【FEH】Having No Border【クロード×リリーナSS】 作:いりぼう
原作:ファイアーエムブレムヒーローズ
タグ:FE ファイアーエムブレム ファイアーエムブレムヒーローズ リリーナ クロード=フォン=リーガン FE風花雪月 FE封印の剣 SS 二次創作
だからこそ、【異物】はない。
ここにあったんだな。
俺の野望の――――――行き着く先。
※ニンテンドー発のSRPG【ファイアーエムブレム】シリーズの登場キャラクター【クロード=フォン=リーガン(風花雪月)】と【リリーナ(封印の剣)】の異色コンビの二次創作。
≪設定≫
・【ファイアーエムブレムヒーローズ】の世界線設定
・クロード視点
・リリーナ、クロードともに伝承英雄として召喚された設定
・クロードが伝承英雄として召喚されてすぐの世界線の為、マリアンヌ不在
・リリーナはロイリリCP設定
・クロードの元のフォドラの世界は金鹿ルートクリア直後設定
※注意
・原作(封印、風花雪月、ヒーローズ)ネタバレ注意!
・多少の解釈違いがあるかもしれません
――――――汝、我が呼び声に応えよ。
…とかなんとか形式じみた言葉が聴こえたと思ったら、いつの間にかこの世界にいた。
アスク王国、って言ったか。
連れてこられてすぐはさすがに戸惑ったが、数日経った今は妙に居心地の良さを感じている。
きょうだいやヒルダ、リシテア。
それに妙な格好こそしているが、ローレンツやラファエルもいるからだろうか。
――――――いや、そんな単純な物じゃない。
俺自身が、何かを本能的に感じている。
それを解明するのが、この世界での俺の課題のひとつだ。
同時に、元の世界に戻った時…俺の野望を叶える為のきっかけになるものを得られたら御の字、ってとこか。
フォドラの抱えていた問題は一旦解決したが、あくまでこれからだ。
きょうだいと俺と、みんなで、世界を根底から覆す。
それにはまだまだ問題も多い。
奇しくも、様々な【異界】から【英雄】って呼ばれている人物が、俺と同じようにここに連れてこられているみたいだ。
一気に理想を手繰り寄せる、そんな糸口はすぐ目の前に垂れる可能性だってある環境だ。
言ってみれば、ここは【宝の山】なのかもしれないな。
「さぁて、今日の訓練も終わったし、これからどうするかな…。」
定期的な訓練を終えた俺は、うんと身体を伸ばし、軽い欠伸をする。
とりあえず、この城を散策するか?
フォドラから来た者以外と、宴でも開く誘いをしてみるか?
それとも書庫に籠もって、召喚の仕組みを…?
最適解を弾き出そうと考えていた時だった。
一人の少女に出逢った。
蒼く輝く、美しい長髪をなびかせる。
その色彩とは対象的な白と赤が基調の衣装を身に纏い、若くして高貴な、しかも嫌味のない雰囲気を醸し出す。
そして、微笑みながら会話する相手は――――――
少年に、少女に…ラファエル!?
「リリーナさん、すげぇぞ!たった一撃で敵をほとんどやっつけちまうなんて、オデ、びっくりしたぞ!?」
「ふふ、ありがとうラファエル。」
「ホントにすごいですよ、リリーナさんの魔力は!僕ももっと修行して、あれぐらいの力を出せるようにならないと!」
「アスベルは今でも十分凄いわよ?あの鋭い風の魔道…私には使えないもの。」
「え、そ、そうかなぁ…?」
「ノノも!ノノもすごかったんだよー!!ほめてー!!」
「うん、ノノもいつもありがとう。今回も助かったわ。」
――――――驚きが隠せない。
この世界において、【英雄】同士が協力する仕組なのは解っている。
だが、それでも見ず知らずの身。
どこか距離感や警戒心はあっても良さそうなものだ。
しかし、どうだろう。
彼女には、それが一切感じられなかった。
【無償の愛】とでも言うのだろうか。
誰に対しても、等しく、優しく。
そういうものを感じた。
リキア諸侯同盟オスティア侯爵領の姫…いや、あの姿の彼女はすでに盟主だったか。
俺の統治するレスター同様に諸侯同盟の統治者であるなら、もしや――――――
そう思った俺は、自然とその集まりに近づいていた。
「お、クロード君じゃねぇか!…って、あれ?いつもの格好じゃねぇなぁ。髭まで生やして…どうした?」
