インターホンが鳴る。
「はーい、どなたですかー!」
『アスカ、私よ』
「あ、レイ。上がって良いわよ。」
「お邪魔します。」
コンフォート17の葛城家に1人の来客。
「…次の使徒戦の作戦会議しましょう。碇君、次の使徒の説明を。」
「 わかった…えーと、前史での次の使徒はアルミサエルって言って、零号機を取り込もうとした後、零号機のA.T.フィールドの中で零号機ごと自爆した使徒。」
「つまりはレイを殺した使徒って事ね。」
「えと、厳密には綾波を自爆まで追い込んだ使徒って言うのが正しいかな?」
「…つまり、侵食された後自爆すれば倒せるって事ね…」
「勿論あんたは自爆しちゃダメなんだからね!」
「ええ、わかってるわ。」
「で、策はあるの?」
「えーと、アルミサエルに効いた攻撃はプログナイフぐらいしか無かったから…基本的にプログナイフを使うのがいいと思う。」
「…ライフルは効かないの?」
「うん、効かなかった。ゼロ距離からでも効果なし。」
「新兵器のデュアルソーとかはダメなの?あれもプログナイフと仕組みは同じ筈だけど。」
「それならいけるかもしれない。」
「…全部効かなかった場合は…?」
「ロンギヌスの槍をどうにかして使うしか無いね。」
「…使えなかったら…?」
「人類滅亡。」
「ま、そりゃそうなるわよね。」
第一中学校、2年A組の教室。
「ケンスケ、なにしとるんや?」
「あぁ、写真の整理だよ。最近は買い手も少なくなったからね。」
盗撮した女子生徒の写真の整理。
その中にはヒカリの写真もあった。
「おお、委員長の写真やないか。」
「最近まるっきり売れなくてね。やっぱりああいう事があったからだよなぁ…」
参号機の事件。片脚を失ったヒカリ。
「あぁ…委員長…委員長が歩いとる…うぅ…今ではもう見れんのか…」
「…委員長…残念だよなぁ…」
「おい!今は私が委員長なんだぜ!いつまでもヒカリさんの事でめそめそしてたらみっともないのぜ!」
「げ…
「『げ…』とはなんなのぜ!」
満月・アキナ・カブラスア。
ヒカリが学校に来れなくなった今、学級委員長を務めている。
「なんだよ…委員長が怪我したって聞いたら大泣きしたくせに…」
「うっるさい!」
「お早う!」
「お早う。」
「…お早う。」
シンジ、アスカ、レイが教室に入ってくる。
「お、碇!」
「お早う。トウジ、ケンスケ!」
「アスカ!お早うなんだぜ!」
「お早う…アキナ…」
「やあ、シンジ君。」
「あ、カヲル君…お早う。」
「アスカ、シンジ君とはうまく行ってるのぜ?」
アスカと話し始める満月。
「うん…そこそこに…」
「男子って押しに弱いって聞くぜ…?」
「押しは…してるわよ?…」
やり過ぎなくらい。
きーんこーんかーんこーん…
「こら、席に座りなさい。出席をとるぞ…」
…
「シンジ君、その弁当少し分けて貰ってもいいかい?」
「え?」
昼時、弁当を食べようとしていたらカヲル君が話しかけてきた。
「いいけど…どうして?」
「小腹が空いてね。」
「はい…どうぞ。」
「シンジ君は優しいね。」
予備の割り箸を渡し、カヲル君と弁当をつつく。
「シンジ、弁当頂戴。」
「ああ、ちょっと待って。」
鞄からアスカ用の弁当を取り出す。
「はい、しっかり噛んで食べてね。」
「ありがとう、シンジ。」
すると、レイがアスカの肩を触る。
「…アスカ…一緒に食べましょう。」
「あ、良いけどちょっと待ってねレイ。相田ー!ちょっといい?」
ケンスケの席に向かうアスカ。
「え…どうしたんだ?アスカがオレに話しかけてくるなんて珍しいな。」
「あんた、あたしの写真で儲けてたでしょ?」
