 銃声が一つ、大本営地下の尋問室で響いた。乾いたその音は、地上には届くこと無く、地下でただ、反射を繰り返すだけだった。

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