前略
新しい環境に慣れるのに忙しかった4月が終わり、五月病に平時なら苦しむ時季となりました。親衛隊の皆様におかれましては、陛下への忠誠をより一層固いものとし、任務に励んでいると推察します。
さて、ところでいつ私の相棒妖精は来るのでしょうか。入隊したときに将軍から近いうちと言われてから、既に一カ月程経ちました。相棒妖精がいなければ定時連絡も任務の通達を受けることも、これから先生き残ることもできません。はよ来いや!!(豹変)陛下のいらっしゃる海底都市、爆雷で吹き飛ばすぞ!!(謀反)
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今日も元帥の部下から手紙に扮した任務の通告文を受け取る。内容は近々行われる攻勢作戦に関する物だった。
深海棲艦との大規模な戦闘が予想される今回の作戦で、主力や準主力が前線に行き、低練度の艦娘が防衛を行うため防衛網が疎かになる。作戦の延期は不可能なため、低練度艦のレベリングは不可能。そのため万一に備え、出撃準備をしろとのことだった。
今回の作戦で出撃するのは日本列島の太平洋に面した鎮守府のみのため、愛知県か三重県の鎮守府にいれば問題ないだろう、車に試作兵器積めて出発しよう。
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「第一艦隊、第二艦隊、遠征艦隊…まずいな、どうしても防衛戦力が弱い」
「出撃艦隊から引き抜いてはどうだ?他の鎮守府からも艦隊は出るのだろう?」
「いや、他の鎮守府とは戦う海域が少し離れている。援軍はあまり期待できない」
「主力に練度上げを集中させたのが仇となったか…。残った僅かな時間で最大限練度向上できるようするしかないか」
東海三県にあるとある鎮守府。そこの提督は今年の春に海軍訓練学校を卒業し晴れて海軍に入隊する予定だったが、提督適性検査にて甲判定が出され、卒業直前で配属された。
訓練学校で学んだことを活かしつつも、やはり不慣れなこともあり万遍なく練度を上げることは難しく、一部の主力艦の練度が突出して高い状況になっていた。
「発令まであまり時間がない。君達主力艦隊は英気を養ってくれ。防衛網の方は何とかする」
「提督…分かった。信じる」
秘書艦が退出し、執務室には提督一人だけとなる。彼はその後大本営を始め舞鶴を始めとする攻勢作戦に参加しない鎮守府に連絡し、艦隊を貸してくれないか交渉した。しかしその行動は実を結ばず、艦隊が貸与されることはなかった。
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日本が初めて行った攻勢作戦、その目標はシーレーンの崩壊によって孤立していた沖縄を始めとする沖縄諸島までの制海権と、台湾へ艦隊を常駐させることだった。
これまでの本土付近に出現した深海棲艦の撃滅から、制海権の奪取という攻撃に移れたのは、建造によって艦娘の数が増え、演習によって戦闘能力が向上したからだった。
そのため、これまではおっかなびっくり行っていた民間人の輸送を、護衛無しでも安全に行えるようにするため沖縄の制海権確保が目的となった。
一方で台湾への艦隊駐留は、艦娘の建造技術などを台湾も持つことで、従来の西側諸国の関係性を維持するのと台湾が対深海棲艦の戦力を持つことで、日本の負担を軽減させる目的があった。
日本と台湾はどちらも完全な島国。そのため深海棲艦の脅威は理解しており、艦娘の建造技術は喉から手が出るほど欲しかった。
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「始まったな」
出撃ドックから出ていく艦娘を鉄塔の上から見守る。沖縄諸島は日本本土に近いしゲーム的には低難易度海域の筈。だがもしかしたらこの攻勢作戦は菊水作戦?(うろ覚え)の大和特攻に関したもので、激戦になるのかもしれない。
だが大丈夫だろう。沖縄の空軍基地から飛び立った偵察機による報告では、深海棲艦の数は北方よりも少なく、民間人の本土疎開のために護衛に参加した艦娘からも本土近海に出現するのと同程度の強さと評された。そこにスターターズ(スターターファイブスの略)が参加するなら安泰だろう。
問題は寧ろこっち。
主力が出払った頃を見計らってすれ違いで深海棲艦が本土襲撃を行った場合、多くが10~20の低練度防衛艦隊の敗北は避けられない。俺もこうしてスタンバっているが、同時に起きたらどちらかは突破されることになる。
「―――艦隊、異常なし」
「===艦隊も、はぐれを撃破した」
「~~~艦隊の哨戒海域では異状なし」
