よろしくです。
艦娘5人を日本まで護衛した後、俺はPTSDの可能性大として軍病院にて検査、見事確認され、自宅療養をしていた。
家には誰もいない。久しぶりに帰ってきたとしても、父親代わりの元帥は常に大本営にいる。幼いときからそうだったから、それを悲しいとは思わない。寧ろ応援している。元帥はこれからの深海戦争で国防と親衛隊という二つの役割を果たさなければならないからだ。
深海棲艦については昨日、俺が遭遇してから1カ月後に発表があった。エジプトがその姿を撮影することに成功したため、戦場の幻覚や噂話を脱せた。
また、艦娘についても政府広報のマスコットから戦場に赴くことができるようになった。艦娘5人と技術者によって艦娘を建造できるようになったのは一週間前だ。
そして、提督探しも始まっている。妖精が見えなければならないのでそれまでいた軍司令官から検査が始まった。一定数はいたものの、今後建造される艦娘の数を考えると少なく、政府関係者→公務員→民間人といった風に検査は拡大していった。
俺も一応は検査を受けるはずだったが、PTSDで正しい結果か判断付け難いことから免除された。
「行くか」
汚かった家の掃除を済ませたので、行きたかった場所に行く。
服装は軍服だ。酒瓶と花束を車の後部座席に置き、車を走らせる。
多くの建物と街路樹を抜けて、駐車場に車を止める。
桜はまだ咲いていない。だが道行く人は多い。
酒瓶を手に持ったら、俺もその人々に 混じって歩く。
「待たせたな、大尉、青柳」
靖国神社の参拝を済ませたら神主さんに酒瓶を渡して再び車に乗る。向かう先は青柳の墓だ。
葬儀には検査や報告が重なり参加できなかった。それは喪主も理解してくれたようで、手紙で墓参りはしてほしいと伝えてくれた。
青柳も、その遺族も幸せだったのかもしれない。幸せと言っても不幸中の幸いだが・・・。深海棲艦によってシーレーンが破壊され、火葬するのに必要な燃料の高騰と沿岸部の襲撃による犠牲者によって簡易の埋葬は兎も角、火葬することも葬式を開くことも難しくなった今、青柳の葬儀ができたのは奇跡にも近かった。
青柳の墓石は最近一般化している粗い加工のものではなく、派遣前の綺麗なものだった。
「・・・すまなかった」
ここ最近、青柳の最期を何度も夢に見ている。夢を見るたびに思う事が覚醒がもう少し早かったら、という言い訳から覚醒に気付くのが遅くてすまなかったという謝罪の念に代わるのにかかる時間は長くなかった。
青柳は同室だったこともあり、仲が良かった。傷がすぐに治るこの体質のことも気持ち悪いとか不気味とか言うのではなく、純粋に羨ましいと言ったことも大きかったと思う。そんな奴が今の俺を見たらどう思うのか。
「笑うか?怒るか?悲しむか?」
返事はない。答えてくれる奴は既に目の前の墓に入っている。
そして一番の問題は俺が変わることができないところだ。
PTSDなので提督適性検査が受けれない、陸戦隊に関しても元帥が艦娘用の予算確保のために解隊した。陸軍も同じで、対深海棲艦で団結した軍は予算のため陸軍の9割を予備役に編入…除隊させた。残り1割は対外国の特殊作戦群で、入るのは難しい。空軍に入ろうにもヘリ以外碌に動かせないので無理。
現状、俺はPTSDが完治したと判断されるまでどうしようもない。
そう思いながら墓地を後にして、車に戻ろうとすると、黒服が俺を囲む。
「何者だ」
返事はない。だが全員が手を前で組む…いつでも銃を出して撃てるような態勢を取っており、素通りさせてくれそうにないのは分かる。
「何をしに来た、ここは眠る場所だぞ」
また返事はもらえない。仕方がないので強行突破しようかと考え、その場で少し跳ねる。