「よ、ラファエル。久しぶりだな。まぁ、ちょっとした気分転換ってとこだな。それより…。」
ラファエルが疑問を投げかけてくるが、今はそれに答える暇はない。
「リリーナ、だっけ?俺は、クロード=フォン=リーガン。そこにいるラファエルと同じく【フォドラ】って異界から来たんだ。よろしくな。」
「はじめまして、クロードさん。先日召喚されたばかりなんですよね。私は、リリーナ。オスティア侯公女…いえ、これからオスティア侯爵になります。よろしくお願いいたしますね。」
簡単な挨拶と握手はほどほどに、単刀直入に切り込む。
「リリーナ。同じ諸侯同盟の盟主の立場として聞きたいことがある。少し話せないか?」
「え…?わ、私でよければ…。」
「ありがたい。そしたら、ちょっとついてきてくれ。」
「は、はい。」
そう言って、俺は彼女とその場を後にした。
「おいおい、クロード君とリリーナさん、行っちまったぞ。腹でも減ってたのかな?それならオデたちも誘ってくれればいいのに。」
「藪から棒でしたね…。しかし、【盟主の立場として】ですか…。何だったのでしょう?」
首を傾げながら話す二人に、ノノだけは自信ありげに言う。
「ふふん、ノノはわかったよ!これはねー【しゅらば】ってヤツだね!ロイにいってくるー!!」
「あ、ち、ちょっと、ノノ!」
ノノもまた、アスベルの声を聞かずに飛び出していった。
「すまないね、出撃後すぐに呼び止めてしまって。」
「いえ。クロードさんは召喚されて間もないし、もし私で困ってる事の解決に繋がるなら、協力しますよ。」
彼女は、彼らに向けた微笑みとまったく同じ物を俺にも向けた。
「いやはや助かるよ。せめてものお礼だ、今日は俺が奢るよ。好きな物を何でも食べてくれ。」
「え…そ、そんな、それはさすがに申し訳ありません!」
「気にするなよ、俺がそうしたいんだ。あと、敬語とか俺にはいらないぜ。もちろん、敬称もいらない。クロード、って気軽に呼んでくれ。」
俺はそう言いながら、軽く目配せした。
「あ、ありがとう、クロード。じゃ今回はお言葉に甘えさせてもらうわね。」
順応も早い。
今までどれだけ多くの人物と接してきたか、よく解る。
俺の目の前で、彼女は食事を摂る。
俺は、そんな彼女を観察していた。
食事の摂り方は、上品。
話す口調も、丁寧。
そしてなにより――――――
「あんたは、俺を微塵も疑わないんだな。」
「え…?」
「あんたは、人が急にご馳走する、って言って出てきた食事を、何の疑いもなく口にした。ここはアスク王国の大衆食堂だが、俺がその気になれば毒を盛ることだってできたはずだ。そういう可能性とかは、あんたは考えたりしないのか?」
そう、俺の疑問。
彼女は盟主という立場にいながらにして、人との距離が近すぎる。
人の懐に飛び込んでいく術なら、俺もそれは持ち合わせている方だ。
宴を開き、腹を割って話し、色んな角度から情報を得る。
それを自分の中へと昇華させ、自分の野望を叶える。
その為に、相手との距離をあえて詰める事はある。
だが、彼女にはそういう打算みたいな物をまったく感じない。
何の警戒もなく、人との距離を詰め、平等に接する。
それが例え、知らない世界から来た、自分と立場がまったく違う人間であってもだ。
その理由を、秘密を、俺は知りたい。
「私は…そういう事はあまり考えないわ。」
彼女は、迷いなくそう答える。
「…理由を、聞いてもいいか?」
「クロードは、私を必要とした。それだけよ。」
「へ…?それだけ…?」
拍子抜けしたのか、俺は力のない返事をしてしまった。
「えぇ。私でいいのなら…力になれるのなら、いくらでもお話も聞くし、叶えてあげられる事なら、お手伝いもするわ。」
「いやいや、待ってくれ。それが嘘だったり、罠だったり…そういう事は考えないのか?」
あまりに純真すぎて、逆に俺が慌てる。
「そういう事もあるかもしれないけど…逆にお願いが本当だった時、手を差し伸べられなかった方が悔しいし、悲しいから…。」
彼女は、少し遠い目をしながら、さらに言葉を続けた。
「私ね、元の世界で臣下の謀反に気づけなかった事があるの。裏切られて、私は幽閉されて。気づいた時には、領家はすでに敵に制圧された状態だったわ。」