鉄塔に送られてくる情報を直接受け取り、出撃の必要性の有無を判断する。山吹元帥からも、判断は自分で下せと言われている。
「***艦隊、援軍要請!!敵ル級を筆頭とする打撃艦隊、総数6。我方軽巡旗艦駆逐3の小規模水雷戦隊」
「了解、大本営出張艦、抜錨する。位置を送れ」
鉄塔から飛び降り、海面に着水。送られてきた位置に行く。
「大本営出張艦、こちら***艦隊旗艦由良、到着時刻は何時頃になる予定か」
「こちら出張艦…長いからVでいい。およそ10分。それまで貴艦隊は敵打撃艦隊の射程ギリギリ圏外を維持してもらいたい」
「V、こちら由良。要請を了解。ですが駆逐艦の一隻中破し、射程圏内から脱出できません」
「了解、必要時間を5分繰り上げてくれ」
使い捨てのジェット噴進機を使い、文字通り風になって進む。地味に痛い。目が乾燥する。波飛沫が本当に痛い。
だがその苦しみに堪えた甲斐があり、直ぐに目視で由良の艦隊を発見することができた。
「こちらV、貴艦隊を目視で捉えた。打撃艦隊の位置は分かるか?」
「SE方向、詳細距離不明、ただし敵艦隊の射程圏内です!!」
「感謝!!」
使った噴進機をロケットランチャーに詰める。
「敵艦発砲!!」
由良の艦隊の駆逐艦の叫びが無線に乗って聞こえる。その光はこっちからも見えた。
「見つけた、吹き飛べ!!」
噴進機を発射する。
可能な限り多機能で高性能を求めた結果の一つである噴進機ランチャーは、行きで使った噴進機をランチャーに詰め、予備の噴進剤で着火し、ロケット弾になってもらう武器である。予備の噴進剤は移動では使われないし、爆薬だってしっかり入っているから、攻撃力もある。勿論事故が起き、足元で爆発したら即御陀仏でもある。
「V!?」
「安心しろ、ただの噴進兵器だ」
「あっはい」
噴進弾はル級の近くで爆発する。一方でル級の砲弾が由良の艦隊に迫ってきており、おそらく中破の駆逐艦に直撃する。ゲームでは大破していなければ沈まなかったが、現実は保証できない。
トラウマの発生を防ぐためにも、親衛隊としての義務を果たすためにも必ず守る。
「リフレックス!!」
自分に向け銃を発砲することで、リフレックスモードになる。弾速が遅いものを使用しているので考えて行動する時間は十分にある。
「完全に無害化するには…墜とす!!」
陸軍の方の元帥に集ってもらった狙撃銃で砲弾に当たるよう撃つ。確信が持てたら拳銃自殺にならないよう頭を動かす。
銃弾が風を起こし、肝がヒヤッとする。
「??????」
由良がこっちを見てぽかんとしている。どうした?
「敵艦隊はこちらで片付ける。流れ弾等に注意しろ!!」
そう言って敵打撃艦隊に近付く。編成はル級1、リ級2、ホ級1、エビ(駆逐艦)2の空母なし編成だ。
「チャフ散布を散布する」
チャフ、と書かれた柄付き手榴弾を空中高く放り投げ撃ち抜く。するとアルミホイルが散布され、電波を遮断する。
「=======か!!」
無線越しに由良の声が聞こえるが、チャフに邪魔されてノイズしか聞こえない。
だがそれだけ電波を遮断しているということで、電探射撃による被害を防ぐことができた。それを証明するようにさっきからル級の砲撃はあさっての方向に飛んでいっている。
「さっさと片付ける」
全速力で近づき、旗艦のル級の首を軍用ナイフで掻っ切る。するとリ級が条件反射で砲撃してきた。
「馬鹿め、リフレックス発動だ」
エビの頭に向けて拳銃を一回ずつ発砲したら、砲撃してこなかったリ級の顔に投げナイフを投げる。砲撃してきたリ級には使わなかった噴進機を投げ、眼前にきたら撃って爆発させる。
勝ちを確信したので、一、二歩横にずれる。
「こちらV、敵艦隊を殲滅した」
「?????…!?、ありがとうございます!!」
付近を見回し、特に艦影がないことを確認する。電探にも感は無い。
しかし妙な風を感じたので空を見ると、何か巨大な水上機がこちらに迫ってきていた。外観からして日本機のため攻撃はしないが、万一に備えいつでも撃てる姿勢をとる。
その水上機…正確には水上機化した一式陸攻が着水し、眼前に扉が来る。機が止まるとその扉も開き、中からは妖精が出てくる。
「中佐、新たに救援要請が入っております。対象は輸送船団の護衛艦隊、駆逐4のみです」
「そ、そうか。しかし弾薬類が連戦に耐えれないので鎮守府に戻り補給をしなければ」
「その点については策があります。この陸攻で送りますのでお乗りください」
「…ありがとう。彼女達を乗せても大丈夫かな?」
由良の艦隊を見る。危機は去ったが帰投まで何もない保証はない。出来ることならこの陸攻で鎮守府まで運んでほしかった。
妖精は由良達を見ると二つ返事で了承し、俺達は陸攻に乗り、備え付けの椅子に座って僅かな休息をとった。