誰かが銃口を向けたのか、リフレックスモードに入る。
「うおりゃあ!!」
全速力で目の前の男にタックルをし、ゆっくりと倒れる男の足を掴む。そうしたら回転し、固まっているところに投げる。投げた男が固まっていた男にぶつかることが確信出来たら、バク宙で反対側にいた男の頭を足で挟み、もう一回バク宙したらそのまま地面に叩き付ける。
後二人。
肘を一人の男の顔にめり込ませるほど強く打ち付けたら、最後の一人にラッシュを叩き込む。
「ウリャリャリャリャリャ、ウリャー!!」
最後の一発を受けると男は空を飛び、墓地の敷地の外に落ちた。
「はぁ、はぁ…ここは静かに過ごす場所なんだ、馬鹿どもが」
息を整え、車に戻ろうとした時、奥から一人の老人が出てくる。胸には勲章をびっしりと付け、自分が有能であることを示す。階級章から、元帥であることが分かる。
「身構えなくていいぞ、わしは陸軍で元帥をやっている、鷹宮 龍造だ。さっきは手荒な真似をしてすまなかった」
「いきなり出てきてはい謝罪は命乞いをしているようにも見えるぞ」
「山吹の奴が自慢するおぬしの実力を見たかっただけじゃ」
黒服連中はまだ起きていない。つまるところ鷹宮元帥の護衛はいない。それなのにこんな悠々と話しているのは相当の実力者か敵意がないだけ。
「おぬしの実力を買って頼みたいことがある。やってくれるか」
「内容による」
「簡単じゃよ、近々提督一期生…軍出身の提督たちが一斉に着任するにあたって、鎮守府の守備隊を陸海共同で編成する。おぬしはPTSDじゃが実力も精神も問題無いと見る。じゃからおぬしも参加しろ、守備隊に」
守備隊…憲兵隊の前身か?だが物語としては帰国後、ロイは提督訓練学校に進んでいる。憲兵隊ルートはない。
「断る、俺は提督志望だ」
「問題ない、わしがおぬしを提督訓練学校に編入させるよう推薦する。…適性があればの話だが」
「なら受け入れる。俺だって燻っていたくない」
「交渉成立じゃな。明日の昼、大本営に来い」
それだけ言うと、陸軍元帥は去っていった。
—―
次の日の昼、俺は陸軍元帥に言われた通り大本営に行った。警備員がこちらをちらっと見たが、通って良しと一言告げたことから、昨日の出来事は幻覚じゃなかったと改めて分かる。
陸軍元帥の部屋は応接机とそれを挟んで向かい合う椅子。そして執務机とそれのための椅子という必要なものだけを集めた部屋だった。
「昨日振りじゃね、ロイ君」
「それで、本日はどのような御用件で?」
「挨拶ぐらいいいじゃろうに…」
そう言うと陸軍元帥は応接椅子に座り、俺にも座るよう手で勧める。甘えて俺も座り、改めて陸軍元帥と向き合う。
「まずロイ君の守備隊での扱いじゃが、必要に応じて出動してもらう。装備は訓練学校の方に回しておくから安心せい。これが階級章と証明証じゃ」
渡されたのは中佐の階級章と桜の花の上にカモメが描かれたバッチだった。
「大石小隊で唯一生き残ったのとスターターファイブスを日本まで護衛したことを考えて、中佐にした。それと適性検査の方じゃが、一階で行っとる。この指示書を持ってけ」
「ありがとうございます、閣下」
「幸運を祈るわい」
立ち上がり、一階の検査場で適性検査を受ける。結果は言うまでもなく、合格だった。
捕捉的あほがき
ロイが守備隊(憲兵隊)に入った理由
本編の導入で「陸軍にも知り合いがいる」旨の内容が書かれているのに一度も陸軍は重要なキャラとして出てきてないので、合わせるために入れました。
これからは訓練学校で提督を学びながら守備隊として活動するロイの話を数話書く予定です。
投稿者(メタ)的な悩み
創立して間もない、ノウハウも指導役の先生もない訓練校で何教えるの?