【異物】しかない、この世界。
だからこそ、【異物】はない。

ここにあったんだな。
俺の野望の――――――行き着く先。






※ニンテンドー発のSRPG【ファイアーエムブレム】シリーズの登場キャラクター【クロード=フォン=リーガン(風花雪月)】と【リリーナ(封印の剣)】の異色コンビの二次創作。

≪設定≫
・【ファイアーエムブレムヒーローズ】の世界線設定
・クロード視点
・リリーナ、クロードともに伝承英雄として召喚された設定
・クロードが伝承英雄として召喚されてすぐの世界線の為、マリアンヌ不在
・リリーナはロイリリCP設定
・クロードの元のフォドラの世界は金鹿ルートクリア直後設定

※注意
・原作(封印、風花雪月、ヒーローズ)ネタバレ注意!
・多少の解釈違いがあるかもしれません

1 / 1
【FEH】Having No Border【クロード×リリーナSS】

――――――汝、我が呼び声に応えよ。

 

 

 

 

 

…とかなんとか形式じみた言葉が聴こえたと思ったら、いつの間にかこの世界にいた。

アスク王国、って言ったか。

連れてこられてすぐはさすがに戸惑ったが、数日経った今は妙に居心地の良さを感じている。

きょうだいやヒルダ、リシテア。

それに妙な格好こそしているが、ローレンツやラファエルもいるからだろうか。

 

 

 

 

――――――いや、そんな単純な物じゃない。

俺自身が、何かを本能的に感じている。

それを解明するのが、この世界での俺の課題のひとつだ。

同時に、元の世界に戻った時…俺の野望を叶える為のきっかけになるものを得られたら御の字、ってとこか。

フォドラの抱えていた問題は一旦解決したが、あくまでこれからだ。

きょうだいと俺と、みんなで、世界を根底から覆す。

それにはまだまだ問題も多い。

奇しくも、様々な【異界】から【英雄】って呼ばれている人物が、俺と同じようにここに連れてこられているみたいだ。

一気に理想を手繰り寄せる、そんな糸口はすぐ目の前に垂れる可能性だってある環境だ。

言ってみれば、ここは【宝の山】なのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

「さぁて、今日の訓練も終わったし、これからどうするかな…。」

定期的な訓練を終えた俺は、うんと身体を伸ばし、軽い欠伸をする。

 

とりあえず、この城を散策するか?

フォドラから来た者以外と、宴でも開く誘いをしてみるか?

それとも書庫に籠もって、召喚の仕組みを…?

最適解を弾き出そうと考えていた時だった。

 

一人の少女に出逢った。

蒼く輝く、美しい長髪をなびかせる。

その色彩とは対象的な白と赤が基調の衣装を身に纏い、若くして高貴な、しかも嫌味のない雰囲気を醸し出す。

 

そして、微笑みながら会話する相手は――――――

少年に、少女に…ラファエル!?

 

「リリーナさん、すげぇぞ!たった一撃で敵をほとんどやっつけちまうなんて、オデ、びっくりしたぞ!?」

「ふふ、ありがとうラファエル。」

「ホントにすごいですよ、リリーナさんの魔力は!僕ももっと修行して、あれぐらいの力を出せるようにならないと!」

「アスベルは今でも十分凄いわよ?あの鋭い風の魔道…私には使えないもの。」

「え、そ、そうかなぁ…?」

「ノノも!ノノもすごかったんだよー!!ほめてー!!」

「うん、ノノもいつもありがとう。今回も助かったわ。」

 

――――――驚きが隠せない。

この世界において、【英雄】同士が協力する仕組なのは解っている。

だが、それでも見ず知らずの身。

どこか距離感や警戒心はあっても良さそうなものだ。

しかし、どうだろう。

彼女には、それが一切感じられなかった。

【無償の愛】とでも言うのだろうか。

誰に対しても、等しく、優しく。

そういうものを感じた。

 

リキア諸侯同盟オスティア侯爵領の姫…いや、あの姿の彼女はすでに盟主だったか。

俺の統治するレスター同様に諸侯同盟の統治者であるなら、もしや――――――

 

そう思った俺は、自然とその集まりに近づいていた。

「お、クロード君じゃねぇか!…って、あれ?いつもの格好じゃねぇなぁ。髭まで生やして…どうした?」

「よ、ラファエル。久しぶりだな。まぁ、ちょっとした気分転換ってとこだな。それより…。」

ラファエルが疑問を投げかけてくるが、今はそれに答える暇はない。

 