「ぎくり」
「いや、別に怒りはしないんだけど。」
「え?」
「あたしの写真で儲けたお金の半分、ヒカリにあげて欲しいんだ。」
「別に…良いけど…」
「ありがと、相田。」
「…ゴメン…」
「だから、怒らないって。」
ケンスケに笑いかけるアスカ、ただの天使。
「お礼になんか一個叶えてあげる。あたしに出来る範囲だけど。」
「え?なんで?」
「もう、シンジもそうだけど日本の男の子って変に遠慮するわね。あたしがそうしたいだけなのに!」
「…じゃあ今度から『相田』じゃなくて、『ケンケン』って呼んでくれるかい?」
「はぁ⁉︎」
「ゴメン、ふざけ過ぎた。」
「…別にいいわよ、け…ケンケン!これでいい⁉︎」
顔を真っ赤にしているアスカ。
(おいおいまじかよ…)
「…じゃあ…委員長にはオレが渡しとくから…」
「ありがと!頼むわよ、け…ケンケン!」
駆け足でレイの元へ向かうアスカ。
「……碇は幸せ者だな…」
…
NERV本部に向かうため、バスに乗る。
(確か前史は今日、綾波が自爆する事になるんだ。)
でも、今回はそんな風にはさせない。
「ねぇシンジ。」
アスカがシンジの左耳に囁く。
「ん?どうしたのアスカ。」
「…なんで渚が付いて来てんのよ。」
「分かんない。多分フィフスチルドレンになったとかじゃ無いかな。」
バスがジオフロント入り口に着く。
バスを降りる4人のチルドレン。
「…なぜあなたが付いて来ているの?」
カヲルに冷たく質問するレイ。
「今日から僕は君達の仲間になったんだよ、フィフスチルドレン渚カヲル。知らされてなかったの?」
…
ミサトの車。
その中にミサトと日向の2人。
「今回の件、マルドゥック機関の報告書は非公開になっています。」
「やっぱり…ね。」
「今回ばかりはお手上げです。」
「MAGIも全力をあげて彼のデータを洗ってるのにも関わらず、未だ正体不明。…何者なの?あの少年。」
「⁉︎…葛城さん!」
車窓の外に浮遊する物体を見つけた日向。
それと同時にミサトの携帯が鳴る。
「はい。…ええ、分かってるわ。私もたった今肉眼で確認したから。」
蒼い空に白い光を放ちながら浮かぶ二重螺旋構造の円を描くモノ。
使徒だ。
…
発令所に入るミサトと日向。
「遅いわよ、何をしてたの?」
少し怒ったような声を出すリツコ。
「言い訳はしないわ、状況は?」
「目標は現在大涌谷上空まで接近、定点回転を続けています。」
「…!…あなたは…」
「フィフスチルドレン、渚カヲルです。どうぞよろしく。」
エヴァ初号機、エントリープラグ内。
「…やはり…来たわね…」
「作戦通り行こう。」
「あたし、応援してるから!」
地上に配置されたエヴァ零号機。初号機がバックアップに付いている。
弐号機だけ、地下で待機である。
『膠着状態ですね、まず敵の攻撃手段が読めない事には…』
『青からオレンジへパターンが周期的に変化しています。』
『…どういうこと?』
『MAGIは回答不能を提示しています。』
『答えを導くにはデータ不足という訳ね。ただ、あの形が固定系では無い事は確かだわ。』
『先に手は出せない…か。レイ、シンジ君!しばらく様子を見るわよ。』
「いえ、来るわ。」
使徒の形が二重から一本の触手に変わり、零号機に向かう。
「…ッ!」
零号機と初号機がパレットライフルを斉射、全弾命中するが、効いた様子は無い。
「く…!やっぱライフルは効かない!」
プログナイフを構え、零号機に襲いかかろうとしている使徒に突き立てる。
しかし、効かなかった。
「…⁉︎」
そのまま侵食されていくプログナイフ。
(…なんでだよ⁉︎前は効いたのに!)