「そんな事があったなら、余計に猜疑心を持つもんだろ。」
「他の人なら、そうかもしれないわね。でも、私にはできなかったの。なぜなら…。」
「なぜなら?」
「そんな私でも、助けてくれる人がいた。だから私は、信じたい。私を助けてくれた大切なみんなのように、私もみんなに手を差し伸べたい。」
ここまで力説されて尚、【綺麗事】に聞こえる俺の心は薄汚いんだろうか。
「…水を差すようで申し訳ないが、それはあんたの世界で初めて成り立つ話じゃないのか?ここにいる人間は、まったく関係のない、見ず知らずの助っ人集団…傭兵に近いようなもんだ。何もそこまで元いた世界と同じように振る舞わなくても…。」
俺がそう言いかけて、彼女は遮った。
「同じよ。」
「え?」
「理由はどうあれ、私たちは、求められてここにいる。ならば、今までと同じじゃないかしら。召喚士さんも、特務機関の皆さんも、私たちと同じように召喚された英雄の皆さんも。求められて、信じてもらえるなら、私も同じ事をしたい。生い立ちとか、人となりとか、そんなものは元の世界にいても、この世界にいても、みんな違うから。」
「私は、手を差し伸べたい。それが、助けになるのなら。」
――――――なるほどな。
感じてた居心地の良さの正体が、ようやっと解った。
ここには【異物】しかいないんだ。
俺も、彼女も、他のみんなも。
召喚された英雄達は、みんな【異物】。
だからこそ、【異物】として見ないんだ。
皆が手を取り、アスク王国に力を貸し、そしていつか元の世界に戻る時の為に研鑽する。
そこに、立場とか境遇、環境、功績、人物像。
そんな物は関係ない。
【境界】なんてないんだ。
それこそ――――――
俺が求めてた世界の姿じゃないか。
「…ここにあったんだな。」
ボソリと呟いた。
「…?クロード?何か言った?」
「いや、なんでもないさ。しかし参ったぜ。同じ諸侯同盟の盟主という立場でも、こうも考え方が違うとはね。」
「お、おかしかったかしら…?」
「いいや、むしろ色々スッキリしたし、勉強になったよ。ありがとな、リリーナ。」
そう言うと、彼女はまたあの微笑みを見せ、
よかった、と返した。
俺の好奇心は止まらない。
「ふむ、ここまで考え方が違うのも面白いな。どうだ。このあともうちょっと俺に付き合ってくれないか?あんたの事、もっと教えてほしい。」
傍から聞けば、最早口説き文句にしか聞こえない。
そういう台詞を言ってる時に限って、魔が差すんだよな。
「リリーナ!」
一人、青年がやって来る。
確か、ロイって言ったかな。
きっと彼女と同じ世界の人物なのだろう。
「ロイ?どうしたの、こんなところまで。」
「いや、ノノが教えてくれたんだよ。「クロードと一緒に出かけてった!しゅらばだよー!」って…。」
「ノノったら…。どこでそんな言葉を覚えたのかしら…。」
彼女の声が、少し上ずったのが解った。
こころなしか、頬の辺りも紅くなっている。
ははん、なるほどね。
そういうご関係でしたか。
「おや、残念。王子様がいらっしゃいましたか。」
俺はそう言うと、約束通り食事代を机に置いて席を立つ。
彼が俺をじっと見てくるもんだから、何もしてないさ、っていうアピールで目配せしておいた。
「じゃ、またな。続きはまた今度。」
そう言って、俺はその場を去った。
「大丈夫かい、リリーナ?何もされてない?」
ロイは、心配そうにリリーナに声をかけた。
「うん、大丈夫。ちょっとお話しただけよ。」
「そっか…よかった…。」
安堵するロイを見て、リリーナはクスリと微笑む。
「ど、どうしたの?」
「ううん、なんでもない。ただ…。」
「ただ…?」
「ロイも、クロードと同じね。」
「…え?」
――――――俺の求めた世界。
生まれとか、紋章とか、そんなしがらみに囚われない世界。
その理想に近い形が、ここにあった。
召喚してもらえてよかった。
今なら、そう思える。
ここなら、俺の野望の礎を築ける。
ここなら、求める世界の姿を学べる。
そうと決まれば、色んな知識を得なければ。
ここでしか知ることのできない、異界の知識。
ここは【宝の山】だ。
それをするには、方法はたった一つ。
なに、簡単な事さ。
宴だああああああッ!!