「リリーナ、だっけ?俺は、クロード=フォン=リーガン。そこにいるラファエルと同じく【フォドラ】って異界から来たんだ。よろしくな。」

「はじめまして、クロードさん。先日召喚されたばかりなんですよね。私は、リリーナ。オスティア侯公女…いえ、これからオスティア侯爵になります。よろしくお願いいたしますね。」

簡単な挨拶と握手はほどほどに、単刀直入に切り込む。

 

「リリーナ。同じ諸侯同盟の盟主の立場として聞きたいことがある。少し話せないか?」

「え…?わ、私でよければ…。」

「ありがたい。そしたら、ちょっとついてきてくれ。」

「は、はい。」

そう言って、俺は彼女とその場を後にした。

 

「おいおい、クロード君とリリーナさん、行っちまったぞ。腹でも減ってたのかな?それならオデたちも誘ってくれればいいのに。」

「藪から棒でしたね…。しかし、【盟主の立場として】ですか…。何だったのでしょう?」

首を傾げながら話す二人に、ノノだけは自信ありげに言う。

「ふふん、ノノはわかったよ!これはねー【しゅらば】ってヤツだね!ロイにいってくるー!!」

「あ、ち、ちょっと、ノノ!」

ノノもまた、アスベルの声を聞かずに飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないね、出撃後すぐに呼び止めてしまって。」

「いえ。クロードさんは召喚されて間もないし、もし私で困ってる事の解決に繋がるなら、協力しますよ。」

彼女は、彼らに向けた微笑みとまったく同じ物を俺にも向けた。

「いやはや助かるよ。せめてものお礼だ、今日は俺が奢るよ。好きな物を何でも食べてくれ。」

「え…そ、そんな、それはさすがに申し訳ありません!」

「気にするなよ、俺がそうしたいんだ。あと、敬語とか俺にはいらないぜ。もちろん、敬称もいらない。クロード、って気軽に呼んでくれ。」

俺はそう言いながら、軽く目配せした。

「あ、ありがとう、クロード。じゃ今回はお言葉に甘えさせてもらうわね。」

順応も早い。

今までどれだけ多くの人物と接してきたか、よく解る。

 

俺の目の前で、彼女は食事を摂る。

俺は、そんな彼女を観察していた。

食事の摂り方は、上品。

話す口調も、丁寧。

そしてなにより――――――

 

「あんたは、俺を微塵も疑わないんだな。」

「え…?」

「あんたは、人が急にご馳走する、って言って出てきた食事を、何の疑いもなく口にした。ここはアスク王国の大衆食堂だが、俺がその気になれば毒を盛ることだってできたはずだ。そういう可能性とかは、あんたは考えたりしないのか?」

 

そう、俺の疑問。

彼女は盟主という立場にいながらにして、人との距離が近すぎる。

人の懐に飛び込んでいく術なら、俺もそれは持ち合わせている方だ。

宴を開き、腹を割って話し、色んな角度から情報を得る。

それを自分の中へと昇華させ、自分の野望を叶える。

その為に、相手との距離をあえて詰める事はある。

 

だが、彼女にはそういう打算みたいな物をまったく感じない。

何の警戒もなく、人との距離を詰め、平等に接する。

それが例え、知らない世界から来た、自分と立場がまったく違う人間であってもだ。

その理由を、秘密を、俺は知りたい。

 

「私は…そういう事はあまり考えないわ。」

彼女は、迷いなくそう答える。

「…理由を、聞いてもいいか?」

「クロードは、私を必要とした。それだけよ。」

「へ…?それだけ…?」

拍子抜けしたのか、俺は力のない返事をしてしまった。

「えぇ。私でいいのなら…力になれるのなら、いくらでもお話も聞くし、叶えてあげられる事なら、お手伝いもするわ。」

「いやいや、待ってくれ。それが嘘だったり、罠だったり…そういう事は考えないのか?」

あまりに純真すぎて、逆に俺が慌てる。

「そういう事もあるかもしれないけど…逆にお願いが本当だった時、手を差し伸べられなかった方が悔しいし、悲しいから…。」

彼女は、少し遠い目をしながら、さらに言葉を続けた。

 

「私ね、元の世界で臣下の謀反に気づけなかった事があるの。裏切られて、私は幽閉されて。気づいた時には、領家はすでに敵に制圧された状態だったわ。」

「そんな事があったなら、余計に猜疑心を持つもんだろ。」

「他の人なら、そうかもしれないわね。でも、私にはできなかったの。なぜなら…。」

「なぜなら?」

 