初号機ごと侵食されても困るので、プログナイフを手放す。
「ミサトさん!この使徒、ライフルもナイフも効きませんよ!」
「デュアルソーを出すわ!シンジ君、Cの883まで走って!」
「分かりました!」
大急ぎで射出されたデュアルソーに向かって走る初号機。
初号機を追うように触手を伸ばす使徒、それを止める零号機。
デュアルソーを手に取る。
「これなら…どうだッ!」
零号機を襲う使徒にデュアルソーを振り下ろす。
しかしこれも効き目がない。
「これでもダメか…ッうわぁ⁉︎」
使徒に突き飛ばされる。
宙を待った後、地面に叩きつけられる初号機。
「碇く…きゃあっ⁉︎」
零号機を押し倒し、侵食を始める使徒。
『レイ!』
ゲンドウが叫ぶ。
「うっ…うぅ…んあっ…だめ…っ…」
「綾…波…ぃ…ッ!」
叩きつけられたばかりで痛い体を起こし、デュアルソーを使徒に突き刺す。
紅い血が流れ、使徒が悲鳴をあげる。
「⁉︎」
(さっきまでまで効かなかった武器が…効いてる⁉︎)
しかし、デュアルソーもあっという間に侵食される。
「くそっ!」
侵食されたデュアルソーを手放すと、使徒を手で引きちぎろうと両手で触手を掴む。
「千切れろ…ぉぉ…お…っ!」
触手から血が飛び出る。
瞬間、右足に鋭い痛み。
「⁉︎」
痛みの方に目を向けると、使徒の触手に操られていたデュアルソーが初号機の足を切断していた。
バランスを失い、倒れる初号機。
トドメを刺そうと、デュアルソーが初号機の首に向かう。
「う、うわあぁぁぁ!!!」
『初号機の神経接続を切って!早く!』
ザシュッ…と鈍い音。
紅い血とともに、紫の頭が転がる。
「碇…君…!」
「シンジィ!」
『初号機パイロットの救出急げ!』
「はぁ…っ…はぁ…っ…」
間一髪。神経接続が切れたお陰で助かった。
「う…綾波……!」
(また…自分は何も出来ないのか…)
『使徒が…積極的に一時的接触を試みているの?エヴァと…』
『危険です!零号機の生体部品が侵されて…すでに5%融合されてます!』
「うっ…くぅ…痛…い…」
「あ、綾波ィイィ!!!!」
…
(…だれ?私?…エヴァの中の私…いいえ、違う。私じゃない…誰?あなた誰?)
『使徒…私たちが使徒とよんでいるヒト?』
〈私とひとつにならない?〉
『いいえ、私は私。あなたじゃないわ。』
〈そう、でもダメ。もう遅いわ…私の心をあなたにも分けてあげる。〉
侵食されていくレイ。
『ん…ぅん…あぁ…』
〈ほら、痛いでしょ?心が痛いでしょ?〉
『痛い…いえ…っ…寂しい、のね…』
〈…サミシイ?わからないわ。〉
『ひとりで…っ…いるのが…イヤ…なんでしょ?…私たちは…たくさんいるのに…ひとりでいるのが…!』
〈それをサミシイというの?でもね、それはあなたの心よ。〉
『わたしの…こころ…そうね、そうだわ…っ…』
〈気づいていたでしょ?ずっと前から。でもあなたはそれに気づかないふりをしていた。〉
『…………!』
〈そして、もっと醜い心にも。〉
『…みに、くい?』
〈碇君を、自分だけのものにしたい心。〉
『ちがう…わたしは…いかりくんのいもうとに…っ…』
〈碇君が、アスカと仲良くしているのを見て、アスカとキスをしているのを見て、あなたはどう思った?〉
『ちがう…っ…』
〈イヤだと思ったでしょ?〉
『ちがう…ちがうっ…!』
〈アスカが憎いと思ったでしょ?〉
『ちがう、ちがう…ちがうっ…!』
〈自分だけを見て欲しいと思ったでしょう?〉
『ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう』
〈寂しいから、いつもそばにいて欲しいと思ったでしょ?それがあなたの心。悲しみと切なさと憎しみに満ち満ちている、あなた自身の心よ。〉
『い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁ!!!」
『『「レイ!!!」』』
ミサト、アスカ、リツコが悲鳴に似た声をあげる。
使徒の肉が膨張し、エントリープラグ付近を覆う。
『エヴァ弐号機の凍結を現時刻をもって解除…出撃だ。ロンギヌスの槍を装備させろ。』
『……はい!アスカ、聞こえたわね?行くわよ!』
「……はい!」
…
「綾波が…っ…くそ!また僕は何も出来ないのか⁉︎」
あの時、油断していたせいだ。
デュアルソーを使徒に操られる事を想定出来なかったから…!