「そんな私でも、助けてくれる人がいた。だから私は、信じたい。私を助けてくれた大切なみんなのように、私もみんなに手を差し伸べたい。」

ここまで力説されて尚、【綺麗事】に聞こえる俺の心は薄汚いんだろうか。

「…水を差すようで申し訳ないが、それはあんたの世界で初めて成り立つ話じゃないのか?ここにいる人間は、まったく関係のない、見ず知らずの助っ人集団…傭兵に近いようなもんだ。何もそこまで元いた世界と同じように振る舞わなくても…。」

俺がそう言いかけて、彼女は遮った。

 

「同じよ。」

「え?」

「理由はどうあれ、私たちは、求められてここにいる。ならば、今までと同じじゃないかしら。召喚士さんも、特務機関の皆さんも、私たちと同じように召喚された英雄の皆さんも。求められて、信じてもらえるなら、私も同じ事をしたい。生い立ちとか、人となりとか、そんなものは元の世界にいても、この世界にいても、みんな違うから。」

 

「私は、手を差し伸べたい。それが、助けになるのなら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――なるほどな。

感じてた居心地の良さの正体が、ようやっと解った。

 

 

 

 

ここには【異物】しかいないんだ。

俺も、彼女も、他のみんなも。

召喚された英雄達は、みんな【異物】。

だからこそ、【異物】として見ないんだ。

皆が手を取り、アスク王国に力を貸し、そしていつか元の世界に戻る時の為に研鑽する。

そこに、立場とか境遇、環境、功績、人物像。

そんな物は関係ない。

【境界】なんてないんだ。

 

 

それこそ――――――

 

 

 

 

 

 

俺が求めてた世界の姿じゃないか。

 

 

 

 

 

 

「…ここにあったんだな。」

ボソリと呟いた。

「…?クロード?何か言った?」

「いや、なんでもないさ。しかし参ったぜ。同じ諸侯同盟の盟主という立場でも、こうも考え方が違うとはね。」

「お、おかしかったかしら…?」

「いいや、むしろ色々スッキリしたし、勉強になったよ。ありがとな、リリーナ。」

そう言うと、彼女はまたあの微笑みを見せ、

よかった、と返した。

 

俺の好奇心は止まらない。

「ふむ、ここまで考え方が違うのも面白いな。どうだ。このあともうちょっと俺に付き合ってくれないか?あんたの事、もっと教えてほしい。」

傍から聞けば、最早口説き文句にしか聞こえない。

そういう台詞を言ってる時に限って、魔が差すんだよな。

「リリーナ!」

一人、青年がやって来る。

確か、ロイって言ったかな。

きっと彼女と同じ世界の人物なのだろう。

 

「ロイ?どうしたの、こんなところまで。」

「いや、ノノが教えてくれたんだよ。「クロードと一緒に出かけてった!しゅらばだよー!」って…。」

「ノノったら…。どこでそんな言葉を覚えたのかしら…。」

彼女の声が、少し上ずったのが解った。

こころなしか、頬の辺りも紅くなっている。

ははん、なるほどね。

そういうご関係でしたか。

「おや、残念。王子様がいらっしゃいましたか。」

俺はそう言うと、約束通り食事代を机に置いて席を立つ。

彼が俺をじっと見てくるもんだから、何もしてないさ、っていうアピールで目配せしておいた。

「じゃ、またな。続きはまた今度。」

そう言って、俺はその場を去った。

 

「大丈夫かい、リリーナ?何もされてない?」

ロイは、心配そうにリリーナに声をかけた。

「うん、大丈夫。ちょっとお話しただけよ。」

「そっか…よかった…。」

安堵するロイを見て、リリーナはクスリと微笑む。

「ど、どうしたの?」

「ううん、なんでもない。ただ…。」

「ただ…?」

 

「ロイも、クロードと同じね。」

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――俺の求めた世界。

生まれとか、紋章とか、そんなしがらみに囚われない世界。

その理想に近い形が、ここにあった。

 

召喚してもらえてよかった。

今なら、そう思える。

ここなら、俺の野望の礎を築ける。

ここなら、求める世界の姿を学べる。

 

そうと決まれば、色んな知識を得なければ。

ここでしか知ることのできない、異界の知識。

ここは【宝の山】だ。

それをするには、方法はたった一つ。

なに、簡単な事さ。

 

 

宴だああああああッ!!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。