その時、ロンギヌスの槍を持った弐号機が地下から上がってきた。
「…今すぐ助けるから…待ってなさいよ、レイ!」
「…アスカ!」
「どぉおりゃぁぁぁぁあ!!!」
紅の槍が投擲され、真っ直ぐ零号機と半融合した使徒に向かって行く。
使徒がA.T.フィールドを展開する。
しかし、ロンギヌスの槍はそれを容易く貫き、使徒を崩壊させた。
十字架の大爆発が起こる。
パターン青は、完全に消え去った。
『ロンギヌスの槍は?』
『第1宇宙速度を突破、大気圏を離れます!』
『…回収は、不可能というわけだな。』
その頃、零号機エントリープラグ内。
レイは泣いていた。
「…私…こんなに…汚かったのね…うふふ…あはははは…は…」
…
「レイ!」
「綾波!」
レイのいる病室に駆け込むシンジとアスカ。
レイはベッドに寝かされていた。
「よかった…レイ、無事だったのね!」
「もう気がついてたんだ、綾な…!」
返事がない。
(この感じ…前にも一回…)
「…?…なんで返事しないのよ?あんたが冗談なんて珍しいわね?」
(まさか…いやそんなバカな…⁉︎)
「ねぇ!返事しなさいよ!シンジもなんか言ってやっ…⁉︎」
振り返ると、シンジの青ざめた顔。
後ろからミサトが暗い表情で病室に入ってくる。
「そっとしておいてあげなさい、アスカ。」
「…ミサト?」
「リツコによれば…助けるのが少し遅すぎた、らしいわ。」
「…え?」
「心の最深部まで…限界ギリギリのダメージを受けたから…元に戻るのは…難しいって…」
「そんな…嘘よね…?レイ…?」
「………」
「そんな…嫌…うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
…
「…ファーストの精神崩壊か…」
全てが青く見える病院の壁に寄りかかりながら独り言を呟くカヲル。
「今までのどんな世界でもあり得なかったことだ…」
セカンドチルドレンの泣き叫ぶ声が聞こえる。
「……シンジ君…」
つづく
満月・アキナ・カブラスアの公式設定↓
https://m.youtube.com/watch?v=SdSlLehrPvc&feature=youtu.be
本小説の『満月・アキナ・カブラスア』の設定
本名は『
イギリスからの転校生で、東方projectの大ファン。
国籍はイギリス、しかし両親は日本人。
日本語は東方のゲームで覚えた。
日本に来てからは、アスカと交友を深め、アスカの『ラングレー』を真似て『ラブアスカ』を並び替えて『カブラスア』を名乗っている。
シンジとアスカが一線を越えることを一番楽しみにしている。
感想ください
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いいぞ、やろう。
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レイを精神崩壊させるなんてサイテー!
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やらねぇよすまんな
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おめぇの(作品に)感想ねーから!